この戦いでクレイマンは、自分が真の道化だったと知る。
ようやく本気をだし、自ら戦い始めたクレイマンは背中から生やした六本の義手に、剣、槍、斧、鎚、盾、金棒を握り締め巧みに使い熟しながらリムルを攻撃する。
それに対して、リムルは分身ミリム戦でも使った人間態とスライムの姿を使い分けながらその攻撃を躱していき、刀で防ぎ受け流した。
二人の戦いを見守る紫苑達と分身フォルテ。
フォルテは戦うクレイマンの動きを観察しながら解析していた。
(…クレイマン。確かに強い。強いには強いが、リムルの敵ではないな。策謀を巡らせ軍団を指揮するタイプだと言う事もあるが、己の持つ力を過信して鍛えてはいないな。)
そうフォルテが思っていると、クレイマンがリムル目掛けて斧を振うが、リムルがそれを受け流しながらクレイマンの左腕の義手二本を斬り落とした。
「ぬぅ…!」
クレイマンは振り返りながら剣を振るう。だがそれも、リムルに易々と受け止められ鍔迫り合いとなる。
「なぁクレイマン。これがなんだか分かるか?」
そう言ってリムルは、いつの間にか持っていた水晶玉をクレイマンに見せる。
「さっき俺の仲間が送ってくれた記録媒体だよ。」
そう。俺がシャドーマンから報告を受けたように、リムルも蒼影から報告を受けゲルドの胃袋を経由してあの水晶玉を受け取っていたのだ。
「お前の城の宝物庫で見つけたらしい。」
「ハッ!馬鹿な。私の城だと?城は
まぁそう言われて、普通に信じる筈もないな。
「……そいつらは、ウチの
「つまらんハッタリだな。そうまで言うなら証拠を見せるがいい!」
「ああ。もちろん見せてやるよ。フォルテ!」
そう言って、リムルは分身フォルテに水晶玉を投げ渡す。
受け取ったフォルテは頷くと、水晶玉を真上に掲げる。
水晶玉が発光し、分身フォルテの四方に巨大な液晶モニターのような物が出現!モニターに何かが映し出され、映ったのは
【やっほ〜クレイマン。フォビオを上手く乗せて計画通り
その映像を見てクレイマンは驚愕した。
(これはフレイの弱みを握る際、ティアから受けた報告…!まさか…まさか本当に…。)
映像のティアの話を聞いたフレイは目を細める。
そして、別の映像に切り替わり、次に映し出されたのはヤムザだった。
【やっやめろ!お止め下さい!クレイマン様ぁぁぁぁぁ‼︎】
叫びながら宝珠を呑み込みかけるが、間一髪で無銘が手首を切り落とし阻止した。その後、リーガルの液体兵が無数に現れ、宝珠と共にヤムザの分身体に纏わりつきながらダークチップを吸収し
「あれって確かクレイマンとこの…えーと、中指のなんとか……あっ!そうヤムザ!」
(身内を切り捨てたか。)
ラミリスはヤムザを思い出し、ダグリュールはクレイマンが嘘をついている事を、この映像を見て確信した。
更に映像が代わり、次に映し出されたのは最初に映ったティアと
【クレイマンの軍勢は壊滅。作戦は失敗…この損失は余りにも大きく、あの方の言う通り大人しくしておくべきだったと言う事ですね。】
【だっよねぇ〜。ラプラスも忠告してたし、今回はクレイマンが悪いよねぇ。】
【という事で、あの方に報告しなければなりませんので、私達は帰らせていただますね。】
そこで映像を止めるフォルテ。映像を見ていたクレイマンは、まだ受け入れられずにいた。
(壊滅?フットマンめ何を言って…そんなはずないではないか。圧倒的な戦力差で侵攻したのだぞ?計画に入れていない因子でも無い限り……!)
クレイマンはフォルテを見る。
(やはり…また此奴の仕業か‼︎)
そうクレイマンが思った時、リムルがクレイマンに向かって問う。
「なぁクレイマン。〝あの方〟ってのは誰の事だ?」
リムルの殺気を宿した鋭い視線に、クレイマンは恐怖した。
「う……うおおおおお‼︎」
その恐怖を振り払うように、リムルは剣を無理矢理弾き飛ばし距離を取る。
そして、リムルに向かってあの赤い糸を放って絡め取る……そう。
(紫苑に仕掛けた精神操作の糸か。)
絡め取られたリムルはそのまま、無数の赤黒い光の細糸に包まれ繭となる。
「フッ……フハハハハッ!紛い物の映像でハッタリなど、如何にもスライムらしい小賢しい手よ!喜ぶがいい!その繭が解けた時、貴様は私の命令に従う事しか出来ぬ操り人形になるのだ!」
今度こそ成功したと確信したクレイマンは、その場で高笑いを上げる。
「ハハハハハハハハッ!」
そんなクレイマンを、フレイは見ていた。
(…
フレイはこれまで、ミリムに頼まれクレイマンを欺く為に協力していた日々を思い出していた。
(…随分と不愉快な思いをさせられたけれど、今となってはどうでもいいわ。だって貴方の命、今日で終わりのようだもの。)
フレイがそう思っている中、笑い続けるクレイマンだったが…。
「ハハハハハ…⁉︎」
繭を突き破りながら、リムルが繰り出した豪快な右拳の一撃を喰らって殴り飛ばされた。
勢いよく地面にぶつかりながら飛ばされるクレイマン
リムルの一撃によって、仮面の左目部分が壊れ、クレイマンの左目が露出した。
「馬鹿なっ…貴様といい、あの鬼女といい何故効かぬ⁉︎」
「さぁな。お前が弱かっただけだろう。」
リムルに通じなかったのは、
そんな事を知らないクレイマンは認めはずに声を上げる。
「そんな………そんな筈はない!太古の魔王ですら……ミリムすら支配した究極の呪法だぞ⁉︎」
そのミリムは支配されていない事をまだ知らないクレイマン。
「そっそうだ!ミリム…ミリムは何をしているのです⁉︎早く此方に………⁉︎」
本来なら分身ミリムが、相手をしている筈のリムル此処にいる事にようやく気付いたクレイマンは、本体フォルテと戦っている本体のミリムの方へと振り向く。
そして、…クレイマンの目に映ったのは。
ドゴォン!ドゴォン!バゴォン‼︎ドガ!バキ!ドガバキドガバキ!バゴォン‼︎
フォルテとミリムがぶつかり合う中、分身ミリムと楽しく殴り合うヴェルドラの姿だった。
ヴェルドラから発せられる
「なっ何者だ⁉︎なっなんだ?何なのだ⁉︎あの桁外れな力は‼︎」
「何だ、出てきたところ見てなかったのか?ヴェルドラだよ。言っただろう友達だって。」
リムルの言葉を聞き、リムルが言っていた事が真実だとようやく理解したクレイマン。
激しく殴り合うヴェルドラと分身ミリム。
「鉄山靠!」
やりたい放題のヴェルドラは、鉄山靠を放った後、両手を前方に突き出した。
「か〜め〜は〜め〜!」
突き出した両手を腰付近に持っていき、体内の
………その構えと言葉を聞けば、異世界人…漫画、アニメを知る者達ならすぐに気付く。
「波ーーーーッ‼︎」
そう⋯…ドラゴンボールのかめはめ波だ。
ヴェルドラは、両手を前に突き出し留めた
迫る魔力波を分身ミリムは両腕で受け止め大爆発
爆煙が周囲を覆う中、その爆煙から本体フォルテが飛び出し、それを本体ミリムが追いかける。
爆煙から飛び出したフォルテがミリムの方へと振り向くと、右腕を突き出す。
「ユニコーンドライブ、インストール!」
そうフォルテが声を上げると、フォルテの突き出した右腕に、機械的な…いや
それを見たリムルは目を見開いた。
「ちょっ⁉︎フォルテ!それはやり過ぎだ‼︎」
リムルが声を上げるが、フォルテは止まらない。
フォルテはそのまま更に
そのまま放つ構えを取るフォルテに対して、ミリムは満面の笑みを浮かべる。
フォルテが放とうとしているのは、GEAR戦士電童の
「ユニコーンドリル!ファイナルアタック‼︎」
フォルテがユニコーンドリルを装備した右腕を突き出し技を放ち高速回転するドリルから、凄まじい旋風波が放たれミリムに迫る
その旋風波を、ミリムは分身体と同じように両腕で頭を守りながら受け止める
旋風波を受け止め耐えるミリムだが、……徐々に押され始めている。
ミリムが押されている事に、他の魔王達は目を見開く。
徐々に押されていくミリム。………が、ミリムは
逸れた旋風波はそのままギィの張った結界に激突し、なんと結界を突き破り貫通した。
そのままレオンの真横を通過し壁に激突して旋風波の余波により、……レオンの頬に傷が付いた。
その光景に、魔王達は目を見開いたまま少し唖然となっていた。
ギィの結界を突き破り、偶然とはいえあのレオンに傷を負わせたのだから。
それを見たヴェルザードも〝あらあら〟と少し驚き、ギィは〝ほう〟と呟きながら手を翳し結界を修復した。
(俺の結界を破り、偶然とはいえあのレオンの頬に傷を付けるとはな。…益々面白い。しかも、あれでまだ全力を出した訳ではないようだな。…フォルテ=テンペスト。本当に興味が尽きない奴の様だ。)
ギィは、あれだけの攻撃を放ったフォルテが、まだ全力を出し切っていない事に気付いて笑みを浮かべていた。
そんなフォルテの一撃を目の当たりにしたクレイマンは、恐怖しフレイに手を貸すように声を上げる。
「ひぃ!フッフレイ!何をしているのです⁉︎さっさと私に手を貸しなさい‼︎」
クレイマンの声を聞いたフレイは、素っ気無い態度で口を開いた。
「あら。悪いわね、クレイマン。この結界は、ギィが認めないと通れないのよ。本当に残念だわ。」
(……まぁ元々助ける気はないだろうな。)
フレイの態度を見て、分身フォルテはそう思った。
フレイも当てにならないと理解したクレイマンは、自分の状況と魔王達の様子を見る。
「くっ…………!(…どうする⁉︎先の映像で魔王達も私を疑っている。)」
映像を見ていなくても、既に疑われている事に気付いていないクレイマン。
(敵に暴風竜までいるとなると、この場で目的を達成させるのは不可能。である以上、最善の手は……。)
必死に打開策を考えるクレイマンは、本当の意味での〝奥の手〟を使う事にした。
「……ミリムよ命令です。〈
クレイマンのミリムに対するとんでもない命令を聞いたフォルテは、…もう頃合いだろうと構えを解いた。
それと同時に、ミリムがチラッとクレイマンを見ると満面の笑みを浮かべながらこう言った。
「…………何でそんな事をする必要があるのだ?」
「なっ…………⁉︎」
クレイマンは驚いた。自身の操り人形となっている筈のミリムが喋ったのだから…。
「リムルとフォルテは友達なのだぞ。」
ようやく操られた振りをやめたミリム。
「ミリム。もう満足したか?」
そんなミリムにフォルテが声を掛ける。
「うむ!フォルテは凄く強くなったのだ。私が手加減せずとも、ここまで戦えたのだからな!」
「そう言ってくれると嬉しいよ。」
ミリムに力を認められ笑みを浮かべるフォルテ。
「だが、一応は心配したぞ。」
「フォルテの言う通りだよ全く。まぁ無事を確認出来て良かったよ。」
フォルテの言葉に続くようにリムルがそう声を上げた。
「わーっはっはっは!リムルは相変わらず心配性なのだ。私がクレイマンなんかに操られる訳ないであろう?」
「いや…いやいやいや。」
フォルテとリムルとミリムの会話を聞いた他の魔王達も、何名かは驚いていた。
「えっ⁉︎えええ………⁉︎」
「何と⁉︎」
「殴られかけても反応しなかったじゃん。」
「ふっ。」
「ふっ。」
ミリムに協力していたフレイは当然知っているし、ギィとルミナスも当然気付いていた。
そして、あのミリムがあそこまで演技をしていた理由を確認する為、フォルテがミリムに問う。
「ミリムが操られた振りをしていたのは、クレイマンを探る為なんだろ?」
「うむ!クレイマンが何か企んでいると思ったのでな、それを探っていたのだ。」
「振り…⁉︎そんな…そんな筈はない!」
ミリムの言葉を聞いたクレイマンが、信じられずに声を上げる。
「
「これのことか?呪法が成功したように見せねば、用心深いお前は信用しないだろう?」
そう言ってミリムは、クレイマンの呪法が施されたペンダントを引きちぎる。
「だから、ワザと受けたのだ。」
そう言ってペンダントをクレイマンへと投げるミリム。
その際、
クレイマンの足元に落ちるペンダント。
「ふっふざけるな…。あの方より授かった
「そうなのか?でも私を支配するのは無理なのだ。」
ミリムにそう言われ、目を見開くクレイマン。
…クレイマンは知らなかった。
その事を、フォルテは
「では…では貴女は私を欺くためだけに、カリオンを殺したというのですか⁉︎」
「おいおい。誰が死んだって?」
クレイマンがそう叫ぶと、聞き覚えのある声が聞こえた。
その声の主はフレイの従者として来ていたカリオンであり、ライオンの被り物を遂に外した。
「俺がリムルとフォルテを唆しただとか、随分面白い事を言ってくれてたじゃねぇか。なぁ、クレイマン。」
カリオンの登場にクレイマンは、もう何がどうなっているのか分からないと言った目をしていた。
「カリオン。どうやら無事な様だな。」
「無事…………とは言えねえかな。俺の部下や民達が世話になった。」
「それはいいって。」
カリオンの無事な姿を改めて確認したフォルテが声を掛けると、カリオンは民達を受け入れてくれたフォルテとリムルに礼を言うのだった。
「なっ…そんな……では、本当に………?だが、フレイの報告では………そっそうか!フレイも!貴様も裏切っていたんだなぁァァァァァ‼︎」
ようやく気付いたクレイマンがフレイに向かって声を上げる。
それに対してフレイは……。
「あら?いつから私が貴方の味方になったと勘違いしていたの?」
笑みを浮かべながらそう言った。…魔王フレイ。敵に回すと怖いな。
「ふっ…ふざ…巫山戯るなよ!きき……貴様ら。許さん…断じて許さんぞぉォォォォオ‼︎」
フレイの裏切りに我を忘れて怒るクレイマンは、そのまま背中の義手に魔力を集めながらフレイに向かっていく。
だが、フレイの元に辿り着く事なく、ミリムとフォルテに殴られ地面に叩きつけられる。
二人の一撃でズタボロになったクレイマンを、フォルテは頭を鷲掴みにして持ち上げる。
「散々人を騙し、利用してきたお前が許さんなど言う資格は無い。」
そう言ってクレイマンの記憶の一部を読み取ると、そのままクレイマンを放り投げた。
宙に浮かぶクレイマン…その僅かな間に、分身フォルテが
全ての腕を失い、血飛沫を上げながら仰向けに倒れるクレイマン。
「がっ!……グッハ!」
吐血し、クレイマンの周囲は血の海となった。
そうして、役目を終えたフォルテの分身も消えた。
「ミリムったら、結界があるから大丈夫なのに。」
「それは分かっているのだ。ギィ、結界を解いてくれ。」
「ふん。」
ミリムがギィにそう言うと、ギィは手を翳しながら指を鳴らし結界を解除し拡張した空間を戻した。
フレイが立ち上がりミリムに歩み寄る。
「貴女なら操られないと信じていたけど、ヒヤヒヤしたわよ。でも、私との約束を守ってくれたわね。感謝するわ。」
「ワハハッ!友達だからな!当然なのだ!それよりもあれ、ちゃんと大切に持ってきてくれて居るんだろうな。」
「はいはい。」
ミリムに言われ、フレイが返事をしながら取り出したのは……俺達がミリムの為に作ったドラゴンナックルだった。
「そうそう!これなのだ!」
ミリムは笑顔を浮かべながら、ドラゴンナックルを大事そうに抱きしめた。
……大事にしてくれていたんだな。
それを見ていたフォルテは、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「でもあなた、演技は全然駄目ね。ガッツポーズなんてして、クレイマンに見られていたらどうするつもり?魔力感知で見てたらバレバレよ。」
どうやら円卓がある時に、ミリムは気付かれないようにガッツポーズをしていたようだ。
「しょうがないだろう?リムルとフォルテが私の為に怒っているのが分かって嬉しかったのだ。」
そうミリムが可愛らしく言うのだった。
「………三文芝居だったな。」
「うっ!わ、私は気付いていたぞ………!」
「う、うむ!そんな事だろうと思っていたぞ!」
「やっぱ…………そうだよね。」
レオンの言葉に続くようにラミリス、ダグリュール、ディーノがそう言うが、……この三人は気付いていなかっただろう。
「我は気付いておったぞ。グワハハハハ!」
ヴェルドラは、ダグリュールの肩に腕を乗せながらそう言うのだった。
そんなヴェルドラと違って、アゲンストとヴェルキオンの二人は、姉の存在に気付いて挨拶していた。
姉のヴェルザードは、しっかり自分に挨拶してくれる新しい弟達に嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
「リムル〜!フォルテ〜!私の為に怒ってくれていたのが分かって、嬉しかったのだ!」
ミリムはリムルとフォルテ手を振りながら笑顔でそう言う。
「お前な…………フォルテ?」
リムルがやれやれと思っていると、フォルテがゆっくりとミリムに歩み寄り、ミリムの前に立つ。
「どうしたのだ?」
突然自分の前に立つフォルテにミリムが首を傾げていると、……フォルテがミリムを抱きしめた。
「ちょっ⁉︎」
「あら?」
突然のフォルテの行動にリムルは驚き、フレイも口に手を当てながら驚いた。
「……ミリムなら大丈夫だと思っていた。だがな、心配しなかった訳じゃない。……無事で良かった。」
ミリムが操られている振りをしていると予想はしていたフォルテ。……だが、もし本当に操られていたらと心配しなかった訳ではなかった。
ミリムと久しぶりに戦い、自分がミリムと対等に戦えるくらい強くなったことが嬉しくそのまま戦い続けた。
そして、ようやく操られた振りをやめた事で、フォルテの中にあったミリムを心配する気持ちが抑えきれなくなり、今に至る。
フォルテに抱きしめられているミリムは……頬を赤くして戸惑っていた。
「フォ…フォルテ。心配していてくれて嬉しいのだ。でも、……そろそろ離れて欲しいのだ。」
「…ああ。済まない。」
ミリムに言われ離れるフォルテ。
「ミリム…本当に無事で良かった。」
「うっうむ。あっ…ありがとうなのだ。」
優しい笑顔でそう言うフォルテの姿に、ミリムは目を逸らした。
(……フォルテお前は相変わらずだな。)
(あらあら。こんなミリムの姿を見るのは初めてね。)
フォルテの行動にリムルは呆れてしまい、フレイは楽しそうにミリムを見ていた。………カリオンなどの他の魔王達は、自分達の知るミリムと違う反応に目を丸くしていた。
(…あのミリムがな。)
ギィも笑みを浮かべていた。
そんな雰囲気の中、息絶え絶えのクレイマンが呻きながら口を開く。
「い、いつからだ………?いつから、私を欺いていたのだ………?」
「うむ。苦労したぞ。お前は用心深いからな。だから私は、すっごく頑張ったのた!」
…確かに、ミリムは頑張った。クレイマンの記憶の一部を読み取った際、その記憶の中に人形の振りをしたミリムを容赦なく殴り蹴るクレイマン姿があった。あれだけの事をされて、あのミリムがずっと人形の振りをしていたのは素直に凄いと思った。
フォルテがそう思っていると、カリオンがミリムに声を掛ける。
「あー、ところでミリムよ。一つ聞きたいんだが、良いかな?」
「む?良いぞ。何でも聞くのだ!」
「じゃあ、遠慮なく。お前さん。操られて無かったんだよな?という事は、ノリノリで俺を甚振ってくれたのかな?あぁん?」
カリオンは笑顔だが、血管が浮かび上がりながら、全身から怒りのオーラが滲み出ている。……まぁ無理もない。
「ぬうっ⁉︎そっそれはだな……その…なんと言うか……言うか。え〜と…。」
ミリムはカリオンから目を逸らし、冷や汗を流しながら必死に誤魔化そうとしている。
「いやいや良いんだよ?それは俺が弱かっただけの話だからな。だがよ、俺達の国を吹き飛ばしてくれたのも、全て貴女の意思って事ですよねぇ………?」
カリオンの怒りのオーラが増大する。だが、そんなカリオンに対して、ミリムは頬を膨らませながら開き直って声を上げた。
「む!カリオン!そんな小さな事はどうでも良かろう!」
「小さな事じゃねぇよ!下手したら俺様も死ぬ所だったし、王都が消えたんだぞ⁉︎」
「ええい!うるさい!うるさいのだ!あれは演技に熱中………じゃなくて、クレイマンを騙す為に頑張っただけなのだぞ!なので、悪いのはクレイマンなのだ!」
そう言って全てをクレイマンになすりつけるミリムだった。
「おいおい、クレイマンのせいかよ。…………って、もう良いや。」
もう何を言っても無駄だと悟ったカリオンは涙目となって諦めた。
流石に可哀想だと思い、リムルとフォルテはカリオンに声を掛ける。
「まあまあ、三獣士や国の皆さんも無事だし、カリオンさんの復讐戦って事で頑張っていたんだしさ。」
「悪い事ばかりじゃなかった筈だ。」
「おお、リムル、フォルテ………!すまんな。慰めてくれて。」
リムルとフォルテがそう言うと、カリオンは涙を拭いながら笑顔を見せる。
「だから気にするなって。それに街ならまた作れば良いさ。その為にクレイマンの配下の魔人を労働力として捕まえたんだし。」
「おいおい、マジかよ………⁉︎」
リムルの言葉に驚くカリオン。
「俺達も手伝うさ。前より立派で快適な国を作ろうぜ。」
「金銭面については心配するな。クレイマンの宝物庫から全て頂いたからな。」
二人の言葉を聞いていたカリオンは呆然となり、その場にいたクレイマンは……。
(捕虜…。私の…いやカザリーム様より預かった軍団が。……私は失敗したのだ。)
ようやく自分が全てを失った事を理解したクレイマン。
そして、二人の言葉を聞いて呆然となっていたカリオンは、リムルとフォルテに手を差し出す。
「助かる!リムル、フォルテ…………いや、リムルさん、フォルテさん!今後、獣王国はアンタ達の国と永世友好国として、協力を惜しまないと誓うぜ‼︎」
カリオンの言葉を聞いたリムルとフォルテは、笑顔を見せながらカリオンの手を取った。それを見たミリムは笑った。
「わーはっはっはっ!良かったな、カリオン!これも全て私のおかげなのだぞ?」
「お前はもうちょっと反省してもらいたい物だかな…………‼︎」
「うっ!ふひゅ〜ふひゅ〜!」
カリオンにそう言われ、口笛を吹いて誤魔化すミリム。
そんなミリムにフォルテが口を開く。
「ミリム……。俺が言った事忘れたのか?」
そう言って、ミリムを見つめるフォルテ。その瞳はどこか悲しげだった。
「うっ……。」
そんな目で見られたミリムは、……
そして、カリオンに振り向くと。
「カリオン……。ごめんなさいなのだ。」
そう言って頭を下げるミリム。謝れたカリオンは目を見開き驚いた。
あれだけ自分が怒鳴っても、開き直り反省すらしなかったあのミリムが、フォルテの一言と見つめれた瞬間⋯…素直に誤ったのだから。
それは他の魔王達も同じだった。実は本当に操られているんじゃないかと思ってしまう者も数名いた。
「あっ…いや。まぁなんだ。分かればいいんだよ。分かれば……。」
戸惑いながらも、ミリムの謝罪を受け入れるカリオン。
すると、ギィ達がフォルテ達の元へとやって来る。
「労働力とはな…魔人を生かすなんて、甘い野朗達だと思ったが、中々に面白い事を考える。
ウルティマが興味を持つ訳だな。
ミリムがちゃんと謝罪出来るようになる訳だ。」
「流石はフォルテ様だよね。僕が出るまでもなかったよ。」
そう言いながら、フォルテの隣に擦り寄るウルティマ。
息も絶え絶え…もはや動くことすら叶わないクレイマン。そんなクレイマンに、フレイが話しかける。
「ねぇクレイマン。ミリムが我慢していたから邪魔はしなかったけど、少し怒っていたのよ。私も。」
「弱肉強食がルールとはいえ、お前さんはやり過ぎた。俺達としても、国を荒らされた恨みは晴らさせてもらうぜ。」
フレイに続いて、カリオンもそう言う。
もはやクレイマンに出来ることは何もない。……異空間の夜空を見ながら、クレイマンはラプラスの言っていた事を思い出す。
『魔王ミリムの支配を過信せん方がええ。……せいぜい油断せんようにな。』
(……ああ、ラプラス。君の言う通りだったよ。お前達に信頼され、任された魔王という役目なのに。……どうやら、ここまでのようだ。)
クレイマンの脳裏に走馬灯……ラプラス達との日々が思い浮かぶ。
焚き火の前で寛ぐラプラス、フットマン、ティア…そしてクレイマン。
そんな中、ティアはクレイマンに言う。
『クレイマン。アンタはアタイ達より弱いんだからさ、一人で無茶したら駄目だよ。』
(ああ…ティア。)
『おーほっほっほ!ティアの言う通りです。ちゃんと私達を頼るように。』
(ああ…フットマン。そうだったな。…忘れていたよ。……少しでも近付きたかったのさ。中庸道化連の一員だと、君達に認めてほしかった。)
ラプラス達…仲間を思いながら目を瞑るクレイマン。
そんなクレイマンの脳裏に次に浮かんだのは、あの方…
仮面を付け、東の帝国のとある町に来ていたクレイマン。
そんなクレイマンに声を掛けたのが、…ユウキだった。
『やあ、君がクレイマンだろ?』
『馴れ馴れしく私を呼ぶとは、死にたいのでしょうか?』
『おいおい。そう警戒するなよ。こっちは紹介されて来てるんだからさ。』
『紹介?』
『君の親、魔王ガザリームからね。』
カザリームの紹介と聞き、とある店でクレイマンは警戒しながらも優樹の話を聞いた。
『…………て訳でさ。僕はこの世界を手に入れる。それに協力してくれよ。』
『ふっ。フハハハハハ!面白い。それは依頼ですか?』
『ああ。〝中庸道化連〟への依頼さ。』
『………報酬は?』
『そうだね………。魔王カザリームの復活…………なんてのはどうかな?』
『ふっ。良いでしょう。断る理由はありませんね。』
『やった。そう言ってくれると思ってたよ。』
こうして、優樹の依頼を受け互いのワイングラスをぶつけ、二人はワインを飲んだ。
『僕達で世界を手に入れよう。そして、面白おかしく暮らそうぜ!』
クレイマンにそう笑顔で優樹は言うのだった。
(魔王カザリームの復活は成就したというのに、私の迂闊さが今回の事態を招いた。)
クレイマンの脳裏にカザリームの言葉が思い出される。
『クレイマン。お前は私に似ている。私を真似るのは良いが、決して悪い面を真似ては駄目だぞ。』
(カザリーム様……死ねぬ。)
カザリームの言葉を思い出したクレイマンの目が再び開く。
(私はまだ死ねないのだ。このまま何も成さずに死ぬなど、私が私自身を許せない!私は力に拘り過ぎた。自分に足りない物を埋めねばならないと思っていた。真なる魔王に覚醒などしなくてもいい。今だけでいい。ラプラス、フットマン、ティア、カザリーム様…………!
私に、力を…‼︎)
仲間達の…カザリームへのクレイマンの強い思いが、世界に届いた。
《確認しました。これまでに集めた魂を魔素に変換。……成功しました。受け皿となる肉体を分解。再構築を開始します。》
クレイマンの脳裏に世界の言葉が聞こえた瞬動。クレイマンから凄まじい
「離れろ!」
フォルテの言葉を合図に、皆一斉にクレイマンから離れ距離を取る。
皆が離れた後、立ち上がる事さえ出来ない筈のクレイマンが立ち上がり、切断された腕から
「リムル様、フォルテ様。これは一体……。」
シオンは二人に問う。
「心配ない。予定通りだよ。」
「覚醒したかクレイマン。……本物の魔王に。」
そう。クレイマンは覚醒し、本物の魔王となったのだ。
自分の不甲斐なさを悔やみ、仲間達への思いで覚醒したクレイマン!
…それはまるで、諦めず立ち上がる
この時のクレイマンの思いと姿こそ、…本来のクレイマンなのだろう。
次回!クレイマンとの決着!……クレイマンの運命はいかに……?