転生したらフォルテだった件   作:雷影

92 / 145
お待たせしました。魔王達の宴(ワルプルギス)を終えて戻ったリムル達がディアブロからの報告を聞きます。


88話 悪魔と策謀

九星魔王(エニアグラム)…新たな魔王の時代が始まった。

名称が決まると、ギィは口を開く。

 

「…さて、魔王達の宴(ワルプルギス)もそろそろ終いだが、最後に一つやる事が残ってる。…支配領域の分配だ。

 

皆に地図が配られ、支配領域の分配は始まった。

他の魔王達の支配領域は殆ど変わらないが、リムルとフォルテは正式にジュラの大森林全域が支配領域となった。

ヴェルドラが封印され不可侵となっていたが、全域が俺達の支配領域となるとは…。

 

(新参の魔王に対して破格の待遇だな。……全域となると、また色々忙しくなるな。今までは、トレイニーさん達……樹妖精(ドライアド)の築き上げた地盤である大森林の三割が、俺達が盟主となった支配領域だった。それが、俺達が魔王となった事で、アメルド大河の向こう側……残り七割全てが俺達の支配領域と正式に決まった。…つまり、向こう側の魔物達にとっては一大事だ。森の資源全てが、俺達の物になったのだからな。)

 

拡大した俺達の支配領域だが、俺達よりもミリムの方が圧倒的だった。何故なら、フレイとカリオンが配下となったので、フレイの領土である天翼国フルブロジアとカリオンの領土の獣王国ユーラザニアそして、クレイマンの傀儡国ジスターヴ。その全てがミリムの支配領域となった。

 

三つの領土が一つとなり、魔王達の中で一番広大な支配領域を得たミリム。

もっとも、実際の領地運営はフレイとカリオンの二人がやるのだろうが……。

 

「傀儡国ジスターヴは、東の帝国と隣接しているわ。改めて防衛線を築く必要があるわね。」

 

「ああ。まずクレイマンがどんな管理をしていたか調べねぇと。」

 

早速、これからの領地の運営について話し合うフレイとカリオン。

この二人がいるなら安心だな。

それから、クレイマンの城とその周辺の領土に関しては、俺達に一任される事になった。

 

 

そうして支配領域の分配が終わり、魔王達の宴(ワルプルギス)も終わった。

魔王達の宴(ワルプルギス)が終わると、レオンは立ち上がり去って行った。

 

「要件は済んだ。私は帰る。」

 

…本当ならシズさんの事について色々言ってやりたいが、いずれ招待すると言っているから、ここは大人しく見送るとしよう。

 

そう思いながら、リムルとフォルテはレオンの後ろ姿を見送った。

レオンが去ったそのすぐ後、ルミナスの執事が小声でルミナスに何かを伝えていた。

 

「妾も帰るとしよう。」

 

執事から何かを聞いたルミナスも立ち上がり、そのまま帰ろうとした。

それを見たフォルテは立ち上がり、ルミナスの元に向かう。

 

「……なんじゃ?妾に何かようか。」

 

フォルテが側まで来ると、ルミナスはフォルテに問う。

 

「…これを受け取って欲しい。」

 

そう言って、フォルテは蒸留酒(ブランデー)の入ったボトルを三本取り出し、ルミナスに渡そうと前に出す。

 

「これは…酒のようじゃな。」

 

魔国連邦(テンペスト)で製造したブランデーと言う蒸留酒だ。……ヴェルドラが過去に大変な迷惑をかけた。詫びにもならないだろうが、せめてもの気持ちだ。」

 

フォルテの言葉を聞いたルミナスは、ジッとフォルテの顔を…瞳を見る。

その瞳には、濁りもなくとても澄んだ瞳だった。

 

「…良かろう。その気持ちは受け取っておいてやろう。」

 

ルミナスがそう答えると、執事が蒸留酒(ブランデー)を受け取った。

そして、ルミナスは帰って行った。

 

その後、ギィ主催の食事会が開かれ、ミザリーとレインが皆に料理を運ぶ。

 

「こちら黒毛虎の煮込みシチューでございます。」

 

最初に出されたシチューは肉厚で、フォルテはその肉を口に入れた。

 

(美味い!良く煮込まれた肉が口の中でホロリと崩れるように溶け、シチューと良く絡まりより深い味を引き出している!)

 

シチューの美味さに感動したフォルテ。それはリムルも同じで、フォルテとリムルは電脳之神(デューオ)智慧之王(ラファエル)にレシピの解析を任せた。

 

一応食事のマナーがあるかと思っていたが、どうやら作法など気にしなくていいようだ。何故なら、……ミリムが隣で勢いよく食べているからだ。

すると、ミリムが俺達が持って来た蒸留酒(ブランデー)を飲もうとした時、リムルが声を上げた。

 

「あ、おいミリムそれ酒だぞ!」

 

「わははは!いいではないか、頑張った自分への御褒美なのだ。」

 

「頑張った?」

 

「無表情を保つ為に、こっそり生ピーマンを齧ったりな!」

 

(…そんな事をしていたのか。)

 

確かに、ミリムは生野菜を見る度に表情を無になる事があった。

 

ミリムの言葉を聞いたダグリュールがミリムに問う。

 

「操られたフリはもっと早くやめても良かったのではないか?結局、クレイマンは黒幕の事は喋らなかったからな。」

 

「うむ!だが、せっかくリムルやフォルテと戦えるチャンスだったのでな。」

 

ミリムはそう言いなが、可愛らしい表情を浮かべた。

 

「確かに、ミリムとの本気の戦いは心が踊った。」

 

フォルテはミリムとの戦いを思い出し、笑みを浮かべていた。

 

「おい!ミリムにはまだ早い!」

 

リムルがミリムから蒸留酒(ブランデー)を取り上げる!

 

「うわ!酷いのだ!うぐっ!こう見えて私は太古の魔王なのだぞ!」

 

「リムル…大人気ないぞ。」

 

フォルテが冷たい目でリムルを見る。

 

「いや…でもな。飲み過ぎて暴れられたら大変だし……。」

 

「フレイとカリオンが見てくれているだろう?意地悪はやめろ。」

 

「……はい。」

 

フォルテに叱られ、リムルは蒸留酒(ブランデー)をミリムに返した。

 

「ありがとうなのだフォルテ!」

 

フォルテに礼を言いながら、ミリムは嬉しそうに蒸留酒(ブランデー)を飲む。

すると、同じように蒸留酒(ブランデー)を飲んでいたギィが口を開いた。

 

「本当に旨い蒸留酒(ブランデー)だな。原料は獣王国(ユーラザニア)のブドウか?」

 

「流石だな。その通りだ。」

 

「果実の輸入で、最近やっと安定して造れるようになったんだよ。」

 

「では、もう一本頂こう!クワ〜ハッハッハッハッハッハッハッ!」

 

「兄者…此処は遠慮すべきだぞ。」

 

魔国連邦(テンペスト)に戻れば飲めるのだから。」

 

遠慮なく飲むヴェルドラに、アゲンストとヴェルキオンはそう言うのだった。

そんな三人の姿を、ヴェルザードは微笑ましく見ていた。

 

「うわ…これキッツ…ゲホッ…エホッ……。」

 

「へへっ。情けないわね!見てなさいよ!てっ!」

 

ディーノが咽せるのを見て、ラミリスは目の前で一気飲みして見せる。

 

「もう一杯!」

 

(……飲み過ぎないか心配だな。)

 

「本当に良い味だ。…バレンタインも気に入るだろうな。」

 

(ルミナスか……またいずれゆっくりと話を聞きたいな。)

 

ダグリュールの言葉に、フォルテはルミナスについて思い返していた。

 

《分析が完了した。コース料理の再現がいつでも可能となった。》

 

世界最高峰のレシピも手に入れ、魔王達の宴(ワルプルギス)は無事に終わった。

 

リムルと共に魔国連邦(テンペスト)に戻るので、ラミリスに声をかけようとしたが……。

 

「ラミリス様お気を確かに!」

 

「リムル様とフォルテ様が帰ってしまいますよ⁉︎移住の件をもう一度……。」

 

「アヘっアハハ……トレイニーちゃんが3人に見える〜。」

 

やはりラミリスは飲み過ぎて酔い潰れていた。ラミリスを心配するトレイニーさんとベレッタ。

 

フォルテはベレッタに話しかける。

 

「ベレッタ。ラミリスがこんな状態だし、さっき言った通り移住の件は今は保留で頼む。決まったら必ず知らせる。」

 

「フォルテ様。…分かりました。」

 

こうして、トレイニーさんとベレッタは酔い潰れたラミリスを連れて精霊の住処へと帰って行き、俺達も魔国連邦(テンペスト)に帰還した。

 

 

 

魔国連邦(テンペスト)に帰還すると、街の住民達が一斉に跪いて俺達の為に道を作った。

 

「何だ何だ?皆いつの間に、こんな事練習したんだ?」

 

「これは予想外だったな。」

 

「リ〜ム〜ル〜さ〜ま〜!フォ〜ル〜テ〜さ〜ま〜!」

 

リムルとフォルテが驚いていると、皆が作った道から

リグルドが声を上げながら走って来た。

そして、俺達の前で跪く。

 

「お帰りなさいませ!リムル様!フォルテ様!」

 

「この度は九星魔王(エニアグラム)襲名の義、誠におめでとう御座います。」

 

「あぁ、ありがとう…。」

 

そう言われ思わず返事するリムルだが、その声の主は本来この場にいない筈の者だった。

 

「何よりも、良くぞご無事でお戻り下さいました‼︎」

 

「…って、ディアブロ⁉︎お前何で此処にいるの!」

 

そう、ファルムスに向かわせた筈のディアブロがいたのだ。

 

「まあまあ。リムル様とフォルテ様もお疲れでしょうし、まずはゆっくりと英気を養っていただいて。」

 

リグルドにそう言われ、俺達は議事堂へと向かった。

途中でスペルに会ってラミリスの事を説明し、スペルも

ラミリスの元と帰って行った。

 

 

 

執務室でゆっくり紅茶を飲むリムル、フォルテ、紫苑、

ウルティマ、シズさん。

ヴェルドラ達は三人揃って漫画を読んでいる。

 

コンコン。

 

そんな中、執務室のドアがノックされた。

 

「どうぞ。」

 

「失礼します。」

 

ドアを開けて入って来たのは、お盆を持ったハルナとシンシヤだった。

二人は、お盆からある物を皆の前に置いていく。

 

それは緑色のプリンで、真上にはスライムの姿のリムルが描かれていた。

 

「おお、抹茶プリンか。」

 

「見事な出来映えだな。」

 

「はい!朱菜様にはまだまだ及びませんが、私も腕を上げたんですよ。」

 

「私も頑張って作ったんだよパパ。」

 

「そうか。頑張ったなシンシヤ。」

 

リムルに褒められ笑顔を浮かべるシンシヤ。

 

「ほう?我らの分もあるのだろうな?」

 

「勿論ですわ、ヴェルドラ様。」

 

ヴェルドラがそう言うとハルナは笑顔で返答し、シンシヤがヴェルドラ達の前に抹茶プリンを置く。

すると、ディアブロは自分の分を取るとヴェルドラの前に置いた。

 

「ヴェルドラ様。これは約束の分、一回目です。」

 

「クワ〜ハッハッハッハッ!ディアブロよ。貴様は中々に義理堅い男の様だ。」

 

「ディアブロ、お前は食べないのか?」

 

「ええ。情報の対価として、お支払いしたのですから、気遣いなく。」

 

「情報………そう言う事か。」

 

フォルテとリムルは、ヴェルドラが情報を提供する代わりに、ディアブロの分のお菓子を貰う様に話した事に気付いた。

 

二人の視線に気付いたヴェルドラは、目を逸らしながら吹けていない口笛を吹く。

 

魔王達の宴(ワルプルギス)で決めた事を何故ディアブロがもう知っていたかと思えば……。」

 

「何回分で情報を売った?一回?二回?三回?」

 

そうリムルがヴォルドラに聞くと、三回目で反応した。

三回分で情報を売ったのか。

 

「はぁ…………ヴェルドラ、お前ってさ、別に食事する必要無いよね?」

 

「ば、馬鹿な事を言うで無いぞ、リムルよ!食べる必要があるとか無いとか言う問題ではない!我が食べたいから食べるのだ!そもそも、お前達だって食事の必要は無いであろうが!」

 

「うっ…………。」

 

「確かに、そうだな。寧ろ、リムルの方がよく食べているな。それで、ゴブイチやペコがいつも大変だからなぁ。」

 

「うぐぅ!」

 

フォルテの言葉に胸を押さえるリムル。

 

スライムに転生したリムルの数少ない楽しみの一つが食事だから仕方ないが、フードファイターの様にもの凄く食べまくることがある。

その姿を見て、フォルテは思った。

 

……まさに暴食だな。

 

「それに、ヴェルドラが食事を楽しむ様になったのは良かった方だ。色々学んでいる証拠だな。」

 

「そうであろ!そうであろ‼︎フォルテよ、やはりお主は分かっておるな!」

 

フォルテに褒められたヴェルドラは、上機嫌で抹茶プリンを食べていく。

 

(…ヴェルドラが大人しくしてくれるなら、プリンの一つや二つは安いものだ。)

 

フォルテがそう思っている中、アゲンストとヴェルキオンも頷きながら美味しそうに抹茶プリンを食べていた。

すると、ディアブロが紫苑達に向かって口を開いた。

 

「ちゃんとリムル様とフォルテ様の護衛を務めたのでしょうね?」

 

「当然です!私が居れば貴方など必要無いのだと証明されました。それより、貴方こそリムル様とフォルテ様から与えられた任務はどうなっているのです?」

 

「紫苑の言う通りだね。大事な任務の筈なのに、此処にいて大丈夫なのかな?」

 

紫苑の言葉に続くように、ウルティマが意地悪な笑みを浮かべながらディアブロに言う。

 

「クフフフフフ……………それは抜かりありません。」

 

「それにしても、タイミング良く帰ってくるとはな。」

 

リムルがそう言うと、ディアブロがある事実を口にした。

 

「雑務の最中でしたが、ヴェルドラ様より戻って来いと連絡があったのです。」

 

ディアブロがそう言うと、ヴェルドラはまずい!と反応し冷や汗を流した。

 

「っ⁉︎わ、我は用事を思い出したぞ…………。」

 

逃げようと立ち上がろうとするヴェルドラだが、左右に座るアゲンストとヴェルキオンが肩を押さえてヴェルドラを捕まえる。

 

「兄者……ここは素直に謝るべきであろう。」

 

「うむ。ヴェルキオンの言う通りだな。」

 

「お、お前達⁉︎」

 

「二人の言う通りだよ。なあ、ヴェルドラ君。」

リムルが笑顔でそう言う。……笑顔なのだが、ヴェルドラは恐怖を感じていた。

 

「まっ待て、話せば分かる…………。」

 

「言い訳無用だヴェルドラ。」

 

フォルテが、ドスの利いた声でヴェルドラにそう言う。

 

「人の仕事の邪魔をするとはな。もしディアブロがしくじったらどう責任を取るつもりだ?自分の影響力の大きさを考えろ!」

 

ヴェルドラに迫り圧を掛けながら言うフォルテ。そんなフォルテの圧に、冷や汗を流しながら怯えるヴェルドラ。

 

だが、ディアブロではなく他の者であったら間違いなく混乱していただろう。

 

「フォルテの言う通りだ!プリン没収!」

 

怒りながらプリンを取り上げるリムル。

 

「ハルナさん、ヴェルドラのおやつはしばらく抜きな。」

 

「なっ!酷い!酷すぎるぞリムル、フォルテよ‼︎」

 

ヴェルドラの悲痛な声が執務室に響くのだった。

 

「な〜んもやる気しない……。」

 

リムルにおやつ抜きを宣告され、すっかり落ち込んでしまったヴェルドラはソファの上で蹲ってしまった。

 

「「兄者……。」」

 

そんなヴェルドラの姿に、アゲンストとヴェルキオンは溜め息を吐くのだった。……これじゃあ二人の方が兄だな。

 

「それで、お前はこんな所で油を売ってて良いのか?ファルムスの方は大丈夫なのか?」

 

「ふん!茶坊主にはお茶を淹れる仕事がお似合いです。ここはやはり、私が出向きましょう。」

 

(紫苑。……お前が出たら事態が悪化する。)

 

すぐ手が出る紫苑が出たら大変な事態になると、フォルテは心の中で思った。

 

「その必要はありません。内通者を使い、全て計画通り。順調に進んでおります。」

 

「お、おう……。そうなのか。」

 

「はい。まず最初に、あの者達の姿を元に戻しました。

肉塊になったままでは、不便でしたので。」

 

「確かに。……あれは悲惨な姿だったな。」

 

体がぐちゃぐちゃにされているのに血を流さずに生きている状態。

……何故そんな姿になったかと言うと、紫苑のスキル料理人(サバクモノ)の効果だ。法則を捻じ曲げ、自分が望んだ結果にする……普通に考えるとやはりとんでもないスキルだ。

 

 

 

リムルとフォルテがクレイマンとの戦いを始めた頃。

 

ファルムス王国に向かって移動中の馬車の中で、ディアブロはエドマリス王達を元の姿に戻そうと回復魔法を試していた。

 

「やれやれ………。紫苑殿にも困ったものですね。厄介な………素直に回復魔法が通用しないではないですか。」

 

「うぅ……。」

 

そう言いながら肉塊となり苦しむレイヒムの頭を掴んで持ち上げるディアブロ。

 

「どんなスキルを使えば、こうまで法則を捻じ曲げる事が出来るやら……。」

 

そう言ってレイヒムの頭を離すディアブロ。

 

「ぐあっ!うぅ……。」

 

元に戻れないと知り涙するレイヒム。

 

「少々荒療治になります。耐えて下さいね。」

 

そう言って手に魔力を集束させるディアブロ。

そして荒療治が始まった。

 

「ぐあ〜‼︎ぐお〜‼︎」

 

馬車の外にまで響くレイヒムの叫び声。それを隣の馬車から聞いたヨウム達は不安になっていた。

 

「…あっちの馬車の捕虜三人は、無事にファルムスに辿り着けるかな…?」

 

「既に無事とは言い難いけどな。」

 

エドマリス王達の惨状を知っているヨウム達がそう話していると、同じ場所に乗っているもう一人の捕虜……そう、フォルテが戦場で情けを掛けて救ったファルムス兵の男が恐る恐るヨウムに問い掛ける。

 

「あっあの……俺はどうすればいいのでしょうか?」

 

「ん?そう身構える必要はねぇよ。あんたは戦場で奇跡的に助かってフォルテの旦那が助けたって話を合わせればいい。まぁ実際、フォルテの旦那が救ったわけだしな。」

 

「大切な家族がいるんだろう。フォルテ様はその家族の為に生きろって言ってたぜ。」

 

ヨウムとグルーシスの言葉を聞いた兵の男は涙した。

 

「……はい。ありがとうございます。」

 

泣く男の姿を、ヨウム達は優しい笑みを浮かべながら見るのだった。

 

 

そして、ディアブロの荒療治を受けていたレイヒムは、ようやく元の姿に戻ることが出来た。

 

「あ…。あああ……感謝します!感謝しますぞ!ディアブロ殿〜‼︎」

 

「うるさいですゴミが。」

 

元に戻れた事に歓喜し声を上げるレイヒム。そんなレイヒムに向かって、ディアブロは布を投げつけるのだった。

 

「さて次は…。」

 

ディアブロが次に誰を戻そうかと思った時だった。肉塊となりながらも、ラーゼンが必死に声を上げた。

 

「儂よりも王を…王を元の姿に……。」

 

自分よりも、王を元の姿に戻すよう必死に頼むラーゼン。……王への忠誠心は本物のようだ。

 

「…ああ。そういえば捕虜の一人は貴方でしたね。ラーメン……ではなくラーゼンでしたっけ。」

 

ディアブロはラーゼンの事を思い出し、口を開く。

 

「もちろん理解しているのでしょうね?私に願い事をするその代償が高くつくと言うことを。」

 

「あ…いや儂は……。」

 

ディアブロにそう言われ、口淀むラーゼン。

 

(そうだ。瞳以外殆ど人間に見えても、この男は上位魔将(アークデーモン)…いや、それ以上の存在。七色の悪魔の一人原初の黒(ノワール)…。

 

……もうディアブロが上位魔将(アークデーモン)でなく悪魔公(デーモンロード)に進化している事を、ラーゼンはまだ知らない。

 

(だが…げに恐ろしきはこの悪魔が仕える存在がいるという事実。しかも、もう一人の原初…原初の紫(ヴィオレ)までもが仕えている存在までいる。)

 

ラーゼンは思い出す。

ウルティマの数々の拷問を受けた後、牢に戻されてからしばらくたった頃。

紫苑と共に現れたリムルとフォルテの姿を改めて見た。

 

「リムル様、フォルテ様。」

 

「紫苑。」

 

「やりすぎるなよ。」

 

そう言って立ち去る二人の姿を見てラーゼンを理解した。

 

(儚げでありながら、秘めたる力は想像を絶するスライムに、子供のような見たからは想像出来ぬ冷酷な眼差しと圧倒的な力を合わせ持つ魔人……二人の魔王。あの瞬間理解した。ファルムス王国は、眠れる獅子と竜を目覚めさせてしまったのだ。)

 

そう理解するのが余りにも遅すぎた。そして、ラーゼンは紫苑によって肉塊へと斬り刻まれたのだった。

 

 

 

そして現在。

ディアブロによって元の姿へと戻ったラーゼンは、ディアブロに頭を下げた。

 

「儂を………いえ、私を貴方様の下僕の末席に加えて下さい。今後の身命の全てを捧げます。ですからどうか…………エドマリス王に御慈悲を……………。」

 

ラーゼンの言葉を聞いたディアブロは……。

 

「………まあ良いでしょう。少々安い対価ですが、使い道はありそうです。後でちゃんと元に戻してあげますよ。ただし………リムル様とフォルテ様に対する不敬は二度と見逃しません。今後もしも叛意を見せたなら、王の命どころか、ファルムスの地から生命の息吹が消え失せる事になるでしょう。」

 

「無論です。私の忠誠は貴方様の為に。」

 

「わっ、私も!私は西方聖教会の大司教です!きっとお役に立てますとも!」

 

ラーゼンがそう言うと、レイヒムも必死に頭を下げてディアブロに下った。

ディアブロに下る二人の姿……いや、ラーゼンを見たエドマリス王。

 

(ああ………。長年王家に仕えた宮廷魔術師は、ついにファルムス王国を見限ったのだ。)

 

 

そう思ったエドマリス王の脳裏に、ある光景が思い浮かぶ。それは、紫苑とリムル…そしてフォルテの姿と言葉だ。

 

「リムル様とフォルテ様の綺麗な手を、お前は人間の血で汚させた!」

 

「釈明するのなら、俺達より先にすべき相手がいるだろう。ファルムス王国の国民は、これから苦労するぞ。」

 

「だが、これは俺達とあんたが背負っていく業だからな。」

 

(ラーゼンの決断は、きっと正しいのだろう。)

 

怒らせていけなかった二人の魔王。……その二人が背に背負っているものがどれほど大きいのか、……エドマリス王は同じ〝王〟として知ったのだ。

 

「余は………ファルムス最後の王として………ディアブロ殿の望むように………協力すると………約束………しようぞ。」

 

エドマリス王の言葉を聞いたディアブロは、笑みを浮かべる。

 

「………フッご安心を。私に従うならば、悪いようにはしませんよ。」

 

この瞬間。ディアブロのユニークスキル誘惑者(オトスモノ)によって、三人は心身ともにディアブロに隷属した。

 

(クッフフフ……。私が得たユニークスキル誘惑者(オトスモノ)があれば、裏切りを防ぐ事など造作もありません。)

 

誘惑者(オトスモノ)の権能は、思念支配・魅力・勧誘の三つで、屈服した対象を精神的に拘束し、自由意志は術者の制限を受けるのだ。

 

エドマリス王達が、ディアブロに隷属した丁度そのタイミングだった。

ヨウムがエドマリス王達を心配し、ディアブロに声を掛けた。

 

「おお〜い、ディアブロさん。捕虜達生きてるよな?」

 

「問題ありませんよ、ヨウム殿。直にファルムスの領内です。国盗りの様な些事、さっさと済ませてしまいましょう。」

 

「お……おう。些事か……。」

 

国盗りを些事と言ってしまうディアブロに、ヨウムは苦笑いを浮かべるのだった。

 

「リムル様とフォルテ様が魔王達の宴(ワルプルギス)からお戻りになられる前に、私もお出迎えの準備をしたいですからね。クフフフフ……。」

 

その後、ファルムス王国に到着。

 

ファルムスの王城…謁見の間には貴族や大臣達が集まっていた。

 

「な…何をしておる!誰ぞ早く神官を連れてまいれ!それから回復薬を!」

 

一人の貴族がそう声を上げる。

 

「これは…魔物の国の者にやられたのか…?」

 

周囲の貴族や大臣達は騒つく。何故なら、……玉座の上に居たのは木箱に入った異形の肉塊となったエドマリス王の姿だったのだから。

 

「一体何があった⁉︎王をお連れした省吾は何処にいる!王に何があったか説明させるべきであろうが‼︎」

 

「落ち着かれよカルロス卿。喚いても事態は変わらん…!」

 

変わり果てた王の姿に、王宮の貴族や大臣達は大騒ぎとなった。

そして、神官が駆けつけエドマリス王の治療を開始したが……。

 

「だ…駄目です。回復魔法も効果がありません!」

 

「馬鹿な!」

 

当然、回復薬も回復魔法も一切効果は無い。

 

「そもそも…ご存命なのか?どう見てもその………。」

 

カルロス卿がそう思うのも無理はない。骨や内臓がぐちゃぐちゃに混ざった肉塊の姿なのだから。

 

「はっはい、意識もおありです。それどころか、……切り傷一つありません。まるで……まるで最初からこのお姿であったかのようです……。」

 

神官の言葉に、貴族と大臣達は再びざわつく。

 

「通常の回復魔法は効かぬ。身体を構成する法則が書き換えられておるのだ。」

 

そこに、タイミングを見計らいラーゼンが皆の前に出る。

 

「おお…そなたは無事のようだな。田口省吾(ショウゴ・タグチ)よ。」

 

「痛み入ります。ミュラー殿。」

 

「衛兵。レイヒム殿が英雄ヨウムを連れ完全回復薬(フルポーション)を持ち帰る手筈となっている。直、到着するであろう。門番に話を通しておくように。」

 

「え?あ……。」

 

ラーゼンの言葉に戸惑う衛兵。無理もない。見た目は省吾で、この場にいる貴族や大臣達は、省吾の身体をラーゼンが乗っ取っている事を知らないのだから。

 

「ショウゴ貴様…!事情を知っているなら早く説明せよ!魔物の国への遠征で一体何があった⁉︎ラーゼン殿は何処におられる⁉︎貴様が無事ならあの方も生きておろう!」

 

「国王軍はどうなったのじゃ?」

 

カルロス卿と一人の大臣がラーゼンに問う。

 

「落ち着け。儂はラーゼンじゃ。王をお守りして、英雄殿と協力して逃げ延びて来たのじゃよ。」

 

「何?貴様……いや貴殿はショウゴではないのか?」

 

「では、ファルムス軍は敗北したのか?」

 

「魔物共の討伐に失敗したからと………おめおめと逃げ帰って来ただけではあるまいな?」

 

「そもそも、貴公は本当にラーゼン殿か?」

 

ラーゼンの言葉に周囲の者達がざわつく中、ミュラー侯爵が口を開く。

 

「鎮まれ皆の衆。まずはラーゼン殿の話を聞こうではないか。」

 

ミュラー侯爵の言葉に、皆落ち着きを取り戻した。そして、ラーゼンの話を聞く事に……。

 

 

 

「え、待った。」

 

ディアブロの話を聞いていたリムルが待ったをかけた。

 

「省吾って異世界人の体には、ラーゼンの精神が入っていたよね?」

 

「左様です。」

 

「そいつは元々ファルムスの伝説的な魔導師(ウィザード)なんだろ?お前の指示に従って動いているのか?」

 

「ええ。王宮魔導師長の地位は重鎮共を説得させるのにうってつけでしたので、使役することにしたのです。本人の申し出もありましたしね。」

 

「そうか。自分からディアブロに下ったか。……賢明な判断だな。(……まぁ原初を二人を相手にして捕まり、ウルティマの拷問も受けたから当然か…。)」

 

 

話は戻り、そのラーゼンから事の顛末を聞き終えた貴族達は、その話に驚愕した。

 

 

暴風竜の復活だとぉ⁉︎

 

 

「然り。我が軍と魔物達との戦いが、彼の地に眠る龍を蘇らせてしまったのじゃ。」

 

「あり得ん!彼の竜は消滅したと西方聖教会が発表した筈ではないか!」

 

「そ、そうだ!しかも全軍行方不明?敗北の言い訳にしては、荒唐無稽ですぞ‼︎」

 

「(…まぁ、予想通りの反応よな。)確かに消滅していたのです。されど、竜種は滅びませぬ。世界の何処かで新たに誕生するのですじゃ。ただし、この様に短い期間で、まして近場で復活するなど想定外でしたがのう。」

 

「しかし……しかし!……では全軍が行方不明というのはどういう事です?殺されたでもなく、潰走したでもなく行方不明とは……。」

 

「先程申した通り、我が軍と魔物達との戦いが彼の竜を蘇らせた。彼らは皆生け贄……苦痛も恐怖もなく、何が起きたかも分からぬ間に暴風竜に喰われてしまったのです。」

 

「そん…な。うわあああああ!

 

ラーゼンの話を聞いた大臣の一人が、その場に崩れ落ちながら泣き叫んだ。

 

(初陣の我が子でも亡くしたか。気の毒ではあるが、まだマシだ。…この作り話は、事実よりか幾分優しいのだから。)

 

ラーゼンはそう思いながら思い出す。リムルによって撃ち抜かれる者達や、フォルテの毒の霧によって悶え苦しみながら死んでいった者達の姿を。

 

「更にじゃ…我が軍を糧に蘇った暴風竜によって事態は更に悪化したのじゃ。」

 

「まだあるのか⁉︎」

 

「我が軍と魔物達を糧にした暴風竜は、己が分身と呼べる新たな竜種を2体誕生させたのです。」

 

「新たな竜種⁉︎」

 

大臣の1人が驚愕し声を上げる。

 

「左様じゃ。新たに生まれた竜種と暴風竜によって、……戦場は真の地獄と化した。」

 

ラーゼンの話を聞いた皆は顔を青ざめた。無理もない。……暴風竜だけでなく、新たな竜種が2体もこの世に誕生したと聞いたのだから。

 

「しかし、ならば何故ラーゼン殿は助かったのです?何か理由がおありなのでしょう?」

 

ミュラー侯爵がラーゼンにそう問いかける。

すると、謁見の間の扉が突如開かれる。

 

「「「「「ん?」」」」」

 

「遅くなってすまんな。なんとか〝あの方達〟……リムルさんとフォルテさんの説得に成功したぜ。王を元に戻す薬も貰ってきた。」

 

そう言って入って来たのはヨウム達だった。

ヨウムの後ろに立つディアブロが、念話でラーゼンに状況を確認する。

 

『貴族共が話を聞く姿勢は整いましたか?』

 

『完了しております。今ならばヨウムと私達の話に耳を傾けるでしょう。』

 

ラーゼンはそう言った直後、何も考えていない愚かなカルロス卿がヨウムに向かって声を上げた。

 

「何じゃ貴様は!平民風情が無礼であろう‼︎此処は下賤な輩が来るような場所ではないぞ!」

 

それを聞いたラーゼンは慌ててカルロス卿を止める。

 

「お待ち下さいカルロス卿‼︎その者達こそ、我らを救ってくれた者。」

 

「ラーゼン殿達を助けた………ですと?」

 

「一体、どういう事ですかな?」

 

「それは、私からお答えしましょう。」

 

ラーゼンの言葉に大臣達が訝しんでいると、レイヒムが出て来て皆の前で口を開く。

 

「レイヒム殿!」

 

「そなたも無事であったか…!」

 

「あの戦場で両軍がぶつかり、激しい戦闘が行われました。我らは数では上回っていましたが、地の利のある魔物共に苦戦し、多大な犠牲が出たのです。その混沌とした気配が、復活の鍵となったのでしょう。突如出現したヴェルドラによって敵味方関係なく蹂躙され、その血肉と魂を糧にヴェルドラは己が存在から新たな竜種を2体誕生させてしまったのです。」

 

レイヒムの口から語られる絶望的な状況の話に、カルロス卿は息を呑む。

 

「暴風竜と新たな竜種2体を前に、我らは死を覚悟したのです。」

 

「ですがその時!立ち塞がった者達がおりましたのじゃ!」

 

ラーゼンの言葉に、背後から見ているディアブロが笑顔で何度も頷く。

 

「それこそが、魔物達の主人であったリムル様とフォルテ様なのです。」

 

「儂もレイヒム殿も、死を覚悟しておった。しかし、リムル様がヴェルドラを説得して下さり、フォルテ様が新たな竜種2体を抑え込んでくださったのですじゃ。」

 

「フフっ……。」

 

その言葉に、ディアブロは満足そうな笑みを浮かべていた。

 

「会話が成り立ったのですか⁉︎」

 

「いや、その前に竜種を…2体も抑え込んだ⁉︎」

 

「そもそも、邪竜ヴェルドラの濃密な魔素を浴びると、大半の生物は死に絶えるのだ!」

 

「それをどうやって……?」

 

大臣達の至極当然な疑問に、レイヒムが口を開く。

 

「皆さんもご存知でしょう。魔物共の主人であるリムル様とフォルテ様は、ジュラの大森林の盟主であると。」

 

「それは………勝手に自称しているだけではないのか?」

 

大臣の一人がそう言った瞬間、笑顔だったディアブロが真顔となった。

それだけで、ディアブロの周囲の空気が変わった。

 

それを感じ取ったラーゼンとレイヒムは冷や汗を流した。

 

「自称などと……とんでもない!魔物の街をこの目で見ましたが、まさに国の首都と呼ぶに相応しい物でした!かのお方達は、ジュラの大森林の管理者である樹妖精(ドライアド)を従えていたのです!リムル様は、この樹妖精(ドライアド)を通じてヴェルドラと交渉を行い、フォルテ様は力を示し、新たな竜種に己が力を認めさせたのです。」

 

樹妖精(ドライアド)………ヴェルドラが眠る地を守る力ある魔物ではないか。」

 

「その様な者まで従えているなんて…………。」

 

「それだけではない!新たに誕生したばかりとはいえ、竜種2体に力を認められるなどとんでもないぞ‼︎」

 

「邪竜との交渉が可能であり、尚且つその力を認められる存在となると、そのリムルとフォルテとやらが我らと敵対しているというのは非常にまずい………。」

 

「くっ!」

 

ラーゼンの話を聞いた大臣達は、自分達がとんでもない相手を敵にしていた事を理解した。

だが、そんな中でも分からない愚かなカルロス卿は忌々しい表情を浮かべていた。

 

すると、ヨウムが口を開く。

 

「ああ、皆さん。その点については安心して欲しい。俺はよ、豚頭帝(オークロード)を討伐する際に、リムルさんとフォルテの旦那に協力した。リムルさんとフォルテの旦那は案外気さくな方で、二人は人間との協調を望んでいるんだ。」

 

「おお!ではその方が間に立って、我等の要望を伝えるのだ。内容については追って沙汰する故、別室で控えておれ。」

 

ヨウムの言葉を聞いて何を勘違いしたのか、上から目線でそう言い放つカルロス卿。

 

「おいおい、待てって。普段ならあの人達も気さくだけどよ、今は違うぜ。その理由はあんた方が良く知ってるだろう?」

 

「何だと?」

 

ヨウムがそう言うと、彼を睨むカルロス卿。

 

「まず、わかってねぇみたいだから教えてやる。ファルムスは今無茶苦茶ピンチだ。暴風竜ヴェルドラ。アンタらは五万の軍隊と引き換えに天災級(カタストロフ)を目覚めさせた。」

 

ヨウムの言葉に、自分達の置かれている立場を理解した者達は一斉に顔を青ざめる。

 

「ファルムスはジュラの大森林と隣接してる。まず無事に済むわけはねぇよな。そして、リムルさんとフォルテの旦那の国に戦争を吹っかけただろう?あれで仲間に犠牲が出たもんだから、二人共にスゲェ激怒しちまってるんだわ。」

 

ヨウムの言っている事が分かる者達は黙って話を聞いていたが、……どうしても分からない愚か者がいた。

 

「何を言うか!平民風情が!リムルとフォルテとやらに顔が効くなら都合がいい!取り成すのも英雄の仕事であろう。何とかせよ!」

 

そう……カルロス卿だ。カルロス卿の空気を読まない上から目線の傲慢な態度と発言によって、ディアブロから禍々しい妖気(オーラ)が漏れ出し、近くにいたミュウランとロンメルは顔を青くして震えている。

 

それを見たラーゼンはまずいとカルロス卿に向かって声を上げる。

 

「うっ、カルロス卿!控えるのじゃ!」

 

ヨウムが事態を理解していないカルロス卿を宥めながら話を続ける。

 

「いいか、まず俺の話を聞け。使者も送らず、宣戦布告もせず、異世界人を好き勝手暴れさせたらしいな?俺は戦争の仲裁に出向いたんだが、それを聞かされて唖然としたぜ。だがよ、俺もこのファルムス王国で生まれた者だ。祖国を滅ぼされるのは忍びないし、何とか交渉してもらえないか頼み込んだんだよ。」

 

ヨウムがそう説明するも、全く理解しない愚かなカルロス卿は、上から目線の態度を崩さずヨウムに向かって怒鳴り散らす。

 

「国家の大義を貴様如き平民が語るでないわ‼︎よいか!儂は絶対に認め…!」

 

カルロス卿の愚かさに、ディアブロは爆発寸前、その凄まじい妖気(オーラ)にミュウランは右往左往し、ラーゼンはこれ以上は危険と判断し、カルロス卿に向かって魔法を放った。

 

「控えろと言っておろう!この馬鹿乗れがぁ‼︎」

 

「ヒィエエエエエエ〜!」

 

「事情を知らぬ者が、出しゃばるでないわ‼︎」

 

ラーゼンの魔法を受けたカルロス卿は、悲鳴を上げながら氷漬けとなった。

 

(ナイスですぞラーゼン殿‼︎)

 

それを見たレイヒムは心の中でラーゼンに感謝し、ディアブロは怒りを鎮めミュウラン達も安堵した。

 

「はぁ…良いか皆の者。今のヨウムの言葉は真実じゃ。我等は敗北し、生き残ったのは儂とレイヒム殿に重傷を負っていた兵1人。そして、暴風竜の魔素にあてられかような姿になられたエドマリス王のみ。我らはヨウム殿の口添えで、解放されたのじゃ。」

 

ラーゼンがそう言い終えると、大臣の1人が口を開く。

 

「大国ファルムスが、魔物に屈するだと………!」

 

「しかし、どうしようもあるまい。卿は暴風竜と新たな竜種を敵に回すつもりかね?」

 

「いや、それは……。」

 

魔物に屈するなどやはり認めたくないが、あの暴風竜と新たな竜種を敵に回したくない故にこれ以上何も言う事は出来なかった。

 

「提案を受け入れようではないか。のう、皆の者。」

 

ミュラー侯爵の言葉に、周囲の者達は頷いた。

 

「クフフフフ、賢明な判断です。それでは約束通り、この国の王を解放しましょう。」

 

すると、今までヨウム達の背後にいた筈のディアブロが、エドマリス王の前に立っていた。

 

「な、何者だ!いつの間に王の側へ⁉︎」

 

それに気付いた近衛兵達が、一斉にディアブロに向かって槍を構える

 

「これは失礼。ガラ空きだったもので。私の名はディアブロ。偉大なる我が王達、リムル様とフォルテ様の忠実な執事(バトラー)ですよ。」

 

そう言って、ディアブロはエドマリス王に完全回復薬(フルポーション)を掛ける。すると、エドマリス王は元の姿へと戻っていく。

 

「へ、陛下!」

 

「その薬は…………⁉︎」

 

「我が国の特産品の完全回復薬(フルポーション)です。極上の回復薬ですよ。」

 

しれっと宣伝まで熟すディアブロ。そして、元の姿に戻ったエドマリス王に布を被せると、ディアブロは口を開く。

 

「ご気分はいかがですか?エドマリス王。」 

 

「あ、ああ………助かった。感謝する。」

 

「さて、ファルムスの王よ。我らの主達より、伝言がある。」

 

「………聞こう、魔物の国の使者殿。」

 

エドマリス王がそう答えると、ディアブロは羊皮紙を取り出し皆の前で読み上げる。

 

「では、申し上げます。“これより一週間後、両国代表による和睦協定を行いたい”。“講和条件の締結に先立ち、汝らに選択肢を与えよう”。」

 

「選択肢……⁉︎」

 

「“一つ目は、王が退位し、戦争賠償を行う事”。“二つ目は、魔国連邦(テンペスト)の軍門に下り、属国となる事”。“三つ目は、戦争の継続”。」

 

ディアブロが読み上げた条件に、一人の大臣が呟く。

 

「無茶だ………⁉︎」

 

「それでは一週間後までに、答えを用意しておいて下さい。」

 

そう言って立ち去ろとするディアブロに、大臣の一人が声を上げる。

 

「ま、待って欲しい!それではあまりにも時間が………⁉︎」

 

「黙りなさい。私は気が短いのです。」

 

大臣の抗議に、ディアブロは振り向かずに足を止めてそう言う。

 

「しかし、地方の貴族も召集せねば………!」

 

また抗議しようとするも、ディアブロは妖気(オーラ)を放ちながら振り返り、その眼光で大臣達を見る!

 

「黙れと言っている。お前達の都合など、リムル様とフォルテ様には関係ない。いいですか?つまらない小細工を弄しようなどと考えない事です。一週間後に返事がなければ、〝戦争の意思あり〟と受け取ります。いいですね?では、せいぜい良く考えて返事をする様に。」

 

そう言い残して、ディアブロはこの場を去った。それを見届けたヨウム達は、一息吐くのだった。

 

これが、ファルムスでの出来事のあらましだった。

 

 

 

 

「…………と言う感じに、揺さぶりをかけておきました。」

 

「お、おお…………というか、箱詰めのアレ見せちゃったんだな。」

 

「クリーンなイメージは失われるが、恐怖を煽るにはもっとも効果的だな。」

 

これで、ヴェルドラへの脅威が再確認されるだろう。

 

「それで、講和の条件ですが………賠償金として、星金貨一万枚を要求しておきました。」

 

「ぶーっ⁉︎」

 

ディアブロの言葉に、リムルは飲んでいた紅茶を吹き出した。

フォルテは飲む前だったが、その金額に驚愕していた。

 

何故なら、日本円に換算すると1兆円なのだから。

 

「それはお前、吹っかけすぎじゃないか?」

 

「問題ございません。三つの選択肢を与えましたが、答えは一つしかないのです。」

 

「……なるほど。戦争継続は言うまでも無く不可能。属国になるのは、愚かな貴族達が反対するのは目に見えている。事実上、ファルムスに残された選択は賠償金を支払う事だけだな。」

 

「その通りですフォルテ様。ファルムス王国としては、要求を呑むしかない。彼らが取る手段としては、別の第三者に責任を押し付ける方法でしょう。」

 

「そうなったら、どうするんだ?」

 

「予定通りです。少なくとも、星金貨千枚は回収出来るでしょう。」

 

「その根拠は?」

 

「簡単です。星金貨自体は高すぎて、使い勝手が悪い。適当な支払い先もないでしょう。」

 

リムルとフォルテがディアブロと会話続けていく中、紫苑は目を泳がせていた。……話についてこれていないのだ。

 

「成る程。使い道が無く、貯めておくしかないんだろうな。で、更に何を企んでいる?」

 

「クッフフフフフ………!一つ目の選択を取るという事は、賠償し、王が退位するという事。退位したエドマリスは権力基盤を失い、おのずと責任追及の矛先が向かう流れとなるでしょう。」

 

「貴族達に責任を押し付けられる第三者になると。王立騎士団は俺達の進化の糧となった。武力を失った今の状況では、貴族達と敵対する事はエドマリスにとっては死も同じ、貴族達の傀儡になるしかない。まぁそれはあくまでも表向きの話、だろう?」

 

「その通りです。」

 

「武力を失った国王派がそれを回避するには、ヨウムを味方につける事。そうすれば、俺達を味方につけられると言う事だな。」

 

「そこまで理解するとは…流石だなフォルテ。」

 

「ご明察、恐れ入ります。」

 

「流石フォルテ様だね。」

 

リムル達は驚いているが、フォルテとなった俺は生きた人工知能だ。解析・予測・演算処理能力は圧倒的な上、電脳之神(デューオ)による予測演算もある。

 

「って事は、ヨウムに戦力を貸し出せば良いんだな。」

 

「はい。ラーゼンより連絡が入る手筈となっております。」

 

「それで勝てるんだろうな?次に王になる奴が他国を巻き込んで連合を組んだりしないか?」

 

「周辺諸国からは、フューズ殿やガゼル王が圧力を掛け睨みを利かせております。ですので、その可能性は小さいですが……。そうなったら私自ら参戦する予定ですので、ご安心ください。」

 

「よし、任せるぞ。」

 

「何かあれば報告を頼む。」

 

「はっ。お任せくださいませ、我が王達よ。」

 

こうして、悪魔の暗躍は始まったのだった。

 




カルロス卿……何故あの状況で上から目線で偉そうに怒鳴れるのか、アニメを見ていても頭がおかしいのかと思ってしまった。他の貴族や大臣でも状況を理解出来ていたようですし。
何故あの様な男が貴族なのか本当に不思議と思いました。

次回から、オリジナル回などを本格的に加えていきます。
フォルテがデューオに託された者達がいよいよ登場する時が来る。
………どんな者達が登場するのかはお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。