ハザードリザード   作:出世蝉

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今回はレガントが主人公です。
レガントは外ハネの紫髪、髪留めと緑のジャケットが特徴的な高二男子です。


ブーステッド特攻兵

先生「トラウマとは心的外傷、つまり「心の傷」を指す。 その人の生命、存在に強い衝撃をもたらす事象を外傷性ストレッサーと呼び、その体験をトラウマ体験と呼ぶ。」

 

少しざわつく、女子は出払った教室。

 

とうの昔から知っていた気がしていた言葉。

何気なく使っていた言葉でも、意外と自分の思っていた意味と違う。

結構あるんだ。これが

 

先生「これは単純に「当時の様な状況が怖い」だけではなく、後の人生において多大な影響をもたらすそうだ。」

 

体育教室の内田先生。

女子に好かれそうな人。というのが第一印象だった。

まぁ間違ってはいなかったが、その評価は少し語弊がある。

内田先生は男女共に好かれる様な先生だ。

 

先生「俺もそういうのがあってな…」

 

授業に雑談は欠かせない。

ただ朗読、板書、問題だけだと飽きる。睡眠導入剤だ。

 

先生「俺は昔からお化け系のホラーは怖いと思わなかったんだが、リアリティのある、「人が怖い」系はとことん無理だった」

 

少し間が空いてから話しだした内容はこうだ。

友達に誘われて行った映画、そいつの話だと昔の幽霊ホラーだったんだが、蓋を開けてみるとグロ表現満載の殺人鬼ホラーだったそうだ。

 

先生「俺はそれからベッドで寝るのを辞めて布団に変えた。まぁトラウマってのはそれぐらい影響力があるんだ。」

 

先生に「昔の話して」と頼んだら無限に出てきそう。

と思うほど人生経験が豊富な教師だ。

 

先生「トラウマと言えば、家庭内暴力…まぁDVだな、ああいうのも主な原因らしい」

 

と、言うと、クラス中の視線が凪渚に集まった。

凪渚は長い黒髪が特徴で、いつも読書をしている…まぁ変なヤツ

まぁこの学校変なヤツがほとんどなんだけどな。別に悪いやつじゃない。周りに危害を加える訳ではないし。

 

凪渚「…?どうした?皆」

 

どうやら本人は何故自分が注目されているのか理解していない様で、困惑している。

 

凪渚の隣席の鋼牙が耳打ちする。

 

鋼牙「ほら、お前の妹…」

 

それを聞くと、合点がいったのかライクが手を打つ。

 

凪渚「あー、覆華(ふうか)か。」

 

凪渚の妹、覆華は幼年時代にDVを受けていて、そこを保護されて凪渚と義兄妹の関係になったそうだ。

 

先生「まぁ…身近に被害者がいるのにこういう話はやりにくいんだが、DV被害者は突然恐怖心が強くなったり何度もその体験を思い出す「フラッシュバック」が起こる。時間が経過してもDVされた体験が蘇り、その時感じた恐怖などの気持ちを思い出してしまう症状を「侵入症状」と呼ぶんだ。」

 

(はな)ちゃんはどうなんだ?そういうのあるのか?」

 

俺は凪渚とは幼なじみなので、その妹である覆華とも繋がりがある。なので愛称として「華ちゃん」と呼んでいる。

 

凪渚「んーどうだろ、昔は体調悪いって言って一日中寝てたこともあったわ。今思い出してみればそれだったのかもな」

 

先生「『昔は』ってことは、今は無いのか?」

 

凪渚「まぁそうですね」

 

と凪渚が答えたタイミングでチャイムが鳴る。

今は6時間目なのでもう今日は終わりだ。

 

先生「やばっ、話しすぎて授業全然進んでねぇ」

 

大抵先生の授業はこんな終わり方をする。それに対して賞賛、野次、後ろから色々聞こえるが、俺は聞き流した。

 

「妹、かぁ…」

 

ふっと声に出てしまった、重い独り言。

 

俺にも妹がいる。こちらは凪渚と違い血の繋がりがあるのだが。

外ハネの黒髪、頭の側面ではなく高い位置についている耳、黄褐色の尻尾が特徴的な1つ年下の妹。

名前は狐楽 鈴音。

名前が確定してから俺との血縁関係が分かったらしく、俺みたいに名前がカタカナでもなければ苗字が無いわけじゃない。

 

 

まぁ、だからなんだという話だ。

別に名前が漢字だから、苗字があるから。それだけの理由でどうこうすることもない。

普通に妹扱いをしていたし、鈴音も俺に懐いていた…ハズだ。

俺が中3の夏に言われた言葉が嘘であればの話だが。

 

あの時からロクに会話もしていない。

俺は正直あまり気にしていないが鈴音の方が俺を避けている様で、用事があって1年の教室に行っても絶対いない。

鈴音と同じクラスの華ちゃんに鈴音の様子を聞いても断られる。

鈴音から口止めされているらしい。

 

いい加減仲直りしないと、と俺は思っているが、鈴音の方から避けているのなら会えることは無いだろう。

アイツの予測は確実だから。

鈴音の能力は「狐」。尻尾と耳が着いているほか、「二個目」の能力で大きな水晶を使った予測や占いができる。

まぁ、「なにかを映し出す物」ならなんでも良いそうで、テレビやカメラでもできる。やろうと思えば「目」でも出来るそうだ。

 

 

 

 

 

「……」

鈴音とどう会うか、そんなことを考え始めて2時間。

もう窓の外は暗くなる頃。

 

こんなことをいつまでも考えていても無駄なので、課題でもしようかと思い筆箱を取り…出……無い

無い。もしかしたら教室かもな。

いつもの俺なら隣の部屋にいる鋼牙にでも借りるのだが、何故か無性に外の空気が吸いたくなり寮から出た。

 

外に出てから陰舌に借りようかとも思ったが、

そういえば影舌は寮じゃなくて遺産の一軒家だったな。しかもここからかなり遠い。

俺だったらそんな家放りだして寮を申し込むのだが、陰舌はそうしなかった。

 

 

寮から学校は近い。が、門のちょうど裏にあり、わざわざ回り込まなきゃいけないから面倒だ。

 

能力が自由に使えたらいいのだが、これまた面倒なことに能力を公然の場で使うには免許が必須、このルールを破ると最悪捕まる。なので渋々歩いて学校まで行った。

 

 

 

通常、学校に荷物を取りに来る際は原則担任の先生に連絡し、各教室の鍵を借りるのがルールだ。だがめんどくさい。これは先生方も同じだろう。

必要が無いならこんなルールは要らないと。

 

俺は光や影を実体にし、自由に変形することができる。

これで鍵を作り、教室に侵入する。

俺が忘れ物をした時の常套手段だ。

 

ちなみにこの前の騒動…夢魅と陰舌の追いかけっこで防犯カメラは全壊した。

つまりバレることなんて無い訳である。

 

2階に上がってから気付いたが、1年A組の教室から光が漏れている。

どうやら先客…は意味が違うか、他にも忘れ物をした生徒がいたらしい。

A組は真面目ちゃんが多いので見つかったら色々面倒だ。

迂回したいところだが、2年の教室に行くためには1年の教室の前を通る必要があるので、回り道することは出来ない。この学校、階段少ねぇんだよな。

腹を括って前を通り過ぎるしかないか、と思い壁に耳を当てると微かに声が聞こえる。

一瞬鈴音の顔が浮かぶ。

 

まぁそんなこと無いかと思い誰の声か、耳をすましてみる。

 

「 」

 

何を喋っているかは分からないが、誰かは分かった

覆華ちゃんだ。

そしてもう1人誰かいるみたいだが、分からない。

 

まぁいいか、覆華ちゃんはノリが良い方だし、見つかった所で先生に言いつけたりしないだろうと思い、ドアの前、張られたガラス越しに教室を覗いた。

 

 

 

 

異様な景色。

 

目に映る光景に目を疑ったし、意味が分からなかった。

思考し始めたのは泣きじゃくる覆華を抱えて駆け出した後だった。

 

先生…内田先生じゃない。山下…数学教師が、…

……

 

 

何をしようとしていたかは分かる。しようと思えば理解できるのだろう。

だが、脳が思考を拒む。

頭が「理解するな」と邪魔してくる。

 

今アイツ以外の先生は出払ってる。職員室が暗い。

とにかく逃げねば。

アイツの能力は空間を迷路にする能力。

後ろをチラッと見たところ、既に「迷路化」を始めている様だ。

 

 

 

 

ここがどこの廊下かも分からない。

必死に走っていたせいで、能力を使っていた。

だがこれは緊急事態だ、多少仕方の無いことと許されるだろう。

 

覆華はまだ泣いている。

たまに俺をみながら「お母さん」と呟くが、俺は男だ。

 

 

覆華の下半身に、俺が着ていた上着を被せファスナーも閉める。

 

この工程を挟んでから改めてアイツがやろうとしていたことを理解して、血の気が引いた。

 

 

今日の授業を思い出す。

もしかして、トラウマが原因で抵抗できなかったのか?

 

いや、考えるな。

 

いいから、ここから抜け出そう。

 

「華ちゃん、耳塞いで」

 

「パンツァーファウスト」

 

構造が簡単で、尚且つ壁なんて容易くブチ抜ける威力。

これを使うのは初めてだったが、十分な効果はあったようだ。

 

本当は今すぐ寮を戻りたい所だが、このまま戻るのはまずい。

いくら俺の上着を着せたとはいえ、寮までの道のりで誰かに見られたらまだまだ変な服装だ。

 

校舎沿いの草むらで自分の着ていたパーカーを脱ぎ、覆華に着せた上着の上から履かせる。

俺は下に「ラブアンドピースTシャツ」を着ていたから大丈夫だ。

まぁ真冬にTシャツは変と言えば変だが。

 

全速力で、最短で寮に戻る。

走るというよりは、前のめりになりすぎて落ちる感覚だ。

 

 

 

寮についたら俺の部屋ではなく、凪渚の部屋のインターホンを鳴らす。

 

奴は俺の部屋に来るだろう。

俺は疲れた。

鋼牙はこの時間外出中。

影舌は寮住みじゃない。

他の男は信用ならない。

 

なら凪渚が適任だ。ちょうど覆華の兄だし。

 

 

凪渚が扉を開けるとほぼ同時、倒れるように部屋に入る。

 

少し落ち着いてから凪渚に状況を全て話した。

 

凪渚「それで、覆華は大丈夫なのか?」

 

「危なかっただけだ。危機一髪」

 

 

凪渚「誰だ?」

 

「山下」

凪渚「アイツ殺す」

 

 

凪渚「覆華のスカートは?」

 

「教室に置いたままだ、ごめん」

 

凪渚「いや、お前は悪くない」

 

 

凪渚「よく殺さなかったな」

 

「俺が捕まったとしてこの場合1番悲しむのは華ちゃんだろ」

 

 

凪渚「覆華の状態は?」

 

「内田センセが言ってたみたいな感じ、精神年齢が戻ってる」

 

 

凪渚「覆華はずっと泣いてたのか?」

 

「あぁ」

 

 

凪渚「飯食うか?」

 

「ごめん、今食欲ない」

 

 

凪渚の部屋に入って一息ついた瞬間からすごく眠い。

 

「ごめん、お前のベッド貸して。めっちゃ眠い」

 

凪渚「遠慮なく」

 

「ありが

 

そのまま泥のように眠ってしまった。

 

警察を呼ぶべきとも思ったが、それは後からでもいいかと考えた。

警察には「記憶を読み取る能力」を持つ者がいる。俺も昔会ったことがあるのだが、その人がいればどんな事件も解決!ってな感じで、警察の内部からも尊敬の対象になっていた。

 

それに、覆華は「サイレン」もトラウマらしく、今の状況であまり刺激したくないらしい。




その後凪渚の部屋にいた3人は記憶がすっぽり抜け落ちていた。
まるで証言を無くすかのように
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