ハザードリザード   作:出世蝉

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マグナムブーストなラビットタンク


シスターズレガシー

どうやら私の名前はレガント、男性らしい。

 

今目の前でまじまじと見つめてくる、黒髪の女性についさっき教えてもらったことだ。

 

なんでそんな信憑性の無い話を信じているのか分からないが、昨日の事、今までのことを全て思い出せないからだろうか、信じてもいいと思えた。

と、そんなことを考えていたら、彼女がすっくと立ち上がって椅子に腰掛けてコーヒーを飲んでいる白髪の男に訪ねた。

 

「私の制服のスカート知らない?部屋探しても無かったのよね」

 

この空間に合わない問いに、男は無表情のまま答える。

 

「知らないな…心当たり…は、あるわけないか」

 

「そうなのよー、ッスー…アレないと困るんだけどなぁ…」

 

そのまま会話が途切れた。

話しかけるならこのタイミングしかないな。

 

「あの…お二人方は誰なんでしょうか…私にはまだ状況が理解できていなくて…」

 

女性がハッと気付いたように笑顔になる。

 

覆華「あぁ、そういえば貴方記憶喪失だったわね。私の名前は朝霧覆華!記憶喪失仲間ね!」

 

凪渚「覆華の兄、凪渚だ。覆華に同じく記憶が無い。」

 

この人達、記憶喪失だってのにスカートが無いことを話していたのか。

普通記憶が無いことを話し合うべきじゃないか?

 

「じゃあここは…」

 

凪渚「ここは俺の寮部屋だ。今日はどうやら土曜日で学校も無いらしいから気持ちの整理が出来るまでここに居ればいい。」

 

覆華「私は土日の間にスカート探すわ~」

 

「私は…」

覆華「あら、男なんだから『私』なんてダメよ?『俺』か『僕』ね?」

 

さっき初めて会った見ず知らずの女に一人称を制限されてたまるか、と思ったのだが

まただ、また従ってしまう。

 

「俺は…」

 

覆華「はい、よくできました!あ、口調はもっと荒々しく、男らしくね!」

 

凪渚「意地悪するのは止めてやれ、拒絶されるぞ」

 

覆華が『えー?』という顔で凪渚を見つめる。

 

凪渚「レガント、君は体の動かし方や能力の確認をしておいた方がいいかも知れん。君の能力は人も容易く殺せるからな」

 

そうなのか、と思って初めて意識した。

自分の能力ってなんだっけ?

 

とりあえず立ち上がり、1回伸びをしてから能力を使用してみる。

確か腕を強ばらせれば…

 

その瞬間視界に広がるキャンパス。

何をすればいいかは、本能で理解した。

 

なるほどねと呟いてからツールの下画面に目をやる。

どうやら初めから入っているモデルもあるみたいだ。

見た感じピストルやPDW、ARや比較的小サイズな機関銃も入っている。

が、自分でそれっぽい物を創るのが醍醐味だろう。

 

2つ目の能力も似たような感じだが、作れる物が違う。

こちらは銃ではなくエンジン?マフラー?炎を出して加速できるヤツが作れるらしい。そして初期から入っているモデルもある。

 

三つ目の能力はそれの図形版。例に漏れず初期モデルも入っている。

 

そうして能力の確認を終え、筋肉を休ませ、腕を揉みながら誰に言うでもなく呟く。

 

「なかなか良いんじゃないか?」

 

凪渚「そいつは良かったな」

 

別に返答を求めていたわけではないが、人の声を聞くとなにか安心する。

覆華は自室に行ったようだ。

 

自室…と言うと自分の部屋も気になってくる。

 

「あーそうだ、寮ってことは俺の部屋もあるんだろ?案内してくれないか?」

 

 

 

凪渚について行って着いた部屋。角部屋らしい。

だからなんだという話だが。

 

勝手に他人の部屋に入るのは良くない。という理由で凪渚は帰ってしまった。

けど、その際凪渚の部屋の鍵を渡された。

「友達だからいつでも入っていい」という事らしいが、友達というのはこういうのが普通なんだろうか。

 

まぁ、いいか。

自分の部屋を見渡して、最初の感想は「質素」。

必要な物も、多少趣味っぽい物もあるが、全体的に物が少ない。

その為か、兄妹で使う用だと思われるテーブルやソファーがあった凪渚の部屋より広く見える。実際は同じ面積だろうけど。

 

とりあえず着替えようと思いクローゼットを開けたら、奥から学生用のスカートが出てきた。

もしかしたら覆華の物を勝手に盗ったのかも知れないと思い、慌ててタグを見る。名前というのはだいたいここに入っている物だ。

タグには「レガント」と刺繍されていた。

字面で「レガント」と見るとダサさが目立つ。せめて英語で書くとかしてくれ。

 

ホッとしたが、疑問は残る。

なんで男の俺の部屋にスカートが?

と考えていると、鍵を掛けておいたハズの扉が開く。

 

覆華「おじゃましまーす。 うわ物無いなあ」

 

「えっ、なんで」

 

覆華「あ!それそれ!」

 

覆華は応答すること無く、俺が持っている物を見て嬉しそうに指を指す。

 

覆華「部屋のどこを探しても無かったからさーぁ、アンタなら持ってると思ってね。どうせ使わないでしょ?」

 

まぁ使わないというのはその通りだし、別にあげてもいいか…

 

「別にあげてもいいけど、勝手に部屋入ったのは謝って欲しい」

 

覆華「えー…ゴメンナサーイ」

 

不満げに口を尖らせている。いや君が悪いんだが。

 

「はい。タグに俺の名前刺繍してあるけど、別にいいよね」

 

覆華「別にいいよ、誰もそんなとこ見ないだろうし」

 

覆華はそのまま帰るのではなく、んー、と唸りながら俺を見つめる。

 

「どうしたんだ?そんなに見つめて。」

 

覆華「いやー?身長高いなーって思って」

 

「そうなのか、俺って身長高いのか?」

 

急に身長とか言われても薄い内容でしか返答できない。

 

覆華「うん。見たところ170後半はあるね」

 

そりゃ高めだなぁ

 

そんな事話してどうするんだ。

 

「…てか、お前帰らなくていいのか?男子の部屋にお前みたいなのがいたら騒ぎになるぞ」

 

覆華「だいじょぶだいじょぶ、兄さんの部屋とかレガントとか、ちょくちょく遊びに行ってて顔知られてるだろうし」

 

ん?

記憶喪失だぞ?と思い、顔をしかめる。

 

「記憶喪失だぞ…?そんなこと分かんのかよ」

 

覆華「んー、まぁ私ならそうするかなぁって」

 

「いったいその自信はどこから出てくるんだ…」

 

目を逸らしながら呆れ気味にため息をついてみせると、覆華はスカートを広げながら笑う。

 

覆華「まーあいいや、これ貰えたし、まだやることあるのよねー。私はそろそろお暇させてもらうわ。じゃあねー」ガチャッ

 

ドアをすり抜けて出ていってしまった。

扉の外側から鍵を閉められて困惑していると、後ろからベランダの窓が開く音がして振り返る。

いたずら好きな寮生か、もしかしたら不審者かも知れないと思い警戒すると、自らカーテン越しに話しかけてきた。

 

?「レガント、起きてるか…ってか、居るか?」

 

死ぬほど低い声で名前を呼ばれて軽くパニックになり、よく分からない受け答えをする。

 

「あ、あぁァ俺がレガントだ、なんか文句あるか…?」

 

?「どうした、具合でも悪いのか」

 

この感じ顔見知りの様だが、記憶が無いので誰だか分からない。

なので、部屋に上げて話すことにした。

 

────

大柄で筋肉質な青年はちゃぶ台の前で腕を組んでいる。

その目は蒼く光を帯びていた。

 

?「なるほど…朝起きたら凪渚の部屋にいて、記憶が無い。んで、その場にいた凪渚と覆華も記憶が無いと…」

 

鋼牙「ならとりあえず自己紹介をしておこう。俺の名前は鋼牙 真寿だ。」

 

その苗字には見覚えがある。

確か隣の部屋だったな。

昨日俺が帰っていないのを心配して、ベランダから入ってきたと言ったところだろうか。

 

鋼牙「んで…本当に記憶は無いんだな?」

 

眉間に皺を寄せながら念押しをしてきた。

多分、以前は軽口を言い合えるような仲だったのだろう。疑っているのだ。

 

「あぁ、無い。自分の名前も覚えていなかった。」

 

なるほどと言うように頷いた後唸っている鋼牙を尻目に、置いてあったスマホを手に取る。

 

起動してみるが、相当前のモデルなのか分からないが指紋認証も顔認証も搭載されていない。

前の自分の手がかりになるかと思ったが、それは望めなさそうだ。

まぁそこまで興味がある訳でもないが…

スマホを台に置き、鋼牙の目を見るとちょうど彼が口を開いた。

 

鋼牙「まぁとりあえず、今からどうするんだ?警察に行ったり、学校に連絡したり、やるべきことは色々あるだろ?」

 

学校…

学校か。言われて思い出した、俺は学生だったな。

 

鋼牙「行くとしたらまず病院からだな。記憶喪失の診断書かなんかが無いと学校にも取り合ってもらえんだろ」

 

「記憶喪失ってどの医者に掛かればいいんだ?かかりつけ医?」

 

鋼牙「知らん。」

 

と言うとスマホを取り出した。

数秒の沈黙の後、へーと呟いてから読み上げる。

 

鋼牙「神経内科と精神内科らしいぞ、記憶喪失。」

 

「言われても案外ピンと来ないもんだな。あんまそういうイメージ無いわ」

 

俺を一瞥してから言う。

 

鋼牙「ここの近くにあるのは…壁荷か。隣町だが、意外と近くにある。」

 

かべに……

知らない地名だ。いや、覚えてないだけか。

 

鋼牙「甲兵精神内科、土曜は休みだってさ。そこ以外だと一気に遠くなるし、行くなら明日だな。」

 

何故か勝手に予定が決まっているが、そうするしかないので仕方ない。

 

医者に掛るのなら医療証やらなんやら、そういえば金も掛かるなぁ

 

交通費もか、いや、さっき鋼牙は近いと言ってたし、電車は必要無いのか?

 

「そこって電車で行くような所?」

 

鋼牙「いや、歩きでも十分だ。」

 

らしい。

 

鋼牙が腕を組んで立ち上がる。

 

鋼牙「まぁそういうことだ。明日また来る。どうせお前行き方分からんだろ」

 

俺と鋼牙が前どのような関係だったのかは分からないが、少なくとも友達以上ではあったみたいだ。

 

持つべきは友だな。

 

出ていく鋼牙を見送りながら、時計を見る。

午前6時…

朝だ。本当に朝だ。

学生ならまだ起きてる奴の方が少ないぐらいだろう。

 

「あ~~…」

 

今から何をしようかと思った時、ある言葉がフッと頭に降りる。

【風呂】だ。

 

今の格好は外用の服装だと思うのだが、先程クローゼットを漁った時に寝巻きのような物も見えたのでまだ風呂に入ってないと思われる。

 

心做しか頭に脂も溜まってる気がするし、意識しだしたら今すぐ風呂に入りたくなってきた。

 

服は脱ぎ捨てる…のではなくちゃんと畳んでから風呂場に入る。

シャンプー、リンス…正直違いが分からない。まぁ置いてあるということは両方使うのだろう。

 

石鹸は個体のタイプ。液体の石鹸は銭湯ぐらいにしか無いと脳内の知識が言っている。エビデンスは無い。

 

給湯器の電源を入れてから水を出す。

何か異音がした様な気がしたが気にする事はない。

 

気にしないのは正義だ。

多分。




なっがっ
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