浪人たちでにぎわっていた九条陣屋は、静まり返っていた。
「すごいな、お前。あの量をこんな短時間で。しかも、腕を失ってるというのに。」
「別に、こんな力意味ないさ。あそこに流浪人たちが使っていた船がある。さぁ、あれに乗せて彼らを大社に預けよう。夜のうちに。」
放浪者たちは停留していた船に乗った。九条陣屋を離れ鳴神島に───
「なんか、違和感がある。」
ゴローが語る。
「あぁ、この島に来てから違和感ばっかだ。」
「いや、そういうんじゃなくて、もっと物理的な...」
「にしても雷ばっかだな。いったい誰が降らしているのやら。」
「いや!おかしい!こんな降りかた、」
その時、船の周りを九つの雷が降った。
一瞬で消えるはずの雷は、その場に残り続ける。
「なにか、来る...」
ゴローの読み通り、空から『それ』は降ってきた。
「千なる...」
それは闇を切り裂き、光をもたらす。
「雷光。」
船は九つに分かたれた雷は、一つに束ねられる。
「これほどの能力...神でないとありえない。」
「いや、神じゃない。知ってる顔だ。」
束ねられた雷は、船へと注がれた。
(まずい、あれを防がなければ、島に渡れなくなるッ!)
放浪者は、雷を一身に受ける。片腕から繰り出される風元素で拡散し続けているが、終わる気配はない。
「やめろ!九条裟羅、民間人も乗っているんだ!」
「ッ!」
(威力が減ってる!よし、このままならなんとか押し切れるかッ。)
「ゴロー、珊瑚宮心海はどうした。」
「お前には関係ない!そちらこそ、将軍はどうした。なぜ俺たちの邪魔をする!」
「将軍様は天守閣におられる。私は、将軍様に仕えるのみだ。」
「であれば、将軍はファデュイに屈したというわけか?」
「くッそんなわけ...ないだろう...」
(いいぞ、そのまま弱らせろ!)
「おいおい、【天狗】ちゃん。その程度の応答で力を弱めてしまうのかい。」
背後から、別の人間が現れた。
「まったく、数合わせとはいえ、ファトゥスの一人がそんなんじゃいけないよ。
今の順位は、俺以上なんだから。」
(この声、タルタリヤかッ。)
「ファトゥス?こいつは九条裟羅だろ、何言ってんだ。」
「君は抵抗軍の大将だね?あの時は惜しかった。死んでいなくて本当によかったよ。
そうだ、これは九条裟羅。だが、今俺たちは別の呼び方をしている。
十一人のファトゥス 第六位 『天狗』
まぁ、暫定だけどね。」
「まずい、ゴロー逃げろ!君じゃあいつに敵わない!」
「よそ見する暇があるのか!」
「ちッ、貴様、雷神の後押しを受けてるなッ!いいだろう、空中戦がお望みなら応えてあげるよ。」
「後輩。」