上空の九条裟羅目掛け、放浪者は飛翔する。
タルタリヤの相手をゴローに任せるのは心苦しいが、今の最大の脅威は九条裟羅だ。
「雷神の信奉者か。別に誰を信じようが勝手だが、ちょっとセンスがないんじゃない?」
右腕から風の刃を放つ。片腕では、生成できる刃も減ってしまう。
武器を構えず元素の力で戦う彼の戦闘スタイルが今回はあだとなっている。
とりあえず敵の弱点を探らなくては。
だが、
(なんだこの風は...!あいつッ、雷元素のはずじゃ!)
テイワットとは別の世界...稲妻とよく似た地域において、天狗とは流星を見た人々が連想したものだという説があるらしい。
放浪者は正体不明の強風により、後方へ吹き飛ばされた。
(いや待て、ファデュイだと言っていた...つまり邪眼かッ。)
そう、九条裟羅のした行動はただ団扇を一振りしただけ。
(強風に雷...これ以上の攻撃手段があるのか、試してみるか。)
強風から何とか逃れ、放浪者は最速で九条裟羅へ向かう。
九条裟羅は再度団扇を構えたが、間に合わない。
放浪者は、落下覚悟で元素爆発を放つ。
「頭が...高いぞッ!」
足元に凝縮した空気は確かに九条裟羅のいた地点を吹き飛ばす...しかし、その場に九条裟羅の姿はない。
「雷閃!」
九条裟羅は、直前に後方へ瞬間移動をしていたのだ。
放浪者はすでに飛翔能力を一時的に失っている。
「ここで終わりだ。私は、将軍様を救う。」
「救う?彼女を?雷神が適わなかった相手に君が勝てるというのかい?」
「将軍様は負けたわけではない!あれは...罠だったッ!万全の状態ならあのようなこと...」
「万全の状態ではなかった、それが言い訳になるとでも?神を名乗る以上そんな甘えは許されないはずだ。」
「黙れ!そういう貴様はなんだ。将軍様へ...ファデュイへ牙をむけるというのに、私程度に苦戦しているではないか!」
「別に、僕はこの国にも雷神にもなんの愛着もない。ファデュイに屈したままでありたいのならそうすればいいさ。僕はさっさと僕のしたいことをさせてもらう。」
にらみ合いは続く。先に行動したのは九条裟羅だった。
「常道を恢弘せしは、永遠なる鳴神なり。」
以前より高出力となった雷の群れが、放浪者を襲う。
「君が僕の相手ってことでいいのかな。」
「お前...海祇島を襲ったファトゥス。」
「お、知っていてくれたんだねうれしいよ。じゃ、自己紹介は省略だ。さっさと戦おうか。」
タルタリヤは弓を水の双剣へと変化させる。
(俺一人で戦えるのか...?相手はあの放浪者から左腕を奪ったやつだぞ。)
ゴローも、弓を構えた。とにかく、この場は応じるしかない。
「安心しなよ、僕は君を殺すような真似は、しないからさァッ!!」
タルタリヤの攻撃がゴローへと迫る。
(くそっとにかくここは距離を取って近づかないようにしないと!)
ゴローは後方へと下がり、弓の連射を開始した。
タルタリヤの軌道がぶれる。ダメージを無視して攻撃をしてくるということはしないらしい。
「君は弓の名手だなぁ!いや羨ましい、僕もはやくうまくなりたいものだっ!」
タルタリヤは接近をやめ、ゴローの矢をすべて電気で焼き切った。電気を纏った水の双剣を構え、追撃の矢もはねのける。
(まずいっこれじゃジリ貧だ。もう一手...)
「君はよく戦った!さぁこれでおしまいだっ!」
(なにか...)
「止水の...」
「お前の出番だぜ!岩闘牛!」
「うわっなんだ!?」
タルタリヤが元素爆発を放とうとした瞬間何かが降ってきた。
その何かは、目の前で愉快な動きをしている。
「俺様抜きで楽しそうなことしてんじゃねぇよ!」
「乱入者か!いいだろう面白い。君は一体...」
「俺様か?俺様、荒た...」
「邪魔だ、大将そこどいてくれ。おい!抵抗軍の大将!援軍に来た。あとはこちらにまかせてくれ。」
「おい忍!俺様の口上を邪魔するんじゃねぇ!」
「そんなこと言ってないで、早くあのファトゥスと戦うぞ、準備はできてるんだろうな。」
「おうよ!いくぜぇ!鬼王のお通りだぁ!」
荒瀧一斗は、謎の構えをしたのち自らの大剣を金砕棒に変え、タルタリヤに襲い掛かった。
「君はなかなかのパワータイプだな。いいだろう、ならばこちらも本気を出させてもらう。」
タルタリヤはファデュイの面をかぶり、邪眼の出力を強化させた。
「助けにきてくれたのはありがたいが、あそこで九条裟羅と戦っている奴が危ない!こっちよりもそちらを...」
「あぁ、あっちには別のが向かっている。それより、大将がわざわざお前のもとに来た意味は、分かるだろう?」
「あぁ、わかってる!先声後実!」
ゴローは元素爆発を放つ。瞬間、一斗の攻撃の威力が上がった。
「さらに強くなるのか。君は!」
「うおおお わけわかんねぇけどこのままぶっ飛ばすぜ!」
九条裟羅によって放たれた攻撃は、海に落ちた放浪者に直撃...するはずだった。
しかし、その攻撃は海面に突如として現れた氷、嫌より正確に言うと、海面の凍結により防がれたのだ。
「いったい何が!」
困惑する九条裟羅は、再度雷電将軍によって強化された元素爆発を放とうとする。
「千なる...」
「神里流...水有」
九条裟羅の羽が、降り出した雨...否、水でできた無数の剣、水沫剣により破られた。
(まずい、いったい誰がッ、いや待て神里?)
地上へ、落下する。
「神里流...霜滅!」
地面へ激突する直前、霜風が襲う。
九条裟羅は、身動きが取れない。
「間に合ってよかったですね、お兄様。」
「はい、忍さんを救出していては間に合わないかと思いましたが、夜蘭はよくやってくれました。」
「ところで、その...放浪者さんという方は一体どこにいらっしゃるのでしょう。」
「綾華、あなたが固めた氷の下ですよ。」
綾人の爆発の漢字...