「笠っち選手...?」
「そこで倒れているだろう。その回収だ。」
一同は顔を見合わせる、だが、この場で倒れている者は放浪者と一斗である。
「すまない、笠っちという者に心当たりがないんだ。一斗のことか?」
「一斗という名前は知らないな。とにかく、そこの笠っちは任せたぞ。」
そう言い残し、アルハイゼンは船を出た。
「お前、笠っちだったのか...」
(機神の攻撃は終わっている...しかし、この竜の動きは止まる様子はなさそうですね。このままじゃ彼が危ない...)
アビサルヴィシャップは機神の仮面を剥がすに終わる様子ではなかった。
「.........三尺の......秋...水。」
綾人は、残された力を振り絞り元素爆発を放った。
機神の何かが破壊されたのか、目狩りの力は失われ、元素力が戻っている。
(危害を加えた際、こちらに矛先が向くかどうか未知数ですね。)
無数の水沫剣がアビサルヴィシャップを襲うが、気にも留めていない。
想定内なのか、綾人の表情は曇らなかった。
「このタイミングで助っ人登場というわけですか。」
「そういうことだ。そこで寝ていろ。俺は頼まれたことをこなす。」
「鏡閃。」
アルハイゼンは、琢光鏡を生成し、自らをアビサルヴィシャップの中央。
機神の隣まで瞬間移動をした。
「理論の演繹。」
(この怪物...アビサルヴィシャップと言っていたな。確かあれは抵抗軍の大将だったはず。彼のみが反応していたということは、抵抗軍本拠地のある島にルーツのあるものということか...?)
アルハイゼンの元素爆発による特殊縛境の中、アビサルヴィシャップは草元素の洗礼を浴びていた。
(チッ、1枚だとこんなもんか。)
ひるませることはできたが、それだけだった。
(なんとしてでも退かせるところまでは...ん?)
アルハイゼンは、何か奇妙なものを発見した。
アビサルヴィシャップの片方の背に人間のようなものが横たわっていたのだ。
「そこか!」
ひるみの隙に、アビサルヴィシャップの背に飛び乗り、その人間を確保した。
(女?奇妙な格好をしている。意識はないようだ。あの中に知っているものがいればいいが。)
すると、アビサルヴィシャップの動きが急に止まった。
何が起きているのかアルハイゼンにわかるはずもなく、珍しく困惑している。
構えの姿勢は、アビサルヴィシャップが去り、海へ消えていくまで崩さなかった。
「ふむ、生論派ならあの怪物について何か知っているのだろうか。」
「助かり...ました。そのお方は海祇島の巫女、珊瑚宮心海様です。」
「そうか、とりあえずこの場から引くぞ。幸いあそこに小舟がある。それに乗って...」
すると、
『待te...koれhaどういう...』
「俺が思うに、お前は誰かしらの人格を模倣したものだろう。これほどまで自我を持った機械生命はあまり見ないが、スメールの知恵を駆使すれば無理でもない。」
『ふざけケるna...僕は、boくこそは真のスカラマシュだと...そウなれるって...』
「悪いが、その人物を俺は知らない。すくなくともお前の中にいる人物とも違うのだろう。」
『僕は...maた騙さレたのか。』
機神から光が失われたのを確認すると、遠隔通信のみに特化されたアーカーシャ端末を取り出した。
「はい、対象は鳴神島に向かいました。ひとまず負傷者を移動させ、こちらも鳴神島に向かい...」
「では、そのように。クラクサナリデビ様。」
話は、過去にさかのぼる。
「あんたのおかげだ。助かったよ。」
「問題はない。渡航費と考えてくれ。」
北斗達が稲妻に到着した際、ファデュイによって船は爆破された。
そこで、乗組員のほとんど、特に元素力によって身を守れない者たちは死亡するはずだった。
しかし、たまたま一般人の中に紛れていたアルハイゼンにより、全員命を落とさなかったのだ。
「それにしても、よくあの状態で宿泊室にいられたな。何をしていたんだ?」
「本を読んでいた。俺が出ようがでまいが、変わらないと感じたからな。」
「はははっあんた変わってんな!それで、教令院の書記官様がいったいなぜあんな船に乗ってたんだ?」
「ある人物の監視を頼まれていた。」
「へぇ、あんた意外と他人の命令で動くタイプなのか。アタシの知り合いにもお偉いさんはいるが、あいつが指示を聞くなんてそれこそ岩王帝...」
「それより、なぜ出発しない。」
「あぁ、なんかよく知らないが、荒瀧派とかいうのの一人が敵につかまったらしく、それの救助のための算段を立てているらしい。」