「ふぅ、とりあえず城内への侵入は成功っと。」
「あとはここからどうやって対象を探すかだけど、まぁそのうち相手の方からやってきてくれるでしょう。」
夜蘭は、城内の牢獄にとらわれていた。稲妻に来た目的を果たすためには最適解だ。
「よぁ、あんた璃月人だろ?珊瑚宮を落としたらしいな。」
すると、牢の外からこえがかかった。
「私はただ手助けをしただけだと言ったはずだけど。」
「はっ。俺は馬鹿だが愚かじゃない。あいつ一人にそんな力がないことぐらいわかるぜ。そしてあんたにはできることもな。」
「本当彼がやったのよ。私はただここまで運んできただけ。」
「それでもイレギュラーを排除したのはお前のはずだ。例えば、そう。謎の修練者とかな。」
「侮っていた。思ったより状況を理解しているのね。」
「愚かじゃないと言ったろ。お前が牢の中の誰かを助けるためだけにここに来たのもわかってるんだ。」
「......」
「んで誰を助けたいのかも大体見当はついている。璃月への渡航歴のあるやつのどいつかだろ。」
夜蘭は警戒を強める。正直ここまですんなりいったことに違和感を覚えていたが、この男の手引きだったのか。
「それで?それを私に話していったい何の目的かしら?その人が殺されたくなければ自分に...」
「いいぜ、さっさと逃げちまいな。」
夜蘭は珍しく、他人、それも敵の前で目を見開いた。
その提案自体にではない、この傀儡国家となった国の人間にそこまで合理的判断ができるということにだ。
「奴ら神の目持ちをなめすぎてる。邪眼だなんだ知らねぇが、あんな模造品より神の目はもっと恐ろしいもんだ。」
「あの九条家の女はなまじ自分が神の目をもってるから警戒しきれなかったんだろうな。それほどまでに持たざる者にとってお前らは脅威ということだ。」
「だから、さっさとお前の目的を果たして璃月にもどんな。船までは確保してあげらんねぇけど、まぁお前なら何とかすんだろ。」
「そう、わかったわ。」
夜蘭は長い沈黙ののち決定した。敵の言葉に乗るのは気に食わないが、彼の言葉に偽りはない。
「ほらよ、ここに裏道がある。たのむから見つからずに静かに去ってくれよ。」
「ちょっと待て、あんた夜蘭だろ?層岩巨淵で会った。なんでここに?そもそも...」
「私のここに来た目的は一つ、あなたの救出よ。ある人物に依頼されてね。もし依頼をことわったら自分から乗り込もうとしていたし、あれを敵に回すのはわたしもちょっと気が引けるから。
心当たりはあるでしょう?」
「先輩...」
「とりあえずここを出て璃月に向かう。ほとぼりが冷めたらここに戻るといいわ。安心して、どうせこんな状態長く続くわけがないもの。」
「いた、だめだまだ大将の...荒瀧派の安否が確認できていない。あのバカのことだ。どうせ私を助けるために正面突破を...」
夜蘭は少し、ほんのすこしだけ目を細める。
「そう、そうね。あなたですらそう思うなら彼と私の判断は仕方なかったのかもしれない。荒瀧一斗はあなたを助けるために、一直線で神里綾人のいる鶴見へ向かったわ。
きっと神里綾人の立場もわからず、ただ純粋にあなたを助けるのを手伝ってもらうためにね。」
「じゃあ今、大将は?」
「神里家と一緒にいるわ。現在この言葉ほど安全を保障するものもないと思うけど。」
「そうか...わかったあんたを信じるよ。」
忍と夜蘭は案内された裏口を出、鳴神島北東部へ出た。
「とりあえずあの小舟で出るわ。多少の食料とかは船に積んであるはず。」
「あぁ、わかった。」
「待て、あれはなんだ?」
忍は一点に目を向けている。
そこには、何者かが稲妻城に侵入している姿があった。
「夜蘭、だめだ私はいけない。」
「あんた、私に何か隠していることあるだろ。」
夜蘭の目的は忍の救出。それ自体は本当だった。
だが、後付けで課された使命があった。
それは、死兆星号爆破のち、神里家の者に助けら、鶴見についた際の話。
『なるほど、承知しました。手助けをしましょう。彼女もまた稲妻の民です。それに、城に幽閉された人々はいずれ助け出すつもりでした。』
『しかし、それをするなら最終局面です。なにせ城にそのまま正面衝突するのですから。今回私たちにとっての脅威はあの機神と、もう一人います。』
『九条裟羅。彼女はおそらく機神に勝るとも劣らない脅威となるでしょう。』
『そこで、あなたには陽動役をしてほしいのです。先に稲妻城に向かい、その久岐忍さんの安全を保障してからで構いません。』
『しばらくしたら、私の部下たちも参加し、私自身もなんとかして加勢するつもりです。』
「このまま逃げれば、あなたは無事璃月につけるわ。」
「わかってる、でも明らかに状況がおかしい。そしてたとえ煙緋先輩の友達とはいえ、私はあんたを信頼しきれない。」
「...まぁ、裏を行く人間にはしかたないことなのかしらね。」
一応時系列としては、ゴローと放浪者が九条陣屋についたころです。