放浪者の稲妻行 〜超巨大機神統治国家〜    作:旅人さんた

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参 放浪者と稲妻人

──スラサタンナ聖処にて

「少しばかり休暇をもらう。キャンディーは棚の上に。一日一つを厳守。必ず所定の位置に戻すように。」

 

「おい!アルハイゼン!おかしな格好の奴から頼まれごとを引き受けたぞ!この手紙を草神様に渡せって!」

「どれ、見せてみろ。...ふむ、これは俺が預かっておく。お前はもう帰れ。」

「ふざけるな!僕が任されたんだから僕が渡すんだ!おまえの手柄にはさせないぞ!」

「手柄も何も、お前は草神様のお姿をしらないだろう。」

 

 

 確証はなかった。だが、あるはずのものがなかったのは事実。

放浪者としてあの地に踏み込むのには大きな抵抗があったので、姿を変えることにした。

そう、スカラマシュの姿である。

 

「放浪者であることには変わりがない。要は、心の持ちようだ。」

 

 一口に稲妻へ向かうと言っても、スメールからだとそう簡単ではない。

璃月港を経由するか、オルモス港からそのまま船で行くか。

 

事前準備として、この前旅人が砂漠の方から持ち帰ってきた聖遺物への祈りを済ませる。

どう考えても面倒ごとからは避けられなさそうだ。

戦力はあるに越したことはない。だが──

放浪者はこの度の稲妻行きにおいて、自分自身に一つの誓いを立てた。

 

それはファデュイ、またはそれに与するもの以外への攻撃を控えるということだ。

別に急に不戦主義に目覚めたわけではない。

理由は単純、自分の現在の所属はあくまでスメールだ。

スメールの者として、稲妻人に危害を加えるのは国際問題になるからだ。

だが、ファデュイはスネージナヤ所属である。何の問題もない。

 

 そもそも、放浪者は今回の黒幕はファデュイだと踏んでいる。

一つ気になることといえば、雷電将軍に接触し何らかのアクションを起こせる人物は、ファトゥスくらいであるということである。

それも、上位出ないと難しい。

だが、自分の知る限り──少なくとも世界改編の前には、そのような人物は現在稲妻にはいなかったはずだ。

 

 一応、いつもそこらじゅうをほっつき歩いてる公子タルタリアがいる可能性はあるが、可能性は薄いと判断する。

となると一般メンバーということになる。

 

 一人孤高なライオンか、集まることで力を持つ蟻か

草神の癖が伝染ったかと、苦笑した。

 

 出向時間を確認する。オルモス港に向かわなければ。

草神への伝言はすませてある。

 

 

~オルモス港~

 オルモス港への道行は割とスムーズだった。

途中エルマイト旅団に少しちょっかいをかけられたが、その程度放浪者にとってはどうってことない。

 

 追跡してる者もいない。そもそもこの世界で放浪者を知ってる者はごくわずかだ。

──そのようにしたのだから。

その点においては、気楽ではあった。そしてことの事態のわりに孤独感がないということも放浪者は自覚していた。その理由まで考えることはしなかったが。

 

「お客さん、目的地は稲妻だよね?入国証はわすれてないかい?」

声をかけられた。浅黒い陽気な男だ。

 

「稲妻は現在、鎖国を解いたと聞いたが?」

「あーなるほどなぁ。すまんが、出入りは自由になったとはいえ、入国証自体は必要なんだよ。教令院に申請すれば簡単に取得できるぜ。2、3日かかるがな。」

戻ること自体は問題がないが、履歴が残る。

稲妻に行くということをナヒーダに知られるのはできるだけ避けたい。

 

「入国証がないと稲妻には入れないのか?」

「うーん、稲妻家族がいりゃあっちで手続きできるとは聞いたな。見たところ、あんた稲妻人だろ?家族とかいるのか?」

「...」

放浪者は黙る。

 

「すまん、訳ありだったか。おーい!入国証なしでも戻りなら大丈夫なんだったっけ?」

陽気な男は仲間たちに声をかけていた。

 

「以前は無理でもなかったが、今はだめだな。なんにせよ稲妻にはいけんよ。」

仲間の一人が寄ってきた。いぶかしそうな顔をしていたところ、

 

「悪ィな兄ちゃん。こっちだって意地悪で言ってんじゃねぇんだ。そんな怖い顔するもんじゃねぇぜ。

ここ最近稲妻はまた鎖国を始めたんだよ。まぁ以前より物流が完全に途絶えてるわけじゃねぇが。」

 

ひどく納得している自分がいた。よく考えたら、国のトップであり最高戦力が失踪したとなれば、平時通りとはいかないだろう。

つくづくいびつな国だ。

 

面倒ごとをさけるため出直そうとしていたところ、

「おぬしのその恰好、修練者でござるか。」

 

男...というより、少年が声をかけてきた。稲妻風の格好をしている。

「修練者ではない。そういう君はいったいどちら様だ。」

 

「お、サムライの兄ちゃん!そうか、死兆星号ならなんとかなるかもな。」

「拙者は侍ではないでござるよ。それはそれとして、お主、稲妻に行きたいのか。」

 

沈黙を肯定と受け取ったのか、少年は近くの人間に声をかけていた。

「明日、稲妻行きの船が璃月港から出発するでござる。拙者は今から璃月に参るが、一緒に向かうでござるか?」

 

素性の知れない相手を信頼できるように育っていない放浪者にとって、その提案は一蹴すべきものだった。

それも稲妻人となればなおのこと。

ただ、放浪者はなぜかこの稲妻人を信頼できていた。

懐かしい感覚。覚えがあるのは何年前のことか...

 

「お主のことは何と呼べばいいいでござるか?璃月についたら、北斗の姉君にも紹介しよう。」

 

 腰につけられていた神の目が光っている。自分と同じ風元素の使い手らしい。

賭けることにした。例え牙をむいてきたとしても、流浪人であれば素性は残らない。

 

「呼び方はいろいろあるが、とりあえずのところは放浪者でいいよ。」

「なるほど、放浪者でござるか。なぜだかしっくりくる呼称でござるな。では拙者もそれに倣って、流浪人と。

お互い、一つの場にはとどまらない身の上でござるな。」

 

放浪者は若干ばつが悪かった。些細な問題ではあるが、放浪者は現在草神の保護下だからだ。

「あぁ、よろしく。流浪人。」

 

 見るものによっては運命的ともとれる邂逅は、こんなに味気ない、シンプルなものだった。

運命的とはいっても、その運命性は或る出来事により、片方向になってしまってはいるのだが。

 

そしてそんな二人を見つめる小さい影──森の妖精たちに二人は気付かない。

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