放浪者の稲妻行 〜超巨大機神統治国家〜    作:旅人さんた

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伍 夜霧でのまどろみ

 

 雲来の海を越え、璃月港は水平線の向こうに消えていった。

「姉御!霧が立ってきたぜ。」

 

確かに、かなり霧が立っている。北斗は乗客を船の中にはいるよう促していた。

「君は、中に入らないのかい?」

 

万葉は何やら、せわしなくしていた。

「拙者は船に火をともしてまわるでござる。ほかの船との接触がないとも限らないのでござるのでな。

こんな霧の中、光が届くかは怪しいでござるが。」

 

「お主こそ、入らないのか?船員が警戒をつ強めておる、なかで夕餉をするでござるよ。」

 

「いいや、僕に食事はいらない。ようやく静かになったんだ。甲板にいさせてもらうよ。」

 

「そうでござるか、本格的に修練者のようでござるな。問題はないが、おすすめはしないでござる。霧の夜の船上は、なにかと集まりやすいのでござるよ。」

 

笑って、受け流した。

 

 

 コーヒーだけ受け取り、座り込む。霧はだんだん強くなっており、視界はもう足元だけだった。

 

 放浪者は、自分に謎の疲れがたまっていることに気付いていた。

それは、肉体的なものなのか、精神的なものなのか。

精神的な疲労が肉体的に感じるなど、ここまでくると本当に人間のようだ。

 

 どちらにせよ、疲れの正体はわかっている。

あの流浪人...万葉と呼ばれていた男だ。あれと接していると、遠い過去が押し寄せてくる。

 

放浪者にとって最も幸せな記憶。

『お主は人形などではない、人間なのだ。違いと言えば、心が一つ少ないだけではないか。』

 

 コーヒーを口に含む。苦味は嫌いではない。これを味わっている間は、人間として在れているように感じるからだ。

視界がぼやけているせいか、睡魔が襲ってくる。

意識が遠のく。船の揺れはまるでゆりかごのようだ.

 

 

 

 

 

 

「眠っているでござるか?」

 

声ががかる。聞きなじみのある男の声だ。

 

「風邪を引くでござるよ。」

 

風邪はともかく、確かにべたついてきた。そろそろ中へ...

 

「これまで、大変な思いをしてきたのでござるな。」

 

確かに、そうだ。

 

「数々の裏切りを受け、誰のことも信用できなかったでござるか。」

 

そう、だった。でも、最近はそうでもないような...

 

「その不信は数々の悲劇を招いた。それをお主は罪として背負っておる。」

 

 罪...そうだ。誰からも忘れられたが、自分の中にあるその重りは、簡単に消してしまっていいものではない。

 

「だが、安心している自分もいる。お主の重りを知っている者たちは、信頼ができる者たちのみだからだ。」

 

「草神の庇護下で、自由に、風のように、鳥のように、今を楽しんでいる。」

 

「草神との生活は、悪いものではない。旅人との会話は、自分を満たしてくれる。」

 

「自分はもう国崩でも、スカラマシュでもない。」

 

「───」

 

旅人からもらった名前だ。

 

「それを名乗っている間は、安心していられる。」

 

「だが歴史を変えた後も、何も変わらなかった。」

 

 

「お前の不信による災いにより、今もなお苦しめられている人もいる。」

 

 

 

 

.........

 

 

 

 

今回の旅も、贖罪を求めて...

「やめろ!」

 

 胸の動機がひどい

 

。額をつたう水は、霧によってのものなのかどうか。

目の前の男はいない。

誰の姿を映していたかは、考えたくもない。

 

すると、

「この霧の中、いい夢を見ようって方が無理な話よ。『放浪者』さん?」

 

「いったい何の用なんだ。璃月の法術師。」

 

「あら、意外と観察しているのね。」

 

「そのジャケット、元はスネージナヤのものだろう。」

 

「どうやらあなたへの警戒は強めたままでいたほうがよさそうね。

でも、私もあなたについての情報が増えたわ。」

 

「ファデュイとの関係を疑ってるんだろう?いいさ、好き勝手監視でもして。」

 

「それはまぁいいのよ今のところは。それより、あなた呼吸をしないのね。」

 

「...」

 

「私のよく知る人物で、同じく呼吸をしない人がいるわ。そう、冒険者協会の...」

 

「チッ」

 

「あたりのようね。」

 

夜蘭とよばれていた女は、嫌な笑顔を向けてきた。

 

「甲板で人が倒れていたら、呼吸を確認するのは当然でしょう。今回はあなたの落ち度よ。」

 

別に隠していたわけではない。聞かれなかったから言わなかっただけと、開き直るのは簡単だった。

だが、放浪者は自分のことをある程度客観的に見ていた。

そう、あえて隠していたのだ。

むろん、万葉にである。

 

放浪者は過去、ある人物に人間だと定義付けてもらえたが、それは、

独りだった放浪者にとって奇跡のような出来事だったのだ。

 

奇跡は、めったに起きないからこそ奇跡なのである。

 

それを信じられるほど、放浪者は成長できてなかったのだ。

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