放浪者の稲妻行 〜超巨大機神統治国家〜    作:旅人さんた

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捌 接敵のゆくえ

ファデュイの軍勢が上陸する。氷の大柄な先遣隊が、浪人たちを押しのける。

「お前ら、本当に、使えない。厳しい氷じゃ、生きられない。そこを、どいてろ。」

 

「おい!ふざけんなよ。島の略奪は俺たちの褒美だ!こっちだって死んだやつもいんだからなぁ!」

 

「俺たちはただ、命令に従うだけ。そのあとのことは、興味、ない。」

 

ファデュイの姿を確認すると、抵抗軍の数名は後ずさりをはじめ、また数名は島の中心へ逃げ出した。

 

「珊瑚宮さまぁああ」

「ファデュイがき、きた!来ました!どうかお助けを!」

 

そんな姿をみて、ゴローは慌てて叫ぶ。

「おい、おまえら!背中を見せるな!」

 

ファデュイたちは、スネージナヤ製の武器を構える。

「はははっバーベキューだ!」

 

ファデュイの一人 先遣隊の炎弾が、逃げた一人にあたる。

「ぐわあああああつい!いたいぃぃぃみ、水...」

 

炎にくるまれた抵抗軍の兵士が、消化のために海へ飛び込む。

「ギィヤァァァ痛ィィ」

 

しばらく叫んだ後、静かになった。

「ば..ばっかやろうが!お、おまえら!あぁなりたくなければさっさと武器を...」

 

その出来事はすべての兵士の目に焼き付いた。

そしたこれまで理性で抑えていた恐怖が、各々へと一気に押し寄せる。

 

まさに、阿鼻叫喚。いち早く島の中に入ろうとする者や、海へ飛び込むもの。武器で自死を試みるものまで...

 

「終わりだ...海祇島も...稲妻も...」

おもわず、うなだれる。

大将とは言え、かれもただの少年なのだ。

しかし、そんな無防備な彼の命を刈る攻撃は、一向にやってこない。

顔を上げる。すると──

 

ゴローの目の前に謎の男が立っていた。

 

「あぁ?なんだお前、どっから出てきやがった。」

 

「誰であろうと、関係ない。目の前に立つものは、すべて殺す。それが...」

 

「女皇の命令かい?律儀なことだね。でも残念。君たちにはもう無理だ。」

 

明らかな乱入者。ゴローも、まだ頼っていいのか決めかねていた。

 

「お、お前は、誰だ。助けて、くれるのか?」

 

恐る恐るといった風で聞く、たとえ敵であったとしても、もう彼には対抗できる手段はこの身一つしかない。

 

だが、

 

「今のところはそう思ってくれて構わない。君と同じ、楓原万葉に任されたものだ。」

 

それを聞くと、ゴローは安堵の表情を一瞬浮かべ、その場に倒れた。

放浪者が加勢するまでの間、ずっと一人で指揮を執っていたのだろう。

 

「あぁ、そこでゆっくり休むといい。元同僚の狼藉は僕が始末をつける。」

 

「元、同僚、だと。おまえ、うらぎりもの、か。なんにせよ、ここで殺す。」

 

「こっちの話さ。気にしないでくれ。さて、さんざん好き勝手やったんだ。僕も久しぶりに味あわせてくれ。

そうそう、悪の味をね。」

 

先遣隊たちはやれやれといった風で、再度武器を構えた。

先頭に二人、あとは、見えているだけでも十五人ほど。

 

一回...いや二回か。

放浪者は目算を立てる。

 

さっさと終わらせることもできるが、話を聞き出すために残しておきたい。

 

───よし、それなら大丈夫だ。

 

「始めようか。君たちごときが、僕を満足させてくれるとは思えないけど。」

 

「もう、黙れ、どこのものかも、しらぬが、貴様が、正面を向いたのが、逆であればよかったと、後悔せよ。」

 

 静まり返る。

古風な稲妻の戦闘スタイルだ。

ファデュイも空気を読むことができるのか。

 

「燃えろ!」

炎の銃を持つ先遣隊がコインをはじいた。

 

始まりはそのコインが放浪者を燃やしてから。

 

だが、それは訪れない。

 

「空へ。」

 

ただ一言。

 

炎弾は、それまで放浪者のいた場所の数メートル後ろの岩に着弾していた。

 

では放浪者はどこへ行ったのか。

 

答えは単純。

 

「あ、あいつ!浮いてるぞ!」

 

「いい炎をありがとう。そしてここは水場。

想定よりも早く終わりそうだッ!」

 

 上空から鐘の音が聞こえる。

それは、ゴローにとっては明を告げる祝福の歌。

無粋の輩にとっては、宵を告げる死神の鎌。

 

 あとはもう一方的な虐殺だ。

先遣隊たちは、自分たちがいったい何にやられたのか把握する間もなく、肉片へと変わっていく。

 

「ハハハハハハ」

 

快楽が脳を満たす。

本当に、放浪者にとっては遠い昔に味わった感覚だった。

 

まるで、麻薬中毒者が出所後にもう一度自分を破滅へと導くような。

 

空を飛翔し、敵を討つ。

ファデュイはただ一人を除いて、全滅。

 

地上へ降りるまでの時間に、浪人も数人殺した。

 

後方にいた浪人はしばらく立ちすくみ、勇気あるものだけ放浪者のすきを窺う。

 

「ふぅ、とりあえずはこんなところか。」

 

「ん?どうやらとんだ勇者がまだいるみたいだね。

いいだろう。いくらでも相手になってやる。」

 

「さぁ、面白おかしくやろうじゃないか。」

 

適当に浪人の相手をし、飛翔を再開しようとした、その時。

 

「なぁんだ。所詮援軍がなくては幕府軍に対抗できない弱者だと思ってはいたが、なかなかの手練れがいるようじゃないか。」

 

船の方から誰かがおりてくる。

 

「なんだ、臆病者がのこってるじゃないか。残しとくのはこいつで十分。

君もさっさと仲間のところに行きな。」

 

「いやぁ、手厳しい。ははっ申し訳ないね、こちらも組織に属する身。簡単に動けないんだ。自由戦うために入ったっていうのに。」

難儀だね。と、その男は苦笑した。

 

「そうかい、なら好き勝手動くといい。幸い、君を縛るお仲間さんはもうここには残ってないよ。」

 

「あぁ。君には感謝すべきだ。俺を縛ってた枷は一つ。最後の一人になるまで動かないこと。

なんだろうね、先遣隊を差し置いてファトゥスが動くのは面目にかかわるって感じかな。」

 

「ファトゥス」...その言葉を聞いて、放浪者は身構える。

それは、これまで戦ってきた雑魚とは比べ物にならない戦闘力であり、加えて

古い自分の知り合いでもあるということだ。

 

「そう、ならさっさと出てきたら?感謝するなら、頭の一つでも下げるのが筋なんじゃない?」

 

「あぁ、準備はもう終わった。じゃ、戦いを始めようか。」

 

オレンジ色の髪に、引き締まった服。一見好青年な風に見えて、その実生粋のバトルジャンキー。

「公子」

 

「いいや、ここはこう名乗らせてもらおう。俺はタルタリヤだ、よろしく。」

 

 

 

 

・羽画・風姿華歌

大気の力を凝集し、その力を借りて大気の束縛を振り払う。周囲に風元素ダメージを与え、空中に飛び上がって「児姿優風」状態に入る。

 

・拾玉得花

羽画・風姿華歌を発動時、水元素/炎元素/氷元素/雷元素に触れると、触れた元素を基に現在の児姿優風状態に各種強化効果を与える。

 

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