「おはよう、シズナ」
《額に痣がある心優しい鬼滅の剣士。朝食の支度をしながら》
『 タンジロウ・カマド 』
「ふわぁ~ぁ……おはよぅ、タンジロ~」
《《白銀の剣聖》にして天衣無縫の美女剣士。眠たい》
『 シズナ・レム・ミスルギ 』
少年が親を亡くした時、その女の子と会った時の衝撃は凄まじかったことを覚えている。
こんなに綺麗な女の子がこの世にいるのかと。
妖精と本気で間違えた。
銀色に輝く白い妖精だ。
少し不安げに、でも興味ありげに視線を向けてくる女の子に、手を指し伸ばしたことを覚えている。
この先、この少女によって振り回されるなんて思いもしなかった。
◆
額に痣を持つ少年は、平和な毎日から突然《 鬼 》によって幸せを奪われた。
大陸東部に住まう人々はお伽噺にしか存在しないとされていた『人喰い鬼』によって脅かされていたのだ。
夜は鬼の領域となり、場所なんて選ばずに、人を喰い殺す混沌の闇。
魔獣という人類に仇なす生物も存在するゼムリア大陸だが、『鬼』は違った。
『鬼』は明確に人を食い殺す、食物連鎖とも言える当たり前の行為。人類の敵。これには《教会》でも問題視されてきた。
しかし『鬼』に負けまいと立ち上がるのは何も《遊撃士》や《猟兵》たちだけではなかった。家族を食い殺された剣の達人たちだった。
剣豪集団が集まり、人に害をなす鬼畜生を滅する組織《鬼狩》を作り、そこに集まった剣士たちは夜闇の中で血生臭い戦いの日々が数年に続いていたのだ。
その武名、勇名は他の地方にまでその雷名を轟かせ、傭兵団や暗殺集団、裏の組織〝結社〟まで広がり、遊撃士協会もが注視していた。
しかし、移民の問題で大変である《共和国》において、この《鬼》の問題は大変邪魔なものだった。
共和国政府は、直ちに問題解決を《鬼狩》の代表と相談をするが、その矢先に問題が発生した。
《鬼》を統率、もしくは生み出していた元凶でもある《鬼王》と呼ばれる人物《ムザン・キブツジ》を発見。
その場所がよりにもよって《共和国》首都・イーディス近郊の森林公園にてその決戦の火蓋は切られた。
そこに参加していたのが、鬼によって平和に暮らしていた人たちから守る刃となった《鬼狩》の剣士、タンジロウ・カマドだった。
幾度と死線を巡らされたタンジロウは、《鬼狩》剣術開祖であるヨリイチの弟子となり、天性の肉体を持っていなかったことで自らを死に追い込むとされる最強の『呼吸剣術』を使用して戦いに望んだ。
仲間たちの決死の突撃、繋いだ攻撃の数、死んでいく剣士たちを掻い潜り、ついにタンジロウは《鬼王》を刺し穿つ。
タンジロウだけではなく、《鬼狩》の幹部たちも四肢がもがれても刀で刺し貫き、縫い止める。
《鬼王》を殺せる唯一の方法は《太陽》
陽光が照らすように森林公園の一部は広範囲に伐採されたように戦いは広げられていた。
《鬼王》の恐ろしさはその
その日その時、首都・イーディスには強者や遊撃士も向かっていたが、《鬼狩》剣士たち全員が全てを賭けて《鬼王》滅殺に命を注いだ。
その凄まじさたるや、現場に到着する警察や遊撃士、果ては裏の人間たちもそこに集まるが、そこは決して入り込める領域ではなかった。
《鬼王》ムザンは人の形から抜け出し、肉と牙の《鬼》と成り、必死に陽光から逃れようと暴れまくる。
それでも尚、ムザンによって生み出された千刃によって四肢をもがれた剣士たちは死を恐れるよりも怒りによって突き動かしていた。
《鬼王》ムザンによって下半身を削り飛ばされた剣士は、それでも死ぬその直前まで刀を離さず突き刺していた。
《鬼王》ムザンによって毒に侵された剣士は見えない目が潰れたまま斬り込んだ。
まさにそれは地獄絵図だった。人がこんなにも簡単に殺されていく光景はなかった。
しかしそんな地獄を終わらせる為に、《鬼王》も陽光によって焼き死んでいく。
チリヂリと音を立てて、塵も残さず消えていった。
朝日がその場に広がり、最大の悪鬼の王が、この世から消えた瞬間だった。
その《
そこからというものは忙しいものだった。
首都近辺で起きた大事故とも、大事件ともとれるこの事態、共和国中央情報省はこれに情報統制を敷かれ、その真実は現場に訪れたものにしか知らないものとなった。
こうして、悪鬼討滅を果たした剣豪衆《鬼狩》は、表と裏からその姿を消したのだった。
◆
悪鬼討滅の報告を受けた《鬼狩》の最高責任者、カガヤ・ウブヤシキはその身に受けていたであろう呪いが無くなっていくのが分かった。
「やって、くれた、やってくれたんだ、あの子たちは!! ゴホゴホッ!!」
「カガヤ様!」
血反吐を吐きながら、布団から身を乗り出してそう叫んだカガヤは、すでに満身創痍だった。にもかかわらず、その声には生気が宿っていた。
「たくさんの子が死んだ、大勢死んだ、苦しんで死んでしまっただろう。それでも、何千年と続いたあの鬼を、わたし、たちは、斃したんだッ! ゴホゴホっ!!」
「落ち着きを、カガヤ様」
「すまない、すまない……ありがとう、あり、がとう。ありがとう、我が子たち……っ! ありがとうっ」
呪いによって爛れた肌と、視力を失った目でも、十分苦しがっているであろうその男は、何代も続いたこの悪夢を終わらせた剣士たちに感謝の言葉と共に大量の涙を流していた。
夫を支えていた妻であろう白髪の女性も一緒になって涙を流す。
「……だからこそ、私は死に物狂いであの子たちを守るんだ。絶対になんとしても守る……」
はぁはぁと、興奮していた自分の感情をすぐに抑え込んだ男は、重病人には決して見えない風格ですぐに取り掛かる。
「アマネ、子供たちも我が家の呪いが解かれたことで開放的になっているだろうが、すまない。私たちは守らねばならい子たちがいるんだ。すぐに……」
「承知しております。ヒナキ、ニチカを遣いとして出してきます」
「頼む。通信ではなく……」
「はい、既に準備させております。必ず本人たちが赴くようにと」
「よし、それと……」
「キリヤをお呼びしますか?」
まるで考えを読んでくれるように、妻のアマネは言葉を継いで話してくれる。喋る体力すら余りないカガヤにとって助かっていた。
「頼むよ、私の名代として会わせるからね」
呼吸する肩を震わせながら、カガヤは思う。
(どうか、もう鬼に苦しむ人が居なくなりますように)
呪いが無くなったとしても、その傷跡が残っていることを重々承知しながらも、今は、呪いに解放されたことを喜ぶと同時に、散っていった剣士たちのことを悲しんでいたカガヤだった。
◆
見事、《鬼王》を討伐したタンジロウたち鬼滅の剣士たちは、剣豪衆《鬼狩》の代表、カガヤ・ウブヤシキによって組織解体を宣言した。
しかし、それは《鬼狩》が消えるだけで、組織は他に組み込まれるようになるとのこと。
その合流するであろう組織とは、侍衆《斑鳩》
これには納得する者も少なくなかった。
この《斑鳩》とは古くから付き合いのある数少ない《鬼狩》の協力関係のある組織であり、懇意にしている仲間内でもある。
(そうか、《鬼狩》の名前は無くなるけど、《斑鳩》に……)
タンジロウは、あの死線を生き残ったにも関わらず、今は《鬼狩》が所有する山奥の建物にベッドの上で寝ていた。
導力技術による最新鋭の建物で、タンジロウが見てきたあらゆる建物でもこれは見たこともないものだった。
まるで実験動物を見るようにして、ガラスに隔たれた部屋に寝ている。
圧迫感を与えないように、陽光を入るよう設計された厚いガラス窓で外が眺められる。
タンジロウは、スピーカー越しに話してくれる師兄にして、兄のように導いてくれた剣士、ギユウ・トミオカからその話を聞いた。
『……すまない、タンジロウ』
心底申し訳なく、そしてどこか歯がゆさを感じさせる声でそう言うギユウに、タンジロウは微笑む。
「謝らないでください。検査が終えれば、自由なんですから」
そう話すタンジロウに、先の《鬼王》討滅にて命懸けで戦った剣士に対する対応に、悔しさを滲ませて声を絞る。
『……外には出られる。体の検査も終わった。だが、お館様は条件を出された。いつ如何なる時でもタンジロウの頚を落とせる剣士を周りに置くことを、と』
ギユウの言葉に、タンジロウは頷く。
「そうですね、その通りです。俺の中に《鬼王》ムザンがいるかもしれないので」
タンジロウの中にムザンが。
そう、タンジロウは片腕と片目をあの激戦にて無くしていた筈なのに、今は綺麗に治っていた。
これは《鬼》特有の超速再生を思わせる生命力。
タンジロウは、ムザンから何かしら力を受け取ってしまった可能性があった。
それに危機感を覚えるのは至極当然の反応だった。
数百、数千年、生き抜いたのだあの《鬼王》は。
その生命力を侮ることは決してない。
それが鬼を滅することを生業とする鬼滅の剣士たちだった。
『俺も義手を貰い次第、その任につく』
「ええ!? 本当ですか! ギユウさんになら安心して任せられますね!」
『……馬鹿者が』
そう話すギユウの顔は、不満があれ、タンジロウの強さを知っているのですぐに本題に入る。
『それまでは、万全な警護をお前に付かせると同時に、
「えっ?」
今の状況的に、かけ離れた言葉が出てきた為に驚くタンジロウ。
『表的には、《鬼王》討滅の最大功労者であるタンジロウに褒美だそうだ。向こう側もそれを望んでいるという』
「え、ちょっ、ギユウさん?」
『柱たちからすればそれが政略結婚だとすぐに分かったが、相手があの姫様なら何も問題はないという……俺には分からなかったが……』
「ギユウさん!?」
こんなに話すところみたことなかった
『向こう側からしたら絶対に手に入れたい大戦力、そのための繋がり、縁を結ぶ為のものというが』
そこまでぶ厚いガラスから話していたギユウをよそに、タンジロウの部屋に繋がる扉が突如、斬り裂かれる轟音が響いた。
その斬り裂いて扉から現れたのは、雪が舞ったように靡かせる綺麗な白い髪、銀色に輝く長い刀、それを難なく鞘に納めて悠々と歩いてくるのは、数えるくらいしか居ない《剣聖》の一人。
「迎えにきたよ、旦那様♡」
《斑鳩》副長である、シズナ・レム・ミスルギだった。
◆
月日が流れ、二人の剣士は、若いながらも夫婦生活をカルバード共和国首都イーディスに移り、毎日を幸せに暮らしていた。
「おはよう、シズナ」
「ふわぁ~ぁ……おはよぅ、タンジロ~」
眠たそうに欠伸をしながら起きてきた無防備なシズナに、タンジロウは微笑みながら席に座らせる。
「今日も散歩や釣りにでも行くの?」
「それも飽きてきたなぁ~ふぁ、ぁ~」
イーディスでも珍しい白米の朝食をテーブルに並べていくタンジロウ。
「タンジロウは事務所でお手伝いかな」
「うん、そうだね。あとビクトルさんのお店の手伝いとか」
「えぇ~! もっと夫婦水入らずにさぁ、イチャイチャをさぁ! しようよ~!」
バタバタと体で不満を表すシズナにタンジロウは笑う。
「だったら一緒にやろうか」
「気が向いたらねぇ」
笑顔で『めんどくさそう』と表現しながらシズナはタンジロウの誘いを避ける。
「もう……タンジロウは頑張ったんだから、もうずっとニートで一緒に自堕落に生きていこうよ」
「そんなする気もないこと言うんだからシズナは。君が体を動かさないと我慢できないことを知ってるんだぞ」
そう言って、一緒に朝食を食べ始める二人。
流れるように当たり前のようなその動きから、数年このように二人でやり取りをしていることが分かる二人の生活のリズム。
二人はイーディスに来て既に数年が経っていた。
二人で決めた、と言っているが殆どがシズナが台風のようにあらゆるものをぶっ飛ばして、こうしてイーディスに住み着いている。
カルバード共和国の首都。移民問題や様々な事件が起きるこの街で、二人は自分が属している組織ごと
どうか、どうか気軽にコメントを。
お待ちしております。
ゲームしながらずっと空想していましたこんなニヤニヤ妄想。
他にも鬼滅剣士たちを出していきます。物語構成上、おかしな方向にいかないか不安になりながらも、妄想をどんどん書いていきます。
それでもよかったらぜひ読んでいってください!