深夜のプロダクションで、美城はネットで、シンデレラ号で発生した爆破未遂事件のニュースを見ていた。
事件の内容として、346プロダクションのシンデレラプロジェクトの事も記載されていた。
「事件は解決し、知名度も上がっている。結果的によかったな。」
「専務…嬉しそうだね。」
杏が音もなく部屋に入ってきた。美城は杏の登場に驚きもせずに、飴玉とジュースを出した。
「気が利くね。」
「双葉杏。何か用かな?」
「専務、嬉しそうに見てたよね?何見てたの?」
「事件が解決したらしいからな。それが嬉しくて何が悪い?」
美城は当然だと言っているようだ。だが、杏はそれに反論する。
「杏からしたら、346プロダクションの知名度が上がって、嬉しそうにしているのかなて…違うの?」
「確かに、知名度が上がれば、嬉しいのは正直あるが…上がりすぎなのは、リスクを伴う。デメリットにしかならない。」
「だったら、知名度が上がっても、メリットだけを生むことができたなら、やるのかな?」
一瞬だが、美城の目付きが変わった。その変化に杏は嬉しそうに笑みを浮かべる。
「今回のシンデレラ号の爆破未遂事件がそうだよね?」
「私が関係していると、言いたいのか?」
「偶然にしては、出来すぎてるよね?だからさ、杏なりに情報集めたんだよ。」
「何?」
「その前に、仮説だけど…専務は最初から知ってたんじゃないの?プロダクションに潜入してた犯人を…」
「面白い冗談だな。プロダクションに潜入した犯人。それは今回の爆弾騒ぎの犯人の存在をか…?」
「そのつもりで言ったよ。それと、専務は前にさ…青に【江藤青の他に、怪しい動きをしている者がいる】と…言ってたよね?」
「確かにいった。」
杏の言葉に、美城は否定せずに認める。
「専務は杏に、青の監視を頼んでたから…杏の事を言っている訳ではない。だったらさ…1つしかないよね?」
美城に鋭い目付きで、見据えている杏は、言葉を続ける。
「専務はその怪しい人物を匿っている…その可能性を考えたんだよ。青に忠告するのは、不自然じゃない?専務と安室さんは共犯者なのに、その話を安室さんにしてないよね?」
「…………」
「杏にも、スパイの可能性を考えて、青の監視を頼んだ。その理由付けは納得できるよ。その当時、杏は青が探偵として、潜入していることを知らなかったからね。でも、青の監視は不自然過ぎる。専務は安室さんから、青の潜入理由を知ってるはずだから。どう…何か間違ってる?反論があるなら言って…」
「江藤青の行動が明らかに目立ち過ぎている。あれでは、何かを調べに潜入していることが、周りに知られる可能性を考えたからだ。」
「矛盾してないね。」
「事実だからな。飴を追加しようか?」
「お願い。」
皿に飴を盛った。杏は飴を食べて話を続ける。
「さて、シンデレラ号の爆破未遂事件の話でもする?」
「双葉杏の仮説を拝聴しようか?」
「爆破未遂事件は専務が用意したシナリオだよね?偶然も入るけど…」
「ならば、そのシナリオを用意した動機は?どうやって、爆破事件を遂行したのか、説明できるか?」
「偶然も入るって、言ったでしょ?専務がやった行動は、犯人に花火イベントの話をするだけだよ。」
「それだけ?」
「うん、それだけ。後は、勝手にあの犯人が行動する。実際、爆破未遂事件が発生したからね。動機は…346プロダクションの知名度を上げるため。事件を起こさなければ、無事にイベント終了で、安全に知名度が上がる。」
「……でも、逆に事件が発生すれば…それは、危険な賭けだな。」
「だから…安室さんと青がいるんでしょ?青がシンデレラプロジェクトに配属されたのは、偶然かもしれない。でも、安室さんがプロジェクトに配属可能なのは、専務しかいないよね。安室さんと青は探偵役として、行動させて事件を解決させるように動かした。」
杏は全ての推理を美城に話終えると、だらけきった表情になる。
「話疲れた…杏のキャラじゃないね。専務、反論ある?正直、この杏の推理…外れて欲しいんだよね…」
「安心しなさい。全て、外れだ。だが、双葉杏に誤解を招いてしまったのは、私の落ち度だ。謝罪する。」
「…安心したよ。そんじゃあ帰るね。」
「気を付けなさい。双葉杏は探偵役も出来ると、武内に言っておこう。」
「やめてよね。杏は不労取得を希望してるから。」
杏は部屋から出ていった。
「……面白い推理をしたものだな。」(半分…正解だが…)
美城はプロダクションを出て、帰宅した。