プロローグ
「少将閣下!」
アレクセイ=ヴィシンスキーは作戦地図とにらめっこしていたその顔を、指揮所に飛び込んで来た部下に向けた。
「どうした、中尉」
「敵、魔導士部隊がアルフレッド大隊を壊滅させた、と報告が!」
「何だと!?数は?」
「旅団規模、最低でも6000はいると..!」
「バカな..それだけの魔導化部隊をこの戦線に集結させることなど..」
アレクセイは慌てて作戦地図に目を落としどうにか敵の進撃を止める手だてを模索し始めた。
そして、直ぐにある一つの可能性に思い至る。
「おい、第3師団に連絡しろ。敵はこの第1師団、第2師団が防衛するこの戦線に魔導化部隊を集中させ突破を試みていると思われる。ならば、他の戦線は相対的に手薄になっているはずだ。そこを突く」
「り、了解致しました」
中尉は直ちに無線を取り、第3師団に連絡を入れ始めた。
その様子を見ながらアレクセイは落ち着きを取り戻し、余裕のある表情で独り言ちる。
「ふん、敵は我々をよほど舐めていると見える。それだけ大規模な魔導化部隊の動員をすれば、他の戦線から魔導士を大量に引き抜かざるを得ない。通常兵力ばかりの師団ならむしろこちらの魔導化部隊の力で蹴散らせる。そして奴らを此方が包囲してしまえは..」
そこで、彼は第3師団に連絡を入れているはずである中尉の声に違和感を感じ、楽観的な妄想は中断される。
「第3師団!応答せよ!応答してくれ!何があったんだ!?」
「中尉、どうした?」
「第3師団司令部と、連絡が尽きません..!」
悲壮さを感じる中尉の報告を聞いたアレクセイは背筋に寒気を感じた。
「中尉!君は我が師団の他大隊と第2師団にも連絡し、第二防衛線まで下がらせろ!」
「手遅れかもしれませんが..」
「少しでもいい!時間を稼ぐんだ!私は第5師団に増援を頼む。まさか全戦線に渡って、ということはあるまい..」
アレクセイはそう言いながらも、最悪の想像をせざるを得なかった。
「第5師団、応答願う。第5師団、こちら第1師団司令、アレクセイ=ヴィシンスキー少将!」
『こちら第5師団!』
応答があったことに安堵した彼だったが、無線機の向こうから聞こえきた言葉は彼を絶望の淵に叩き落とした。
『丁度良かった..助かったよ..援軍の要請をするために連絡しようとしてたところだ』
「何..?」
無線機の向こうの相手もアレクセイの声色で察したようで、『まさか..』と唸った。
「そのまさかだ。我々も攻撃を受けている。それも、大規模な魔導化部隊だ。更に悪いことに、第3師団と連絡が取れない」
『...援軍はとても無理だろうな。此方も大規模な魔導化部隊だ。信じられんことにな..』
「どうやら敵は何か画期的な技術でも開発したのだろう。...武運を祈る」
『そっちもな..』
無線を閉じたアレクセイは深く、深く息を吐き出す。
彼は、師団の部隊に撤退を命じ終えていた中尉に司令部への報告もするよう命じ、指揮所の外へ踏み出した。
「最悪だな..」
指揮所を出ると付近で行われているであろう戦闘の音が聞こえてくる。
「もう、これだけ近付かれているのか。撤退もさせてくれないとはな..」
彼は、侵略者達を恨むことしか出来なかった。
「少将閣下」
司令部に報告していた筈の中尉がいつの間にか彼の後ろに立っていた。
「報告は済んだのか?」
「はい..報告を終えると、少将宛に命令が下されました..」
「なんだ?」
「我々に余剰戦力はない。其方の戦力で持ち場を死守せよ。と」
「ここで死ねということか。言われずとも、生きては帰れんな」
アレクセイは静かに目を閉じ、心の中で、故郷の家族に別れを告げる。
そして、憎き侵略者共に災いあれと強く、強く、願った。
やがて、アレクセイらの目の前にも、敵は迫って来た。
青い生地に、白く大きな菱形、その中に黒い獅子の描かれた旗。
彼らにとっては忌々しい、奴らの、オストレオン帝国の国旗を掲げて。
始めまして。
オリジナル小説の執筆は初めてで、至らぬ点は多くあると思いますが、よければ読んでいってください。
多少の突っ込みどころは温かい目で見逃すか優しく指摘していただけると嬉しいです。
また、pixivさんの方にも同じものを投稿しています。
利用規約に、同一人物と分からない形でのマルチ投稿が禁止されているので、証明の為にpixivさんの方でもリンクを貼る形で証明しておくことをここに報告しておきます。
https://www.pixiv.net/novel/series/10036113
こちらがpixivさんの方でのリンクです。
また、pixivさんの方で既にかなりの話数投稿しているので、暫くの間は毎日投稿していくつもりです。
更に、最初の三話程は時間をおかず投稿します。
改めて、よろしくお願いいたします。