民主国家連合
その名は、世界大戦を終わらせた国というだけでなく、歴史の中に、それ以上に重要な意味合いをもって記録されることになる。
国父 アベル=オイゲン、国母 エミリア=ギャズダ、建設者 エルンスト=ヴェルナー、その三名の英雄の名は、多くの、民族対立や、レオニカ人の加害問題、補償に関わる問題、レオン帝国に抵抗しなかった民族と抵抗した民族間での反目、それらに伴う衝突。外国からの分離工作、領土問題等、様々な問題を抱えながらも、百年近くに渡って民主国家連合を支える要因となり続けた。
特にアベルの名は、皮肉にも彼が故人となったが故に、多少の尾ひれもついて、自由と平等を求めた闘士、そんな風に強力な伝説となって語り継がれることとなった。
彼の遺志が、国家を繋ぎ止める重要なファクターとなっていった。
周囲の大国に対抗するために必要という現実的な観点も勿論だが、それだけで人々は纏まらない。
理念は、アベルが支柱となったのだ。
そして、ヴェルナーは公平な裁定者として、エミリアは、理想を求める民主国家連合の理念者として名を残す。
二人の選挙での応酬と、緊急時の団結ぶりは、民主国家連合における政治の手本と称された。
国際的な対立、国内の問題、民主国家連合は崩壊の危機に何度も晒されることになるが、各々の伝説や手腕、理念によってそれらの危機から国を救い続けたのだ。
勿論、彼らの後継者達も尽力した。
しかし、人類の常である。
民主国家連合も、永遠ではなかった。
時が経つほどに、伝説は忘れられていくものなのだ。
それでも、この国の名は、"奇跡の国"の異名と共に、更に長く語り継がれていく。
多種多様な人々が、同じ国家として、纏まり、共存した。更に言えば、対立していたはずの諸民族が、である。
その"奇跡"は、人類史の中に、燦然とした輝きとして残るには充分であった。
アベル=オイゲンの掲げた理想は、確かに、世界に息づいたのだ。
一つの理想主義として、しかし、実現もなされた理想として。
良し悪しは勿論あるだろう。
好悪も無論のこと。
だが、人々は、どんな形であれ理想を、未来を求めて戦い続ける。
武力を用いたものかもしれない。平和的な議論かもしれない。
時には、理想や未来から逆行することもあるかもしれない。
だが、人類は、未来へと向かい続ける。
アベルが、理想を掲げて、足掻いた様に。
明日を求めて戦うことは、人類が続けてきた最大の営みだ。
人々の理想を求める闘争は、これからも、続いていくことだろう。
新しい未来を求める、闘争に終わりはない。
Unser Kampf 完
エピローグです。
前回が実質的に最終回で、これは蛇足になりかねないなという思いもあったので一話で纏めず分けることにした形です。
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
エリュニス-慈しみの神達へ-という新しい作品も投稿しておりますので、よければ其方も読んでいただけると幸いです。
感想、評価も頂けると励みになります。
それではUnser Kampf はこれにて完結です。
改めてありがとうございました。