「故郷を離れる選択は辛いだろうが、いずれ我々が取り戻す。今は共に行こう!」
住民達はV.Bの言うように、街に残っても未来が無いことを悟っており、スムーズに事は運んだ。
V.Bの部下達が親衛隊を「劣等を始末した後の遺体処理用」と騙し、武器と共に街へと運んできていたトラックに住民らを載せていく。自力で動けない者等は解放軍が車に運びいれていき、最後の一人が乗車したことを確認すると、彼らはトラックのエンジンをかけた。
「では、皆さん。我々はこれで失礼します」
殆どがバン型のトラックであったが、一台だけ、平ボディのトラックも来ており、アベルはルドルフを拘束したまま、部下を何人かと彼らに親衛隊員数人を連れてこさせ、そのトラックに乗り込んだ。
「彼らは町外れで降ろします。後を追って来たたりしたら、分かっていますよね?」
周囲で悔しそうに様子を眺めていた親衛隊員らにそう言って、彼は不敵に笑った。
次々とトラックが発車していき、最後にアベルの乗ったトラックが発進する。
その場に取り残された親衛隊らを警戒しながら、アベルは遠ざかる広場を見つめていた。
「わざわざ、夜まで時間を稼いだのは..」
トラックに揺られていると、ルドルフは何かに気が付いたような顔をした後、既に悔しさや怒りで歪んでいた顔を更に歪めながら、呟いた。
「お察しの通り、大抵の街が殆ど眠りについている時間ですから、目撃者も最低限に抑えれるのでね。こうして大規模な移動をするには夜の方が都合が良かったのです」
その後は特に会話もなく、トラックは街を出た。
そこから更に数分走った後、アベルらのトラックは一旦停止する。
「さて、お別れです。総督閣下」
アベルはそう言って、投げるようにルドルフをトラックから放り出した。
他の連れてこられていた隊員達も、粗っぽく降ろされる。
「では、ご機嫌よう。閣下」
アベルのその言葉と共に再びトラックはエンジンをかけ、走り出した。
走り去っていくトラックの後ろ姿を眺めながら、ルドルフは投げ出された際に乱れた服装を直す。
他の隊員達も銘々、服を直し、帽子を整え、殆ど無言で街の方へと向かい始めた。
やがて、街、といっても住民がいなくなり、先程廃墟となったグダルスカに戻り、親衛隊らのいる広場へと行った。
「ご無事でしたか」
黒服の親衛隊の中で唯一カーキ色の軍服を着た副官が安堵しながらルドルフを出迎える。
「早速ですがご報告したいことが」
直ぐに険しい顔に戻った副官は言いにくそうに口を開いた。
「先程までのゴタゴタの中で、我々が用意していた戦車3両を奪われてしまったようです」
「...魔力戦車をか..」
「はい..」
「痛手だな..」
フーッと溜め息を吐いたルドルフの元に、親衛隊の一人がやって来た。
「閣下。このままやられっぱなしでは!我々の面子が丸潰れです!我々も収まりがつきませぬ!こちら側の人質無き今、今からでも追うべきです!まだ追い付けるはずです!」
彼は早口でそう捲し立てる。
周りの親衛隊員にも同じような考えの者がいるようで、既に武装している者達までいた。
だが、ルドルフはそれを拒否する。
「全て、許容範囲内、想定内だ。奴が本当に組織のボスかも分からんのだ。今更、新たに犠牲を出してまで追う必要はない」
負け惜しみにしか聞こえないその言葉で満足する者は居らず、親衛隊員らはルドルフを不信の籠った目で見るだけだった。