Unser Kampf   作:ライト鯖

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liebe Familie

 

 グダルスカの住民達を乗せたトラックは、数時間もの間、南へ行ったかと思えば北に、東へ行ったかと思えば西に、と複雑なルートを辿っていき、ついに停車した。

 トラックの荷台の扉が開けられ、疲れきった住民らは解放軍の助けを借りつつ、トラックから地面へと降り立って行く。

 

 「皆様、お疲れ様でした」

住民らに声をかけたのは、きっちりと整えられた真っ直ぐな長髪で、住民らにとっては懐かしい、かつてのヤゲノ王国の警察官に色合いから何まで似ている服装をした男だった。 

「私は、ジャック=コワルスキー。私の部隊が皆様をご案内致します」

彼の後ろにも同じ服装の男女入り交じった者達が10人程立っていた。

 その後ろにはお世辞にもキレイであったり、豪華といった形容は出来ないものの、不潔とも言い難い、プレハブやコンクリート、石材らしき素材の建造物が入り雑じって建ち並び、それらの建物の間にある一応整備されている土の道を多くの人々が行き交っている様子が伺える。

 

 「ここは..?」

住民の一人が尋ねる。

「ここは、我々ヤゲノ解放軍が建設した解放区、"ナジェルノスク"です。我々がヤゲノを解放するまでの皆様の仮住まいもこちらにご用意してあります」

「こんな大規模な街、何故、見つかっていないんだ?」

「申し訳ございません。詳しく教えることは出来ないのです。皆様を疑いたくはないのですが、情報の漏洩は命取りですから」

ジャックはそう苦笑した。

「では、皆様、ご家族ごとに固まられて下さい。我々が皆様をお住まいへ案内致します」

そう促されて、幾つかのグループへ分けられたグダルスカの住民達はジャックの部下達にそれぞれ連れられて行った。

 

 「あの..」

全員を見送ったと思い、そのまま自身の持ち場へ戻ろうとしたジャックの服を誰かが引っ張る。

「ん?君は?」

見ると、そこには、短く纏められた茶髪に、星形の髪飾りを着け、目鼻立ちの整った美しい顔立ちながらも、まだ少女と呼べる見目をした女性が立っていた。

「あの、私もグダルスカから来たんですけど..えと..」

「あ、すまない。もしかしてご家族は..」

付いていくべき家族がいなかったのではないかと危惧し、己の不注意を後悔しかけたジャックに彼女は目を潤ませながら言った。

「家族は別の街にいて、私だけ..ここに..」

「別の..?友達の家にでも来ていたのかい?」

ふるふると少女は首を振る。

「街の人達が人質にされる3日前に、別の街から、私だけ連れてこられたんです..『人口政策だ』って」

 「!..すまないお嬢ちゃん。少し待っててくれ」

ジャックは、直ぐ近くにある検問所へと走り、本部へと連絡を入れる。

「本部?グダルスカから連れてきた住民の件なんですがね..」

少女から聞いた事を説明した後、先程住民らを案内しに行った部下達に無線を入れた。

「各員、グダルスカの人々に、数日前からの出来事を詳しく尋ねてくれ。重要なことだ。後で検問所で報告を頼む」

ジャックは無線を切り、少女の元へ戻った。

「またせたね」

少女は今にも泣き出しそうな顔をしていた。

「私、私、家族にお別れも言えてないんです..突然で、急に知らない街に連れてこられて..」

「......」

涙を溢し、嗚咽を漏らしながら、少女は絞り出すように言う。

「あの..せめて、家族に、連絡したいです。もう、合えないことは分かっています。だから、せめて..電話だけでも..」

「...すまない。電話は無理だ。私もご家族の声を聞かせてやりたいとは思うが、帝国は電話を盗聴している..」

ジャックは帝国の身勝手さに怒る拳を握りしめ、彼女にはすまなさそうにそう言った。

「じ、じゃあ、せめて手紙だけでも..」

「...内容を此方でも確認することになると思うが、それでも良ければ」

それを聞いた少女は少しだけ顔を明るくさせる。

「そうだ。一応名前を教えてくれるかい?」

少女はまだ涙で目を腫らしていたが、どうにか笑みを作り出し、自己紹介をする。

「あ、私、エミリアって言います。エミリア=ギャズダ」

 ジャックはそんな健気にも、気丈に振る舞う彼女を疑うという不粋な真似は、しなかった。

 

 

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