Unser Kampf   作:ライト鯖

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"Code:Abfall"

 

『親愛なる私の家族達へ 

 

 心配かけてごめんなさい。私は無事です。優しい人達に助けてもらいました。でも、もう街に戻ることは出来ません。もう皆と二度と会うことは出来ないかもしれないです。突然でごめんなさい。だから、せめて、手紙を書いています。

 お父様、お酒への無駄遣いはやめて、どうか皆のためにお金を使って上げてください。

それと、もうすぐお誕生日ですね。お祝いできなくてごめんなさい。実はお祝いのために買ったガーナードのワインが私のベッドの下にあるの

今までありがとう。大好きだよ。 

 ジェームス、あんまりお父さんとお母さんを困らせちゃダメだよ。それと街の東地区に住んでるランスくんのお姉さん、ナナリーちゃんに伝えておいて、"約束を守れなくてごめんね。今まで楽しかったよ"って。ジェームスも友達を大切にしてね。愛してる。

 お母様、今まで沢山迷惑をかけてごめんなさい。いつも美味しいご飯を作ってくれてありがとう。何かの足しになればと思って、私の本棚の奥に、幾らかお金を貯めてました。私はもう使うことはないので、家族のために使ってください。何も親孝行出来ないまま、お別れになっちゃってごめん。ずっと愛しています。

大切な皆にいつかまた会える日が来ると、僅かな希望を祈り続けています。

さようなら。   

エミリアより』

 

 エミリアが家族に当てて書いた手紙は、ジャックら街の警備部隊の分析係が一度内容をチェックし、問題の無い範囲であることを確認した後、他の幾つかの同じ境遇の人達の手紙や協力者への連絡、届け物等と共に、解放軍のメンバーがヤゲノ総督府内を届けて回る。

 本来、協力者と解放軍のネットワークを私的郵便の様に扱うことは危険であり、基本的に許可されないが、ジャックが今回は事情が事情故に例外的に、と本部と交渉し、許可を得たのだった。

そして、その手紙はエミリアの言った住所へとひっそりと届けられる。

その家にいた女は届けられてから暫く経って、ドアと床の隙間に手紙があることに気が付き、取り出す。

そして中身を読むと、用意してあった、別の封筒へと手紙を入れ替え、街外れへと向かった。

 街の外れに停めてあった小型の車に乗り込み、女は車を発進させる。

そして、その街から少し離れた場所にある、都市、ヤゲノ総督府領首府"ヤゲノスルカ"に入り、総督府の庁舎へと向かった。

 

 女から手紙を受け取ったその男は中身を読み追えると、手紙を閉じ、机に積まれた書類の山の向こうへ、無造作に置いた。

「ご苦労」

そう言って女を帰し、男はくつくつと笑う。

 

 「作戦は成功したわけですね」

女を見送り、部屋に戻ったフリッツ=ワシンスキーは、上司、自身が副官を勤める、現在、上機嫌な様子の総督、ルドルフに言う。

「ああ、誤算や、想定外の損害はあったが、大成功だ」

ルドルフにつられて、ワシンスキーはニヤリと笑った。

「スパイを送り込むという当初の目的は完全達成、その上、首尾良く連絡まで来たわけですか。総督閣下の作戦的勝利ですね」

「おかげで、あやふやながらもヤゲノのどの地域に、奴らの本拠地、少なくとも大規模な拠点があるのかは掴めた」

「もうですか!?初めの連絡でそれとは..信用出きるのでしょうか..?」

「私の人選に問題があると?」

「あ、いえそういうわけでは」

ワシンスキーが慌てる様子を見て、ルドルフはフッと笑う。

「冗談だよ。連絡は二通来た。両方ともヤゲノの東部にいると言っている。両方いきなり裏切っているとは考えにくいだろう。故に真実と見て良いだろう」

「複数送り込まれたのですか?」

「その為の"人口政策"だよ。大量の人間を作戦前にグダルスカへ無作為に送り込み、その中に複数のスパイを混ぜたんだ。見知らぬ顔がいてもグダルスカの者達に気付かれないようにね」

「なるほど、その為の..もしや全貌を把握しておられるのは総督閣下だけ..」

「今、君が知った。君を信頼しているから話すんだ」

「ありがとうございます..して、裏切る可能性はないのでしょうか?」

ワシンスキーの質問に、ルドルフは楽しそうに答える。

「当然その可能性はある。だから、複数送り込んだこと自体奴らには教えていないし、スパイも様々なパターンを用意している」

「パターン、ですか..」

「ああ、先ず、我が帝国の諜報機関の者、つまりは専門の人間だな。それと、外部のスパイを金で雇ってもいる。素人も何人か金で雇った。そして..」

ニヤリとルドルフはもったいぶった様子で口を開いた。

「我々が家族を人質に取り、潜り込ませたスパイ、だ」

「つまり、様々なパターンでスパイを送り込むことで、同時多発的な裏切りなども阻止している、と」

感心しきりのワシンスキーにルドルフは満足気に頷く。

「そういうことだ。金で雇っている素人や家族を人質にしてるのも訓練自体は最低限しかしてないからその辺りは半分囮のつもりだったんだがな」

 ルドルフは先程、無造作に置いた手紙をチラリと一瞥する。

「家族の情というのは面白いな。まさか最も役に立つ情報を送ってきたのが、家族を使って潜り込ませた劣等だとは」

 

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