親衛隊らにトラックへ押し込められたエミリアらはその狭い荷台に苦しめられ、数時間かけて、工場へと運ばれた。
そこで降ろされた彼女達は先ず、魔力の保有量を調べるため、一人一人を魔力検査機にかけられ、保有量の多い者は振り分けられ、何処かへ連れ去られた。
エミリアら一家は全員保有量が少なかったので、その場に他の多くの者達と共に一列に並ばされ、残された。
やがて、国防軍のカーキ色の軍服を着た中年太りし、頭部はてっぺんは禿げ、後頭部以外はあらかた抜け落ちているといった容貌の男が護衛と思しき何人かの若い軍人と共に部屋に横柄な様子をありありとさせながらやって来た。
彼は、これからこの工場で奴隷となる人々を一人一人見て回り始めた。
突然、エミリアの前で止まると、他の人よりも圧倒的に長い時間をかけ、舐め回すように、全身をじろじろと眺める。
「ふぅむ..」
ニヤリと下卑た笑みを浮かべた太った軍人は、エミリアの腕を掴み、列から出した。
「君は、私が可愛がってあげよう」
そう言って、彼はエミリアを部下に拘束するよう命じた。
「いや!止めて!」
エミリアは掴み出された困惑から立ち直り、自身に降りかかるであろう災厄を想像し、拘束に抵抗する。
若い軍人は思っていたよりも力の強かったエミリアに苦戦し、中々拘束出来ずにいた。
「エミリア!」
思わず、彼女の母親は声を上げてしまう。
「んー?」
太った軍人は母親の方をじろりと睨み、数秒考えた後、エミリアに顔を近づけ囁いた。
「これ以上抵抗するなら、君の家族を処分するよ。だが、大人しくするなら、君の家族は生かしておく」
その言葉にエミリアは目を見開き、反射的に家族の方へ目を向ける。
彼女の大切な弟は母の服を掴みながら小さく震え、父は青ざめ、絶望したような表情を浮かべている。母は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
エミリアは、わなわなと震え、そして大人しくなる。
「それでいいんだ。フフフッ」
太った軍人は満足そうに笑った。
その夜、太った軍人に工場内に何故こんなものがあるかと言う程の豪華なベッドが置かれた部屋へと連れ込まれ、腕を拘束されたまま、投げるようにして押し倒された。
「劣等だからといって、面の良い女をただ労働で使い潰すなど勿体無い。君もそう思わないかい?」
ニヤニヤと気持ちの悪い笑みでそう言いながら、その男は上着を脱ぎ、ズボンのベルトを取る。
そして、興奮した様子で、エミリアの顔に自身の顔を近づけ、舌なめずりをする。
彼はエミリアの服を破り捨てるように脱がせ、その小ぶりな胸に手を伸ばした。
エミリアがきゅっと目を閉じたその時、ドアが乱暴に開けられる音と共に薄暗い部屋が突然明かりに包まれた。
「グラン=ルートヴィヒだな?貴様を逮捕する」
エミリアがうっすらと目を開けると、そこには軍人が銃口をルートヴィヒと呼ばれた太った軍人に向けている光景が目に入る。
「...脱税、贈収賄、奴隷の私物化の容疑で」
部屋に入ってきた銃口を向けている複数の軍人の責任者らしき男が、エミリアに目を止めると、一旦言葉を止め、溜め息を着きながら付け加えた。
「どうやら。劣等との違法情交容疑も追加せねばならんようだな」
太った軍人は両脇を抱えられ、先程まで下卑た笑みを浮かべていたことが信じられないほど、顔面蒼白になりながら外へと運ばれいく。
「..おい、この奴隷の女も取り調べに使う、一旦連れていけ」
責任者らしき男は残っていた部下数人にそう命じて、部屋を去っていった。
エミリアはその後、どうやらグラン=ルートヴィヒは総督府でそれなりの地位を占めていた様で、取り調べの為に、総督府庁舎に連行された。
そこで、ルートヴィヒの行為と会話を根掘り葉掘り聞き出される。
そして取り調べが終わると、独房のような部屋に放り込まれ、翌日もまた、同じことを説明させられた。
その日の取り調べが終わると、明日には工場に戻されると告げられ、再び房に入れられた。
夜中、房で眠りにつこうとしていたエミリアの元に、とある客が訪れて来た。
「ほう?確かに話に聞いていたように美人だね」
顔は見えないが、そう嬉しそうに話す声を聞き、エミリアは、折角逃れた災厄にまた襲われるのかと考え、絶望した。
だが、その客が発した言葉はエミリアの予想を越えたものであった。
「君、私の元で、スパイをやりたまえ」