Unser Kampf   作:ライト鯖

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帝国最高評議会

ーオストレオン帝国 帝都 レオンスブルクー

 

 ルドルフ総督は、帝国の都たるレオンスブルクの中心に聳え立つ、壮麗な装飾が至る所に鏤められた、白が基調の外壁を特徴とした巨大な宮殿、"ロイヒテンダー宮"へ来ていた。

 ここは、総帥が帝国の実権を掌握するまでは、皇帝の住まいと、皇帝の執務官邸の役割を担っていた。

 今では、帝国総帥の官邸、重要な会議を行う為の議場として使用されている。

 今日は、ここで帝国最高評議会が開かれるのだ。

 ルドルフは、幾つもの厳重な警備を、数度に渡るボディチェックや身分証の確認を受けて通り抜けた。

 そして、広大な、よく手入れされた花や草木が咲き誇る美しい宮殿の庭園を通り抜け、敷地の中心部にある本殿の荘厳な門扉を通り、中心部から少し離れた位置にある、巨大な会議場へと向かった。

そして彼は、壮麗なシャンデリアや、窓枠が明媚に飾り付けられた大きな窓の並ぶ広い廊下を歩いていき、全体に金箔が張られた巨大な扉の前で止まる。

 そして、その扉の両端に立つ衛兵のボディチェックを受け、彼らが扉を開けるのを待って、黄金の扉を潜った。

ルドルフが会議室に入ると、何人かの参加者が会話を止め、ルドルフに視線を向ける。

彼はそれらの視線を無視し、自身の席に向かう。

 恐らく、自分が一時的にレジスタンスに人質とされたことが噂になっているのだろうとルドルフは推測したが、特に誤解を解こうとはしなかった。

 何せ既に総帥には報告を提出している上、人質にされたこと自体は確かに予想外のことだったが、今のところ順調に彼の作戦は推移しているため、いずれ自然に誤解は解けるだろうと考えていたのだ。

 

 「災難だったな。人質を取った筈が人質にされるとはね。中々ない経験だ」

ルドルフが席に着くと、隣に座っていた国防軍服で、黒い髪をビジネスマンでも通用しそうな形に短く整えた壮年の男がそう、気軽な調子で話し掛けて来た。

彼は、帝都の参謀本部に詰めているルドルフの古くからの友人、ヨアヒム=ドーペルト少将である。

「うるさい。少し想定外だっただけだ」

ルドルフは少し笑いながら彼を小突いた。

 その後も暫く会議室内は参加者の会話でざわめきが絶えず、ルドルフとヨアヒムも雑談を続けていたが、扉の外から「トイフル=シュナイダー帝国総帥閣下のお成りです」という衛兵の声が聞こえると、先程までのざわめきが嘘のように一瞬にして静まり返り、ルドルフらも瞬時に口を閉じた。

 

 ガチャリと参加者達も通った黄金の扉が厳かに開かれ、真っ黒に染め上がった短髪を前で半分に分け、ピッチリと整えた髪の下に透き通るような青い目が目立つ、国軍とも親衛隊とも色合いが異なる白っぽい軍服を着用している、堂々とした振る舞いの壮年の男が大股で会議室へと入室した。

参加者はその男が扉の向こうから姿を現すより早く、椅子から飛ぶようににして立ち上がり、姿勢を整え、古代レオン式として帝国に採り入れられている、右手の親指以外を真っ直ぐに伸ばし、親指だけは掌につけるように折り曲げ、胸の前に直角になるように掌を付ける敬礼で彼、総帥を出迎える。

 

 「悪いね。少し遅れてしまった」

そう言いながら、総帥、シュナイダーは、会議室の奥、大きな会議机の端、他参加者を見渡せる位置に置かれた椅子に悠然と座った。 

「楽にしてくれ」

シュナイダーにそう言われて初めて、参加者は、椅子に着席する。しかし、誰一人として身体から力は抜いていない。

「では、総帥閣下がご到着なされたので、これより"帝国最高評議会"を開催致します」

総帥のすぐそばの席に座る、国防軍服の男が会議の開催をそう宣言した。

 

 「では、皆様、既にお席に配られている資料をご覧くだ-」

開催を宣言した国防軍服の男は司会役でもあるようで、会議を進行し始める。

だが、「少しいいかな?」と彼の声を妨げるようにして手が挙がった。

その手は司会役の斜め隣にいる男、つまり、総帥が挙げていた。

「はっ。なんでございましょう」

司会役は平然とそう対応したが、他の参加者は驚きと恐怖を感じていた。

総帥がこうして会議をいきなり中断するように発言したことなど今までに経験したことがなかったからだ。

 何が起きるのか、彼の口から何を告げられるのか、全く予想が着かず、参加者らは一様に不安を、その感情を見せぬように冷静さを張り付けていた顔に僅かに除かせる。一人を除いて。

「悪いね。ラインハルト」

司会役の方を向きながらそう言った総帥は、次に、険しい顔をしながら他の参加者を見渡し、口を開いた。 

「諸君らに、悲しい事実を伝えなければならない」

参加者達は、最早その不安や恐怖を隠すことが難しくなっていた。

 「この中に、利敵行為を働いた者がいる、と報告を受けた」

その言葉に、顔を青ざめさせる参加者が大勢いた。

皆、もしや自分が誰かに陥れられたのでは?という疑念を抱かずにはいられなかったのだ。

 だが、参加者大部分の不安は、杞憂に終わる。

総帥が次に発した、憐れな男の名前によって。

「ルドルフ=ゲーベル ヤゲノ総督府総督。残念だよ」

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