奴隷及び燃料化された人々の解放する任務を終えたR.Bらは、帝国の侵略を受け併合された、旧ヤゲノ王国の辺境にある山地の地下に造られた彼らの組織の秘密司令部に戻ってきていた。
R.Bはボスに報告を行うため、ボスの執務室へと向かっている途中で、後ろから声をかけられた。
「アベル!任務は成功したのか?」
R.B、アベルを呼び止めたのは、彼の仲間であり、組織の家族や保護した者達が住む"街"の警備を担当する部隊の隊長で、整えられ、真っ直ぐな長髪が特徴的な男、ジャック=コワルスキーだった。
「ジャックか。任務は成功したよ」
「お疲れ様。今からボスに報告か?」
「ああ。今から報告だ。何か用?」
「いや、久しぶりに見かけたからな。声をかけただけだ。邪魔したな」
彼の言葉にアベルは「確かに。久しぶりだな」と小さく笑った。
「じゃ、また後で」
ジャックと別れ、ボスの部屋へと到着したアベルは、扉をノックする。
「アベル=オイゲン、報告に参りました」
「入れ」
そう扉の向こうから返事が帰ってきたので、アベルは「失礼します」と、扉を開け、部屋の奥にある執務机に座る、ぴっちり整えられた髪に、無骨なメガネ、スーツという出で立ちをした彼らのボス、V.Bの前に立った。
「工場で虐げられている人々の救出と、破壊任務、無事成功致しました」
アベルがそう報告すると、V.Bはうん。と頷き、「それで、戦果の程は?」と尋ねた。
「奴隷労働者115名、燃料化魔導士15名、計130名の解放、小銃50丁、手榴弾五発、リボルバー25丁、その他弾薬等、と報告を受けています」
「ふむ、魔導兵器は無かったのか?」
「ええ、残念ながら」
「そうか。通常兵器も十分ありがたいが、魔導兵器も欲しかったな」
「ご期待に沿えず申し訳ありません」
「君のせいではないんだ。謝る必要はない。ご苦労だったね」
「ありがとうございます」
「うん。暫く休んでくれたまえ、と言いたいところなんだが」
そう言いながら、V.Bは机に並んでいる書類の一つを手に取り、アベルの方へ差し出す。
「悪いが、明日の朝には新たな任務に出発してもらいたい」
いつもなら、一度の任務の後は2日以上の休養が確実にある為、アベルは少し驚いた。
「珍しいですね。何かあったのですか?」
「うん。帝国軍に怪しい動きがあってね。彼らの動向を探って欲しいんだ」
「偵察や探査なら、他に適任がいるようにも思いますが..」
アベルは、わざわざ連続で任務に着かせる程のことなのかという純粋な疑問からそうV.Bに尋ねた。
「これは極秘任務なんだ。信頼している者に任せたい。だが、幹部連中は今、別任務にかかりきりでね。頼めるか?」
「勿論です。そういう理由とあれば、信頼に応えるべく全力を尽くします」
極秘任務、ということは基本的に一般の構成員には明かされない、重要任務、ということだ。
現場の司令を勤める立場でこそあれ、組織の中核を担うには至っていないアベルに同格の者達を差し置いてボスが頼んだのだ、当然、アベルは快諾した。
「では、詳しい任務内容を口頭で説明する。その資料も参考にしながら、しっかりと記憶してくれ」
「はっ!」
それから数十分程、任務の詳しい説明を受けて、ボスの執務室を後にしたアベルは腹ごしらえのために基地内の食堂へと向かった。
「アベル!お疲れ!」
そこで再び、ジャックに出くわしたアベルは、何とはなしに同じ机に向かい合わせとなり食事を摂っていた。
「それで、次の任務まで少し暇になるのか?」
「いや、少し用事があってね。明日の朝から出なきゃいかん」
「そうか、残念だな」
「お前も任務に忙しいだろ」
「おれはずっと"街"にいるから暇なんだよ」
「代わってやろうか?」
「遠慮しておきます」
そういった他愛のない会話をしながら食事を終えたアベルは自室に戻り、仮眠を取った。
翌日、アベルはまだ空も暗い時間に出来る限り誰にも見られないように気を遣いつつ、静かに基地を後にする。
山地を抜け、命じられた地域、基地とは正反対、北部の帝国国境へと向かって行く。
彼はそこで、歴史に刻まれる事件に立ち会うこととなるのだった。
4話です
今日はもう一話投稿します。