すみません!
無くても話の筋的には問題ないっちゃないぐらいではあるので、興味のある方は読んでいってやってください
開戦の少し前、エッケハルト=ハルトマンが、ドミニク=ウェゲナーに新兵器の紹介をしてから数週間が経った頃の事。
ーオストレオン帝国 某所ー
だだっ広い草原に、幾つかのコンクリートで造られた小さな施設が立ち並ぶその場所に、ハルトマンは、新兵器、"M-03-Gladiator"と共に立っていた。
そこに、黒塗りの車が厳重に警護されながらやって来る。
「ようこそお越しくださいました」
ハルトマンは深々と礼をし、その黒塗りの車から降り立った客を出迎えた。
「ウェゲナーから聞いたよ。画期的な新兵器が完成したそうだね」
その男、オストレオン帝国総帥、トイフル=シュナイダーは、ハルトマンに親しげに話しかけた。
「はっ。本日はお忙しいところをありがとうございます。本日はその新兵器のテスト運転を是非ご視察頂きたいと思い..」
「うん、聞いてるよ。早速始めてくれ」
総帥はハルトマンの話を途中で遮るようにして言い、兵器の方へ顔を向ける。
ハルトマンは、少し驚き、何か怒らせるようかことをしたのかと不安に思いながら、既に"M-03-Gladiator"に乗り込んでいるパイロットにテスト運転を始めるよう命じた。
命令を受けたパイロットの操縦によって、"M-03-Gladiator"は動き出す。
機体はまず、直進運動や後進など地上での動きを行っていく。
そして、それらに問題のないことが確認されると、ハルトマンは、パイロットに飛行運動の開始を命じた。
命令を受け、機体は、そのトラックキャビンの様なコックピットの前面と背面、そして左右のキャタピラの間の下腹部、三ケ所から、兵器として使われている魔力光線を弱めたもの、を噴射し、空中へと浮遊していく。
そして、数十メートル程の高度に達したところで、空中で、前面や背面についた噴射口の向きを下に向けた状態から、それぞれ、前方、後方へと向けさせ、背面の噴射口を使って直進、前面の噴射口を使って後進と、空中機動のテストをこなしていく。
前面、背面の噴射口は二つの噴射口に分かれているのだが、片方だけを使用し、それによるバランスの変化を利用して、直進しながら航空機のように、旋回運動も行った。
そして、最後に草原に用意された小規模な要塞を模した建造物や、地上に並べられた廃棄予定の戦車、砲台に向かって、光線を発射し、武器のテストも行う。
発射された光線によって、並べられていた戦車や砲台は跡形もなく吹き飛び、要塞はほぼ大破する結果となった。
「素晴らしい」
実験を静かに見つめていた総帥は、武器の稼働試験が終わると、僅かに高揚した様子でそう言った。
「以上で試験は終了です」
ハルトマンが試験終了を宣言すると、総帥は彼に向き直り、笑いかけた。
「この機体の名前は決まっているのかね?」
先程、自身の言葉を遮られていたハルトマンは驚き、意外そうな顔になった。
「ああ、すまない。正直さっきは余り期待していなかったんだ。私がわざわざ視察するほどのものなのか?とね」
ハルトマンの表情を見た総帥は怒るでもなく素直に謝罪し、更にハルトマンを驚かせた。
なんと言って良いのか迷ったハルトマンは、とりあえず総帥の質問に答えることにした。
「この機体に正式名はまだ付けておりません。開発コードとして"M-03-Gladiator"と呼んではいます」
「"剣闘士"か..良いな。気に入った。それを正式名称にしよう。この兵器は今日から"グラディエーター"だ」
不満かね?、そう、ニヤリと総帥は笑った。
「いえ、滅相もない。総帥直々に名付けて頂けるとは光栄の至りであります」
恐縮したようにハルトマンが言うと、総帥は満足そうに頷いたのだった。
そして、開戦後、ブーグリア戦線で初めて実戦投入された"グラディエーター"は次々と戦果を挙げていき、ウェスティンレオーネと連合王国の参戦で停滞していた戦線を再び動かした。
魔力戦車の乱戦に弱いという弱点を浮遊によって空から敵を狙う形で解決。更には戦車どころか歩兵が登ることも難しい山地や、断崖絶壁、大規模な河川を簡単に越えていき、その神出鬼没ぶりも合わせて、大いにその威力を発揮する。そして、この後半年間に渡って、ウェスティンレオーネ、連合王国、ブーグリアら連合軍を潰走させていくこととなるのだった。