Unser Kampf   作:ライト鯖

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指令

 事実確認から。と周囲を震え上がらせる声色の総帥に全く臆することなく、帝国最高評議会でも司会役を務めていたラインハルト=フリードリヒが、淡々と昨日に起きた事を説明していく。

 まず、朝、帝国中が、ウェスティンレオーネの首都陥落に沸き立ち始めた頃、反乱軍の幹部達を収容していた特別収容所が何者かに襲撃され、壊滅。殆どの囚人が逃げ出した。そうして、夜には、"自由連合軍"を名乗る武装勢力が、ウォルフガング=フォン=マッケンゼンの邸宅、及び廃棄されていた放送施設を襲撃。マッケンゼン伯爵の誘拐と、海賊放送をされた。

そして今朝、マッケンゼン伯爵が武装組織から馬車を取り返しそのまま自力で逃げ出し、戻ってきた。

 ラインハルトの抑揚のない説明を聞き終えた総帥が重々しく口を開く。

「まずは、マッケンゼン伯が誘拐された件について、詳細を知っている君たちの意見を聞かせてくれ。何故、このような不祥事が起きた?私もこの行事に参加したのだ。故に、警備は万全だと事前に聞いていたのだがね」

 昨夜の警備を担当していたのは親衛隊であった。そうした行事等の警備を管轄している親衛隊幹部が、よろめくように立ち上がり、震える口を開いた。

「に、人数、配備計画共に、問題は無かったと認識しております。識者から助言も受け、綿密に計画致しました...」

「では、何故、侵入を許した?」

総帥は冷たい目を彼に向けた。

 

「や、奴らは、邸宅が森林にあることを利用し、付近を通る電線を切断し、停電を引き起こしたようでして..」

「想定出来たことではないかね?」

「はっ、はい、その、マッケンゼン伯爵が邸宅に非常電源を設置しておられなかったので、対策の取りようが無かったと申し上げる他ありません..」

「責任は、マッケンゼン伯爵にあると言いたいのかね?」

「は、はい、いえ、そうではあまりません。万が一電源が喪失した際には、マッケンゼン伯爵や列席されていた貴族の方々の防御を最優先で固めるよう指示を出していました。ですので、こうなった要因は警備計画ではなく、現場の指揮官の怠惰にあったのではと我々は考えている次第であります」

 そこまで聞いた総帥は、更に不機嫌になった声色で言った。

「では、君や司令部には責任がないと言うのだね?」

「し、指導不足であったという責任はあると感じております。しかし...」

そこまで言った幹部の言葉を総帥は遮る。

「もういい。座れ」

言われた親衛隊幹部は、哀れな程に震え、顔面蒼白になりながら、よろよろと着席した。

 

「次は、電波ジャックの件だ。何故、緊急放送用の電波を使われた?本来、相当な設備がなければ出来ないはずだ」

これには、都市整備を担当する大臣が答える。

「廃棄されていた放送施設が使われたようです。新帝国領土の再開発を行う際に、予算節約として、一括して旧都市にある建造物を破壊するよう命じられていたので、放送施設も残されていた。と報告が上がってきています」

「ほう?つまり、私のせいだと?」

「いえ、基本的に、現場の判断で放送施設等の重要施設は個別に使用不能とすることが想定されていました。ですが、総帥閣下のご命令を、字義通りに解釈しただけの地区があったようで、今回狙われたのはそうした地区の設備であったようです」

 

「つまり、その程度の判断も自分で出来ない程の無能者が指揮官を務めている地区がある、というわけだな?」

「その通りであります閣下。既に幾つかの地区からは、放送施設は破壊済みという報告も上がってきているので、間違いないかと」

「なるほど。では、当該地区の指揮官は逮捕しておけ。帝国には不要な人材だ」

 総帥は、不機嫌さの消えない声で、親衛隊の方に向かって命じた。

そうして、彼は、今度は治安維持を担当する閣僚に目を向ける。

「自由連合軍について、何か分かっていることは?」

「それが、一切情報がありませんでした。まだ全ての地域からの報告が届いているわけではありませんが、州や総督府レベルでそうした名称の組織が確認されたことは無いそうです」

大臣は、落ち着いた調子でそう答えた。

 

「では、新たな組織、というわけか?」

「恐らくは。相当な地方レベルで活動していた弱小組織であった可能性や何処かの後継組織である可能性も捨てきれませんが、おおよそ新規の組織で間違いないかと」

「...ふむ。大規模な組織では無さそうというわけだな。収容所の位置とマッケンゼン邸は近い位置にある。ということは...いや...」

総帥は、暫くブツブツと独り言ち、再び閣僚らに向き直ると、言った。

「マッケンゼンが捕らえられていたという廃村を直ちに見つけ出せ。何か残っているかもしれん。それと、帝国本土以外全土、特に反乱や戦争で混乱を来した地域を重点的に捜査しろ」

 

「お言葉ですが総帥。本土は何故除外されるのでしょう」

ラインハルトが尋ねる。

「勿論ある程度は捜査してもらうが、恐らく奴らは劣等だ。奴らの宣言を聞いただろう?全ての虐げられし者を解放、だ。帝国人がそれを言えば劣等の反感を買うだけだろう。故に帝国本土への潜伏は除外出来る。そして、マッケンゼン邸と収容所の位置関係が近い場所にあるが、これは我々を惑わせるための罠だろう。ウルフェンシュタット周辺を重点的に捜索させ、その隙に我々の支配が浅い地域に移動しようとしている筈だ。奴らがまだ小規模な組織であるなら移動は簡単だからな。つまり、重点的に捜索すべきは、各地の総督府領、そして占領地だ」

なるほど。とラインハルトは頷き、「では、そのように」と、治安維持を担当する大臣と、親衛隊の幹部らに視線を向けた。

「ぜ、全身全霊でもって、総帥閣下の御指示を完遂するよう邁進致します!」

普段は責任の擦り付け合いをしている彼らだが、総帥の命令には、ぴったり息を一致させ、答えるのだった。

 

 

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