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【デモクラティックブロードキャスト】
《オストレオンがノルテンブルクを併合》
本日正午、オストレオン帝国総帥トイフル=シュナイダーが外国記者も入れた会見にて発表を行った。
シュナイダー総帥は「ノルテンブルクの民は公正な選挙の結果、95%もの住民が我が国への帰還を望んだ。我々は民意の実現の為に已む無く、違法に当該地域を支配していたロナ家を排除したに過ぎない、ということが、選挙によって証明されたものである」とオストレオン軍の行動を正当化した。
しかし、投票結果発表後、ノルテンブルクから脱出してきたという人々の証言からは公正とは言い難い事実が浮かび上がってきた。
「帝国軍が進駐して来て直ぐ、半日も経っていない時に示し合わせたようにして併合を望む右翼勢力が街頭で併合を求めるデモを始めたんだ」(ノルテンブルク市に住んでいた男性)
「投票所には武装した帝国の親衛隊が見張っていた」(ハザル地区の女性)
「投票所の前で併合を望む右翼団体がシュプレヒコールを上げていた。中には誰彼構わず賛成、反対どちらに投じたか聞いて回っている奴らもいた」(ノルテンブルク市の別の男性)
幾つか紹介しただけでも公平さが担保されていたかどうか甚だ疑問であることが分かるだろう。
中には、自宅に賛成に投じるよう右翼団体が押し掛け、脅迫されたという証言もあった。
こういった告発を受け、ウェスティンレオーネ合同帝国宰相は、「帝国が実施したという住民投票は公正とは言い難く、一方的な併合宣言は受け入れられない。強く非難し、対抗措置を講ずることを宣言する」とオストレオン帝国を強く非難した。
対抗措置の具体的内容については明言しなかったが、武力制裁の可能性は否定した。
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「まずは、お疲れ」
ヤゲノ解放軍の基地に戻ってきたアベルは、昨日、V.Bにアンファンブルクで目にした光景を詳細に報告していた。
「戦闘車両の中には魔導戦車らしき車体も多く見えました。魔導戦力はどんどんと拡大していっているようです」
「やはりそうか。それで、他に何か気が付いたことはあるか?」
「そうですね..国軍だけでなく、武装した親衛隊も混ざっていました」
アベルの報告にV.Bは眉を潜めた。
「親衛隊が?」
「はい。カーキ色の国軍服と黒い軍服の連中がいたので、間違いないです」
「...装備はどうだった?」
「戦車のコックピットから上半身を出し、市民にアピールしている親衛隊を見ました。驚きましたよ」
「!...つまり、奴らは機械化戦力をも保持するようになったと?」
「国軍と親衛隊は関係が良くないですし、国軍の戦車に乗せてもらっていたなんてことは無いでしょう。ですので、その可能性が高いかと」
「親衛隊を国軍レベルに戦える軍にするつもりなのか...」
V.Bは唸りながら暫く考え込んでいたが、やがて、「私だけで考えても仕方ないか」と呟き、アベルの方に向き直った。
「うん。他にも何かあれば教えてくれ。今回の偵察で分かったこと全て亡命政府に報告する。彼らや連合王国の情報機関に考察は任せた方が良さそうだ」
「そうですね...他には特にないですね...あまりうろちょろしても怪しまれてしまうでしょうから、余り見て回ることができなかったので..」
アベルは、そう申し訳なさそうに言った。
「それは仕方ないことだ。改めてありがとう。親衛隊の重武装化は重要な情報だ。亡命政府の方にも伝えて分析してもらう。君は暫く休息したまえ。疲れているだろう」
「ありがとうございます。では、お言葉に甘えまして休ませていただきます」
敬礼をした後、アベルは「失礼しました」とV.Bの執務室を後にした。
数日後
ーウェスティンレオーネ合同帝国 ヤゲノ王国亡命政府庁舎-
会議室に集ったスーツ姿や軍服姿が入り交じった十数人の男達を見回しながら、ヤゲノ王国亡命政府首相を勤めているヤノフスキ=リヒャルドは蓄えられた立派な髭に似合わない憂鬱さを感じる声で話し始めた。
「帝国がノルテンブルクの併合を宣言したようだ」
再び会議室を見渡し、溜め息混じりに続ける。
「列強、少なくともウェスティンレオーネは武力介入しないそうだ」
彼のその言葉に会議室は落胆の空気に包まれた。
「合同帝国が介入しないなら他も絶望的ですな。また我らは待機というわけですか」
軍服姿の一人が投げ槍気味にそうぼやく。
「仕方があるまい。我々は列強の支援なくしては国土を取り戻すこと等出来ないのだから..」
「列強の利権、特にウェスティンレオーネは大きな鉱山資源の利権をノルテンブルクに有していたので、介入するかと期待したのですがね...」
スーツ姿の一人がそう、会議室の面々の内心を代弁するように呟いた。
「それと、もう一つ私達にとっても悪い知らせだ」
リヒャルドは部屋の隅に待機していた秘書官に目で合図し、書類を配らせながら言った。
「親衛隊がどうやら機械化戦力をも保持するようになったらしい」
「親衛隊が...国軍との摩擦が高まれば奴らの指揮系統に影響が出るのでは?」
先程とは別なスーツの一人の楽観的な言葉を口にする。
「それは希望的観測だな。目下の懸念としては国内反乱組織への弾圧が強化される可能性があることと、帝国で最も過激な組織がどんどんと力を強めていることにある」
とリヒャルドは淡々と説明した。
「しかし、それは我々にはどうしようもない情報ですな。合同帝国政府には伝えたのですか?」
「ああ、だが、彼らはオストレオンを舐めている節がある。どこまで真剣に取り扱ってくれることやら...」
リヒャルドは国土を失った政府の不自由さ、無力さにをひしひしと感じたが、大きな溜め息を吐くことしか出来なかった。
同刻
オストレオン帝国-ヤゲノ総督府-
「諸君らも聞き及んでいると思うが、今日、ついに帝国はノルテンブルクを正式に併合した。"住民投票"の結果も95%の賛成と素晴らしい結果だ」
総督はそう前置きし本題へと入った。
「さて、そんな喜ばしい日に諸君らに集まって貰ったのは他でもない。総帥閣下の統治に反対するレジスタンス共を撃滅するためのある作戦を検討してもらいたく、集まって貰ったのだ」
総督は自信に満ちた表情で、ニヤリと不敵な笑みを浮かべるのだった。