Unser Kampf   作:ライト鯖

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連携、同盟、交渉

 

 バーラト海戦の痛手を帝国が負ってから四ヶ月の間、アベルら自由連合軍は、活動を宣伝活動と、二つほど工場を襲撃するに止め、基本的には潜伏していた。

 工場の襲撃も、バーラトの海戦中に起こしたのみで、帝国当局の捜査を逃れることに専念していた。

民主レオニカからの情報提供や、自由連合軍自身の情報網等から、徐々に捜査が落ち着いてきたことが分かるまで、大人しくし続けたのだ。

そして....。

 

ーレオン帝国 某所ー

 

「それで?我々も君らと共に、レオニカ人どもに降れと?」

 不機嫌を通り越し、憎悪すら籠った目で、アベルらを睨むその男は、大反乱後もどうにか生き延びていた反帝国組織の一つ、パルケンブルク武装解放戦線のボスである。

「違います。協力をするのです。決して部下になるわけではありません」

「はっ。同じことだ。規模が違いすぎるのだぞ。そんなやつらが本当に、我々を対等に見ているとでも?」

 アベルの訂正を一笑に付し、男は、苦々しげに吐き捨てる。そして、こう付け加えた。

「それに、帝国人は信用出来ない」

アベルには、彼らの気持ちはよく分かる。

彼らが帝国人を憎むのも当然だろう。

本来、此方から歩み寄るべきものではないのかもしれない。

しかし、それでも...。

 「彼らにとっても、我々と対等となることには、メリットがあるのです」

それでも、もう、憎悪の連鎖は見たくない。

「民主レオニカは、非帝国人の協力を欲しているのです。彼らがいくら活動しようとも、彼らだけでは、帝国人以外から支持されることない。帝国人の多くは総帥を支持しているので、民主レオニカの拡大はいずれ限界を迎えます。もしかしたら既に迎えているかもしれない。対して、非帝国人ならば、レオン帝国を支持する人間が当然極少数。潜在的な仲間が多いのです。だからこそ、非帝国人の支持を得るためにも、我々を対等とすることが必要なのです。ですから、約束を反故にされることはないでしょう」

だが、男は納得しなかった。

男は、ゆっくりと首を振り、言った。

 

「帝国人だぞ?なあ。何故、君たちは平気な顔をしていられるんだ?故郷の者が、どうなったか、分かっているだろう?なんで、協力しようなんて思える?なあ...」

理屈ではない。そんな思いがアベルにも伝わってきた。

「私は、家族を帝国の爆撃で失いました。私自身は、工場で燃料にされた。レオン帝国の非道は、これでもかと見てきましたよ」

「なら、何故!」

男はそう激しく詰め寄る。

対照的に、アベルは静かに、口を開いた。

 

「帝国系だった親友は、国の人間に虐められていました。最後には、私の仲間に、帝国人だからと裁判もなく、無慈悲に殺された」

「だからといって...許すというのか?レオン帝国の非道を!」

「許すとは言っていません!」

予想外にアベルの語気が強く、男は少し怯んだ様子を見せた。

「ただ、貴方も、覚えがあるのではないですか?故郷の国で、帝国人だからと、帝国系の国民が、差別されていた様を。旧宗主国の人間だからという理由だけで、帝国による支配に関わっていなかった子供まで、攻撃に巻き込んで。そういう様を、見たことがあるのではないですか?」

「......お互い様だとでも言うのかね?」

先程よりも、少し勢いの落ちた声で、男は言う。

「いえ、ただ、私は、そんな憎悪の連鎖を終わらせたいと願っているだけです」

「今のレオン政府を打倒したところで、差別は変わらんだろう。多くの帝国人は、総帥の政策を支持しているのだからな...」

「それでも、変えようとしている人達もいるのです」

「民主レオニカも、君らを利用するためにそんなことを言っているだけかもしれんぞ?」

 皮肉な笑みを、男は浮かべる。

「それならそれで、こっちも理想のために利用しつくすまでです」

アベルは、そう自信を見せる。

「綺麗事だ」

「綺麗事を貫き通すと決めたので」

 それを聞いた男は、再び皮肉な笑顔になった。

「無関係な、非帝国人をも巻き込む活動をしておいて、綺麗事を、ね。私達は違う。どんな犠牲を払ってでも、国を取り戻す。そう覚悟しているんだ。被害に無自覚な君らとは、違うんだよ」

攻守は逆転したかに思われた。

「無自覚なわけないでしょう。帝国人も、非帝国人も、多くの人を巻き込んできた。取り返しの付かない、大きな犠牲を...」

 過去の、ヤゲノスルカでの出来事を思い出し、アベルは、悔しそうに拳を握りしめながら、話を続けた。

「だからこそ、理想を、私のエゴを、貫き通すと決めたのです。それぐらいしなければ、成し遂げなければ、私は、ただ逃げ続けるだけの、クズになってしまう」

アベルの、はっきりとした、だが、悔恨や、怒り、様々な感情の籠った言葉に、男は気圧されてしまっていた。

「どうか、お力を貸していただけませんか..」

最後に、アベルはそう言って頭を下げた。

 

 

 パルケンブルクの反乱組織が、自由連合軍への協力を決めてから、彼らを通して、多くの組織とコネクションを持つことに成功したアベルは、エミリアと共に、多くの組織を回って、協力の要請を続けた。

エミリアは、天性のものなのか、交渉事に強かった。

アベルが、想いを、理想を話し、エミリアが条件を纏める。

そんな形で、次々と協力を纏めていったのだ。

「我々は伝統ある組織、先の大陸戦争前から帝国と戦ってきたのだ。貴様らの様な新興組織と対等になどなってたまるものか」

「ローズベル共和連合の皆様は、その闘志を折ることなく戦い続けてこられましたものね。大変尊敬しております。その不屈の闘志こそが、活動の息の長さの秘訣なのでしょうか」 

「まあ、そうだな。決して屈することのない闘志、固い結束。これらが我々の何よりの武器だ」

若く、美人な女に煽てられ、気を良くする者は多い。

「さすがですわ。その男らしさ、憧れます」

「そうかね?まあ、女性には男の絆といつやつは、中々難しいだろうが、君には分かるかね?」

「ええ、皆様のご活躍や今の様子を拝見致しますと、よく、分かります」

「中々話の分かる娘じゃあないか」

「ありがとうございます。嬉しいですわ」

エミリアは、そうニッコリと笑いかけた。

そして、彼らの反応を見てから本題へと進み始める。

「...ところで、私達にも、是非、その貴重なご経験を教授していただきたいのです」

「うーん。でもねぇ..」

「是非、お願い致しますわ。皆、喜ぶと思います。皆様の様な伝統ある方々から直々に教われる機会なんて中々ありませんから」

「まあ、教えるくらいならねえ」

 

 こんな調子で、頑な組織を相手にすれば、徐々に話の前提をすり替えて、どんどんと自由連合軍に有利な話へと持っていく。

彼女は、自身の容姿にはかなり自覚的なため、それらも活用する。

そして時には、アベルの過去を交えて、理想への共感を目指したりと、アベル一人が交渉するよりも、スムーズに事を運んでいった。

結局、先程のローズベル共和連合も、最終的には、同盟にまで話を進めたことが、彼女の手腕を物語っている。

 

そうして、自由連合軍は、着々と同盟者や、直接の合流者を増やし、その組織を拡大していった。

だが、拡大には危険が付き物でもある。

帝国軍、親衛隊は、彼らの動きを嗅ぎ付けていた。

アベルも、情報網から薄々そのことを察している。

 

近いうちに、彼らとの衝突が発生することは、避けられないだろう。

 

そして、もう一つの勢力、帝国軍にあって、総帥に反旗を翻さんとする彼にも、その動静は届いている。

事態は、大きく動き出そうとしていた。

 

 

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