Unser Kampf   作:ライト鯖

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Code:Abfall 3

 グダルスカの街は、親衛隊によって包囲されており、先日、この街に連れてこられたばかりの人々を含め、千人近くが街に閉じ込められる格好となっていた。

街中は閑散としている。誰も外に積極的には出ようとせず、家の中で自身らの運命の行く末について想いを馳せていた。

 

 帝暦1930年2月5日、総督府が設定した期限の最後の日がやって来た。

しかし、3時を過ぎた今になっても何の音沙汰もなく、ただ時だけが過ぎて行く。

 総督、ルドルフも最終日ということで多くの護衛を伴って視察に来ていた。

「やはり来ないかな」

 

 街の外れに建てられた臨時の、プレハブでできた味気ない司令部の中でルドルフは、タバコを吹かしながら、つまらなさそうに呟いた。

「ボスを危険に晒すよりも民心を離すことを選んだのでしょう。いや、もしかするとそこに気付いていないような連中なのかもしれません。反乱組織というのは得てして身勝手なものですから」

側にいた副官の言葉に彼は頷く。

「我々と違い武力に劣るレジスタンスなら民心はより重要な要素なのだが、それを捨てるのならば、ヤゲノ解放軍とやらも大した脅威では無くなるだろう」

 既に彼は、人質に取ったグダルスカの住民をどう処理するかに思考のシフトを移していた。1000人の奴隷だ。ただ殺すだけでは勿体ない。最低でも"燃料"に出来る人間だけでも振り分けるべきかな。等と考えていると、見張りの一人が、ルドルフに来客を伝えに来た。

 

 「来客?こんな時に?」

「親衛隊ヤゲノ管区司令官の代理だそうです」

「代理..?身分証は確認したか?」

「今、同僚が確認しています。先にお伝えしておいた方が良いかと思い、私が伝令として来ました」

見張りの少し不信感の浮かぶ顔を見つめながらルドルフは数秒考え、こう指示した。

「...尋問室に通せ。ただし、丁重にな」

「よ、よろしいのですか?もし本当に代理なら..」

「その時は後で誠心誠意謝罪する。とにかくその同僚に早く伝えにいけ!」

 

 慌てて部屋を出ていった見張りを見送りながら、副官がルドルフに尋ねる。

「よろしいのですか?彼の言う通り本物なら、後々親衛隊が煩いですよ」

「そんな下らんことを恐れて無駄な死者を出したりするよりはマシだ」

彼は言いながら灰皿に吸いかけのタバコを押し付け、脇に置いてあった軍帽を被り、部屋を出た。

 既に件の“代理“は尋問室に案内されていた。

その整えられた黒髪が映える、司令官の代理を勤めるには若すぎるように見える“代理“は、被尋問者が座る、小さな椅子に座らされ、脇で二人の兵士が警戒しているにも関らず、抗議の声を上げるでもなく、大人しく待っていた。

 ルドルフは副官以下数名の護衛を引き連れ、尋問室に入り、“代理“の顔を確認する。

「親衛隊ヤゲノ管区司令部の高官では見たことのない顔ですが、最近こちらに来られたのですかな?」

ルドルフは鷹揚な態度で“代理“の向かいにある尋問者の座る椅子へと腰掛け、白々しく尋ねた。

「いえ、二年程前からこの地で仕事をしております」

“代理“も皮肉っぽい笑みを浮かべながら答える。

「...フッ、茶番は終わろう。笑えてくる」

ルドルフがそう言うと、“代理“は笑みを崩さず返した。

「親衛隊司令部の、というのは嘘ですが、“代理“というのは事実です」

 その言葉で尋問室内の空気が一瞬凍り付いた、かと思えば、総督の護衛らの銃口が、“代理“へと向く。

「ほう..?詳しく聞こうか」

ルドルフは、ジェスチャーで護衛らに銃を降ろすよう指示しながら、“代理“を見据える。

「もう察しているかと思いますが、私はヤゲノ解放軍の者です」

「だろうな。何故わざわざ自ら捕まるような真似を?」

「此方の誠意です」

「誠意?」

「ええ、この際ですからはっきり申し上げますが、我が組織のボスは外国とも繋がりがあります。その繋がりのある国へ赴き、会談や種々の交渉を昨日まで行っていたのです」

“代理“の言葉にルドルフは呆れたように笑った。

「ハッ。それはここにボスが来ない言い訳か?残念ながら、我々はそんな甘いごっこ遊びをしているわけではないんだ」

「ええ、充分すぎる程分かっていますよ。むしろこんな言い訳のためだけに使いを寄越すと思いますか?」

「では、なんだね?まさか、君で妥協しろと言うのか?」

「いえ、これは“取引“です。我がボスは必ず今日中に間に合います。しかし、午後5時には間に合いません。ですから、午後10時まで期限を延ばして頂きたいのです」

「君一人を人質に、というわけか?“取引“にしては其方に都合が良すぎるな」

 彼は余裕を崩さずに話している“代理“から狙いを読み取ろうと苦心しながら慎重に会話を続けていく。

「信じるかどうかは其方の自由ですが、私は組織において幹部クラスです」

 鉄砲玉のような行動をしている人間が幹部クラスだと自称しても素直に信じるバカはいないだろう。ルドルフも当然、その言葉は全く信じなかった。

「総督閣下、私と時間一杯まで"ジョーク"も交えて、楽しく“お話“致しませんか?」

彼の突然の提案に総督は眉を潜める。

「此方が出せる取引の条件ですよ。時間を延ばして貰う変わりに、お喋りをしましょう」

取引の条件と言われて、ルドルフは“代理“が何を言わんとしているかに気が付いた。

つまり、時間を延ばして貰う変わりにある程度のことまでなら話してやるということだろう。

彼は少し考えた後、鷹揚に頷き、言った。

「良いだろう。君が組織でどんな立場にいようと情報は情報だ。私は"ジョーク"は余り好かんが、ゆっくりと、“お話"しようじゃあないか」

 

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