Unser Kampf   作:ライト鯖

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帝都襲撃

 

-レオン帝国 帝都 レオンスブルク-

 

 ロイヒテンダー宮は、総帥の逃亡以降、混乱が続いていたが、党幹部とも近しく、比較的親衛隊とも良好な関係を築いていた国防軍のアルマン=フォン=ケンプという男が、崩壊しかけていた政府を一先ず纏めることに成功していた。 

 

だが、それもあくまで急造。

その上、総帥から命令こそ飛んでくるが、最早現状を正しく認識しているとは言い難いものばかり。

彼らは、どうにか政府らしきものを維持することで精一杯となっていた。

 

「叛徒共は必ずこの帝都を狙うに違いない」

ケンプは、各組織の代表を臨時で集めた会議の席で、そう提言した。

何人かの軍の代表達が頷き、同意を示す。

「奴等にもこの混乱は伝わっているだろうからな」

「では、帝都の防備を固めるべきだ!」

親衛隊の代表が勇まし気にそう発言する。

だが、ケンプはゆっくりと首を振り、真逆の考えを述べた。

「いや、あえて帝都の防備は少なくする」

「帝都を奴等に売り渡すおつもりか!?」

ケンプの発案に親衛隊の代表は声を荒げた。

 

「違う。恐らく奴等は、報告にあった飛空船を先鋒とし、攻めてくるはずだ。これは、逆に考えるならばあの我々を苦しめてきた飛空船を葬るチャンス。敢えて奴等が侵入しやすいよう隙を作り、帝都近くに待機させた戦力で一挙に叩く。そして、その後に続いてくるだろう敵部隊にも同時に東西から挟撃を仕掛けるのだ」

ケンプは、まだ勝利を諦めていなかった。

 

-民主国家連合 リベラシュタット-

 

飛空船Freiheit、幾度もその無法なまでの強力さで自由連合軍を救い続けてきたそれの、最後の仕事が始まろうとしていた。

「アベル..」

エミリアやジャック、ヴェルナーが見送る中、アベルが飛空船へと乗り込む。

「そう心配しないで。ちゃんと生きて帰ってくるさ」

不安げな彼らに笑顔を向け、アベルは魔力保持量が多い志願者数名と共に空へと飛び立つのだった。

 

飛空船Freiheitの任務は、前線部隊の前進を容易とするための撹乱である。

帝都に侵入し、事前にヨアヒム=ドーペルトの協力者から得ている情報に基づき、政府機関の建物を砲撃し、ロイヒテンダー宮に向かって飛空船を乗り捨てる。

つまり、政府中枢に巨大な爆弾を送りつけることが最終目標である。

 

飛空船は、全く邪魔を受けることなく、帝都へと順調に進んでいく。

全く、何の抵抗もなく。

 

「.......」

帝都に到着する直前、目と鼻の先に帝都が見えるという段階になって、アベルは何か妙な感覚を覚えていた。

違和感。

帝国軍の一切接触することなく帝都目前まで来れるなどあるのだろうか。

「警戒するにこしたことはないな」

もはや作戦全体が進行してしまっている以上、今更引き返すわけにもいかない。

嫌な予感はするが、アベルには進むしか選択肢はなかった。

 

そうして、飛空船Freiheitは、帝都へと侵入する。その巨大な船体は、帝都に住む市民達を震撼させるには充分過ぎる程であり、彼らは、脳裏に敗北の文字を浮かべざるを得なかった。

街に大きな影を落としながら、飛空船は進軍していく。

その船体からは光線が放たれ、爆発を生み出す。

まずは、議事堂が、そして、国防省の庁舎が破壊された。そして、飛空船が次なる目標へ向け、方向を変えようとしだした時のことだった。

東西の地平線の先から、鳥の群れにも見える影達が、現れた。影は、徐々に大きくなっていき、やがて、帝都市民もその姿をはっきり捉えられるまでとなった。

グラディエーターと航空機の群れ、が、帝都に侵入した巨体を撃ち落としにやって来たのだ。

 

-飛空船Freiheit内-

 

「挟撃...!」

機影を確認したアベルは、やられた、とばかりに、舌打ちをする。

「やはり誘い込まれていたのか」 

「嫌な予感というのはどうしてこうも当たりやすいものかね」

アベルはぼやきながら、コックピットへ顔を向ける。

「総員、予定変更だ!!あれだけの数を相手にしても勝ち目はない!他の政府施設は放っておく!このままロイヒテンダー宮へ突撃する!!退避準備をしろ!」

そう命じ、アベル自身は魔力を装填する。

それを元手に、側面に取り付けられた砲から、魔力が打ち出される。

だが、その砲は避けられてしまった。

 

「マジか。向こうさん、相当手練れのパイロットばかりだな」

恐らく帝国に残る精鋭をかき集めてきたのだろうその部隊は、飛空船の発射準備を遠方から見抜き、回避行動を取ったのだ。

帝国のグラディエーターが光線を放つ。

Freiheitは、彼らの攻撃を受けてしまった。

「魔力エンジン破損!」

「まずいな..」

魔力エンジンで飛べば、一瞬にしてロイヒテンダー宮にまでたどり着けるが、それを使えなくなってしまったとなると、的として余りに大きなFreiheitをロイヒテンダー宮まで持たさなければならない。

「あとどれくらいだ!?」

「三分程です!」

「持つか!?」

「分かりません。ただ、敵の航空機も間もなく射程にこの飛空船を入れることになります」

部下の報告に、思わずアベルは顔を歪めてしまった。

「どうやら油断してたのは俺だったようだ」

 

完全に嵌められた。

だが、敵はまだ一つ勘違いをしているようだ。そこに付け入る。

アベルは思考を切り替え、次の行動を決めた。

「私は外に出て戦闘する。皆、後は任せる」

「え!?...了解!」

全員、僅かに動揺したが、アベルを信頼しており、直ぐに了解する。

アベルは、機外へと飛び出、直ぐに正面から向かってくる航空機に向け、魔力を発射した。

直撃。

 

アベル達がやろうとしていること、それは、飛空船をロイヒテンダー宮へぶつけ、政治的中枢を破壊してしまうことである。

つまり、飛空船はもはや捨てている。

だが、帝国軍はアベルらを帝都前で待ち伏せるのではなく、帝都内に誘き寄せた。

これはつまり、帝国の想定では、アベル達の飛空船による突貫は、あくまでも陽動であり、飛空船を乗り捨てるような作戦であると考えていないと言える。

もし、それを想定していれば、帝都に誘き寄せ、飛空船を狙った挟撃など、意味がないからだ。

やるにしても帝都に被害が出ない郊外で待ち伏せ、がいいところであろう。

彼らは単純に、今まで自分達を苦しめてきた兵器を無力化したいと考えている。

 

そこを、アベルは見抜いた。

故に、飛空船を喪失することを嫌がっている様な素振りを見せるため、外に出たのだ。

飛空船の上を行き来しながら、アベルは東西両方に魔力を放っていく。

そして、いくつかの航空機を落とし、一機のグラディエーターが戦線を離脱させるという戦果を上げた。

「さあ!来い!」

しかし、帝国はあくまでもFreiheitを狙ったので、攻撃が機体に当たり、徐々にその速度、高度を下げていた。

時間との戦い。

だが、運はアベル達の味方であった。

ロイヒテンダー宮の目前へと、Freiheitは到達する。

「総員!退避!」

アベルは一瞬機内へと身体を戻し、そう命令する。

「了解!」

 

全員が、一気にバルコニーへと集い、各々、魔力を使った跳躍で離脱して行く。

そして、アベルはなおも機外で戦闘を続け、彼らの退避を手助けした。

「よし!」

全員の離脱を確認したアベルは、一度Freiheitの真下へと跳躍し、落下しながら、その機体へと掌を向ける。

「ここまでありがとう。Freiheit」

アベルは、魔力を放つと同時に、Freiheitの進む方向とは真逆へと再び跳躍し、機体から距離を置く。

それとほぼ同時に、機体の真下、事前に爆薬を仕込んでいた位置に魔力が衝突しFreiheitのゴンドラは、巨大な爆発を起こした。

そして、そのまま、幾つもの穴が開けられ、どうにか僅かに生き残っていた魔力推進の機能で飛行を維持していたバルーンと共に、炎の塊は、長い間、レオン帝国、いや、オストレオンの中心であったロイヒテンダー宮へと落下していった。

ロイヒテンダー宮を巻き込んだ爆発は、空を呑み込まんばかりのものとなり、帝都を揺らし、空を一瞬、赤黒く染めた。

それは、帝都の市民達に、レオン帝国の敗北を印象付けるのには充分過ぎる程の爆炎であった。

 

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