Fragment glow   作:桜花 如月

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ほんの少し距離ができてしまっただけで置いてかれてしまった、離れてしまったと思うことがある。
でも、心のどこかではきっと……


青い葉の舞う夕凪

羽丘学園1-A

 

昼休み。

俺はいつもの屋上……では無く自分の教室でお昼を食べていた。

それに疑問を持って隣の席……蘭の席に座って来たクラスメイト──岡村柚月に相談をしていた。

 

「最近モカちゃんが相手してくれない?」

「そうなんだよ」

 

最近、ここ1週間ほどモカが距離を取っているような気がする。

登下校は蘭の用事がない時やモカの気分次第で一緒に帰っていたがそれも全くないし、呼び止めてもすぐどこかに行ってしまう。

忙しいだけなら学校内だけでも話しかけていいと思うのだが、そういうことも一切ない。

 

「えー、でもさ、バイト忙しいとかそういう訳じゃなくて?」

「特に変わらず、普通にシフト回ってるんだよ」

「その時に聞けばいいじゃん?というより私より適任はいると思うけど」

 

岡村の言う通り、理由を聞く相手は他にいて、モカとおなじコンビニバイトをしてるリサ先輩にも一応聞いたが……

 

「モカ?特に何も変わってないよ?」

 

と本当に何も知らなそうに変化のないことを伝えられた。

そしてAfterglowの他4人に聞こうと思ったが、それは──

 

「……もしもの事があるから」

「もしもの事?もしかしてモカちゃんに嫌われたとか思って?」

「付き合って一年未満だからな……有り得なくも無いかな、と」

 

よく、付き合って数ヶ月で別れるカップルなんかの話を聞く。

さすがに、それは無いと思いたいが……

 

「かーくんが聞けないというのなら私が聞こうか?」

「お前に任せると不安しかない」

「なにさ!私じゃ何が不安だって言うの!?」

「全体的に」

「失礼だと思わない!?こう見えて……いやこう見えてなくても私はバンドでみんなを率いてるんだからね!」

「あー、はいはい、ありがとなー」

「すっごい適当!?」

 

私に任せなさい!と言いたそうに胸を張るが、周りからの評価と普段の生活を見てると心配になる。

彼女が組んだバンドでメンバーを率いてるらしいが、岡村が率いてるというより、周りが岡村の面倒を見てるんじゃないかととても失礼なことを思ってしまう。

まぁ、彼女もそのバンドメンバーも一切悪い奴らでは無いんだけど。

 

「タイミングみて話してみるよ、ありがとな岡村」

「話逸らしたなー?でも、少しでも気が晴れたならいいや。当たって砕けろかーくん!」

「砕けねぇよ」

 

心配なところが多い岡村だが、何かと相談聞いてくれるしどこか行く時は誘ってくるしで意外と頼りになるところがある。

そんな彼女の後押しにほんの少し気が晴れた俺は放課後にモカを呼び出すことにした。

 

 

 


 

羽丘学園屋上

 

メッセージを送ったものの、既読はついたが返信は無く。

それでも来てくれると信じて少し曇った夕焼け空を眺めていると屋上の扉が開いた。

 

 

「……これから雨だよー?」

「来てくれたんだな」

「怒ってる〜?」

 

気まずそうに扉から顔を出したモカは何を話せばいいのか迷った様子。

本当に、最悪のことが話されてもおかしくないような、そんな空気が流れている。

 

「怒ってない、ただ……」

 

嫌われるようなことはしてないし、そんなことすれば真っ先に蘭達が俺を殴りに来るからそれは無い……はず。

そう、嫌われることはしてないんだし、むしろ甘やかしまくってるまである。

だからこそ、モカに距離を置かれるのが不安になって。

最近はちょっとした行動で嫌いになるってよく聞くし、そういう可能性もあるんじゃないか、と。

 

「そーくん?」

「……モカ、俺の事、嫌いか?」

 

いつも通りな顔で俺を見てくるモカに対して、一切躊躇うことなくそう聞いていた。

一瞬驚いた様子を見せた後に考える素振りを見せた後に真剣な表情になって──

 

 

「嫌いになるわけないよ?」

「でも、なら……」

「ん〜、あっそっか〜」

 

当たり前の返答に対して何も言えない俺を見て何かを思い出したかのようにモカはカバンから何かを取りだした。

 

「そーくん、これ〜」

「紙袋……?」

 

モカに渡された紙袋を開けると中にはパンが2つ入っていた。

チョココロネとメロンパン、両方俺の好きなやつだが、市販のものでもなければやまぶきベーカリーのものでも無い。

 

「これって……?」

「モカちゃんの手作りでーす」

「手作り、ってことは……」

「ちょっと失礼〜」

 

手作りの一言で思うとこがあり聞こうとしたらモカが俺を抱きしめてきた。

急なことに困惑してるとモカは続けて頭を撫でてくる。

 

「それ、そーくんへの日頃のお礼なんだけど、サプライズで作るとあたし、顔に出ちゃうからさ〜」

「それで1週間ってことか」

「完成するまではなるべく話すなって蘭にね〜」

「メンバー全員話さなくなる必要は無いだろ」

「だよね〜……怒ってる〜?」

 

さらっと作った経緯を話したが、確かにモカは隠し事が苦手だしすぐ見抜けるのもわかる。

それでバレればサプライズは失敗するし何としてもそれは防ごうと蘭なら考えるだろう。

でも、パン作りのために一切話さないってのはかなり酷だし勘違いするに決まってるだろ?

 

「そりゃ怒るよ」

「あたしも、この一週間そーくんと話せなかったのすごく辛かったよ〜」

「よく我慢できたな」

「だからこうしてあたしにご褒美を与えてるのですよ〜」

「……よかった」

 

嫌われてなかったこと、ちゃんと理由があっての行為だったこと、そしてこうしてモカに抱きしめられてることに安堵してモカを抱きしめ返す。

 

「嫌いになるわけないよ、そーくんはあたしにとってすごく大切な人だから」

「それが聞けてよかった……ほんとに」

「約束もしたしね〜」

「約束……?」

「なんでもなーい」

 

モカからちゃんと思いが聞けてよかったが、それと同時に言われた「約束」に思い当たることがない。

聞き返しても流されてしまい約束とやらが何かはわからない。

 

「で、いつまでこうして?」

「そーくんだって離さないじゃん」

「1週間離れてたからな」

「じゃあせめてパンは食べて〜」

「そうするか」

「その後またハグ〜」

「はいはい……え?」

 

一旦モカの作ったパンを食べるためにこの状態を解除した。

とはいえ1週間という短いようで長い期間ずっと離れてたから横にピッタリ付いて座る。

 

「もう、やめてくれよ?」

「うん、あたしも嫌だからこれからはやめる〜」

「よろしい」

 

紙袋からパンを取り出す。

食べようとしたら隣からすごい見られていたがとりあえず一口食べて見たらものすごく美味かった。

その後、腹の音を鳴らしたモカのために半分こして一緒に食べた。

 

隣に座ってパンを美味しそうに食べるモカは、いつも以上に──

 

 

 

この日の帰り道は、2人手を繋いでゆっくり帰った。




ある日。
少女のみが覚えている約束が交わされた。

「いつかまた会えたら、その時は──ずっと一緒にいよう」
半ば無理だと思いながらも少女の胸にはその言葉が残り続けていた。
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