それが、朝霧まひるの「普通」だ。
「ボクって罪な子だよね」
「いきなりなんだ、音合わせ中だろ」
「いやぁ、つい?」
SunsetMemoriesのバンド練の途中、ボク──朝霧まひるはふとそんなことを呟いた。
ギターを鳴らすのをやめてボクにツッコミを入れたのはリーダーでボーカルの夕凪奏、同い歳で羽丘に通う優等生君。
ボクをバンドに誘い最高の景色を見せてくれたとても大切な人。
「否定はしないです、バンド練の途中でUNOとか始めるし」
「楽しいからいいじゃん」
「やるなら休憩時間にしろってことっすよー」
ベースを弄りながらボクの行動を晒したのが暁月やよい、キーボードを軽い動きで触るのが東雲夕香。
二人とも一つ下でこれまた羽丘に通う子。
「後輩たちが厳しい」
「当たり前だろ、集中しろ」
「はーい……」
奏の呆れた感じを見てしまったからには集中してやらないとね。
それにしても今日はやけに熱が入ってる、いつも練習から本気だけど、それでも普段よりもやる気に満ちてる。
何かあったっけ、と手を止めてたら奏の妹の叶恵に背中をつつかれた。
「何ぼーっとしてるんです」
「ちょっとねー、ところで直近でなにかライブとかあるっけ」
「……今週末にMorfonicaとの合同ライブですよ」
「あ、そういやそうだっけ」
「はぁ……天才ってこういう時困るよねお兄ちゃん」
「バカと天才は紙一重っていうからな」
奏と奏の妹ちゃんの叶恵がそんなことを話してそれにメンバーが笑って。
って、誰が馬鹿だって?
ボクはほんの少し才能がある普通な女の子だぞ?
でも天才とも言ってたな、どっちなんだろ、バカにされてたりするのかな。
ま、そんなことはさておき、そういえばMorfonicaと合同ライブやろうって話したんだっけ、ボクが。
「広町ちゃんに話したのあなたでしょ」
「うん」
「うん、って……なら覚えといてください」
「いやぁ、トントン拍子で進んだからさぁ」
というのも数日前。
ボクの通う月ノ森、そこでの昼休み。
「あっせんぱーい」
「おやおやモニカのみんな、どした?」
「えっと……」
「ほらシロ、言っちゃいなって!」
中庭でお昼を食べてたボクのもとに1年生でMorfonicaってバンド組んでる5人がやってきた。
ボーカルのましろちゃんが何か言いたそうにモジモジしてる、可愛いなこの子。
「あの、私たちMorfonicaと……合同ライブ、してください」
「合同ライブ……??」
「そのままの意味だと思うんですが」
「それはわかってる、さすがのボクもそんなに馬鹿じゃないからね、るいるい」
「それならよかったです」
ましろちゃんからの突然のお願いに困惑してたらるいるいこと瑠唯ちゃんが冷たいことを言ってきた。
ただびっくりして言葉を繰り返しただけなのに酷いなぁ…ボクどう思われてるんだよ。
「で、合同ライブ……サンメモと?」
「無理、ですかね……?」
「奏に聞いてみるよ、それでいつ?」
「それが──」
自分たちの主催ライブをやるためにやる気と実力をどっちも高めるという目的でやるという合同ライブ、聞いてみたらまさかの──
「今週末、ね」
「ボクもビックリしたよ、でもそれ聞いても二つ返事でやるって言ったもんね奏」
「ちょうど予定空いてたし、俺らもそのうちAfterglowとの合同やるって話してるからタイミングとしては良かったかなって」
「で、今最終調整してるわけですが」
「一人集中してないわけで」
「わかったからそんなに責めないでくれる?」
作業を止めてたボクにすごい冷たい目を向けてくる夕凪兄妹、たまにものすごく厳しい目してくるよ、ちょっと怖いね。
ま、そんな目をしながらもちゃんと受け入れてくれてるからここは居心地がいいってもんで。
だからこそ、向けられてる期待に「音」で答えよう。
「さて、本気出しますかー」
「ほんとマイペースっすね」
「まぁそれでもやる時はやってくれるからいいですけど」
「だろー?」
「はいはい、調子乗らない……カウント、頼んだ」
背伸びしてたら夕香とやよいが呆れた声でボクのことを話してた。
そんな会話に乗っかったらチューニングを終えた奏がツッコミをしながらボクへ合図を送る。
「……わん、つー、すりー!」
ボクのカウントで演奏が始まる。
この場の一体感が、5人でひとつの音を作るこの感覚はボクの胸を震わせていく。
最高、それが一番合う。
これが、
この話は高校二年生の時期です。
そう、時系列が前後するのがフラグロの特徴である。
奏のバンド、SunsetMemoriesの最後のメンバー「
そんな彼女は月ノ森に通うサンメモ唯一の羽丘以外の生徒です。
初登場がこれでいいのかな
次回以降もたまーに出てきます
朝霧まひる(高校二年生)
茶髪でオレンジ色の目
月ノ森の生徒でサンメモのドラマー。
自分のやりたいこと、を最優先にするマイペースだがやる時は全力でやる系女子。