でも、言われて気づいた。
突然だが今俺は彼女に押し倒されている。
何を言ってるのか分からないだろうけど、俺も何が起きたのか分からない。
時を少し遡り小一時間前。
そんな日にモカからメッセージが飛んできた。
『モカちゃんの家に集合〜』
の一言だけが届いていて特にやることも無いため支度してすぐに彼女の家に向かった。
玄関のチャイムを鳴らすとモカが出てきてすぐに家の中へ招かれた。
「ようこそ〜」
「急に呼び出してなにかあったのか?」
「モカちゃんの彼氏が暇してると思ったから連絡したんだよ〜?」
「そりゃどうも、ちょうど暇してたよ」
「さっすが名探偵モカちゃんですな〜?」
見事推理を当てました〜、と見事なドヤ顔を決めたモカはさらっと自室に俺を招いていた。
リビングでも暇は潰せるんじゃないか、と聞こうとしたが彼女がギターを置いてるのも好きな漫画を置いてるのも自分の部屋なわけで、一番時間を使えるのはモカの部屋ということになる。
だからといってこうも躊躇いなく部屋に招くのは中々に勢いがある。
「部屋に入っていいのはママと蘭たちとあこちんとこころちゃんと〜……」
「知り合いほぼ全員だろ、というか人の考えてること当てるなって」
「顔に出てたよ?」
「そりゃ失敬」
一切口にはしてないはずのことに対しての回答を述べ始めたモカを止める。
たまにモカに考えてることを読まれて口に出されるけど今回は顔に出ていたらしい、真偽は不明だけど。
それにしても今日のモカはいつもより距離が近い気がする……気のせい、か?
「そーくん」
「ん?」
「……えい」
ベッドに座っていいよ〜、なんて言いながら本棚から漫画を取りだしていたはずのモカが俺の目の前に立ち俺を呼んだと思った瞬間、両肩を押されて俺はベッドに倒れた。
そして、起き上がらせまいとモカが俺に覆い被さるように上に乗ってきて。
冒頭に戻るわけだ。
「……なにしてるんだ?」
いまいち状況が掴めないため当人に聞いてみる。
はたから見たらとんでもない体制をしてるためなるべく早くどうにかしたいところではあるけど、モカは全くどく気配がない。
「前に、約束したよね〜?」
「どれだ?」
言われて思い出せるのはパンを沢山買うとか、パフェを奢るとか一緒に買い物に行くとかそういうものだが、それら全て約束してから時間が経つ前に果たしているはず。
となれば思い当たるものが無い。
「モカちゃんを放ったらかしにしたら怒るって言ったよ?」
「放ったらかし……って、チョーカー渡した時か」
「正解〜、でもそーくん約束破ったよね〜?」
「いや、破ってないだろ……?」
少し前、モカにチョーカーをプレゼントしようとして1週間ほど距離を置いたことがあった。
あの時は渡してすぐに「今度同じようなことしたら許さない」と言われ俺もそれを承諾してそれからはちゃんと毎日モカと話すしパン買ったりしてるしちゃんとしてきたはず。
今日だってこうして会いに来たわけだし、モカが怒る理由が見当たらない。
「そーくんは、モカちゃんと一緒にいる時間ちゃんと作ってるつもりでしょ?」
「そりゃ、買い物も行くし学校でも基本一緒にいるだろ」
「……やっぱり〜」
モカは滅多に見せない怒り顔をしたかと思えば馬乗りから身体を倒して俺に完全に覆いかぶさりそのまま背中に手を回して抱きついてきた。
「モカちゃん的には2人っきりで過ごす時間が欲しかったんだよ」
抱きついてきたモカは耳元で小さくそう呟く。
言われてハッとした、確かにモカと2人だけで過ごしたのは夏、海に行った時のほんの少しの時間と夏祭りぐらいしかない。
学校やバンドは基本的に蘭たちや他のバンドのメンバーが一緒にいるし、買い物も叶恵ややよいがついてくることが多い。
「嫉妬してる?」
「してるよ〜?」
「……怒ってるよな?」
「うん」
「それでこんな手段に出たのか…」
ちょっと動けばモカとキスしそうなぐらい顔が近い。
ここまですることに躊躇いが無くなるぐらいモカは寂しいと感じていたということ。
俺はそれに気づかず、モカのそばにいたということ。
「ごめん……なんて言って許されるわけないよな」
「もちのろんだよ〜、だからこうしてそーくんを離さないようにしてるんだよ」
「……なにする気だ」
「何もしない〜、ただそーくんと一緒にいたいだけ」
一瞬ものすごいことをされるんじゃないかという想像が頭をよぎったがそんなことは無く単純にモカが俺と一緒にいたいだけらしい。
断る理由もないし俺もモカといたい気持ちが強くある、それ故に抱きつかれてるこの状態をどうにかしようとも思わない、ただ距離が近すぎる気はする。
「……このままこうするだけじゃ悪いから、体勢を変えようか」
「あたしはこのままでもいいけど〜?」
「モカと2人っきりになれなかったお詫びをしたいんだ」
「なら身を委ねますか〜」
そう言うとゼロ距離から立ち上がりどうするのかとソワソワし始めた。
変な期待されてなきゃいいけど、と思いながら体を起こしてモカに横に座るようにと伝えて隣に座ったところで俺の膝にモカの頭が来るよう彼女の体を倒した。
「おー、膝枕?」
「たまにはこういうのもいいだろ?」
「極楽ですぞ〜」
「すぐ調子乗るんだから……」
我ながら大胆なことをしてるとは思うけど、膝枕自体は叶恵に何度かやってるから慣れてるため躊躇いはなかった。
少しでも近い距離にいたい気持ちは俺もあるため恥じらう必要も無いだろう。
「そーくん」
「なん──」
ふいにモカに名前を呼ばれ顔を下げるとそのまま彼女の顔へ引き寄せられ、何事かと聞こうとした口が彼女の唇によって塞がれた。
「……そーくん、あったかいね〜」
「……急すぎるんだけど」
「照れてるの珍し〜」
「誰のせいだと……」
急なことで頭が追いつかない。
そんな俺を見てニヤリと笑うモカ。
「もうひとつの約束はちゃんと守ってよ〜?」
彼女が小さくそう呟いたのに俺が気づくことは無かった。
数時間後
母親が帰ってくる少し前に奏が帰り、一人残ったモカは一人枕に顔を埋めて自分のした事に悶絶したのはここだけの話。
Q.ヤキモチですか
A.たぶんそう、部分的にそう
実は久しぶりの奏モカ回。
モカって好きになった相手と2人っきりの時間が無いとヤキモチしそうな子だと勝手に思ってる、異論大歓迎。
次回もまた気長にお待ちください。