Fragment glow   作:桜花 如月

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青葉モカになら、お菓子貰いながらイタズラされてもいいかもしれない


トリック・アンド・トリート(前)

10月31日。

この日は世間はハロウィンと呼ばれるイベントで普段よりも騒がしくなる。

街中はかぼちゃだとか魔女とか蝙蝠とか、そういったハロウィンに関する物が至る所に装飾されて違った姿を見せている。

 

 

そして、そんな年に一度のイベントにここCiRCLEも例外はない。

ハロウィン当日から前後一週間、計二週間もの間、CiRCLE前にあるカフェテリアとライブハウス内それぞれが装飾されるのだ。

もちろん、装飾をするのはライブハウスのスタッフであり、それぞれが分担して各所に色んな物を置いたりした。

 

「奏くん、ハロウィン当日なのにコスプレしないの?」

「俺は別に……そこまで乗り気じゃないです」

 

基本私服のこのライブハウスもハロウィンの時期はスタッフもコスプレする人が多いが、全員強制では無いため俺は普段着で仕事をしている。

魔女姿のまりなさんにそこを聞かれたが乗り気じゃないと軽く返す。

 

「それにしては制服にカボチャのバッジ付いてたね?」

「あれは……」

 

乗り気じゃないと返事したものの、制服に付けていた──付けられたまま外し忘れたバッジを見られていたみたいでそこをつっこまれた。

あのバッジは今朝用事があり学校に行ったら部活に出てきていたひまりに「奏もこれ付けて!」と言われて無理やり付けられた物。

あとで必要になる、とか言ってたがあれ以降ひまりとは会わずにバイトに来てしまいそのままバッジも外し忘れていた。

 

「ひまりちゃんが言ってたのは多分、今日池袋の方でやってるコスプレイベントの事じゃない?」

「何も聞いてないんですけど」

「部活で忙しそうだったなら仕方ないよ、それより行かないの?」

「今から行っても……って、まりなさん、あれ何ですかね」

 

コスプレイベントとやらに参加するかどうかを悩んでいると視界の隅に変な物が映りこんだ。

カボチャで顔を隠しながらCiRCLEのロビーからこちらに少しずつ近付いてくるためいやでも気づくし、どう見ても怪しい。

 

「ご利用ならこちらにどうぞー」

「……チガイマス」

「せめてそこは嘘でも利用者ってことにしとけよ」

 

気づかれないと思ってたのか受付の目の前まで忍び足で近付いてきた「誰か」に普段の接客と変わらない声掛けをすると体を大きく縦に震わせて誤魔化そうと顔を背けた。

 

「それ入口のカボチャだろ、わざわざ持って何してんだ」

「……知らないですよ?」

「とぼけるなよ……やよい」

「と、とぼけてるわけじゃ無いんですっ!」

 

バレバレな来訪者の名前を呼ぶと持ってたカボチャを地面に置きカウンターを強く叩く。

いつもの照れ隠しにしてもちょっと強すぎる気がする、こういう時は確実になにか隠してることが多い。

 

「まだ営業中だからね、落ち着いてね」

「あ、すみません……じゃなくてですね!」

「落ち着いてないな」

 

ハロウィンシーズンということもあり普段より客足は少ないもののそれでも利用者はいる、そのため落ち着いて欲しかったが一息ついてすぐに取り乱した。

どう見てもいつもと違う彼女の慌てように周りの客にも迷惑がかかり始めているため一度スタジオに誘導した。

 

スタジオの鍵を準備しているうちにやよいの隣にはモカが立っていて「行こいこ〜」なんて手招きしていた。

 

 

「……で、いつの間にかモカもいる訳だが」

「やよいちゃんがちゃんと伝えられるかわからなかったからね〜」

「……すみません」

「いやいや謝らなくていいよ〜」

 

スタジオ内にて深呼吸させて落ち着いたやよいは凄く申し訳なさそうに俯いている。

そして、モカはやよいが何を伝えようとしたのかを理解した上でわざとちょっと距離を置いて見ていたようで、取り乱したやよいを見かねて出てきた、と。

というかこの二人、制服でもなければ私服でもない、見たことない服装に身を包んでいる。

 

「それで、結局何を伝えようと?」

「そ、そうですね……えっ、と…」

「やよいちゃんがハロウィンイベントのダンスイベントってやつに出て欲しいんだって〜」

「ちょっ、先輩!?」

 

言い淀んだやよいの代わりにモカが要求を口にした。

頑張って言おうとしてたやよいの気持ちも考えてあげてもいいと思うが、それより──

 

「ハロウィンイベント、か……」

 

二人の言うハロウィンイベントとやらはまりなさんが言っていた物と同じだろう。

だから二人とも普段見ない衣装──ハロウィンイベント用のコスプレ衣装を着ている、ということだ。

モカは去年行ったという遊園地で着たものと同じであろうヴァンパイア、そしてやよいは魔導書を使うタイプの魔法使いだろう。

二人とも似合ってるし、可愛い。

だからこそ、だ。

 

「せ、先輩は……モカちゃん先輩と参加するから無理……ですよね」

「誘われてすらいないし、行く気もなかったんだけど」

 

誘われてない、というと嘘になりそうだが直接行こうとは誰にも言われてない。

 

「やっぱり嫌……ですよね」

「やよいちゃん〜?」

 

俺が行かないつもりだったとわかると今にも泣きそうな顔をしながらやよいは俯いてしまった。

コスプレまでしてせっかく勇気を出して誘ってくれたのに行く気が無いなんて言われたらそれは傷つくし落ち込むだろう。

 

「……参加するには、これが必要なんだろ?」

「えっ……それ、なんで?」

 

落ち込んでしまったやよいの前にひまりから貰ったカボチャのバッジを取り出した。

どうやらイベントに参加するためのもの、というのは正解らしく、やよいは顔を上げると明るい顔に変わった。

 

「知り合いから貰ったんだ、ただ一人で行くにはちょっと敷居が高くて」

「……と、いうことは」

「行くよ、イベントに」

「……っ!やった……!」

 

行くことに決めたことを伝えるとやよいは喜んでモカとハイタッチを交わした。

それだけ嬉しいということが彼女の顔からも伝わってくる、こうなったらさすがに引けないだろう。

 

 

「モカはどうするんだ?」

 

ふとこの場にいて尚且つカップルという立場のモカがどうするのか気になって質問した。

 

「そーくんとやよいちゃんのダンスを見守る役だよ、他に参加する人がいればその人と踊ろうかな〜」

「……悪いな」

「ん〜?妬いてないよ、その代わり……」

 

モカは俺の真横に座ると耳元に顔を近づけてこう囁いた。

 

「エスコート、ちゃんとしてあげるんだよ?」

 

と。

 

 

 

「……もちろん」

「それならよろし〜」

 

今思えばモカはやよいが俺と踊りたいという気持ちを優先してあげたのかもしれない。

もちろん、それを口にすることは無いだろうけど。

 

「バイト終わり次第、行くか」

 

 

 

この後、バイトが終わって直ぐに池袋のイベント会場に3人で向かった。

道中、モカに連れられて貸し出しのコスプレ衣装屋に立ち寄り、俺もコスプレ衣装を身にまといこれで完全に逃げられなくなった。

 

 

そして、ハロウィンイベントで俺たちはプチハプニングに襲われることになる──。




青葉モカなら少し迷いつつも他の子の気持ちを優先する、そんな気がする。

ハロウィンに関するお話
その前編です


短いから一話に纏めようと思ったけど区切りいいからね、仕方ないね
では次回、後編で。


─────────────
仮装(コスプレ)

夕凪奏:???
暁月やよい:魔法使い
青葉モカ:2年前のハロウィンイベント衣装(ヴァンパイア)


ひまり
・奏にイベント参加用のバッジを渡したのはどう見ても乗り気じゃなかった(話題にすらしなかった)奏をモカと一緒に参加させるつもりで渡した、ちょっと形は違うが参加することにはなった。
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