Fragment glow   作:桜花 如月

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奏でるは愉快な狂想曲

(後編です)


トリック・アンド・トリート(後)

バイトを終え池袋に向かった俺達は途中で俺のコスプレ衣装を借りて会場へと向かった。

 

駅から既にコスプレ──仮装した人が多かったが、会場周辺はほぼ全員が衣装に身を包みイベントを楽しんでいる様子だ。

 

そして──

 

「あっ、お兄ちゃん!やよい!」

「なんだ、お前らも来てたのか」

 

会場となる広場の入り口には叶恵達、俺のバンドメンバーの三人が集まっていた。

みんなそれぞれイベントに合わせて衣装を着てきたようだ。

 

「奏のことだから興味無いー、っていうと思ってたけど、まさかやよいとモカちゃんと来るとは」

「やよいに誘われてな、モカはやよいと一緒に誘いに来たってとこだ」

「そーゆーこと〜」

 

このメンバーの中では一番落ち着いた服装のまひるが驚いたようにこっちの三人を見てくるが俺だって驚いてるんだ、まさか参加するとは思ってなかったし。

というか、まひるが着てるのが何モチーフの服かパッと見だと何もわからない。

 

「なに?ボクの顔になにかついてる?……あ、それともこの服?」

「浅葱色の羽織ってハロウィンじゃ浮かないか?」

 

まひるは私服の上に浅葱色の羽織を羽織って普段してないツインテールだ。

どっかで見覚えのあるような、ないような見た目になってるまひるはちょっとニヤつきながら俺を見てくる。

 

「アニメキャラのコスプレとかしてる人もいるし問題は無いでしょ?」

「そーですよ、というか私たちの服装見て何も感想無しですか先輩」

 

まひるの衣装を気にしているとムスッとした顔で夕香が俺の脇腹をつついてくる。

そんな夕香は私服姿のままだが動物──多分狼の耳を着けてさらに髪型も所謂ウルフカットというやつに変えていた。

 

「私服なんだな」

「む、そこにツッコミますか」

「そりゃ、いつもの服に見慣れないアクセサリーだからな」

「ほんとはすっごい短い丈の服とかあったんですけどね、この時期は寒くて……あとナンパされたくないんで」

「納得、それで叶恵は──」

 

よく見ると夕香はカラコンでオッドアイにしており、彼女の少し長めの髪が揺れる度に髪の間から赤と青の目が覗いてくる。

私服である理由に納得しながら叶恵の方に顔を向けようとしたその時、会場内から大きなアナウンスが流れ始めた。

 

 

『ただ今より──ハロウィンイベントの催し、舞踏会を始めます。参加される方は会場内の特設ステージにお越しください──』

 

「……先輩!」

「おっと、そんな時間か……悪いが本命はあれだから」

「え、お兄ちゃん出るの?」

「やよいと一緒に出るんだ」

「そっか、楽しんできてね」

 

ダンスイベント──もとい舞踏会とやらに参加すること、そしてそれがモカとじゃないことに少し驚きつつも叶恵は微笑んだ。

 

「あ、あと叶恵」

「ん?なにー?」

「……似合ってるよ、それ」

「そ、ありがとお兄ちゃん」

 

ずっと俺の方を見てソワソワしてる叶恵が着てる服に対して一言だけ伝えると叶恵は「やっと言ってくれた」と言いながらにっこりと笑った。

モカがからかうようにニヤニヤとこっちを見ていた気がするが見なかったことにしてやよいと共に会場内のステージに向かう。

 

 

 

「舞踏会……ってなんなんですかね」

「さぁ……?」

 

ダンスイベントと聞いていたやよいが俺も思っていた疑問を聞いてきた。

仮装した人たちによるダンス……仮装舞踏会ってとこなんだろうか、その真意は分からないけど今やることは一つ。

 

「全力で楽しもうぜ、やよい」

「そうですね、先輩」

 

ステージに登ると観客の歓声がやけに大きく聞こえる。

やよいも緊張している様子だが、開演のアナウンスと共に音楽が流れ出すと俺の手を掴み踊り始めた。

 

 

「そーくんファイトー」

 

踊りの最中、モカが外から野次を飛ばしてきた。

適当に返事しながら流れるワルツにやよいと合わせるようにステップを刻んでいく。

 

そして、踊りが最高潮になろうとしたその時。

緊張も解け踊りに集中しているやよいが俺の手を引こうとしたところでやよいがバランスを崩してそのまま後ろに倒れそうになった。

 

「うわっ!?」

「やよい……っ!」

 

咄嗟にやよいが倒れないように手を引いたが逆にやよいを引いた勢いを止めきれずに俺がバランスを崩してそのまま後ろに倒れてしまった。

 

「二人とも大丈夫!?」

「いてて……先輩、大丈──」

 

顔を上げようと目を開けると目の前にやよいの顔があった。

やよいもそれにすぐ気づき言葉を詰まらせたが、下手に声をあげると見てるヤツらに状況がバレる可能性があると思ったのかそれ以上は言わなかった。

 

「ご、ごめんなさい!」

「大丈夫、……踊るの終わろうか」

「……もう少し、踊りませんか?」

 

立ち上がりやめようとステージから降りようとしたがやよいが裾を掴んできた。

さっきまでと違い明らかに照れているしこのまま戻ったら何を言われるか分からない、それにせっかく楽しみにしてたやよいのためにも踊りを再開した。

 

 

 

無事舞踏会が終わったあと、会場内に出ていた屋台でモカが大量に買ってくれていたらしくそれをみんなで仲良く食べた。

そして時間は過ぎイベントが全て終わったあとの帰り道。

借りてた衣装を返して私服に戻った俺は叶恵とやよいとともに歩いていた。

 

「二人とも怪我はなかった?」

「なんとかな、やよいも大丈夫だったか?」

 

あんな事が起きたと気づいてない叶恵は普通に気を使ってくれて俺たちを心配してくれた。

衣装が頑丈に作られてたこともあり俺は怪我がなかったし、やよいも俺が下敷きになったことで怪我はしなかったようだ。

 

「わたしは……うん、大丈夫」

「ならよかったよ、それにしても二人とも楽しそうだったよね〜」

「うん、楽しかったです……先輩も楽しかったですかね…?」

「楽しかったよ、参加してよかった」

 

最初は参加する気はなかったが結局みんなと一緒に参加してちゃんと楽しかった。

それをやよいに伝えるとずっと気まずそうにしていたやよいは立ち止まると一度深呼吸してから口を開いた。

 

 

「ありがとうございました、先輩」

 

やよいは笑顔でそういった。

すると少し寒い風がやよいの帽子とそこから少し伸びた髪を揺らす。

 

「それじゃ、わたしはここで」

「うん、気をつけてね」

「またねやよい!」

 

笑顔の後に顔を帽子で隠したやよいは分かれ道で挨拶をして少し早足で帰っていった。

やよいの姿が見えなくなるまで見送った後、俺達も自宅へと帰った。

 

 

後日。

少しだけやよいとの距離感がバグったのはここだけの話。




リア充かよ(嫉妬)

なお何が起きたのかはモカはちゃんと見てました。



──────
衣装
奏:ドラキュラ
まひる:某新撰組の服装と髪型
夕香:とあるイケメン女子のケモ耳ウルフカットを真似たらしい
叶恵:カプリチオイベントの美竹蘭衣装(借り物)
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