Fragment glow   作:桜花 如月

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寒空の下

 

「……さっむ」

 

CiRCLEでのバイトが終わった俺はまりなさんに挨拶をして外に出た。

まだ11月半ばだというのに気温は明らかに低く風も冷たくてつい寒いと口にしてしまう。

夏は暑くて早く冬になれと冗談交じりの笑い話をしていたが、こんなに寒いなら冬なんて来なくていい。

 

 

そんなことを考えながらCiRCLE併設のカフェ横を通り過ぎると見覚えのある人影が震えながらこちらに手を振っていた。

 

「あ、やっと来た〜」

「なにしてるんだよ、モカ」

 

人影の正体はモコモコな服に身を包んだ彼女……モカだった。

 

「そーくんを待ってたんだよ〜?」

「今日バイト無い日って言ってなかったか?それに待つにしても中で待ってれば……」

 

モカとバイトが被る日はどちらかのバイトが終わるまで待機して一緒に帰るというのが最近の日課になっている、が今日はモカのバイトは休みの日だったはず。

そう思い聞いてみるとモカは上着を1枚脱いだ。

 

「叶恵ちゃんに頼まれたからね〜、そーくん厚着してないから届けてくれって」

「それ俺のコートだったのかよ……というかいいよ着てて」

「え〜、そーくん寒そうだよ?」

 

確かに、普段着にジャケット1枚羽織っただけで防寒なんて無いに等しい服装だから正直寒い。

でもさっきからずっと震えてるのを見てると上着をもらう訳には行かない。

 

「それだけモコモコしてて寒そうにしてるモカをこれ以上凍えさせるのは彼氏として見過ごせないから」

「そういうことならあたしも彼女として見過ごせないよ〜?」

「……とにかくそのコートは着てていいから」

 

ちょっとカッコつけてみたが同じ理由でカウンターされたため上手く話題をそらすために渡されたコートをモカに羽織らせる。

少し不満そうな顔をされたがすぐに機嫌を戻したモカは俺の手を掴んできた。

 

「そーくんの手あったか〜」

「さっきまで室内にいたからかな」

「なんていいつつ予定外なモカちゃんとの手繋ぎで緊張してるとか〜?」

 

モカの手はさすがにずっと外にいたから少し冷たく震えが伝わってくる。

少し前まで暖房のきいた室内で動いていた俺の手はモカにとってはかなり暖かいようで、暖かいと口にしながらもそんな状態でもモカはいたずらな笑みを浮かべながらこちらの顔を覗いてきた。

 

「緊張はしてないよ、でも──」

「でも?」

 

「──大好きな彼女と手を繋いでるんだから、そりゃ嬉しいに決まってるだろ」

「……えっ」

 

モカの質問に対して俺は普通に思ってることを返した。

すると変な声を出しながら彼女はフリーズしてその場に立ち尽くしてしまう。

 

「?俺なんか変なこと言った?」

「……そーくんのばーか」

「なんでそうなる!?」

 

何故か罵倒されたが、モカはそっぽを向きながら俺の手を再度握り手を引く。

 

数分ほど口を利いてくれなくなったモカの手は震えがなくなり熱を帯びていたが、その理由を教えてもらうことはなかった。




彼シャツならぬ彼コート

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