Fragment glow   作:桜花 如月

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誰かに甘えたくなる時、あるよね


あるよね?


青葉モカは甘えたい

あたしモカちゃん。

あ、違う、違わないけど違う。

青葉モカ、高校2年生の美少女。

 

そんなあたしは最近、とてもモヤモヤしてる。

なんでかと言えば、人によっては怒られそうな、とても身勝手な理由で。

でも、あたしは間違ってないと思う。

 

 

 

「ね〜、ゆっづー?」

「どうしたのモカちゃん?」

「最近、そーくんが構ってくれないんだー」

 

学校のお昼、珍しく教室でパンを食べてるあたしはクラスメイトのゆっづー、後輩くんとバンド組んでるあたしの友達と話してる。

同じクラスであたしとそーくんがどういう関係かも知ってるから相談に乗ってもらってるんだ。

 

「そうなの?」

「うん、パンも買ってくれないし、帰りもタイミング合わなくて……」

「たまたまじゃない?お金ないとか、バイトとか」

「ゆっづーじゃないんだから〜」

「なっ失礼な!わたしだってね、それなりにはお金も暇もあるんだよ!」

「え〜?」

「なにさその反応、まるでわたしがチロルチョコにお金溶かしてるみたいな」

「そこまで言ってな〜い」

 

ゆっづーとのやり取りはあたしたちのよく言う「いつも通り」で、そんなやり取りをしながらもやっぱりあたしは考えちゃう。

あの日からほぼ毎日のように一緒にいたのに、ここ一週間ほど学校ですれ違うだけで登下校は別々になってる。

たった一週間だけど、好きと言ってくれたそーくんが離れていく気がして、嫌な気持ちが大きくなっちゃう。

 

「……そーくん、嫌いになったのかな」

「モカちゃん一筋なとこあるしそれは無いと思うよ?」

「でも……」

「直接聞いてみる?」

「あたしのこと嫌い?なんて聞けないよ」

「うん、そう言うと思った。とりあえず学校終わったらすぐ探してなんかこうドーン!ってやろ」

 

もし、聞いた答えがYesだったら、そう考えると凄い気持ちが落ち込む。

そんなあたしを慰めてくれてるのか、ゆっづーはいつもみたいにチロルチョコをポケットから取り出してきた。

いつも通り……ね。

 

 

「さ、モカちゃんこれ食べて元気だして、しょぼんなモカちゃん、見たくないと思うよ?」

「ゆっづー……ありがと〜」

「どういたしまして」

 

 

 

 

 

 

 

それから時間が経って放課後。

HRが終わってすぐにそーくんは教室から出ていった。

蘭やみんなはバイトや部活で忙しいみたいだからあたしはその後を追う。

教室から出る前に振り返ったらゆっづーが親指を立ててた、ありがとうとジェスチャーしてあたしとしては珍しい早歩きで彼を探す。

でも、ちょっとした間にそーくんは下履に履き替えて学校を出ていた。

本当に、避けられてるような気がして、いつもなら丁寧に履く靴も最低限歩けるだけの履き方で飛び出す。

外は雨が降ってる、でも傘をさすその一瞬さえ無駄にしたくなくて、門を出た彼の名を呼びながら無我夢中で走る。

 

「そーくん……っ!」

「うおっ!?」

 

そーくんに追いついたあたしは止まらずに彼の背中を思いっきり押した。

それでバランスを崩したそーくんはそのまま前方に倒れる。

 

「……モカ?」

「いった〜……じゃなくて」

「怒ってる?」

「あたしが何言いたいかわかる〜?」

 

そーくんは地面に思いっきり倒れたにもかかわらずあたしの方を向いた。

何を言いたいかわかったような、それでいて少し慌てた反応の彼はなにか隠してるのが明確で。

 

「あー……そうか、一週間だもんな」

「そーだよ?」

「やよいや夕香にも怒られたんだよな……」

「何を隠してるの?」

「……一旦、俺の家行かないか?」

 

地面に横たわる彼もその前に立つあたしも振り続ける雨に濡れ、そして徐々に帰り始める生徒に見られている。

急に恥ずかしくなってきたあたしは無言で頷いて彼が立つのを手伝って直ぐにそーくんの家へ向かう。

 

 

「今話せない理由は?」

「俺の家に答えがある、としか」

「ならそこまで我慢する〜」

 

そんな会話をしながらひとつの傘で帰る。

今思えばこれだけでも答えはわかったけど、こうしてくれるそーくんが何を隠してるのかだけは知りたくて、何より2人で一緒にいる時間が欲しかったからしばらく黙ってた。

 

 

 

 

「……で、これだ」

「おー!……なにこれ〜?」

 

そーくんの家に着いたあたしは濡れたからだを拭き、風邪ひくと行けないからって彼の服を借りた。

一息ついたところで彼が取り出したのは黒色のチョーカー、それはつい最近……ちょうど一週間ぐらい前にひーちゃんが欲しいって言ってたもの。

あの時確か、あたしも欲しいって言ったんだっけ。

 

「え、聞いてたの?」

「うん、それで思い出したんだよ。

俺とモカが付き合い初めてからもうすぐ1年経つって」

「あ……」

 

卓上のカレンダーには2日後に「記念日!」と書かれていた。

ちょうど1年前、Afterglowでちょっとしたトラブルが起きてすぐにあたしとそーくんは恋人になった。

そっか、もうそんなに……

 

「ほんとはすぐ渡したかったんだけど、これ……ちょっと財布に大打撃で」

「……ゆっづーの言う通りだった」

「え、岡村が何か?」

「なにも〜、それより付けてよ」

「うん、任せろ」

 

そーくんがチョーカーを箱から取り出してあたしの首に回す。

一週間ぶりにちゃんと見た彼はすごく優しそうな顔で、首に、頬に触れた手はとても暖かい。

 

 

「よし、これで──って、何してんだ?」

「……ばか、あほ」

「……うん」

 

チョーカーをつけ終えて離れていく彼を思わず引き寄せる。

両腕を後ろにまわしてそーくんを抱きしめて。

その温かさが、全身に伝わる。

 

「ね〜」

「うん?」

「今度同じことしたら、許さないからね〜」

「もう二度とモカを置いてけぼりになんてしないよ」

「うむ、よろしい〜」

「……ほんと、ゴメンな」

「いーよ、プレゼント貰ったし」

 

ソファに2人で座り寄り添う。

そーくんもあたしの方に寄ってくれて、すごく近い。

 

「モカ、改めて付き合ってくれてありがとう」

「こちらこそ〜」

「……なんかすっごい近いんだけど」

「たまには……一週間無視されたからね〜……」

「だから何──っ!?」

 

 

その瞬間だけは、あたしらしくないと言われるかもしれないけど。

でも、あたしはそーくんが好きで、大好きだから。

たまには、甘えてもいーよね?




モカって好きな人には甘えるしからかうし嫉妬もすると思うんですよ。
そんな妄想を詰め込んだお話。

主人公、夕凪奏と青葉モカはある時期を境に付き合い始めます、ここ本編の重要なとこ。
そんな恋人たちの、絶妙な温かさの話。


そして今回
なんと
永嶋誘様の「夕焼けの後を照らす月に。」
https://syosetu.org/novel/274531
の主人公、ゆっづーこと岡村柚月がゲスト出演です!
作者様から快くOK貰い今回出演となります。
まさかこっちが先になるとは……

なお、あちらと少し設定に違いがあるので本当にゲストキャラです。


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