でもそれを知ってしまえば夢が一つなくなってしまう。
秘密を守ることも必要なんだよ、きっと。
誰が子犬じゃい。
え、言ってない?
そっか、よしちょっと表出てください。
なんて思考を遮る気配。
「あれ、夕香じゃん、どうしたの」
「あ、どもです熊先輩」
今私がいるのは商店街、羽沢珈琲店とか北沢精肉店とかある商店街。
これといって目的は無いけどたまたま見かけた先輩に声をかけてみて。
「いい加減その呼び方やめてくれないかなー」
「嫌です、商店街のマスコットでDJな奥沢先輩は熊ですし」
「あーもうわかった、それでいいよ」
奥沢先輩、フルネーム奥沢美咲先輩は何が起きたのかは分からないけど今ハロー、ハッピーワールド!というバンドのDJをやってる。
正確には奥沢先輩じゃなくてミッシェルっていうこの商店街でマスコットしてる熊がやってるらしい。
その件をちょっとしたネタとして弄るのが私のいつもの流れ。
「折れましたね」
「誰のせいだと……てか、なんの用?」
「いえ、特に用は無いです」
「珈琲店前にいるならバンド待ってるとかじゃないの?」
無いんかい、って聞こえそうな仕草をしながらどこかに向かう奥沢先輩を追う。
途中でメンバーを待ってるんじゃないのかと聞かれたけど、メンバーはそれぞれバイトとかその他色々で今日は一人。
「んー、今日は夕凪兄妹はそれぞれ用事あるみたいで、やよいももう1人も忙しそうにしてたので」
「散歩ってこと?」
「はい、そういう奥沢先輩は何を?」
「あたしはこれからハロハピの会議、その前準備に来たんだけど……」
「なんで商店街に?」
「ミッシェル」
ハロハピの拠点こと弦巻亭は商店街からかなり遠い。
会議となればそっちに行くはずなのにこっちに来てるということは何かある。
そしてその「何か」は指した先にある倉庫、その中にある。
「あ、そういえば昨日こっちでイベントでしたっけ」
「そ、それでミッシェルを保護……じゃなくて確保に来たわけ」
倉庫のシャッターを上げた、その中にあるピンクの熊ことミッシェル。
先輩は綺麗に保管されてるその熊の頭をさっと持ち上げて地面に置く。
「意味変わんないですよ、というかどうやって持ってくんです」
「着てこうかな、と」
「ちゃんと毒されてますね」
「どういう意味かな、それ」
普通に着ていこうとする奥沢先輩に弦巻率いるハロハピの暴走3人組に似たものを感じる。
バンドに入ったらこうなる、っていうのを体現してる気がして少し面白い。
「ハロハピに染ってるってことです」
「そーいう君もサンメモになかなか染まってるじゃん」
「そんなことないですよ?……まぁ退屈は無いですけど」
サンメモ、正式名称SunsetMemories。
少し前私が加入したそのバンドは、なんというか凄く面白くて。
元々いたメンバーの代わりになったらしいけど、
キーボードで色々とやってるけど……ま、今はそこはいいや。
まぁそんなバンドに入ってからの私は退屈なんてことはなくなった。
「ほら、退屈ないなら彼も本望でしょ」
「まだ子犬みたいな扱いされてますけど」
「それもメンバーへの接し方でしょ……っと、やっぱこれ着れない」
「……なら、我々が」
「「えっ誰」」
話しながらもミッシェルに入ろうとする奥沢先輩の背後に突然黒服の人が現れてミッシェルを担いで道路に用意された車に手早く乗せていく。
あれは確か、弦巻のSP的な人達。
奥沢先輩が来ないからむかえにきたのかな?
「ま、あたしを熊と呼ぶなら夕香は子犬で」
「なんですそれ!?」
「あたしなりの応援、受け取って」
「わけわかんないっす」
「お互い頑張ろ」
「え、はい……?」
奥沢先輩は私を子犬と呼んで黒服さんについて行った。
応援って言ってたけど、どこが応援なのかな、あの人。
「バンド、か……」
一人残された私は自宅の方へ向かいながらそんなことを呟いた。
子犬なりに噛みつきながらもあのメンバーについていけるように。
まぁリーダーがリーダーだしきっと大丈夫、そんな心配はいらないでしょ。
なんたって私はサンメモのキーボード、東雲夕香なんだから。
奥沢美咲、分からない女ですね
殴り書きに近いものなので好き嫌い分かれるかも。
ただただこんな会話してそうだなってやつを書いただけなんです。
東雲夕香(叶恵と同い年)
SunsetMemories(夕凪奏のバンド)のキーボード。
前任者からの変更で入ったそこそこの優等生、多分
子犬のような態度を見せつつ先輩とか関係ない感じで話す子。