Fragment glow   作:桜花 如月

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夜空に咲くは七色の花。
夏を、恋を彩る閃光。


淡い恋色、夏花火

夏の暑さが本格的になり始めたある日。

俺は夏祭りに来ていた。

と言っても今は会場から少し離れたところで待ち合わせをしているところだ。

 

時間的にも少しずつ人が増えてきたところで遠くからこちらに手を振る姿が見えた。

 

「そーくん、おまたせ〜」

「大丈夫今来たとこだから」

「そっか〜、それで、どう?」

 

駆け寄ってきたモカはいつもの私服ではなく浴衣を着て珍しく髪飾りまでつけている。

少し慣れてない様子を見せながらも彼女は回ったりして全体を見せてくる。

 

「うん、綺麗だよ」

「そう言ってくれると思ってました〜、なんといってもそーくんが決めたものですし〜」

「絶対似合うと思ったからな」

「さすがですな〜」

 

1週間ほど前、祭りに行こうという話になってAfterglowメンバーと色々と話していた。

その中で浴衣を着るか否かや集合時間などを決めた、そこで浴衣を着ると言い出したモカと浴衣を選んで買った。レンタルではなく購入をした。

その時に直感で選んだ浴衣はモカらしい水色を基調としたもので、しっかり似合ってる。

 

「蘭たちは別行動なんだよな」

「蘭とつぐは忙しいみたいだし、ともちんは20時頃から和太鼓で、ひーちゃんは来れるか分からないって言ってた」

 

蘭とつぐみはともかくひまりは敢えてこなかったのでは、と考えてしまう。

俺とモカを2人っきりにさせるために……いや、考えすぎか…?

 

「待ってても退屈だから行こ〜」

「だから無理やり引っ張るなって、それにそんな急いだら……」

「へーきへーき、転ばな──わっ!?」

 

慣れてないのに走ろうとしたモカはつまづいて転びそうになった。

引かれてた腕を逆に引きながら倒れる前に彼女を抱えてなんとかバランスを取る。

少し無理に引っ張って抱える、というよりは抱きしめる形になってしまったが、とりあえず無事でなにより。

 

「……ごめん」

「別に謝らなくていいよ、こっちも不注意だった」

「少しはしゃぎすぎたかな〜」

「気にするなって、せっかくの祭りなんだから」

「それもそうだね〜……あ、屋台」

 

ワイワイと賑わう河川敷を歩いていると出店が沢山並んでいてそこに大勢が集まっている。

モカもさっきのことで落ち込んでいたと思いきや屋台を見て直ぐにお腹を鳴らした。

 

「花火まで時間あるし、食べよっか」

「おー!」

 

すぐに機嫌を治したモカは屋台の方へ一直線に向かっていく。

調子がいいというか、これが彼女らしいというか……

 

「そーくんこれ〜」

「焼きそば……パン!?」

 

モカが真っ先に向かったのは焼きそばの屋台……と思いきやまさかの山吹ベーカリー。

焼きそばをこの場で作りそれを手作りのパンで挟んで売っているみたいだ。

焼きそばだと思って屋台の前に立った俺の驚きの声にビックリしながらも対応してくれたのは山吹ベーカリーの看板娘でPoppin’Partyのドラムを担当している山吹沙綾。

 

「いらっしゃいませー、出張山吹ベーカリーだよ」

「出店やるなら言ってくれよ」

「ごめんねー、2人に知られるとすぐさま売り切れそうだったから」

「「否定できない……」」

 

高校に入り、モカと出会ってからしばらく経ってからこの近くの商店街にある山吹ベーカリーに通うようになった。

ほぼ毎日のように行くしモカに負けないぐらいパンはよく食べてることを知られているし自負してるから沙綾の言うことが否定できない。

 

「まぁさすがに全部食べられる心配まではしてないから……ほら、どうぞ」

「ありがと〜これお金〜」

「はいはい、出すよ」

 

お金と言いながら俺の背中を押すのは払えということだろう。

そもそも今日は全負担覚悟してきたが、少しは躊躇って欲しいんだよな……まぁ言っても気にしてくれないだろうけど。

 

「もしかしてデートだった?」

「せいかーい、そーくんとデート〜」

「それならオススメの出店あるよ」

「お〜、さすがさーや」

「あれってかき氷?」

「そうだよ、でも普通のかき氷じゃないからぜひ行ってみて」

 

何やらにやにやしてる気がする沙綾が指をさした先にはかき氷の文字。

一見普通そうだが、出店の内容を知ってそうな彼女が言うからには何かあるのかもしれない。

にしてもニコニコなのはなんでだ……?

 

「行こ〜」

「おい引っ張るなって!」

「お幸……楽しんでね〜」

「今何言おうとした!?」

「なんでもないよ、ほらモカ待たせちゃダメでしょ」

「……後で覚えとけよ」

 

去り際にものすごいことを言いかけた沙綾に問い詰めようとしたが見事に話を流され先に行ったモカの方へ行くことに。

絶対後で仕返ししてやる……なんて思いを内に秘めてかき氷屋台の前に行くとモカが既に買い終えていた。

 

「そーくんの分もあるよ〜」

「仕事が早いな」

「食べ物だからね〜、ほらこれ」

「ん、ありがとな」

「どういたしまして〜」

 

片手で持てるサイズのカップにかき氷が大盛りに入っている。

モカはいちご、俺は抹茶味を渡された。

一切食べたい味を伝えてないけどちゃんと好きな味を選んでくれるモカはどこか誇らしげな顔をしている。

 

「ん〜つめたーい」

「こっちも美味しい」

「どれどれ〜……ぱくっ」

 

モカは躊躇いなく俺の使ってたスプーンでこっちのかき氷を食べた。

一気にかなりの量を口にしたからか頭を押えながらも美味し〜とか言ってる。

 

「んじゃ俺も貰うぞ」

「どうぞ〜」

 

お返しと言わんばかりにモカのスプーンを使いいちご味の方を食べる。

抹茶と違った美味しさが口に広がってなかなか食べ比べるのは楽しい。

 

 

「そーくん関節キスだね〜」

「モカもな」

「まーあたし達恋人同士だから〜?」

 

なんて言いながらニヤリと笑うモカは再度俺のスプーンで俺の方のかき氷を食べた。

恋人だって言うのは理解してるけど、やっぱりこういうことをするのはまだ慣れない。でも言えるわけもないからモカの好きなようにさせてる。

 

 

 

この後も食べ比べたり射的したり焼きそばパンを大量買いしたりなど屋台巡りを満喫して時刻は20時を過ぎた頃。

屋台が並んでいるところから少し離れたところにあるやぐらに人が登り始めた。

三つのやぐらそれぞれに1人ずつ登り終えたところでいちばん大きいやぐらに立った人物の掛け声でそこに備え付けられた和太鼓の演奏が始まった。

 

「ソイヤー!」

「おー、ともちん、張り切ってる〜」

「すごい熱量だな」

「ここ最近は毎日のように練習してたからね〜」

 

中くらいのサイズのやぐらの上から聞き覚えのある掛け声が聞こえて遠くから見たら案の定巴が和太鼓を叩いていた。

ここ半月ほど巴はバンド練と兼ねながら商店街でこれの練習を続けてきた。

「本気でやりたいからな」とやる気を見せていた分、その熱量は和太鼓の音になって響いている。

ソイヤという掛け声、巴曰くやる気の出る掛け声らしく、叩く度にそれを口にしている。

知り合いが多いということもあってやぐらの周りの人達も時々ソイヤと叫び、それを聞いた巴が更に声量と勢いを上げた。

 

そして、熱量が最高潮になったと同時に花火が上がった。

最初に大きい一発、それに続くように連続して上がっていく。

 

「あっちで見よ〜」

「人も多いしそうするか」

 

花火と和太鼓の音と見に来た人たちの歓声の中モカに手を引かれて少し移動。

広場から少し離れたところで立ち止まり空を見上げた。

 

「綺麗だね〜」

「……あぁ」

「せっかくだし手繋いだままにしない〜?」

「離そうとしてないくせに」

「えへへ〜」

 

周りに人が少なく花火の音が大きく響く。

ここに来る時に繋いだ手はモカが少し強く握ったことでそのままに。

彼女の手は夏の暑さ故か少し熱い。

 

「そーくん」

「ん?」

「────だよ」

「え?」

 

モカが何かを言って俺に寄り添ってきたが花火の音が重なり何を言ったのかは聞こえなかった。

でも、モカのことだし何を言うかはだいたい想像がつく。

だからこそ深くは聞き返さない。

そのかわり、返事はしようか。

 

 

──俺も、大好きだよ。

 

そんな俺の呟きは夜空に咲いた綺麗な花火の音によりかき消され彼女には届いていない。

呟いた後、彼女の手がさらに熱くなった気がしたが、きっと気の所為だ。

 

 

 

──ありがとう、そーくん。

 

そう彼女が返したことに気づくことはなかった。




お久しぶり、ですね?
ネタはあってもなかなか書けなくてかなり期間を空けてしまった
本編の方ももう少ししたら更新出来ると思いたい

夏祭り、誰かと行きたい


また次回の更新をお待ちください。
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