───ティアット、お前は天才だ。
魔力量や剣技、体術面では並のレベルだが、聖剣の扱いという一点なら、多分かつての正規勇者にも匹敵する。時間はかかるかもしれないが、いずれとてつもねえ戦士に成長するぞ。
えええ!?わ、わたしって天才だったの!?
ま、まあわたしはいずれクトリ先輩の次に強くなるんだし!?そういう才能の一つや二つ持ち合わせてて当然っていうか!?
…よし、ちょっとついて来い。
俺一人じゃ無理な、お前の協力がなくちゃ成し遂げられねえ仕事がある───
初めに、何処か狹い所に押し込められてる感覚があった。
まだ何も見えず何も聞こえず、何も臭わなかったけど。
背中に感じる温かさを頼りにして、より意識を研ぎ澄まさせる。
次に感じたのは機械の駆動音と油の臭い。常に身体を震わせる微細な振動。
…なるほど、多分これは先輩が軍の飛空艇の一室で揺られている時の記録だ。
そう認識すると同時、暗く閉ざされていた視界がパッと開けた。
人一人が横歩きしてギリギリ通れるくらいしかない狭い通路。
使い込まれた簡素な二段ベッドと、登り降りする為のハシゴ。
後は荷物を置いておく為のわずかなスペースだけ。
うーん。これはどう言い繕っても、以前十一番島まで検査に出かけた時みたいな快適な空の旅とは言えないというか、正直かなり不快だ。
わたし達妖精兵は獣との戦いの最前線に立つんでしょう?だったら最高のコンディションで挑めるように、もう少しそれまでゆったり過ごせるだけの居室を用意しておいてもらえてもいいんじゃないかと思うんだけど。
映像晶石で見た事はあるけど、狭い艇の中に押し込められて寝起きしたり戦ったりする軍人さんは大変だ。
そんな風にあれこれ考えていると、やがて聴覚が開け──。
この剣の担い手であるラーントルク先輩ともう一人。
彼女の相棒的存在であるノフト先輩との会話が記録として再現され始めた。
「だーかーらー、パンツ履き忘れてきたぐらいでガタガタ言うなって。どーせあたしら高速で飛び回って戦うんだから誰にも見えやしねーって」
「わたしに女の子である事を捨てろというんですかノフト!誰かに見られるとか見られないとかの問題じゃないんですよ、丸出しで戦うなんてみっともない事できる筈がないじゃないですか!わたし絶対集中力を欠いて戦死しちゃいますよ、それでもいいんですか!?」
…………………………ええと、先輩達。
狙って再生した訳じゃないんだけど、もうすぐ獣との戦いが始まるって場面だよねここ?何でパンツの話でバトルしちゃってるの?
てゆうかラーン先輩はドジだなドジだなって日頃から思ってたけど、履かないで戦場まで来ちゃったの?それって一体どういうレベルのドジっ子なの?
「分かった分かったよ、全くしょうがねえなーラーンはー。あたしの貸してやるからちょっと待ってろよー?」
ちょ、ノフト先輩!状況が状況とはいえそんなあっさりパンツ貸しちゃうの!?わたしもラキシュやパニバルとお互いの服を交換して遊んだりするけど、パンツの貸し借りはさすがにちょっとやらないよ!?
「そうそう、最初から大人しくわたしの言う事を聞いていればいいんですよ」
ラーン先輩も何でそんなに堂々と人のパンツ借りようとしてるの!?ドジっ子なのを開き直ってるの!?少しは恥じらいっていう物を見せて下さいよこれが初めてじゃないのしょっちゅう履き忘れてるの最早ノフト先輩のを履き慣れてちゃってるのわたしがまだ子供だから知らないだけで付き合いが長い大人の親友同士ってそういう物だったりするの!?
ふわああああノフト先輩ほんとに自分のバッグをがさごそ漁りだしてる!!
出しちゃう出しちゃうパンツ出しちゃうラーン先輩に渡して当たり前のように履かれちゃうクトリ先輩ほどじゃないけどカッコよくて尊敬してた二人が実はこんな爛れた関係だったなんて、
「そんな現実見たくなーーーーーーーーーーーい!!!」