空はひろがり包囲網は狭まる。 作:紫色のかば
それよりキュアバタフライ登場する前にあのカバ退場したんだけど。てか先にスカイランドに行くの!えっえっ?ってなってる
『絶対にここで最後なんかにしない。大きくなったら必ずまたアオイに会うっ。だから約束して、もしまた会ったら・・・』
夢を見ていたのか。ずいぶん懐かしい夢だ、もう何年も前になるけど懐かしい大切な夢。彼女との別れる前に大事な約束をした。その約束はとても大事で・・・
「・・・頭がぼんやりしている」
引っ越しの準備やこれからの生活で色々と準備していたら少し寝不足になってしまった。そしてアナウンスが鳴る。次の停車駅はソラシド駅だと。
ずいぶん長いこと寝てしまったらしい。俺は慌てて荷物をまとめてソラシド駅を降りて駅から外へ出る。懐かしい街、高校の頃は一度もこっちに帰って来れなかったから何もかも懐かしくなってくる。流石に3年経ったくらいじゃ街並みもそんなに変わらないなと思いながら目的地である駅前噴水広場に向かう。
電車に乗る前におばあちゃんからの電話で言っていたことを思い出す。今、俺の実家にはホームステイしてる子がいるらしい。名前はソラさんとか言っていた。迎えに行かせたから駅の噴水広場で待っててくれと言われたけど・・・
「・・・・・」
ソラさんか。女の子って言ってたけどましろとはうまくやれてるのだろうか。
と思ってたときだった。向こうの様子が少し騒がしい。1人の女の子が3人の男に絡まれていた。ガラの悪いかつ体格がかなりでかい男。少し見ただけでも様子がおかしいのは明らか。ギャラリーができることもなくみんなは見て見ぬふり。
それが悪いこととは思わない。みんな自分の身が大切だ、もし助けようとしても返り討ちにあうのがオチだ。普通なら警察に通報するのが無難だが・・・
「それじゃあこれから近くのいでででででででで。痛い痛い痛い」
ここで助けなかったら人として失格だしこれまでやってきたことを・・・自分の人生を否定するのと同義だ。目の前で女の子が嫌がってるのに放っておくなんてできるわけないだろ。
「何すんだテメェ!」
「それはこちらのセリフだ。中学生くらいの子を無理やり連れていくお前らこそ問題あるだろ」
「はんっ!お姫様を守るナイト気取りかよ。やんのかテメェ!」
というよりこいつらどこかで見たことあるな。と思っていたら思い出してきた。人の記憶というものは良いことよりも悪いことの方が案外覚えてるものだ。恐怖心とか色々理論はあると思うが中学時代でより明確に覚えてるのがクラスメイトとか友達とかじゃなくて中学の時の問題児だとは・・・
こんな形で再会するとは思ってもみなかったが身体だけ成長して脳みそが成長してないと思うと悲しくなってくる。
「・・・ったく相変わらずの問題児っぷりだなお前ら。あの時みたいに絞られたいか?」
「あの時・・・・」
そこでようやく彼らの顔が青ざめてくる。さっき楽しいことよりも嫌なことの方が覚えてると言ったが俺もそうだからきっと向こう側もそうだろう。
「て、てめえ。まさか
「なんでこんなところに!卒業して遠くの学校に行ったんじゃあ・・・・」
「・・・ったく。あれからもう三年もたってるんだぞ。卒業したら故郷に帰ってくるなんて別に珍しくもなんともないだろ」
「・・・頭もよくてその上頭のおかしいくらいの強さを持っておりあらゆる生徒から畏怖されていた・・・ちっ、行くぞ」
そう言ってあの3人は怯えるようにこの場を去っていった。とりあえず大騒ぎにならずに済みそうだな。それよりもだ・・・
「大丈夫?怪我はないか?お嬢さん・・・なんてな」
「はいっ・・・ありがとうござい・・・っっ!!!」
そのときだった。彼女は腕を押さえながらうずくまる。あいつらまさか本当に・・・
「おいっ、どうした!?本当に怪我を・・・」
「いえっ・・・怪我と言うほどではぐっ」
「見せてみろ」
「いえっ・・・問題ないです。これくらい」
「いいからっ!」
そう言って彼女には袖を捲って見せてもらうことにした。少し腫れていて痛そうだ。それなのに泣き言言わないなんて・・・ずいぶん強い子なんだな。けどこの子は女の子なんだ。とりあえず・・・
「少し応急処置をする」
手持ちのバッグから救急箱を取り出した。薬で手当てをしてテーピングをする。保健室の先生に教わっておいてよかったと思う。体育祭とかみんなハメを外したり頑張りすぎて怪我する人続出したから一通りの応急処置をマスターしている。けどこれはあくまで応急処置だ。
「応急処置はこんなものだけどその様子だと病院には行ったほうがいいのかもしれないな。まあ自然に治るならそれに越したことはないが・・・・」
「ありがとう・・・ございます」
彼女はよく私の怪我した場所が腕だと分かりましたね?と言われた。まあ培われた観察眼とかいろいろあるがだいたい見たら分かるものだ。けど怪我が悪化するようならさっきも言ったように病院で診てもらうのがいいだろう。
「それでさっきの人は知り合い・・・ですか?」
「まあ色々あってな。この町の中学校の時の同級生になるのか。まあ関係は見た通りお察しだけどな」
もう会わないと思ってたんだけどな。まさか帰ってきて早々に会うのがアレになるとは。胸糞悪いことこの上ない。さてといつまでもこんなところで油を売るわけにもいかないな。
「それじゃあ俺はこれで。人を待ってるんだ」
「人を?」
「ああっ・・・妹と同い年くらいでな。おばあちゃんの話によるとなんやかんやあってホームステイという形で暮らしてるらしい?会ったことないから知らないけどその人が来るまで待ってあげてって」
「そうなんですね。実は私も駅で人と待ち合わせをしているんです。私のお世話になってる人のお兄さんらしくて名前はえっと・・・蒼と言ってました。そうっ、虹ヶ丘 蒼と」
そんな偶然みたいな話があるんだなと思ってて笑っていたら最後に名前を呼ばれた。聞き間違いじゃない彼女は確かに虹ヶ丘 蒼とそう呼んだのだ。てことがこの子がおばあちゃんの言っていた・・・
「あのっ・・・もしかして今の話を組み合わせると俺の会う人物って君のことになるのかな?」
「・・・へっ?」
「そういえば自己紹介がまだだったね。俺の名前は虹ヶ丘 蒼だ。もしかしておばあちゃんの迎えをよこしてくれたえーっとソラ・・・さんは君のことかな?」
そう言って彼女は満面の笑みで答えた。
「はいっ、そうです!私がましろさんの家に住まわせてもらってるソラ・ハレワタールです。よろしくお願いしますね。アオイさんっ!」
それが彼女と・・・ソラとの出会いだった。こんなこともあるんだなと思いながら俺はソラさんを連れて家に戻ろうとしたときだった。
「そういえばヨヨさんにおつかい頼まれてました。ちょっとここにくるまでに別のトラブルに巻き込まれてしまって・・・」
「トラブル?あの3人組の前にか?」
「はいっ・・・実はランボーグとカバトン・・・じゃなくてえっと・・・とにかく色々あったもので。あはは」
そう言って彼女は誤魔化しながら笑った。何かを隠してる?っぽいけど特に聞く理由もないのでスルーする。
「まあなんでも良いけど無理だけはしないようにな。それじゃあ行くか買い物に」
「はいっ!それじゃあ私のよく行くところでいいですか?」
「・・・別にいいが」
というわけでまずは家に帰る前に買い物を済ませることにする。ソラさんはおばあちゃんに買い物を頼まれてたらしくリスト上のものを買ってきて欲しいとお願いされていた。もし分からなくても「アオイさんが力になってくれる」と言ってくれてたらしい。
おばあちゃんはホームステイ先の子に買い物とかお願いしないだろうと思うがきっと性格的にこの子が率先したのだろう。真面目な子だなと思いながら目的地に到着し、おばあちゃんの言葉を理解した。
「なるほど、ソラシド商店街か。懐かしいな」
今の時代、スーパーやショッピングモールでまとめて買い物できるのにわざわざこの街の商店街を利用するなんてな。
「私はショッピングモールとかの広いところでの買い物に慣れてませんのでこっちの方が楽なんですよ。下手したら迷子になりかねないので」
住んでたところにもよるけどそういうのには環境の差は出てくるよな。ショッピングモールとかでの買い物も嫌いではないがやっぱり商店街だからこそあるものもある。俺はショッピングのこういう風景が好きでよくましろと利用してたなと思い出しながら歩く。
「おやっ、ソラちゃん。いらっしゃい、今日も買い物かい?」
「はいっ!ヨヨさんに頼まれましたので」
「はいよっ、ソラちゃんはよく利用してくれるからサービスだ。持っていきな」
「ありがとうございます!」
相変わらず八百屋のおやっさんは変わってないな。そういえば小さい頃ましろを連れて買い物に行ったときもよくましろに飴とかあげてたっけ?3年も経ったけどこの商店街は思ったより変化なくて安心した。
「それで今日は連れがいるけどもしかしてソラちゃんの恋人・・・というか彼氏かい?」
ああ、そういえば八百屋のおやっさんこんな人だったな。3年ぶりに見るけどちっとも変わってない。色恋沙汰の好きなおっちゃんとて商店街ではちょっとした有名人だったりする。
「彼氏?よくわかりませんがこの人は・・・」
「・・・ったく3年も会わなかったからもしかして俺のこと忘れたか。ボケるにはちょっと早いんじゃないか?おやっさん」
「・・・もしかしてアオイか?ヨヨさんの孫の」
「今更気が付いたのかよ、おやっさん。元気にしてたか?」
「ははは、もちろん見ての通りだ。まさかアオイが帰ってくるとはな。3年前にソラシド市を離れたのはびっくりしたがまたこうして会えるとは嬉しいねぇ、背伸びたんじゃないか?」
「あーそういえばそうかもな」
中学の時はそこまで背が伸びなかったから絶望してたけど高校生になってから身長伸びた感じはする。とりあえず挨拶を済ませてから商店街を回って買い物を済ませていく。
「会う人全員アオイさんのこと知ってますね」
「小さい頃からましろとよく2人で来てたからな。ましろ連れてきたらオマケしてくれるってのがあったけど」
幼い頃お母さんがましろとおつかいに行こうとしたら嫌がったことがあって代わりに俺が行こうとしたら俺が行くならましろも行くと言い出してお母さんがご褒美あげるから2人で行ってみたら?と言われたことがある。
あれからこの商店街とも長い付き合いになる。ご褒美は割とどうでもよく商店街の人たちとの話や買い物が割と好きだったのも今の
にしても最近は便利な店がたくさん増えてきたけどやっぱりこういうのも大切にしたいって思えてくる。ちなみに俺1人だと絶対にオマケしてくれない。なので倹約術のためにもここでの買い物はましろは必須なのだ。
「あのっ、アオイさん。一つ聞いてもいいですか?」
「なんだ?」
「恋人って・・・どんな感じなのでしょうか?さっき八百屋さんも聞かれて気になっていたのですが恥ずかしながら私はそう言うのに疎いもので。ましろさんにそういう漫画?を借りたのですがいまいちピンとこないというか・・・・」
うーん、思ってた以上に困った質問が来た。恋人ってのがどんな感じなんだろうかか。説明は簡単だけどすごく難しい。なんか言ってること矛盾してるけどちゃんと説明しようと思ったらそう思ってしまう。俺だってピンと来てないのだから。
「恋人というのは異性同士が相思相愛・・・互いが好きだという意味だね」
「なるほど・・・パートナーや友達と似てますね」
「パートナーや友達は同性でも通じるけど恋人というのはそうじゃないのがベターだね」
最近は同性同士の恋愛も珍しくない時代になっているとは聞くが通っていた男子校を見るにやっぱり女の子に飢えていた生徒は何人かいたのを思い出す。在学中に合コンに誘われたこともあったが興味なかったし全部パスしたけど・・・
「難しいですね。じゃあもし私とアオイさんがお互いのことが好きだったらそれは恋人になるんですか?」
「好きにもいろんな感情があるだろ?もっと言えば恋人というのはその人と結婚したくなるくらい好き。好きって想いが溢れたり一生添い遂げたいってくらいの意味だから例え俺とソラさんが互いのことを好きでもそれは友達としての好きでもあるから難しいよね」
「なるほど・・・恋人について少しわかった気がします。私にとってのましろさんに対する想いもそしてアオイさんに対する想いも一緒なので友達ってことですよね」
「端的にはそうなるね」
厳密には俺たち会ってまもないから友達って言われたら怪しいけどまあいっか。ソラさんはいい子だしましろと仲良くやっていそうだし。
「つまりそういう意味だとましろさんはアオイさんに対しては恋人になりたいくらいの好きが溢れてますよね。アオイさんのことよく話しますし」
「・・・・・」
日本語って難しいよね。愛にも色々あって親愛とか友愛とか恋愛とか色々あるけどソラさんの言ってる愛は家族愛に該当するものだ。俗に言うましろはブラコン・・・というやつらしい。高校の友人に兄妹についての話を聞いたら「それはブラコンというやつだな」と言われた。だからましろはそれに該当するので恋愛的な好きとはまた違った意味があると思われる。
けどこれを簡潔に説明するのがとても難しい。
「まあアレだ。ましろに対する想いは兄妹愛だからまた少し意味は違ってくるかもな」
「なるほど。難しいですね、恋愛というものは。そもそもヒーローに色恋沙汰はありませんので私には関係のない話ですが・・・一応メモしておきましょう。恋愛というものは奥が深いですね」
女の子は色恋沙汰の話が好きとは聞くけどソラさんのはなんか少し違うような気がする。「誰が好き?誰がカッコいい?」みたいじゃなくて哲学的に恋愛に関して興味を持っているのか・・・不思議な子だな。
「それで買い物はこれで全部だっけ?」
「はいっ、ヨヨさんに頼まれてたものは全部買いました。それにしてもアオイさん、重くないですか?リュックも背負ってるのに荷物持ってもらって・・・」
「怪我してる女の子に重たいものを持たせられないよ」
「・・・・・」
「ソラさん、どうかしたか?ぼーっとして」
「あっ、いえっ。なんでもないです。それよりアオイさん、私のことはソラで構いませんよ。私の方が年下なんですから」
「そう?じゃあソラ。これでいい?」
「・・・はいっ、名前で呼ばれるのってなんかいいですね。ましろさんにもいつかソラって呼んでもらいたいです」
それは少し難しいかもしれないな。ましろは誰に対しても丁寧に話すから呼び捨てとは無縁な子だし。まずこの子も礼儀正しい性格ゆえか誰かを呼び捨てにしないタイプだし。もしそういう関係になりたいなら俺の幼なじみを今度紹介するとしよう。
「そうだな、2人がどれくらい仲良しか分からないけどきっとそうなる日が来るかもしれないね。ところでアオイさん、さっきから電話鳴ってますけど」
「あー、どうしよう。今両手塞がってるんだよな。確認しておばあちゃんだったらソラが代わりに出てくれるか?」
「えーっと・・・ヨヨさんなので問題ないですね。もしもしソラです。はいっ、この通り無事にアオイさんとも会えました。今はソラシド商店街で買い物済ませたのでもうすぐ家に・・・少し用事で出かけないといけない?分かりました。すぐに戻ります」
「おばあちゃんなんて?」
「用事で出かけないといけないから急いで家に戻ってきてほしいって言ってました。エルちゃんを1人にはして置けないので急ぎましょう」
「・・・エルちゃん?」
この時、俺はまだ知らなかった。同居してるのがソラだけでなくもう1人いたことを。
ここから少しずつ話進めていきます。時系列がどこかと言われたらツバサと出会う少し前くらいです。ちなみにここでヨヨさんが出かけてもツバサはいるから問題はないがまだ出会ってない段階(キュアウィング誕生前)のためこのような描写が入ってます。
どろっどろの恋愛の話はもう少し先。
次回、『ヒーロー、恋に落ちる』です