ダイヤのネックレス-Necklace of Diamond-   作:コンスタンチノープル

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ラシェル(Rachel)セロー(Serrault)
●出身地:フランス
◆ポジション:投手、遊撃手
◆利き腕:右投げ右打ち
●身長:170cm
●体重:66kg
●血液型:A型
●誕生日:4月8日
●趣味・特技:日本のサブカルチャー(特に漫画、アニメ)
●尊敬する人物:兄
●特徴:14歳で120km/hをマークした速球投手。
●スライダーを縦・横・斜め、速い・普通・遅いの組み合わせで投げ分けることができる。
●青道高校女子野球部創設のキッカケとなったフランス大企業のご令嬢。


第6話

「じゃあ若菜ちゃん、サクっとやっちゃって」

「そう簡単に言わないでよ…あ、ヘルメットお借りしてもいいですか?」

「勿論だ。おい、誰かヘルメットを持ってきてやれ」

 

片岡が近くの部員にヘルメットを持ってくるように言った。

 

「蒼月さん、あなたが打つの?」

「え、えぇ。なんかみんな、私じゃないと納得しないって…」

 

高島は蒼月が打つと聞いて片岡に告げた。

 

「片岡監督、蒼月(彼女)が打つというということでしたら、丹波君が相手でないと…」

「丹波を…?彼女はそれほどの選手だと?」

「正直な所、丹波君でも分が悪いです」

 

降格されたとは言え、春季東京大会の途中までエースであった三年生の丹波(たんば)光一郎(こういちろう)。絶対的なエースのいない今の青道野球部において、そのエースの座に一番近いのは彼なのだが、その丹波をぶつけても今打とうとしている蒼月若菜という少女は手に余る存在だと高島は言った。

 

「お、おい沢村。なんか若菜ちゃんがヘルメット被って打つ準備してるぞ…」

「いや、これは一体どういうことか…」

「倉持!」

 

倉持が沢村に何事かと話していると、片岡が倉持を呼んだ。

 

「ショートに入れ」

「は、はい」

 

片岡は守備に一軍のレギュラーを就かせた。クリスが丹波をブルペンから呼んで来た。

 

「自分は構いませんが」

 

意外にも丹波は冷静に勝負に臨むと言った。

 

「丹波君、これは贔屓目じゃなくて本当に、稲城実業や市大三高で上位を打つ選手と対戦するつもりで勝負して」

「は、はぁ…」

 

丹波や片岡だけではなく、森校長や林教頭なども高島が蒼月をこれほど評価するのが理解できずにいた。他の女子野球同好会の面々も蒼月に打ってくれという期待を寄せるというよりも、蒼月なら打って当たり前だろうというような空気になっていた。

 

「御幸、お前も準備をしてくれ」

「監督」

 

一人の選手が片岡に声をかける。

 

「宮内」

「俺に受けさせてください。丹波のことは御幸よりも知っているつもりです」

 

三年生捕手の宮内(みやうち)啓介(けいすけ)が既に防具を着け、キャッチャーマスクを手にして片岡を真っ直ぐ見た。

 

「分かった。宮内、お前が受けてやれ」

「はい!丹波、すぐにアップを…」

「いや、さっきまでブルペンで投げてたから軽く投球練習するぐらいにしよう」

 

丹波がマウンドに上がる、他に一軍のレギュラーが守備に就く。

 

「まさか若菜ちゃんと野球で勝負することになるなんてな」

「丹波。監督から昨日、本来のピッチングさえできれば必ず全国で通用するって言われただろ?ここもいつものお前の投球ができれば相手にもならんだろう」

「あぁ」

 

そう丹波に声をかけて宮内はキャッチャーボックスに構えた。

 

「かといって昨日四イニング投げたばかりというわけだが…いや、夏勝ち進めば過密日程の連投だって当たり前だ。寝言は言ってられない」

 

審判は再び片岡。蒼月が左打席に入ろうとする。

 

「よろしくお願いします」

 

ヘルメットを脱ぎ、片岡と宮内に一礼してから打席に入った。その立ち位置に、宮内は感じるものがあった。

 

「随分ホームベース寄りに立つな…」

 

蒼月はバットを構える前に、背筋を伸ばして後傾気味に重心を取り、右手でバットを垂直に揃え、左手を右上腕部に添える動作をしてから構えた。

 

「あいつ!」

「コジロー*1のマネなんかしやがって!」

「丹波さん!軽く捻ってやりましょう!」

 

外野(外野手の意ではない)の野球部の選手たちは、蒼月が有名メジャーリーガーのマネをしたと思って苛立ちを隠せない。

 

「舐めやがって、ここはインハイの速球でビビらせるぞ」

 

丹波が頷き一球目を投じる。内角高めの直球、蒼月は微動だにせず見送り1ボール0ストライク。

 

「へいへい、バッター手が出ないよ!」

「足も上げられてねぇじゃねえか!」

「どうせならコジローみたいに振り子打法で打ってみやがれ!」

 

外野で見ているだけの選手には蒼月が手が出なかったように見えたかもしれない。しかしグラウンドに立つ選手たちと片岡にはその本質が見えた。

 

「なるほど…高島先生が言うだけの素材ではありそうだな」

「ほう、少なくとも昨日相手した一年たちよりはやりがいのある打者だな」

「かわいい顔して態度は全然かわいくねぇな。昨日の一年には丹波のボールに尻モチついてるやつもいたと聞いたが…」

 

ベンチ前で高島の隣でその様子を見定める御幸も、その一球の見送りだけで蒼月の実力の一端を察知した。

 

「礼ちゃん。蒼月(あの娘)一体何者?」

「沢村君の幼馴染だけど、もし彼女が男子だったら、入学してすぐ外野のレギュラーにして、上位を打たせてるような娘よ」

 

二人が話している間に二球目が投じられる。内角低め、ボールともストライクともとれるギリギリのコーナーに投げ込んだ直球、しかし…

 

球は宮内のミットに収まることなく蒼月のバットに一閃された。

 

「う、嘘だろ…」

「マジか…」

 

打球は教科書通りのセンター返し、お手本通りのクリーンヒットとなった。

 

「文句なしに私達の勝ちですよね!?」

「あ、ああ。そうだね…」

 

森校長と林教頭だけではない、この勝負を見ていた多くの野球部関係者が驚きを隠せなかった。

 

「しかし、これで一対一の引き分けになってしまったな…」

「待ってください!」

 

片岡が勝負の決をどうしようものかと思案しかけた所で宮内が待ったをかけた。

 

「もう一打席蒼月(コイツ)と勝負させてください!」

「宮内…」

「丹波だって打たれたままで終われないよな!」

 

鼻息荒く丹波に問った。

 

「あ、あぁ…」

 

そしてこの一言こそ、古田が待っていた一言であった。

 

「私達は構いませんよ。ただし、次若菜ちゃんが打ったら私達の勝ちですよね?」

「ああ、勿論だ」

 

そういうと片岡はマスクをかぶり直しプレーをかけるのであった。

 

三球、蒼月はバットを振らずに簡単に追い込まれてしまった。

 

「やっぱりさっきのはマグレじゃねぇか!」

「いけー!丹波ー!」

 

宮内が四球目のサインを出す。

 

「よし、ここまでカーブは見せてない。初見で打てるような代物じゃない。ここだ」

 

丹波が頷き投球動作に入る。

 

「ふしっ!」

 

外角、ボールゾーンから低め一杯に決まるカーブ。しかし…

 

蒼月のバットが巧みにすくい上げ、打球はレフト前、再びクリーンヒットとなった。

 

「監督さん!これで私達の勝ちですよね?」

 

古田が爛々とした笑顔で叫んだ。

 

「ああ、我々の負けだな。いいだろう、君たちの後押しをさせてもらおう」

 

女子野球同好会の一団が、殊勲の二打を放った蒼月を、サヨナラの一打を放った選手のように労う。

 

「よっしゃー!今日は近くのグラウンドを借りてるから、みんな思う存分打ち込むぞー!」

「おーっ!」

 

近くのグラウンドを借りて久々の本格的な野球の練習をするということだが、負ければ解散と決めていたので、本当に最初から勝つつもりだったのである。

 

「か、片岡監督!」

「私からもお願いします。彼女たちに、野球をさせてあげてください」

 

片岡が森校長と林教頭に頭を下げた。

 

「か、監督が頭を下げた…」

「いや、片岡監督。違うんです。確かに煙たくは思っていましたが、認めないつもりはなかったんです。ただ、この近隣だと、新しくグラウンドや寮を建てる場所が簡単に見つからなくて、それで時間がかかっていただけなんです。ですから、場所さえ見つかれば正式に女子野球部にしてあげるつもりだったんです」

「建てるための資金は、あの娘たちの親から充分過ぎる予算を出してくれているので、本当に場所が見つからないだけなんですよ」

 

ここは東京・国分寺。23区ほどではないが、ただ広い場所を見つければいいというわけではない。思い切り声を出して野球をして近隣に迷惑が掛からない場所となると、中々見つからないのが現状であった。

 

「やったね!いや、よく戦った!」

「アンタ誰?」

「先生だよ?咲耶ちゃんそんなに敵意むき出しにならないで」

 

男子野球部の部長、太田(おおた)一義(かずよし)教諭が嬉しそうに少女たちに声をかけてきた。

 

「最初は大それたことをしたと思ったが、まさかあの小湊と互角の勝負をして丹波からクリーンヒットを二本も打つとは驚いた!いや、感動した!実は君たちのことは陰ながら応援させてもらっていたんだよ」

 

太田は、高島から女子野球部の監督に就任することを強く希望されている。という相談を受けていて、その後偶然にも学校の校舎裏など空きスペースでキャッチボールをする女子野球同好会の一団の姿を目撃し、その野球をしたいという気持ちを感じ、また、そのためにアメリカ、フランス、韓国からやってきたという少女がいると聞いて彼女たちのファンになったのである。高島が太田には女子野球部のことを相談して片岡には何も話していなかったのは、片岡には監督という激務に加え教諭としても教鞭をとる多忙さを慮り、心配をかけたいくないと相談していなかったのである。

 

「高島先生には先生からも君たちの監督になってあげるように勧めておくからね」

 

正直な所を言うと、太田は自分が彼女たちの監督になってやりたいと最初考えたのだが、彼女たちが高島の監督就任を強く希望していることに加え、今の青道高校で女子野球部の創部するのであれば、高島が監督に最も相応しい人物であることは明白、と自分は一歩引くべきであると考えたのであった。

 

「ちょっといいか?」

「クリス…」

 

女子野球同好会の一団が太田と話しながら引き上げようとしていると、クリスが声をかけてきた。

*1
沢木(さわき)小次郎(こじろう)。メジャーリーグで活躍する世界最高の安打製造機。選手の元ネタは彼の元メジャーリーガー。名前の元ネタは彼の剣豪。




丹波さんと宮内さんが小物みたいになってしまいましたが違うんです。若菜ちゃんが天才すぎるんです。
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