ダイヤのネックレス-Necklace of Diamond-   作:コンスタンチノープル

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(コン)太熙(テヒ)(공태희(Tae-Hui Gong))
●出身地:韓国
◆ポジション:投手、三塁手
◆利き腕:右投げ右打ち
●身長:162cm
●体重:59kg
●血液型:AB型
●誕生日:9月18日
●趣味・特技:スポーツ観戦、囲碁
●尊敬する人物:両親、祖父母、兄、姉
●特徴:パワーピッチャー兼ロングヒッター。
●内外、高低、変化球を織り交ぜた駆け引きで打ち取るタイプ。
●松坂の投球と蒼月の打撃を目の当たりにしてから自分の実力を疑問視している。


第7話

「ふぅん、そんな感覚で打ってたんだ…」

「参考になったかな?」

 

女子野球同好会が野球部に殴り込むをかけた翌日。1年B組の教室では休み時間に野球部の小湊(こみなと)春市(はるいち)が蒼月、松坂と談笑している。

 

「いや、正直あまり…」

「うぅ…昨日帰り際にクリス先輩にも似たようなこと言われちゃったんだよなぁ…」

「私が去年全国大会で優勝投手になれたから天才少女なんて言われることもあるけど、はっきり言って若菜ちゃんこそ真の天才だと思うよ。いい加減若菜ちゃんには自分が規格外の存在だって自覚してほしいんだよね」

 

それは昨日、殴り込みを成功させて帰り支度をしていた時のことであった。

 

「ちょっといいか?」

「クリス?どうしたんだ?」

 

野球部の三年生、滝川(たきがわ)・クリス・(ゆう)は部内でも随一といわれる豊富な野球知識から少女たちに問いたいことがあったのである。

 

「蒼月といったな。今の勝負について聞きたいことがある」

「は、はあ…」

 

野球部の一年生たちはランニングメニューに戻されたが二、三年の何人かは気になってクリスと蒼月の話に聞き耳を立てている。

 

「初球からインハイの厳しいコースに速球を投げられて、怖くなかったのか?丹波の球は女子野球にはないスピードだと思うのだが…」

「え?いえ、ただの打ちやすい球を投げてくれているなぁと思って…」

 

蒼月の発言にクリスや聞いていた野球部の上級生たちは驚きを隠せなかった。

 

「打ちやすい球…だと?」

「はい。栄純…沢村君の球と違って、どこにいくか分からない球じゃなくて真っ直ぐきたので打ちやすい球だなと思って…」

 

多くの上級生たちは、蒼月のこの発言を聞いて、コントロールの無い沢村の球を相手していたから制球された丹波の球に恐怖を抱かなかったと思った。しかし、クリスは違った。

 

「最後に打ったのはカーブだったと思うが?」

「中学の時に、試合でカーブを投げるピッチャーと対戦したことがあったので、ボールの回転を見てカーブだって分かりましたから…沢村君の、どこにいくか分からないボールよりは、怖くなかったというか…」

 

クリスはこの時、自分が教育係を任された沢村栄純という投手はナチュラルなムービングファストを投げるのではないかと感じた。教育係を任せた高島からは、その選手の能力を見抜く力への信頼から、「おもしろい球を投げる子」としか聞かされていない。これは、昨年沢村が見学に来た時の御幸と同様である。

 

「ボールの回転が分かるのか…」

「滝川先輩、若菜ちゃんの話聞いてもあまり参考にならないですよ?この娘、ガチの天才ですから」

「どうやらそのようだな。聞いた俺が馬鹿だった。古田だったな、それと松坂にも、二つ聞きたいことがある」

「な、なんでしょうか?」

 

松坂も古田もクリスが発する独特の雰囲気に飲まれそうになっている。

 

「まず、あの勝負の三球目だ。松坂、なぜ首を振った?」

「内内と攻めて外のサインがきたので、ベタだから読まれているんじゃないかと思って首を振りました」

「そうか…古田はなぜ外角のサインを続けて出さなかった?」

「外に投げるのも内を攻め続けるのも同じぐらいのリスクだと思って、じゃあ投手の投げたい球を投げさせようと思ってそれで」

 

松坂と古田からそれぞれの回答を受け取ったクリスは一瞬の思案の後、口を開いた。

 

「二人とも未熟な考えだな」

「うっ…」

「ちょっとアンタ、なにが言いたいのよ!?さっきから聞いてりゃ偉そうに」

 

木村が喰ってかかった。

 

「咲耶ちゃん、いいから」

「よくないって」

「ハァ…松坂、なぜ古田のリードを汲み取ってやらない?お前ほどの投手にしては短慮だったと思うぞ」

「仰る通りで…」

「古田、一度サインに首を振られたからと言って簡単に投手に迎合するのは感心できないな。結果的にはヒットを打たれたんだ。間違った判断をしたと言わざるを得ない」

「返す言葉もございません…」

 

かつて、選手としてプロ野球史上最大の黄金時代を築いた最強チームの司令塔にして、監督としても歴代最強の呼び声高いチームを率い黄金時代を築いた名将はこのような言葉を残したと云われている。

 

「いいキャッチャーかどうか簡単に見分ける方法がある。ピッチャーに迎合して、間違った状況判断をしてしまわないかということだ」

 

日本のプロ野球で活躍した元選手のジョージ・アニマル・Mを父に持つクリスは当然この言葉を知っている。それだけに松坂が首を振った真相、古田のリードの真意を知りたかったのである。

 

「さっきから聞いてりゃアンタ…」

「だからいいんだって咲耶ちゃん。滝川先輩は私達のこと認めてくれているから言ってくれたんだよ。第一、認めていない投手を『お前ほどの投手』なんていう?」

「ぐぬぬ…確かに」

 

相変わらず木村はクリスに喰ってかかっている。彼女もまたクリスという人物を知らない一人なのであった。

 

「それは二つ目の問いの答え方次第だ」

 

クリスはクリスでまだ完全に二人のことを認めたわけではないという。

 

「小湊との勝負、全て変化球で直球を投げなかったのはなぜだ?」

「ああ、それなら簡単です」

 

古田が愁いを帯びた微笑みで答えた。

 

「桃ちゃんは、確かに女子で男子に混ざって去年中学で全国優勝投手になった選手です。女子の中では規格外の速球を投げる怪物投手です。ですが、それはあくまでも女子の中でというだけです。高三の男子、それも甲子園優勝を目指す強豪野球部のレギュラー選手相手では、桃ちゃんの直球はただの打ち頃の球でしかないからで、ストライクを取るどころか見せ球にも使えないと判断したからです」

「絢凪ちゃんと同意見です。そこまで甘くないと思ってますし、私そんなに自惚れているとは思ってないですよ?」

 

クリスは「そうか」と一呼吸置き二人の回答に満足した。

 

「あの三球目以外はいいピッチングだったと思う。二人とも相手だけではなく自分たちのこともよく把握している投球だった。ボールの力で劣っているから変化球を外にの逃げの投球ではなく、ドア系の球で徹底的にインコースを突いたところでのアウトコースへの投球、特に最後のアウトローからボールになるシュートは見事だった」

「ありがとうございます!」

「欲を言えば、もっとインコースアウトコースと揺さぶりをかけていたら完璧に打ち取る事が出来ていたかもしれないな」

「参考になります」

 

しかし木村は中々納得できないでいる。

 

「二人は自己評価が低いのよ。二人なら野球部全員相手にしたって大丈夫なはずよ。去年だって、桃は元プロだっていう面白外人芸人のこと打ち取っていたじゃない」

「…それは恐らく俺の親父だ」

「へ?」

 

昨夏の全日本中学野球選手権大会で優勝投手になってからというもの、松坂にはテレビの取材などもやってくるようになっていて、とあるスポーツバラエティー番組の企画でクリスの父、アニマルと一打席勝負をして、見事打ち取っていたのである。

 

「全く咲耶ちゃんったら…滝川先輩、すいません」

「構わない。去年の全国のピッチングも見せてもらったが、親父との勝負を見てよく考えながら投げていると感心したものだ」

「ありがとうございます!」

 

そのような話をクリスとしていたのであった。

 

「ボ、ボールの回転が分かるの?」

「ね、参考にならないでしょ?」

 

春市は蒼月がさらっとボールの回転を見てといった発言に驚きを隠せない。

 

「私からすれば、小湊君のほうが凄いと思うし、ボールの回転ぐらいみんな見えるもんじゃないの?」

「これだから天才は困るのよ…ね?小湊君」

「そうだね…あ、僕のことは『春市』でいいから。昨日、松坂さん達が勝負したバッター、僕の兄貴なんだ」

 

確かに苗字が同じだしどことなく雰囲気が似ていると二人は思った。

 

「兄貴との対決。いい勝負だったね」

「でも、打たれちゃったけどね…」

「最後は意地で持ってかれちゃったかな」

 

二人が謙遜していると思い、春市はそんなことはないといった。

 

「松坂さん、もっと自信もっていいと思うよ?結果的にはヒットになったけど、打ち取った当たりだったし、兄貴も俺の負けだったって言ってたよ」

「確かに内容は良かったかもしれないけど、欲しいのは結果だったから」

「私がもうちょっと突っ込んでいたら捕れていたかもしれないし」

 

三人が話していると、廊下から物凄い走る足音と、教諭と風紀委員から走るなと注意される声が聞こえた。

 

「松坂さん!蒼月さん!」

「えーっと…野球部のマネージャーさんよね?」

「うん、同じ一年の吉川さんだよね?」

 

野球部の一年生マネージャー、吉川(よしかわ)春乃(はるの)は春市の言葉に、「私のことはいいから」と息も絶え絶えであった。

 

「二人とも、このニュース見た!?」

 

それは事態を大きく進展させるには充分過ぎる大ニュースであった。

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