最強バギー伝説   作:バギ次郎

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第12話:てめェはいったい何がしてェんだ!!

 イカダはバラバラになり、バギーたちは海へと落ちた。

 

(((がばば………!!!)))

 

 能力者である三人は水中では無力だ。溺れるしかない三人をそれぞれカバジ、リッチー、サウロが水上へと引き上げた。

 

「ワシにつかまれェッ!!」

 

 満身創痍だったが、サウロは死に物狂いで陸を目指し泳いだ。

 

 何とか島へとたどり着き、半ば放り投げるようにして皆を砂浜におろし、自分もあお向けになって倒れこんだ。

 

「ハァ………生きてるのが不思議でならねェでよ」

 

 息が荒く疲労困憊だ。

 

 ゲホォッ!!

 

 隣で倒れていたバギーが水を吐き出しガバッと起き上がった。

 

「おめェら無事か!?」

 

 サウロ以外は特に目立ったけがもなく無事なようだ。

 

 そのことにホッとしていると、他の者たちも目を覚まし始めた。

 

「ありゃァいったい何だったんだ?」

 

 バギーは軍艦からとめどなく砲弾が撃ち込まれ、燃え盛るオハラを思い返す。それを聞いたサウロが途切れ途切れながらに語った。

 

「あれは………バスターコール。海軍本部中将5名と軍艦10隻による集中砲火。あとには何も残らん冷酷無比の無差別攻撃だで。ワシもあの作戦に加わるはずだったでよ……」

 

 サウロは自分が元中将で、オルビアの件で海軍を離反してからいまに至るまでのいきさつを語った。

 

「なるほどな。だがこんなチビッ子が“歴史の本文(ポーネグリフ)”をねェ………」

 

 目を向けられたロビンは体をビクッとさせてサウロの陰に隠れる。

 

 ロビンと先ほどから鼻水をたらしながら自分にしがみついてくるモージとリッチーを交互に見る。一方は世界政府加盟国の元奴隷、もう一方は故郷の島ごと焼き払われた世界政府の敵。

 

(こいつとそう歳も変わらねェだろうに………)

 

 サウロは隠れたロビンを前に出し、自身も痛む体に鞭打って起き上がった。そしてバギーを見据えると、縋るような声音で叫んだ。

 

「モージたちがこんなにも慕っているおめェさんを見込んで頼みがある!!どうかロビンを匿ってやってくれねェでか!?」

 

 若いながらも覇気を習得し、あのクザンに一歩も引かぬその度胸。

 

 それに対して自分はどうか。あのときバギーが来てくれなければ、モージたちがバギーの仲間でなければ。いま命があるのは偶然の積み重ねといってもよい。また、元海軍中将であるが故に今後、自分の力では政府の放つ刺客からロビンを守ることは難しいということを自覚していた。

 いまこうしている間にも追手が来てもおかしくないのである。

 

「ワシではロビンをこの先守ってやれるだけの力がねェ!!どうか………この通りだ!!」

 

 そう言い浜辺に頭を付けた。

 

「サウロはどうするの………?」

 

 サウロの顔の横にいるロビンが不安そうに尋ねる。

 

「ワシはまたイカダでも作ってどこか人のいねェとこに身を隠すでよ。だどもこんなデカい体じゃすぐ見つかっちまうか?デレシシシ!!」

 

「サウロも一緒に行こうよ!わたしもう一人はやだよ!!」

 

「一人じゃねェ!この人たちがいるでよ。ワシなんかよりよっぽど頼りになるんだで!」

 

「そんなの知らないよ!」

 

 言い争いはヒートアップしていき、両者とも全く譲らない。バギーは二人のやり取りをしばらく見守っていたが、一向に終わる気配がない。

 

 ついに我慢の限界が訪れた。

 

「じゃァかましいッ!!おれ様をシカトしてなに勝手に話を進めてやがる!!」

 

「だでなーロビンが子供みてェに言うこと聞いてくれねェでな」

 

「だってわたし子供だもん」

 

 モージとリッチーもいいでしょー仲間にしようよー、と顔をベロベロなめ始めたところでカバジが引き離してくれた。

 

「第一なぜおれ様がそこのガキを引き取らなきゃならねェ。オハラ唯一の生き残りで“歴史の本文(ポーネグリフ)”を読めることもバレてる。それらもひっくるめての発言か?」

 

 バギーの発言で少し緩みかけていた空気が霧散する。

 

「こんな小せェ子を見殺しにするってのかッ!!?」

 

 怒りで大声を上げるサウロ。体が無事であればいまにも飛び掛かりそうだ。

 

「なに寝ぼけたこと言ってやがる。それはてめェの都合だろ。おれらにゃそれに従う義理も道理もねェ。モージたちが世話になったらしいが、それとこれとは話が別だろ」

 

 続けてバギーは言った。

 

「それとてめェ……心が折れたんだろ」

 

「なっ……!!ワシは………」

 

 言い返そうにもうまく言葉が出てこない。

 

 巨人族は恵まれた体格によるパワーが最大の武器だ。ひとたび拳を振るえば大地が割れ、敵には絶望を、味方には希望を抱かせる。その力と正義の心でもって海軍本部中将まで登りつめた。

 故に、これから進む先がいばらの道であることを理解していた。いままで味方であった者たちが敵となる脅威。また、古代兵器のためにロビンを狙う巨大な悪。

 

 目の前に転がってきた安易な道に進もうとするほど、彼の心は弱り、もろくなっていた。

 

「じゃあワシにどうしろと………!!」

 

「そもそものてめェの目的はなんだ。てめェはいったい何がしてェんだ!!」

 

 その言葉がサウロの心に深く突き刺さった。これまでの海軍での生活を思い出す。苦楽を共にした仲間や上司。自分を慕ってくれた部下たちの顔が頭をよぎる。しかし………しかしだ。いくら正義のためといえど、己の正義はオハラのことを飲み込めるほど柔軟な正義ではなかった。

 

「ワシは………あんなのが正義だなんて受け入れられねェ!!弱きを助け、悪をくじくのが正義だ。歴史を知ることが悪というのなら………そんな正義は間違っているッ!!」

 

 次第に語気が強くなり、うつむいていた顔が持ち上げられバギーと目が合った。

 

「ワシはワシの思う正義を貫く!!………ロビンはワシが守って見せる!!」

 

「サウロ!!」

 

 ロビンはサウロのはっきりとした宣言を聞き、喜びで顔を綻ばせた。

 

「よく言ったデカいの!!バギー海賊団はおめェら二人を歓迎しよう!!カバジもそれでいいだろ?」

 

 黙って後ろで聞いていたカバジに振りかえりそう尋ねた。

 

「船長はあなたですので。それに、もし仮に反対でもしたらモージたちがうるさそうですからね」

 

「素直じゃねェ………だがそれでいい!そうと決まれば新たな仲間を祝して今夜は宴じゃァ!!」

 

 一同の顔に笑みがこぼれる。

 

「あーだども、堅気に手を出すのだけはワシ許せんでよ。そんときゃロビン連れて船降りるでよ」

 

 元は海兵。袂を分かったが己の正義を曲げることはできない。

 

「好きにしろォ。てめェのやりてェようにやる。それが海賊ってもんだァ」

 

「そういうものか………はーワシが海賊になるとはなァ。夢にも思わんかったでよ。人生どうなるかわからねェもんだ」

 

 少し複雑そうな顔でつぶやくサウロにロビンが尋ねる。

 

「さっきはあんなこと言ったけど、わたしのために………本当に良かったの?」

 

「なーに、これがワシのやりてェことよ。デレシシシ!!………空白の100年の謎、ワシも手伝うでよ」

 

 話はまとまり一件落着。仲間も加わり新たな冒険へ。皆の心も晴れやか………というわけでもなかった。

 宴も終わり皆が寝静まった中、バギーだけは起きていた。先ほどまでのテンションは鳴りを潜め、これまでのことを思い返す。

 

(ワノ国にシキ、今回の中将もそうだ。足りねェ………力も数もなにもかも足りねェッ!!)

 

 表情は険しく、その拳は硬く握りしめられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 海軍本部 マリンフォード

 

「まさか貴様が取り逃がすとはな………クザン!!」

 

 ペットのヤギを傍らに、椅子に座る巨大なアフロヘア―の男。海軍本部大将センゴク。彼はクザンに対し厳しい目を向ける。

 

「おれもクザンさんが出し抜かれるなんざ思わなかったが、あの大爆発はすごかった!あれだとあいつらも死んだんじゃ………」

 

 CP9長官であるスパンダインは大将のセンゴクに、大げさな身振り手振りも加えながら自身の成果を報告していた。

 そこへ一人の海兵が数枚の写真を手に部屋へと入ってきた。

 

偉大なる航路(グランドライン)のジャヤ島付近で“道化”のバギーを含むバギー海賊団と思われる人物の目撃情報が入りました」

 

 スパンダインはそれらを奪うようにして受け取る。

 

「なっ………!!生きてやがったか!!………このガキです!このガキが“歴史の本文(ポーネグリフ)”を読めると言っていました!」

 

 そのうちの一枚を指さし、ことさら大きくわめく。

 

「幼いながらも“歴史の本文(ポーネグリフ)”を解読できる学者とは………なんとしてもこの者たちを捕まえ、海軍の汚名を返上するのだ!!」

 

 センゴクは眉間を数回揉むと、報告に来た海兵に告げた。

 

 報告を終え各自部屋をあとにする。最後に部屋を出ようとするクザンの背中にセンゴクは問うた。

 

「クザン………まさか貴様、情に流されたというわけではあるまいな」

 

 クザンのドアノブをつかんだ手がピタリと止まった。

 

「……そんなわけありませんよ。余計な心配しちゃって……もう歳なんじゃないすか?センゴクさん」

 

 そう言い残し、去っていった。

 

「だといいがな………いや、おれはまだまだ現役だ!!」

 

 失礼な奴だ、とぶつくさ言いながらもクザンが出て行ったドアを見つめる。クザンに握られていたドアノブは冷気を帯び、ほんの少し煙が上がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 偉大なる航路(グランドライン) とある島

 

「なあ見たか?」

「ああ、見た。8歳なのに7900万ベリー!!世界の壊滅をもくろんだオハラの悪魔たちの生き残りだとよ」

「それでこんな金額が………!?」

 

 町はオハラの事件のことで持ちきりだった。

 

「なんでも元中将と“道化”のバギーが手助けしたそうだよ。怖いねえ」

「海兵が裏切ったのか?」

 

 情報はたちまち世間に広まった。オハラの学者たちは世界の壊滅をもくろんだ悪魔として世に伝わり、ロビンはその思想を受け継いでいると。

 さらに噓か真か、バギーは元中将であるサウロを取り込み、そんな悪魔たちを裏で支援していた、なんてうわさも出始めていた。ピエロの髑髏マークを見かけたら脇目も振らず逃げろ、とまで言われるようになってしまった。

 

 

 

 

 

 波に揺られる船の上で、ニュースクーから受け取った新聞を囲む面々。新たな仲間が加わったバギー海賊団だ。

 

「ワシの首に懸賞金がかけられただか。海軍はメンツよりワシらの捕縛を優先させたか」

 

“反逆者”ハグワール・D・サウロ1億ベリー

 

「わたしも………この写真いつ撮られたんだろう」

 

“悪魔の子”ニコ・ロビン7900万ベリー

 

「ふむ、ロビン嬢に先を越されてしまいましたか」

「そうだそうだ!みんなズリィぞ!」「ガオッ!!」

 

“みんなのオカン”カバジ

“元気いっぱい”モージ&リッチー

 

「名なんていずれ売れる。そんなことより大事なのはそこにお宝があるのかどうか………それだけだ!!」

 

“道化”のバギー1億8900万ベリー

 

 サーチの網にかかった一隻の海賊船に狙いを定めると、カバジとモージたちの首根っこをつかみ()()()()()()()

 

「「「うあァーー!!」」」

 

 三人は綺麗な放物線を描いて飛んでいった。

 

「船は沈めるんじゃねェぞ。お宝も沈んじまうからなァ」

 

「鬼かおめェ!!?」

 

 突然の暴挙に目を丸くさせ、とっさにロビンを手で隠すサウロ。

 

「おれが鬼にならねェようにさっさと船を近づけるぞ」

 

「めちゃくちゃだでよ」

 

 ため息をつきながらも帆を広げ、敵船へ向けて舵をとるサウロであった。




原作ではポーネグリフに加え軍艦を6隻沈めての7900万ベリーでしたが、やはりポーネグリフを読めるということは大きいと考え、本作での懸賞金は7900万のままにしました。


蛇足ですが、バギーは能力の範囲限界ギリギリまで手を射出してから投げるので、普通に投げるよりも遠くへ投げることができます。
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