最強バギー伝説   作:バギ次郎

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第16話:おれはモージ!!

 クリークはあれから何回か住処を変えたが、どこへ行ってもギンはいた。途中から帰り道をつけられていると思い何度も確認したが見つけられず、家に入るといつのまにか背後にいる。もしやこいつは自分にだけ見える想像上の何かか、と疑ったりもしたが触れることもできるし、やって来た足跡もあったのでその線はないと判断した。

 

 ある日、大戦槍が戦闘中にポッキリと折れた。だいぶ無理をさせていたのだろうが、最近やっと手ごたえを感じつつあっただけにその負け方には納得ができなかった。

 

(あそこでこいつが折れなけりゃ………!!)

 

 腹の虫がおさまらず、頭が全く回らない。そんな状態のクリークの前にいつものようにギンが現れた。

 

「確かにこんなチビじゃ頼りないよな。だから今日はおれの力を見てもらおうと………」

 

「黙れェ!!クソガキが………どこにでも付きまとってきやがって!!」

 

 フツフツとたまっていた怒りがギンに向けられて爆発した。ここまでブチ切れたクリークを見たのは初めてでギンは思わず固まってしまう。

 

「目ざわりだ!!!」

 

 冷静さを失ったクリークはギンの頬をぶん殴った。1(トン)もの重さの槍を軽々と振り回し、連日のバギーとの戦闘でさらに力をつけた男の拳はまだ体も小さい少年にとってみれば大砲に等しかった。一瞬で気を失い森の中へと吹き飛んでいった。

 

「フー、フー………チッ」

 

 舌打ちする。やってしまったと気が付いたときには遅かった。

 

 その後、ギンを軽く探したが見つからず、結局そのまま帰路についた。

 

 

 

 

 翌日、いつものようにバギーに挑み、敗れた後。住処へと戻るがそこにギンの姿はなかった。

 

(そうさ、最初からそのつもりだった。ガキ相手だろうが関係ねェ)

 

 何度もベッドに座りなおす。大男の両足貧乏ゆすりが家を揺らしていた。

 

「違ェ………そう!ただちょっとばかし様子を見るだけだ。すぐに帰る」

 

 誰に言い訳をしているのやら、ベッドから立ち上がり家を出た。

 

 

 

 

 

 

 バギーたちはいつもと様子が違い、どこか上の空だったクリークのことが気になりあとをつけていた。草むらの茂みから様子をうかがう。

 家に入ってしばらくすると家がブルブルと震え、止まったかと思うとクリークが出てきた。

 

「なぜおれはこんなことをやっているんだ………」

 

「あっ、出てきましたよ!」「どこ行くんだろう」

 

 ふと我に返りかけたがクリークを見失わないようにその後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 数回住処を変えてわかったことだが、ギンがやって来た足跡をたどると町のはずれで一点に交わった。おそらくそのあたりにギンが住んでいるのだろう。

 少々浮足立った様子で歩を進める。時折頭を振り気を取り直すようなしぐさをしている。傍から見ればその表情はころころと変わりどこか滑稽であった。

 

 そんなこんなで歩いていると見つけた。おそらく家であったであろうトタン板が辺りに散らばり、それに押しつぶされうつぶせで倒れているギンの姿を。

 

「なっ………!?」

 

 すぐさま駆け寄り、覆いかぶさっている板をどけ、ギンを抱きあげた。わずかに胸が上下しているので息はあるようだ。

 

「なにがあった!!?」

 

 ひどく狼狽したクリークがギンに問う。

 

「………あ、首領(ドン)………?」

 

 朦朧とする意識の中で、必死にクリークに焦点を合わせたところで気を失った。

 

「どうなってやがる………」

 

 酷いけがだ。明らかに自分が殴った以上の重傷だ。見えるだけでも体のいたるところに打撲と切り傷がある。そこへ幾人かの足音が聞こえてきた。

 

「さて、奴はくたばったか………な、首領(ドン)・クリーク!?」

 

 声の主は町のゴロツキ共だった。現役の海賊か、それとも海賊崩れのチンピラかわからないが、いかにもな格好をした男たちがやってきた。

 

 まるで状況がわからないクリークは男たちとしばし目を合わせるが、男たちがクリークの抱えているギンを見つけるとニヤつきだした。

 

「へへ、そいつは死んだか?」

 

「………生きている」

 

 頭が徐々に冷静さを取り戻してきた。

 

 男たちはヘラヘラとした態度で言葉を続けた。

 

「そのギンってやつは、ガキのくせに腕が立ってよお。おれらにとっちゃ目の上のタンコブだったのさ。だがそれがある日大けがを負って帰ってきた!!こりゃ幸いとこれまでのうっ憤を晴らさせてもらった、てわけよ」

 

 えらく上機嫌に聞いてもいないのにぺらぺらと喋る男。

 

「誰にやられたか知らねェが、そいつには感謝しないとなあ。………と、そういうわけだ。アンタにゃ関係ねェ話だったか?まあいい、そのガキさえくれればおれたちゃすぐ消える。な?早くそいつをこっちによこしてくれよ」

 

 すでに失墜したとはいえ、クリークの力まで衰えたわけではないことを理解していた男は及び腰で媚びるような声でそう言った。しかし、次の言葉を最後まで言い終えることはできなかった。

 

「それかアンタも一緒にそのガキを………」

 

 ギンを下ろすと男の頭をわしづかみにし、一気に地面へたたきつけた。

 

「グハッ!!」

 

 男は顔を地面にめり込ませそのまま動かなくなった。

 

「なにしやがる!?」

 

 もはや言葉はいらなかった。というよりもなんと言えばよいのかわからなかった。ただ、冷静さを取り戻した頭がこうなった状況を理解し、男の発言を聞いた途端に沸騰した。

 そのアホ面がまるで自分の行いを表しているかのように思えた。

 

「クソが………」

 

 ゴロツキ共を始末し終え悪態をつく。ギンを見やると、いつから意識が戻っていたのか目を開けこちらをじっと見ていた。

 

「あ………こいつらぐらいほんとは………あの………」

 

 目が合うとそんなことを口にした。ボロボロになってしまった一番の要因に対して必死に言葉を紡ごうとしている。クリークはその様にひどく心がかき乱される。いっそ責められた方が楽だったのかもしれない。

 

「いい………手当をしてやる。抱えるぞ………」

 

 そう言うとギンを両手で優しく抱きかかえ、住処へ帰ろうと振り返るとそこにはバギーたちがいた。

 

「てめェら………なんのマネだ?」

 

 ギンを肩で隠すように半身になり睨みつける。

 

 険しい顔のクリークとは逆に、一部始終を見ていたバギーたちの顔は面白いものを見つけたと言わんばかりに笑顔だ。

 

「顔は怖いけどけっこういいやつなんだな」

 

「なに?」

 

 モージがにこやかに言った。

 

「全部見てたぜ。今日のおめェはいつもと様子が違ったもんでこっそり跡をつけてたのよ。そしたらなんだ!面白ェことになってんじゃねえか!!」

 

「見せもんじゃねェぞ!!さっさとそこを退きやがれ!!」

 

 一言二言言葉を交わす中、カバジが会話を中断させる。

 

「船長、そろそろ本題に………」

 

 カバジの一言でバギーは真剣な表情になり、こちらへ来い、とでも言うように手を前に出しクリークへ告げた。

 

「おれと来いクリーク。おめェをここで腐らせるのはちと勿体ねェ」

 

 まさかの勧誘にたじろぐクリーク。ただ、やはりあの出来事が頭をよぎる。

 

『それ、本気だったんですか?』

 

 あの目が、去っていくあの背中がいつまでも消えず頭にこべりついているのだ。少し高鳴った鼓動を気のせいだと内にしまい拒絶した。

 

「ハッ………どうせお前らも分が悪いと見えりゃすぐに裏切る!!人間ってのは、特に海賊ってもんはそういうもんだろ!!!」

 

 かつて仲間を信じ、裏切られた男の言葉は重傷の子どもを抱く様もあってかとても悲しく聞こえた。しかし、その叫びをモージがはっきりと否定した。

 

「そんなことねェ。船長はそんなこと絶対にしねェ」

 

 大きくはないが力強くキッパリと断言したその声がすっと耳に入った。隣にいたカバジも頷いている。

 

 彼らの表情が、目が、語っているのだ。バギーへの絶大な信頼を。そしてそのバギーの声や立ち居振る舞いにはなぜか付いていきたいと思ってしまうような、よくわからない魅力を感じるのだ。

 

(もう一回、あと一回だけ信じてみるのも………)

 

「うっ………!!」

 

 無意識に腕に力が入り、ギンが痛みで出した声でハッとする。

 

「観念しろクリーク。その力………おれたちと共にハデに振るってみせろ!!」

 

 一瞬の逡巡の後、フーッと息をつくとバギーたちと対面した。眉間のしわは取れていた。

 

「見たとこガキもいるってことは当然こいつが一緒でも文句はねェよな?」

 

 バギーはギンに意識を集中させると、小さいながらも内に秘めたなにかの片鱗を感じ取り、ニィと少し口角が上がった。

 

「あたぼうよ!!野郎共、新たな仲間を祝し今夜はハデに宴じゃあ!!」

 

「その前にその子の治療が先ですよ!!屋敷にドクターがいるので早く帰りましょう」

 

 ギンの重傷ぶりを思い出しわたわたとする一同。

 

 そんな中、新しくできるであろう同年代の仲間にモージは心躍らせていた。

 

(やったー!!弟分になるのかな………兄貴、なんて呼ばれちゃったりして………)

 

 他の面々に比べ、一層にこやかなモージであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、真っ白な病室のベッドの上でギンは目を覚ました。

 

「うっ………ここは?」

 

「気が付いたのか!!」

 

 横を見ると白い毛むくじゃらが二つあった。状況がよくわからずきょろきょろと辺りを見渡すと大きな声が耳に入ってきた。

 

「おれはモージ!!こっちはリッチー!!これからはおれたちのことあ、兄貴って呼んでもいいんだぞ!!」

 

 ちゃんと会話するのは初めてで少しの緊張もあり、目を合わせず物理的にも上から目線になってしまった。手を腰に当て、胸を張って勢いよく言ったはいいが返事がない。ギンの反応はどうかな、と恐る恐る目線を下げるとこちらをにらみつけていた。

 

「「ひっ………」」

 

「おまえは誰だ!!ここはどこだ!!それよりも首領(ドン)はどこだ!!」

 

「「なっ………!!」」

 

 目つきの悪さと敵対心まる出しで矢継ぎ早に責めたてられてしまい、打ちのめされたモージとリッチーは床に手をつき四つん這いで落ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 その後、誤解は解けどこかぎこちなさがありながらも徐々に交友を深めていき、いまでは胸を張って仲間と呼べるほどに信頼し合う仲になった。

 

 クリークは唯一ロビンとだけは顔を合わせれば会話する程度の仲で、それ以外とは良好な関係を築いていた。

 

 ある日、一味に紛れ込んでいたCP(サイファーポール)の数人が、バギーが外出時にロビンを連れ去ろうとした事件が起こった。しかし、その場に居合わせたクリークが文字通り身を挺して彼女をかばい撃退に成功したことがあってから二人の間にあった他人感はなくなった。

 

 そんなこともあってから、クリークは基本寡黙だがいざとなれば頼れる大人として子供たちからも、そしてバギーやサウロの大人組からもより信頼されるようになり皆の絆はより深まった。

 

 

 

 

 

 

 時は現在に戻る。

 

 ホテルのロビーでバギーたちがいつものように定時報告をしていると、プルプルプルと電伝虫のコールが鳴り出した。

 

 ガチャ

 

「報告!こちらモックタウン2番港。3時の方向に船影あり。あれは………世界政府の旗です!!それに海軍もいます!」

 

「そうか、数は?」

 

「政府の船が1隻と、海軍の軍艦は2隻。全部で3隻です!!」

 

「報告ご苦労。港および町にいるやつらは直ちにホテルまで戻り出航の準備。後腐れねェように町のやつらにゃ一言言っとけ、以上。」

 

「了解!!」

 

 ガチャ

 

「すでに居場所はバレてるとはわかっちゃいたが、一海賊に軍艦を2隻も持ってくるたあ大盤振る舞いだな」

 

 政府の船にはおそらくCP(サイファーポール)でも戦闘能力に長けた部隊、CP8。もしかしたらCP9が乗船している可能性もある。

 

「よりによって今日とはなァ。運がいいんだか悪いんだか………デレシシ!!」

 

 少し不安そうな顔をしているロビンを気にかけあえて陽気に笑うサウロ。

 

「よし、てめェら………出航だ!!目標は南。派手にぶっ飛ぶぞ!!」




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