最強バギー伝説   作:バギ次郎

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第17話:”絶対的正義"の名のもとに!!!

 バギーたちは真っすぐ南へ向かっていた。

 

 乗る船の名はビッグトップ号。派手好きなバギーらしくサーカス団と見紛うばかりの賑やかな船であり、船首のゾウは鼻の部分が大砲になっている。

 

 紅白の旗が風をめいっぱいに受けてピンと張っている。

 

「予定の時間まであとどのくらいだ?」

 

 バギーはそばに控える航海士に尋ねた。

 

「このままのスピードですと約2時間ほどでポイントに到着。そこからは正直出たとこ勝負になります」

 

「2時間も(やっこ)さん方が大人しく待ってくれる、なんてことはねェだろうな」

 

 顔をしかめ思案するバギーに航海士が不思議そうに質問した。

 

「運よく風はこちらの味方です。やつらがこちらへ追いつくことはないと思いますが」

 

「その疑問はもっともだが………見ろ」

 

 そう言い自分の望遠鏡を航海士に渡した。

 

「やつらなぜ帆をたたんで………あれは!パドルシップ!?」

 

 海軍の軍艦も政府の船も、帆をたたみ外輪船(パドルシップ)へと移行しビッグトップ号を追いかけてきていた。

 

「船長!!少しずつですが海軍の船との距離が縮まってきています!!」

 

 見張り台にいる船員の一人もそのことに気づき報告してきた。

 

「まずい………あの速さだと大きく見積もって1時間もすれば射程圏内に入ります。どうしますか?」

 

 航海士から望遠鏡を返してもらうと全員に聞こえるほどの大きな声で指示を出した。

 

「うだうだ考えても仕方がねェ!!予定通りこのまま目標ポイントまで全速前進!!積帝雲を見つけ次第ダイバーチームは潜水開始。それから戦闘準備は済ませとけ」

 

 事前に船員たちには説明してあったが彼らの表情には緊張、不安など様々な感情が浮かんでおり、どこかどんよりとした空気が漂っている。

 

「ここで怖気づいてどうすんだおめェら!!心配すんな、おれ様はすでに行ったことがある」

 

 一斉にごくりとのどを鳴らす音がした。

 

「空島は実在する!!そしてそこには一面に黄金が光り輝いていた!!あれは全部おれ様のものだァ!!!」

 

「「「うぉぉおおお!!!」」」

 

 船員たちの士気は最高潮に達し、各々がすべきことに全力を注ぎ始めた。

 

「あいつの言葉には不思議とこう………なんというか、このへんがざわつきやがる」

 

 胸のあたりに手をやりクリークがそうこぼした。

 

「わかるど。たぶんあれをカリスマと言うんじゃねェでか」

 

 賛同するサウロがうんうんとうなずいた。

 

 

 

 40分後

 

 肉眼で見えるほどの距離まで海軍たちが迫ってきていた。船員たちに張り詰めた空気が広がる。

 

「予定のポイントにつくまで船の速度は緩めるな。戦闘員は船に直撃しそうな弾だけに集中しろ。あとの小難しいことはおれたちに任せとけ」

 

 笑みを浮かべるのはバギーをはじめとする幹部、とでもいうべき存在達。

 

 進行方向の空には徐々に雲が集まりだしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう待つのも疲れたねぇ………大砲用意」

 

「………は?」

 

 正義のコートをはためかせ、サングラスをかけたボルサリーノの発言に隣にいた海兵が素っ頓狂な声を上げた。

 

「まだ射程圏内ではありませんが………」

 

 そこにベテランの海兵が言葉を重ねた。

 

「中将から大砲を用意しろとの命令だ!さっさと準備するぞ!!」

 

 失礼します、と敬礼をした後いまだ頭に?を浮かべる海兵を引きずって行った。

 

「届かなくても真っすぐあの船に撃ってねぇ。それからジョン・ジャイアント中将にわっしが出ること伝えといて」

 

 黄色いストライプのスーツを着た黄猿こと海軍本部中将ボルサリーノはコツコツと船首へと歩き出した。

 

 時を同じくして海軍初の巨人族海兵であるジョン・ジャイアント中将は、ボルサリーノからの知らせを聞くと部下へと指示を出した。

 

「ボルサリーノが出撃するそうだ。わたしも出る。皆はそのまま船を進め、砲撃のタイミングは大佐の指示で撃て。以降の指揮は大佐に任せる」

 

「ハッ!!」

 

 大佐へと敬礼を返すと膝を思い切り曲げ、大きく跳躍した。その反動で軍艦がザッパーン!!と大きく揺れた。

 

「巨人族の、海兵の面汚しめ!!必ずや奴の首は私が獲る!!“絶対的正義”の名のもとに!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「船長!!6時の方向から人が………いや、あれは巨人?」

 

「来やがったか!!」

 

「あれは………砲弾の上に人が乗っています!!」

 

 途端に船が慌ただしくなる。

 

「総員配置につきなさい!!帆をたたんでブギー玉よーい!!」

 

 カバジの指示に従い船員たちは準備に取り掛かる。帆をたたみ、船尾に取り付けられたブギー玉専用の大砲にブギー玉を装填する。

 

 ボルサリーノは帆をたたむなど、船の様子が変わったことに気が付いた。

 

「何かする気だねぇ………でも黙って見てるわけにはいかんでしょう」

 

 ピカピカの実を食べた光人間であるボルサリーノは瞬きする間に砲弾から空へと移動した。

 

八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)

 

 両手の親指と人差し指で円を作ると、そこから無数の光の弾丸がビッグトップ号へと降り注いだ。

 

「いまです!!発射!!」

 

 あわや船に光弾が当たるというところで船はブギー玉の推進力で急発進。直撃は避けられた。だがそれはいわば応急処置にしかならず、いくらか距離を取ったに過ぎなかった。

 

 

 余談だが、前回使用したブギー玉はとにかく威力重視のトンデモ爆弾だった。そこでバギーは改良に改良を重ね、船になるべく負担はかからないがひとっ飛びできるほどの火力と、それに耐えうる威力の方向付けも兼ねた砲身機構を完成させていた。

 

 

 攻撃の当たらなかったボルサリーノは瞬時に体を光にして月歩で空中にいたジョン・ジャイアントの肩に乗った。

 

「う~ん、このまま追撃してもいいけどいったん船に戻ろうかねぇ」

 

「くっ、意気揚々と飛び出しただけに戻りづらい!!それはそうとボルサリーノ!アンタ自分でも飛べるだろう!!」

 

 恥ずかしさで顔を赤くしながら一度船へと戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やつらは退いたか………」

 

「船長!!いまのブギー玉で予定よりもポイントへの到着が早まりました。渦潮が現れるまでその海域にとどまる必要ができました」

 

「どうします?積帝雲ができそうな空模様でもないので、まだしばらくは時間がかかりそうですね」

 

 航海士とカバジが困ったように言った。

 

「予定通り物事がうまくいくことなんざそうそうねェ。海軍が来た時点で予定もクソもあるか………だがやることは変わらねェ。海域にとどまりやつらを追っ払う必要ができたってだけだ!!次はこっちから行くぞ!!準備は良いかおめェらァ!!」

 

 バギーの問いかけに突撃するメンバーはしっかりとうなずくとサウロの掌の上に乗った。

 

「思いっきりいくでよ」

 

 サウロはやさしく握ると振りかぶり、思いきり投げた。

 

 投げられたバギー、モージ、リッチー、クリーク、ギンは風を切りぐんぐんと軍艦へ近づいていく。

 

「バラバラ空中ブランコ!!!」

 

 バギーは両腕を射出し、それにしがみついた面々がそれぞれ甲板へと降り立った。

 

 

 

 

 

「奴は、サウロはどこだ!!」

 

 目の前に現れたのがサウロではないため声を荒げるジョン・ジャイアント。

 

 

 

 

 

「ぬ?わざわざ死にに来たか………」

 

 CP9の男たちは黒い手袋をはめ、降り立ったクリークとギンを見やった。

 

 

 

 

 

 そしてバギーはボルサリーノの前に着地すると、飛ばしていた両腕を戻し体にくっつけた。

 

「お~お~威勢がいいねぇ」

 

 バギーは指の間にナイフをはさみ、トトンとかかとを合わせるとつま先からシャキンとナイフが飛び出す。

 

「今度はこっちからあいさつしに来てやったぜェ、感謝しろ?」

 

「怖いねぇ………才ある芽は若いうちに摘み取るに限るってね」

 

「ほざけ!!」

 

 言い終えるや否やボルサリーノの体が光へと変わりバギーの目の前で収束した。

 

「光の速さで蹴られたことはあるかい?」

 

 すぐさま体を半分に切り離し回避する。分離した上半身と下半身の間を右足の蹴りが通過した、と思ったら後方で大爆発が起こった。

 

 すかさず返す刀でバギーの上半身に左足の蹴りが打ちこまれた。バギーは右腕でガードすると同時に左足で蹴りつけるも甲板の端まで吹き飛ばされ壁に穴があいた。

 

「痛いねぇ………クザンの報告は聞いてたけど、凄まじい成長速度だねぇ」

 

 ボルサリーノはバギーのキックを顔をそらし避けたが、右頬にナイフがかすり血が出ていた。

 

「チクショウ、かすっただけか」

 

(右腕は………折れてねェ。やはり本部の中将なだけはあるな………だが見える!!)

 

「あのときのおれ様と同じだと思ってたらけがじゃすまねェぞ?」

 

 少ししびれる右腕にぐっと力を込める。ここを越えれば次のステージへと行ける。そう思うと自然と笑みがこぼれた。

 

 それを見たボルサリーノはやはり自分の判断は間違っていないことを確信した。

 

「確実に仕留める。少し本気を出すとしよう。天叢雲剣(あまのむらくも)

 

 両者の間に立ち込める緊迫した空気に、周りの海兵たちはただ見ているだけしかできなかった。

 

(さァ、ここが正念場だ。野郎共………死ぬんじゃねェぞ)

 

「若いだけじゃない。わっしじゃなかったらと思うとゾッとするよ~」

 

「それはこっちのセリフじゃァ!!」

 

 光剣とナイフが激突し、まばゆい光と青い波動が大気を震わせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2隻の軍艦に挟まれるようにして、世界政府の旗を掲げる船の上にクリークとギンはいた。

 

「やってんなァ、うちの大将は」

 

「すげえ、衝撃がこっちまで伝わってくる」

 

 そこへ全身黒づくめの男がギンめがけて腕を振りぬいた。

 

指銃(しがん)

 

 それを大戦槍で受け止めたのはクリーク。

 

「よそ見してんじゃねェ、死にてェのか!!」

 

「すみません首領(ドン)!!」

 

 クリークにそう言われギンはトンファーを構えた。

 

(いまの指銃(しがん)ってやつ。あの黒い………武装色だったか?たぶんあれか、似たやつか?)

 

 そこにもう一人黒ずくめの男がやって来た。

 

「ガキ連れで海賊とは………見るに堪えんな」

 

 CP9であるこの二人。前情報で子供がいるとは知っていたが………任務は任務だ。本命はこの先にある。右足を後ろへ引き、腰を落とし構えた。

 

「「闇の正義を執行する」」

 

 己の体一つで繰り出される暗殺術の数々をいなし、時に反撃する。念入りに手入れをした大戦槍に早くも刃こぼれが生じてしまった。

 

「いいぜ、いいぞ!!どうやらてめェらはおれにはねェ何かをもってやがる。だがてめェらを倒せばおれ様の武力が最強ってことだァ!!」

 

 血沸き肉躍るクリークの背中で、鬼の子が静かに目覚めようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

「報告にあった2匹のペットだな?片方はミンクか?」

 

「おれは人間だ!!」

 

 いきなり目の前に現れたモージとリッチーに若干困惑するジョン・ジャイアントだったがすぐさま意識を切り替えた。

 

「お前たち、奴らを拘束しろ。サウロの居場所をはかせる」

 

 指示に従い部下が二人に近づくも、バタリと倒れた。

 

「子供だからって油断してると痛い目見るぞ」

 

「ガルルォ……」

 

 二人のパンチをみぞおちにくらって倒れた海兵を見て周りの者たちは武器をとった。

 

「この数相手にその威勢。確かに、子供だと思って気が緩んでいたか………」

 

 巨大な刀を鞘から抜き、二人へと向けた。

 

「海賊は海賊………生死を問わず。皆の者、心してかかれ!!」

 

 だだっ広い甲板に大勢の海兵が二人を囲う。

 

「くるぞリッチー!!」「ガゥッ!!」

 

 あの日ただ痛みに耐え、泣いていた少年はどこにもいなかった。そこにあるは二匹の、二人の戦士。

 

 四つん這いになり全身に力を込める。全身の毛が逆立ち、フゥーフゥーと歯を食いしばる。目に映るものは皆敵。二人そろえば怖くない。

 

 ガチガチと牙を鳴らし、ギリギリと爪が甲板を削る。

 

「「いくぞ………牙武者羅(がむしゃら)!!!」」

 

 いまはただ、目の前の敵を屠る獣になるのみ。




次回、空島へ
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