最強バギー伝説   作:バギ次郎

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第18話:おれこそが最強だァ!!

「ハァ……ハァ……」

 

 多勢に無勢。まだ発達しきっていない体にむち打ち、足りない部分をゾオンのタフネスで補っていたがそれにも限界があった。

 

「ガッ………!!」

 

「リッチー!?」

 

 死角から頭部への打撃を食らいリッチーが甲板の上を転がる。

 

「ぐあっ!!」

 

 その隙を突かれモージも傷を負ってしまった。

 

 二人を囲う海兵の円がじりじりと狭まっていく。

 

「もう十分だろう。その歳にしてはよくやったと言っていい………なぜ海賊なんぞに………」

 

 憐れむような目で二人を見下ろすジョン・ジャイアント。なまじ味方である海兵の数が多かったため、あまり手を出すことはなかったが、自分への警戒を片時も怠ることのなかったモージたちをそう称賛した。

 

「なぜ………?」「ガルルォ………」

 

 二人はうつぶせの状態でキッとにらみ返した。

 

「地獄から助け出してくれたのがバギー船長で………おれは、おれたちはもう自由だからだ!!」

 

 残っている体力はあとわずか。ふらつく体を支え合いながら立ち上がった。

 

「次で最後だ………」

 

 そう言うとモージの体が膨張し、雰囲気が変わった。手足はすらっと伸び、少し猫背になっている。二本足の獣。

 

 ネコネコの実モデルホワイトタイガー 人獣型

 

「「虎獅奮迅(こしふんじん)」」

 

 目にもとまらぬ速さで縦横無尽に駆け回る。海兵たちはすれ違いざまにその爪で、その牙で切り裂かれ血しぶきを上げた。

 

「ぬぅ、厄介な………」

 

 次々とやられていく部下たちを目にし、思わず愚痴がこぼれた。しかし彼は歴戦の猛者だった。二人の動きをしばし観察し、クセを見抜き、次の動きの予測を立て、瞬時に行動。多くの海兵をなぎ倒した二人の快進撃はジョン・ジャイアントの巨大な刀によって止められた。

 

「終わりだ………」

 

 巨刀による横薙ぎの一閃。受け止めるも避けるもできぬほどの疲労で、二人は迫りくる凶刃をただ眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ガキィイイン

 

 

「すまねぇ、ちと遅れただ」

 

 頼れる味方の大きな背中を見て、二人はどっと気が抜けたようにその場に座り込んだ。

 

「あー死ぬとこだったー」「ガルル」

 

 リッチーはやれやれとでも言うように頭を振った。

 

「サウロォオ!!!」

 

 一方でジョンは、己の刀を受け止めたサウロに怒りの限りの声を上げた。

 

 かつての上司の登場で海兵たちにどよめきが起こった。

 

「波が立ち始めてるだ、もうじきだで。おかげで泳いでくるのにちょいとばかし時間がかかっちまった」

 

 サウロは倒れた海兵たちの様子からモージたちの奮闘ぶりを察した。

 

「それにしてもようやっただな。あとはワシに任せてくれ」

 

 その言葉を聞いて安心したのか、二人とも仰向けに倒れそのまま眠ってしまった。

 

「話は終わったか?」

 

 サウロはモージたちを背にし、声の主と対峙する。

 

「ジョン・ジャイアント………ワシは海兵のころからおめェさんら過激派が大嫌いだ!!おめェらの正義はどこにある!!」

 

「海賊風情が正義を語るな!!貴様は海軍のみならず巨人族の面汚しだ!!誇りを失ったその体、なます切りにしてくれる!!!」

 

 怒りの表情をあらわにしたジョンが、特注の巨大な刀を万力のごとき力で握りしめた。

 

「いくぞ!!」

 

 巨人族同士の衝突に軍艦が揺れた。両者ともその巨体に似合わず俊敏な動きで刀を振るい、拳を振り上げる。

 

「これが、巨人の戦い………」

 

 戦闘の余波が船体全体に響き、海へ振り落とされないように手すりにしがみつく海兵たち。

 

「あんまり時間をかけるわけにもいかねェ………『生命帰還』・大太法師(だいだらぼっち)!!!」

 

 サウロの体がさらに一回り大きくなった。顔の周りに生えている髭が生き物であるかのようにうねうねと動いている。

 

「なにっ!?」

 

 サウロの変貌に思わず追撃の手が止まるジョン。

 

「この際好きだの嫌いだの言っとられんか………あんまり気が進まねェんだが………」

 

 ジョンはサウロの異変から次に何をしようとしているのか気づいた。

 

「貴様ッ………!!使えるのか!?エルバフの誇りを………!!」

 

 更なる驚愕の出来事に硬直するジョンに向けてサウロは拳を握り締め、腰を回し全体重を右腕に乗せて振りぬいた。

 

「威国!!!」

 

 いまのサウロの最大火力。振りぬかれた拳から放たれたすさまじい衝撃波が、ジョンとその周りにいた海兵ごと海へと吹き飛ばした。全体の約半分が木っ端みじんになった軍艦は、左右のバランスが取れなくなり大きく傾き始めた。捕まる手すりもなくなった海兵たちが次々に海へと落ちていく。

 

「悪いがワシらは先へ進むど」

 

 サウロはそんな彼らを一瞥すると、大きなテンガロンハットの上に眠っていた二人を乗せてビッグトップ号へと帰還した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 実力は拮抗していた。

 

「嵐脚!!」「大戦槍ォ!!」

 

 飛ぶ斬撃を大戦槍で相殺すると、お返しとばかりに肩に仕込んでおいたピストルで銃撃するも避けられる。

 

 なおも続く激しい攻防。CP9の意識をかいくぐり、ギンも果敢に攻めるがなかなか一撃を入れられない状況が続いていた。

 

「おい」「あぁ、そうだな」

 

 CP9の二人が互いに目配せするとその場から姿が消えた。

 

「くっ………後ろだ!!」

 

「「指銃(しがん)」」

 

 ギンの背後から心臓を正確に狙った一撃。カフッと口から血が噴き出る。

 

「ギン!!」

 

 直前で野生の勘とでもいうべきか、殺気に気づきわずかに身をよじり致命傷にはならなかったが、どさっと膝から崩れ落ちた。

 

「クソがァ!!」

 

「行かせん」

 

 慌ててギンのところへ行こうとするクリークをCP9の一人が足止めをする。

 

「くそがァ!!」

 

 とどめを刺すべくもう一人が倒れているギンへ近づいていく。

 

 完全に防御に徹したCP9に攻めあぐねる間にも刻一刻とタイムリミットが迫ってきていた。

 

「まずは一人」

 

「やめろぉぉおお!!!」

 

 目の前のCP9の男を無視して、何もかも放り捨て無我夢中で走り出した。

 

「バカめ………死ね」

 

 隙だらけで走るクリークの、がら空きになったわき腹に深く指銃が突き刺さった。

 

「すみません………首領(ドン)

 

 死を覚悟したギンが静かに目をつぶる……がいつまでたっても何の衝撃も来ない。不思議に思い目を開けるとそこにはCP9からの攻撃をその身で受けたクリークの顔があった。

 

首領(ドン)!!」

 

 クリークは体に突き刺さる指銃もお構いなしに、そのまま走り続けすんでのところで間に合ったのだ。

 

「なんなんだこいつは………ぬ、ぬけん!?」

 

 クリークの肉に深々とめり込んだ指を抜こうとするがピクリとも動かなかった。クリークは指が刺さった周辺部分の筋肉を収縮させ抜けなくしていた。

 

「そうか、そういうことか………」

 

 わき腹に刺さった指を引き抜こうと四苦八苦しているCP9の脳天に、思い切り拳骨を落とし甲板にたたきつけた。

 

「まずは一人………だったか?」

 

 仲間がやられる一瞬の隙をついて背中から指を引き抜き、距離をとったもう一人のCP9へそう声をかけた。声をかけられた男の頬を冷汗が伝う。

 

 クリークは走り出す際に少しでも体を軽くするために、全ての武器を放り捨てたのでなんの装備もしていない。お互いに己の体一つのみ。

 

 いままでの戦闘と先ほどの捨て身の行動からクリークはある結論にたどり着いた。

 

「最高の武力とは………自分の体も含めての武力だ。兵器がなくともこの手、この足が刀となり銃になればいい………つまりおれ自身こそが最高の武力であり………おれこそが最強だァ!!」

 

 クリークはその場にかがむと両足の筋肉がパンプアップし、はち切れんばかりに膨らんだ。ギチギチと音を立てていまにも破裂しそうになった筋肉を、ギリギリまでためたその力を、一気に解放した。

 

「な………(ソル)よりも速っ………!!」

 

 予想外のスピードに鉄塊は間に合わなかった。

 

L・BOM(エル・ボウ)

 

 爆発的に加速して撃ち込まれた肘鉄はまさに爆弾。CP9の体に触れた瞬間爆弾のように破裂し、砲弾のごとく吹き飛んだ男はマストを貫通した。根元がおられ、支えを失ったマストは世界政府の旗と共に海面に倒れ、海の底へ沈んでいった。

 

(しばらくは動けそうにねェ………)

 

 持てる力を使い果たしたクリークはドカリとその場に座り込んだ。両手両足がしびれている。

 

(最後のあの一撃………あの感覚だ。やっと、やっと届いたぞ………!!)

 

 自分の体が鎧のように硬く変化する感覚。歓喜に笑みがこぼれたが砂埃の中からユラユラと影が浮かび上がるのに気づき険しい表情に戻った。

 

「くっ………」

 

「ま…だ………だ………」

 

 フラフラで血を流すさまは幽鬼のごとし。一歩、また一歩こちらへと近づいてくる。

 

 そこへ突如として横から飛び出てきたギンのトンファーをこめかみに食らった男は一回転し地面に倒れ、それっきり二度と動くことはなかった。

 

「大丈夫ですか首領(ドン)!!」

 

 こちらへ駆け寄るギンにフッと口を緩める。

 

「てめェの心配でもしてろ………帰るぞ」

 

 空には雲が集まりだし、だんだんと暗くなり始めていた。




ハァ………ハァ………次回予告詐欺………?


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