最強バギー伝説   作:バギ次郎

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第21話:ヤハハ………礼を言おう青海人

「私になんのようだ?」

 

 カバジに促され、気が進まなかったがバギーの隣に座った。

 

「おめェここがビルカって言ってたが他にも島はあんのか?」

 

「なぜそのようなことを聞く」

 

「おれ達ゃある島に行きてェのよ。こんな白い大地じゃなくてジャングルとかある島なんだが知ってるか?」

 

 おそらく自分の目的地と同じであろう島に用があることを感じ取ったエネルは詳しく話を聞くことにした。

 

 認めたくはないが自分よりも強い者がどんな理由でそこを目指すのか。

 

「りんごはあるか?」

 

「あ?ほらよ」

 

 エネルは受け取ったりんごをシャクリとひとかじりするとあぐらをかき、肘をついて話し始めた。

 

「貴様らが行きたがっているところはおそらくだが、空島で唯一大地(ヴァース)がある島だな。そして空に住んでいる者は皆、あの大地に焦がれている」

 

 残ったりんごを口へ放りこみ飲み込んだ。そしてキャンプファイヤーからバギーへ目を移した。

 

「貴様らは大地が欲しいのではあるまい。いったいなにが目的なのだ?」

 

 問われたバギーは目を輝かせ嬉々として答えた。

 

「黄金よ!!おれ様はいずれこの世の全てのお宝を手にするのさ。もちろん空にあるお宝もな」

 

「黄金………?それはこの、のの様棒のことか?」

 

「そんなチャチなもんじゃねェ。都市ひとつ分の黄金だ。そしてさらに上空には巨大な黄金の鐘があんだよ。そいつをいただきに来たってわけだ」

 

「盗人か………」

 

「違ェよ海賊だ!!」

 

 エネルはバリっと一瞬で果物置き場へ移動し、りんごとバナナを持ってまた一瞬で元の場所へ戻ってきてそれらを食べ始めた。

 

「しかし黄金の鐘………か」

 

「なんか知ってんのか?」

 

 焼きバナナとなったバナナの皮を剥きながらそういえば、と思い出した。

 

「その昔………400年前、大地の誕生と共に大きな鐘の音が国中に響いた、とこの国の年寄りどもは口にする。ただの昔話だと思っていたが、まさか実在したとは………」

 

(都市ひとつ分の黄金か………のの様棒、黄金は私の能力と相性がいい。もし本当にそんな大量の黄金があるのであれば………私の夢は実現できる!!)

 

 焼きバナナも焼きりんごも食べ終わったエネルはバギーにある提案を持ちかけた。

 

「私も共に連れて行け。大地への道は私だけが知っている」

 

「そりゃ好都合だ!!なんならそのままうちに来るか?」

 

「バカをいえ、限りない大地(フェアリーヴァース)こそ私の夢だ。青海に用はない」

 

 そうしてエネルが加わったバギー海賊団の空島の旅が始まった。

 

 

 

 

 エネルに空島の特性や気候、食物について教わったり、お返しにモージとリッチーが噴風貝(ジェットダイヤル)探しを手伝ったりした。エネルに蹴り飛ばされた船員たちとのわだかまりはあったが、概ね順調に旅は進んだ。

 

 そしてついに、バギーたちは黄金都市シャンドラにたどり着いた。

 

「大地の地下にこんな都市があったとは………」

 

「ついに来たぜ!!ギャハハハ」

 

 息を呑むエネルはそっちのけで目の前の黄金都市と財宝の山にテンションが上がるバギー。ロビンも終始大喜びでサウロと共に遺跡を駆け回り調査していた。

 

「船に積めるだけ積めろ!!」

「帰りの食料分は空けとけよー」

 

 袋にお宝を入れていき、船員たちが手分けして上へ運搬していく。エネルはそれを複雑そうな表情で見つめていた。

 

 ひと通り作業が終わったところでバギーはロビンに声をかけた。

 

「あるぞ、歴史の本文(ポーネグリフ)。上だ」

 

 ロビンはピンと指を上に立てるバギーにならって巨大豆蔓(ジャイアントジャック)を見上げた。

 

「ついにだな、ロビン」

 

「………うん」

 

 母が我が子を置いて、命までかけて求めたもの。それがあると聞きサウロの声にも生返事だった。

 

 他の船員たちには船の準備や食糧の確保のために待機してもらい、エネルと幹部たちのみで上へ行くことにした。

 

 

 

 

 

 

「なんと………」

 

 巨大豆蔓(ジャイアントジャック)の最上部に大鐘楼はあった。堂々と鎮座し、柱部分に巻き付いた蔦から長い間誰の手にも触れられることなく放置されていたことがうかがえた。

 

 鐘へと続く階段の横に歴史の本文(ポーネグリフ)は台座に埋め込まれていた。

 

「これが………」

 

 オハラから外に出て初めて目にした歴史の本文(ポーネグリフ)。ロビンは覚悟を決めたようによし、とつぶやくとサウロの手に乗り、文字を手でなぞりながら読み始めた。

 

「真意を心に口を閉ざせ 我らは歴史を紡ぐ者………」

 

「小娘、この文字が読めるのか?」

 

 驚くエネルの声など耳に入らないほど集中している。

 

(そうか………シャンドラは歴史の本文(ポーネグリフ)を、古代兵器を守るために戦って滅んだんだ)

 

「だとしたらこれを狙っていたのはいったい………空白の100年になにがあったの………?」

 

「なにかわかったか?」

 

「うん、シャンドラが戦った理由と、古代兵器ポセイドンのありか」

 

「そういや魚人島にも歴史の本文(ポーネグリフ)があったな………赤の」

 

「赤!!?そんなの聞いたことない!!」

 

 バギーのつぶやきにくってかかるロビンに落ち着けとサウロが間に入る。

 

「赤の他にも色があるの?他にもある場所知ってるならそこに行きたい!!」

 

「え〜と………ゾウだろ、ビッグマムのババアだろ、あとはたしか………ワノ国だ。だがどこもいますぐ行けるようなとこじゃねェ。特にビッグマムのとこなんかはな」

 

「そう………ね。少し焦っちゃった」

 

 普段おとなしいロビンがこうも取り乱した様子を見て同年代のモージやギンは少し驚いていた。

 

「チクショウ、わかっちゃいたがこのデカさじゃ船に積めねェし、どうすっかな」

 

 頭を悩ませるバギーにカバジが近寄ってきた。

 

「柱の一本でもいただくのはどうでしょうか」

 

「落とし所としてはそんなとこか………じゃ、頼んだぞカバジ」

 

 頼んだと言われカバジは嬉しくて口元がニヤつくのをマフラーで隠した。

 

 気を取り直し、居合の構えをとり集中する。

 

「準備はいいど」

 

 サウロの声を聞いたあと目を閉じ全ての情報をシャットアウトした。思い浮かべるは切るべき対象、黄金の柱。

 

「秘技……達磨落とし!!!」

 

 カッと目を見開き柱を切りつけた。キレイに三等分された柱はそれぞれがわずかに左右にズレたが倒れることなくそのまま立っていた。

 

「ふう………動きましたか」

 

 サウロは輪切りにされた柱を一つずつ袋に入れていく。

 

 その光景に驚愕し冷や汗をかく人物がいた。

 

(あのバラバラ男だけじゃないのか!!刀が黒くなっていたが見間違いか?青海の者はみなこのような技が使えるのか!?)

 

 一人はエネル、そしてもう一人は

 

(頼んだとは言ったがカバジのやついつの間に………あれは黒刀か!?それにいまの居合………目で追えたがおれでもギリギリだったぞ!!)

 

 自身の右腕の急成長に度肝を抜かされたバギーであった。

 

 

 

 

 やるべきことは終えたので青海へ帰還しようとしたが、船員たちやモージとリッチー、さらにはクリークまでもがもう少し空島を探索したいと言い出したので彼らの気の済むまで滞在することにした。

 

 ビルカが思いのほか居心地が良かったのでそこを拠点として各々好きに行動させることにした。

 

 

 

 

 ある日、いつものようにジャングル探索から帰ってきたクリークが子供を一人かついでいた。名をパールというらしくジャングルで一人、サバイバルをしていたそうだ。親に捨てられたのか、事情はわからなかったがクリークが気に入ったから連れてきたそうだ。

 

「クリーク、あなた………」

 

「親はいねえ、確認済みだ」

 

「おめェ、そりゃ誘拐じゃ………」

 

「同意の上だ」

 

「身のキケン!!身のキケン!!」

 

「嫌がってるように見えますが………」

 

「同意の上だ」

 

 バギーとカバジのツッコミも意に介さず、肩に担いだパールが燃え始めても気にすることなくこいつを鍛えてくる、とだけ言い残しモージやギンたちとジャングルへと消えていった。

 バギーとカバジはなにも見なかったことにした。

 

 

 また、エネルは意外にもロビンと気が合うようだった。エネルは古代文字の読み方を教わりたかったらしく、最初は態度が大きかったがそれではロビンが全く取りあってくれないと悟ると渋々ではあったが教えてくれと頼み、了承を得ていた。

 始めのハードルを越えれば不要なプライドが邪魔をすることがなくなり、積極的に質問を重ね、地頭が良かったのもあるのだろうが、今ではスラスラと古代文字を読めるようになった。

 サウロがロビンのボディガードとして常に横にいたので、サウロも少しではあるが古代文字を読めるようになっていた。

 

 最後に、バギーは爆弾に(ダイヤル)が使えないかどうかの実験及び既存の爆弾の製作改良に勤しみ、カバジは瞑想をしていたと思ったらフラッとどこかへ行ったりなど、基本単独行動をしていた。

 

 

 

 

 数年が経ち、今度は空島にはもう飽きたと言い出したので下界に降りることにした。バギーとしては戦力増強などの面からもう少しいてもいいかとも思ったが船員たちのモチベーションも加味し、空島に別れを告げることにした。

 

 

 

 

 バギーたちが空島を出ると聞いてからどこか心ここに在らずのエネルに声をかけた。

 

「ほんとに来ねえんだな、エネル」

 

「………ああ」

 

 空島に残るかバギーたちと一緒に旅に出るかで悩んでいるのかと思っていたがどうやら違うようだった。

 

「その黄金も全て持っていくのか?」

 

 船に積み込まれていく黄金を指差しバギーに問うた。

 

「あァ?ったりめェだろ。そのためにここまで来たんだからな」

 

 その答えを聞くとエネルは意を決した顔でバギーを見据え、

 

「もう一度………私と闘え。貴様が勝てば私が調教したタコバルーンで青海まで送ってやる。だが!!もし私が勝てば、黄金は全て置いていってもらおう」

 

「宝に執着するようなタマじゃねェだろう………」

 

 少し戸惑いエネルを見ると、その目に並々ならぬ決意を感じ取ったバギーは決闘を受けることにした。

 

「いつやる?」

 

「いまからでも」

 

「………場所を変えるぞ」

 

 船員たちはその場を後にする二人を不思議そうに見ていたがカバジに作業を進めるように言われ、止めていた手を再び動かし始めた。

 

(どういうつもりなのでしょう………)

 

 参謀の名を背負うカバジでもエネルの意図は読めなかった。

 

 

 

 

 船を巻き込まないほどの距離まで離れ、向かい合った。

 

「ヤハハ………礼を言おう青海人、いや、バギー」

 

「おめェがどういうつもりでこんなことしてんのか知らねェが、海賊からモノ奪おうってんだ………覚悟はできてんだろうな?」

 

「愚問………」

 

 バチバチとエネルの体が雷へと変質していく。その姿がふとブレたと思ったらバギーの目の前に既にいた。

 

「我は神なり!!MAX5億V放電(ヴァーリー)!!!」

 

「バラバラキャノン!!!」

 

 その日、エネルの故郷ビルカは島の約三割が消滅することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 立っているのはバギー。

 

「ハァ………ハァ………強かったぜ、おめェは」

 

 大の字で仰向けに倒れているエネルはなにも答えない。

 

「だけどよ、おれはアイツらのキャプテンだからよォ………おいそれと負けてやる訳にゃいかねェのよ」

 

 帽子を被り直しエネルに背を向けて歩き出すバギーの後頭部にコツンと何かが当たった。

 

「その………笛を吹けば、タコバルーンが出てくる………」

 

 笛を拾いフッと口角を上げたバギーはあばよ、とだけ告げて去っていった。

 

 

 

 

 

 

 一人残ったエネルは無意識にこぼれた言葉が妙にすんなりと胸に落ちた。

 

「我は、神なり………いや、我は………雷」




「なんで海賊王が古代文字を扱えるの………!?」

「あーそういやロジャー船長がおでんさんに頼んで掘ってもらってたっけなァ」

(((もしかしてうちの船長って結構すごい経験してるんじゃ……)))


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