最強バギー伝説   作:バギ次郎

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第23話:………違うの?

 バラバラフェスティバルによって炎は鎮火し、建物も瓦礫と化したのでバギーたちのいる一画は視界が開け見渡しがよくなった。

 

「道が開けたぞ!!」「こっちだ!」

 

 それに気づいた比較的無事だった奴隷の男たちが、ほかの逃げ遅れている奴隷たちに声をかけた。状況が呑み込めず何がなんだかわからなかったが、藁にもすがる思いで一歩、また一歩と足を前に出す。

 しばらく走っていると更地と化した場によく見知った男たちが倒れているのが目に入り驚愕した。

 

「………………天竜人!?」

 

 醜悪な笑みでもって非道の限りを尽くし、消えることのない傷をこの身に刻んだ天竜人が白目をむいて倒れているのである。すぐそばにはかつて助けを求めても感情の消えた目で、なぶられている様をただ眺めているだけだった黒服たちも気絶しているのだ。

 

 そしてその場にはおよそ善人とは思えないピエロじみた風貌の男が一人立っていた。

 

「これはあなたが?」

 

 奴隷の一人はどうしても聞かずにはいられなくなってその男に質問すると、

 

「あ?そうだが?」

 

「………………!!」

 

 彼の返答の後には“当たり前だろ、この程度なんでもないさ”と続いたような気がした。奴隷たちにはその男が、バギーがたちまち光り輝いて見え、感謝の気持ちで心があふれた。

 

「ありがとうございます!!!」

 

 通りすがりざまに奴隷たちが目に涙を浮かべ、口々に感謝の言葉を述べていく。先ほどまで心の壊れて感情を失っていた者も含めて泣いていない者など一人もいなかった。

 

「まさか天竜人に手を上げるとは思っていなかっただよ。さすがだで」

 

「なァ~にが“さすがだで”だよ!!完全にやっちまう流れだったろ!!………………違うの?」

 

 どういうことかよくわかっていないギンに説明するクリーク、その隣で驚愕するサウロに言い返すバギー。会話こそ聞こえないが、そんな余裕そうな彼らを遠目に見ていた船員たちは感動して体が震えた。

 

「やべえ……………バギー船長天竜人ぶっ飛ばしちまったよ」

「うちのキャプテンやることなすことド派手すぎかよ……………!!」

 

 興奮した彼らはバギー!バギー!と大声でコールしながらバギーたちの元へ走っていく。幹部連中を取り囲むと肩を組んで円陣を作り、より一層大きなバギーコールが鳴り響いた。

 

 しかし、それだけ騒げば敵に見つかるのは当然だった。

 

「貴様らは………バギー海賊団!?なぜここに!!」

 

「バカかおめェら!!騒ぎすぎだ!!」

 

「アンタ、まんざらでもない顔だったぞ………」

 

 新たな黒服たちの登場に部下を叱責するバギーだが、その見事な手の平返しを見てクリークからあきれたような声が漏れた。

 

 黒服は視線をバギーたちから横にずらすと、護衛すべき天竜人が倒れているのに気付いた。

 

「な………サンジョルノ聖!!」

 

 慌てて駆け寄り容態を確認する。意識はないが命に別条はなさそうだと判断し、すぐにほかの仲間に回収させるとバギーたちに向き直った。

 

「まさか……………これはお前たちがやったのか?」

 

 そう問われたバギーはどうやってごまかそうか考えていると、

 

「そうだ!!そこにいる船長さんがやってくれたんだ!!」

「彼は私たちの救世主よ!!!」

「神も仏もいなかったが………キャプテン・バギーは存在した!!」

 

(なーー!!アイツらァ……………)

 

 避難中の奴隷から思わぬ援護射撃を受け、文字通りバギーのあごが外れ地面に落ちた。

 

 奴隷たちの叫びを聞いた黒服はすぐさま手持ちの電伝虫を手に取った。

 

「緊急連絡!!バギー海賊団の一味がマリージョアを襲撃!!船長“道化”のバギーはサンジョルノ聖を意識不明の重体に!!!大至急応援を………海軍大将の────」

 

「うらァ!!」

 

 バギーは報告に気をとられていた黒服を殴り飛ばし、物理的に通信を遮った。

 

 それを皮切りに黒服たちとバギー海賊団との戦闘が始まった。………と言ってもふたを開けてみればバギーたち主要メンバーの出番はほとんどなかった。ジャヤ以降に海賊団に入った船員たちが予想以上の奮闘を見せたのだ。

 

「おれたちはなにもこの数年間空島で遊んでたわけじゃないんだ」

「いつかキャプテンや、幹部方のように………!!」

 

 バギーたちの強さに感化された者たちは、船に乗ってからこれまでの旅の間で各々やるべきことを行っていた。地獄のようなしごきに耐え、何度も地べたをはいずった。食欲がなくなるほど辛く、泣きながら無理やり喉を通したこともあった。

 

 それでも諦めなかったのは、もうあの頃には戻りたくなかったからだ。そしてこれまでの人生と比べて、バギー海賊団での生活がこの上なく楽しかったからだ。かつて、ジャヤでの生きているのか死んでいるのかわからない感覚。正気だと腐った人生を自覚してしまうので酒に逃げ、他人の喧嘩を見ることぐらいしかこれといった楽しみがなかった。しかし、ふらつきながらも彼らの心の奥底にはたしかにあった。諦めの皮を被ったうぬぼれが。

 

 いつかおれも………あのときこうしていれば………

 

 その気持ちをひた隠して日々を消化していたときに嵐のようにやって来た。己の運命を変えることになるバギー海賊団が。彼らに、バギーに出会ってほの暗く蓋をして守ってきたうぬぼれが、希望へと変わった。

 

 ここだ、いましかない

 

 希望が決意となり手に持った酒瓶を地面に叩きつけ、バギー海賊団の門をたたいた。もう一度一旗揚げてやる。ようやく彼らの人生の幕が上がったのだ。

 

 あれから時を経て現在。あの決意はそのままに、新たに芽生えた感情。

 

 ただの一船員で終わりたくない

 

 バギー風に言わせてみれば“ハデに一花咲かせてやろう”の意気込みでここまで強くなった。実は自分たちよりもはるかに幼いモージやギンたちの影響も多分にあるのは蛇足だが………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やるじゃねェか、おめェら」

 

「「「キャプテン………………」」」

 

 戦いが終わり、バギーからの労いの言葉で思わず涙する船員たち。何かと涙もろい者たちだが、このときばかりは心の底から自然にあふれた涙であったに違いない。

 泣き止む様子がなく、おいおい泣く船員たちに首をかしげるバギーたちは、彼らをなだめるのに大層苦労したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここらが潮時だ………」

 

 バギーにそう言われ、サウロの眉間に深いしわが寄る。自分でもわかっているのだが現実はそう甘くない。船にも乗せられる限度がある。これ以上は無理なのだ。この一画はあらかた制圧したので比較的静かになったが、少し遠方を見やるとまだ火の手が上がり、奴隷らしき人々の絶叫が聞こえてくる。

 

 するとそこへカーテンらしき布類を大量に抱えたカバジが戻ってきた。

 

「少し先の方まで見てきましたが、やはり船ごと降りられるようなところはありませんでした」

 

「………となるともう一度無理やりにでもタコバルーンを膨らましてこっから飛び降りるしかねェか」

 

「おれの火炎放射器とカバジの火はあるが、あれがもう一度膨らむか?………それとこの重量を支えきれるのか?」

 

「そんなこともあろうかと船に残った者たちには帆をつなぎ合わせて簡易的なパラシュートを作るよう指示してあります。うちの船大工たちとロビン嬢の手もあるのですでに作成済かと」

 

「よし、決まりだ。カバジとクリークはタコバルーンとパラシュートを膨らませろ。サウロは船を抱えて壁からスカイダイビングだ。おめェのパラシュートは………てくらァ!!人の話はちゃんと聞きなさ────」

 

 バギーは心ここにあらずの様子でボーとしていたサウロにキレるが、急にその大きな顔がずいと目の前まで迫ってきて思わず後ずさる。

 

「な………なんだよ、文句でもあるってのか!!あァん!?」

 

 勢いで及び腰になったが、話を聞いていないこいつが悪いとすぐに思い返し秒でメンチを切った。

 

「ワシのパラシュートが出来るまでどのくらい時間がかかるだ?」

 

「今から作るので急いでも20分はかかるかと………」

 

 なァんだちゃんと聞いてたんじゃねェかと、サウロの鼻に肘を乗せようとしたがすでにそこに顔はなく、バギーはバランスを崩し転倒した。

 

「おいこらァ!!おめェ────」

 

 文句を言おうとしたバギーにサウロは背を向けた。

 

「………なんのマネだ。もう船には乗せられねェってわかってんだろ」

 

 おおよその見当はついたが念のためバギーはサウロに声をかける。

 

「わかってるだ………………だからこれはワシのわがままだ。20分経つ頃には必ず戻る………………必ずだ」

 

「言い出したからには徹底的に、いいじゃねェか。遅刻厳禁だハデバカ野郎」

 

「いってくる!!」

 

 そう言い残しサウロは走り去っていった。

 

「いいのですか!!あんな………あまりにもリスクが高すぎる!!」

 

「同感だ。第一おれらは海賊だろ。人助けなんざ………………てギンがいねェ!!」

 

 クリークは先ほどまでそばにいたはずのギンが、いつの間にかいなくなっていたことに気づいた。

 

「あー、あいつならサウロの服にくっついてったぞ」

 

「なぜ止めなかった!!」

 

「サウロがついてんだ。なんとかなんだろ」

 

 クリークは一気に頭に血が上りバギーに詰め寄るが、当の本人はどこ吹く風だ。そのバギーの態度と、ギンの行為に気づけなかった自分に腹が立ったクリークは肩当てを外し大戦槍を組み立てた。

 

「まさかあなた………………」

 

「おれも行ってくる。あとは頼んだ」

 

「ちょ…………」

 

 丸太のように膨らんだ両足で地面を蹴り飛ばし、彼の姿は一瞬で見えなくなった。クリークに抗議しようと手を伸ばしたカバジは彼のちょうど後ろにいたので、蹴りあげられた砂や泥を全身に浴びせられそのままの状態で固まってしまった。

 

「ナメやがってあいつらァ………………」

 

 カバジは怒りに震え、体についた泥がぼとぼと地面に落ちる。

 

「お、おい………………カバジ?」

 

 そんな心配すんなーだいじょぶだぞーとバギーは爆弾を作るときのように優しく、優しく声をかける。

 

「おれ様の見立てじゃこんだけ暴れても大将はおろか、CP0すら来ねェってことはここはあまり重要地点じゃないか………………もしくはもっと他に手を焼いてる場所があるってことで………………」

 

「なァんだ、それならよかったです………………とはならない!!!!」

 

 いいですか?第一に船長である貴方が────と怒れるカバジの話を聞きつつ二人は船へと戻っていった。




腰を据えて強敵と戦いたい
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