最強バギー伝説   作:バギ次郎

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十万字を突破し、見てくれる人も少しずつ増えてきて感無量ですわ


第30話:怒りの矛先を間違えてんじゃねェよ!!!

ドン!!ドオオン!!!ドドドドン!!!!

 

「なんじゃ、いまの銃声は!?」

 

 船にいた者たちは島から聞こえてきた銃声に騒然とした。

 

「あ………あれ!!」

 

 周辺を警戒していたクルーが指をさす。霧の中から現れたのは、

 

「海軍だ!!取り囲まれてる!!」

 

 五隻の軍艦。

 

 主砲およびすべての大砲がビッグトップ号に向けられた。

 

「総員、衝撃に備えなさい!!」

 

 カバジの指示と時を同じくして砲撃が始まった。

 

 海面に着弾し、大きな音を立てて水しぶきが上がる。波が立ち、ビッグトップ号は上下左右に揺れ動く。

 

「罠だったんだ………」

「見ろ………これが人間だ!!」

 

 絶え間ない砲弾の雨。

 

 もはや逃げ場はどこにもなかった。

 

「何かあるとは思っていましたが、大方これまで送り届けた者の中で口を割った人がいたんでしょう………」

 

 運がいいのか、いまだ一発も受けずに海上で踊り続けるビッグトップ号。

 

「まあ、そんなことはこの際どうでもいいです。おそらくバギー船長たちも襲撃を受けているはず────」

 

 

 

 

 バキィッ!!!

 

 

 

 

 

 とうとう海軍の砲弾が船に直撃した。しかも、よりにもよって当たったのはマストだった。

 

「ああ!!おれらの船が!!」

 

 そもそも逃げることは困難だと思われていたが、これで完全に退路は断たれた。

 

「船は………捨てます!!海軍のを一隻奪いましょう。残りは沈めてください。魚人であるあなた達が頼りです」

 

 しかし、魚人たちは誰一人として動かない。

 

「どうしたんですか?事態は一刻を────」

 

「うるせェ!!これが現実だ!!おれ達はおまえたち人間に売られたんだよ!!」

 

「はあ?」

 

 思いもよらぬ返答にカバジはぽかんと口を開けた。

 

「どうせお前らも心の中じゃ魚人を蔑んでんだろ!!」

 

 アーロンの主張に魚人たちは島の人間に向けられたあの視線を思い出した。彼らに剣呑な空気が漂い始める。

 

「そんなこと────」

 

 モージが反論しようとするが、それを制しカバジは魚人全体に問いかけた。

 

「ではなぜあなた達は、人間である我々と共に来たのですか?」

 

 答えに詰まる彼らを挑発するかのように鼻で笑うカバジ。

 

「どうやらタイガーさんについて来ただけのようですね」

 

「黙れ!!」

 

「別に念のため口止めはしていましたが、密告されることなんて想定内ですよ。元奴隷か、それ以外によるものかはわかりませんが」

 

「想定内だと!?おれ達はあいつらを助けてやったんだぞ!!」

 

「海賊とは恐ろしいものです。ですが、海軍に我々のことをかばっていることがバレて共犯者にされる方がよっぽど恐ろしい」

 

 先ほどまで怒りに顔が歪んでいたジンベエは、いまは冷静そうに話の行方を見守っている。

 

「違ェ!人間はおれ達魚人を見下してんだ!だから平気で裏切る!!」

 

 アーロンに触発された一部の魚人が賛同の声を上げると、その輪は一気に広がった。敵意ある目でクルーたちをにらみつける者も出てきた。

 

「そんな………」「ガルォ」

 

モージとリッチーは仲間だと思っていた人たちからの敵意に悲しくなる。

 

「チッ………バカ共が」

 

「「………」」

 

 クロは一つ舌打ちをし、シャムとブチは両手で耳をたたんだ。

 

 おろおろするクルーたち。いよいよ内部分裂か、と思われたそのとき。カバジの我慢の糸が切れた。

 

いつまでも甘ったれてんじゃねェ!!

 

 髪の毛が逆立っているかのごとき怒声に一同固まり、口を閉じる。

 

「すぐ人間だ魚人だのと、簡単な方に逃げやがって………海賊になった時点でそのぐれェ覚悟しとかねェか!!これのどこに人種が関係してんだ!!

 

 魚人たちはカバジの発言に黙り込む。先ほどまでの威勢はもう消えていた。

 

「尊敬する人と同じ道を生きてェのは構わねェが、ちったァてめェの頭で考えたらどうだ………怒りの矛先を間違えてんじゃねェよ!!!

 

 初めて人間に怒鳴られた魚人たち。

 

 カバジをはじめとしたクルーたちの真剣な表情を見るとうまく言葉が出てこない。

 

 そんな中、何人かのクルーがおずおずと前に出て魚人たちに語りかけた。

 

「なあ、もうこんなケンカ止めにしようぜ?な?」

 

「ケンカ………だと?」

 

「ケンカっつーか、言い合いっつーか………まあそんなことはいいんだよ」

 

「そんなこと………?」

 

 この争いをケンカ、そんなこと呼ばわりされ面食らうアーロン。

 

「こうなっちまってんだ。しょうがねえよ」

「おれたち海賊だしな」

 

 他のクルーも諭すように語りかける。

 

「人間の裏切りというより、海軍がおれら海賊を捕まえにきた………それだけのことだろ。何もおかしな点はねェよ」

 

 クロも自身の見解を述べた。少しずつ空気が和らいでいく。

 

 モージも黙ってはいられなかった。

 

「お前たちの受けてきた傷がどれほどのもんかおれにはわからない………ただ、おれ達は仲間だろ?痛みも喜びも全部バラシて分かち合えば耐えられるし、前を向ける。そう、思えるようになったのも船のみんながいたからだ。もちろん、お前らも………その()()()だ」

 

「ガルォォオーン!!!」

 

 モージと同意見なのか、隣でリッチーが遠吠えを上げた。

 

 アーロンもバカではない。語りかけられる声の調子や表情から、本気で自分たちを仲間だと言ってくれていることはわかっていた。

 

 もしもこの場に魚人が自分一人だけだったとしたら、早々に差し伸べられた手を握っていたことだろう。

 

「言葉では何とでもいえる!!」

 

 来るなとでも言うように腕を振り、拒絶の言葉を吐く────が、聞いてて悲しくなるような声だった。

 

 魚人たち一人一人の脳裏にこれまで人間に向けられた侮蔑の視線や、目の前で同胞が攫われた場面が浮かぶ。

 

 しかし、それだけではなかった。

 

 笑いかけてくるクルーや、食べ物を横取りしてリスのように頬を膨らませるモージとリッチー。

 

 水かきやひれを動かすと何がいいのかわからないが、シャムとブチは目を輝かせ、その横では珍しく眉間のしわが取れたクロの姿。

 

 火薬の調合ミスで船室を爆破し、カバジに怒られるも逆切れするバギー。

 

 振りかえると笑いを通り越して、もはや呆れてしまうエピソードばかりだ。

 

(世の中が、こいつらみたいな人間ばかりだったらな────)

 

「でも信じてくれとしか言いようがないよな」

「一緒に飯食った仲だろ?もうそれでよくないか?」

「やべぇ………長い、長すぎてわけわかんねェ」

「あいつらはおれたちの?」

「仲間」

「バギー船長は?」

「最強」

「でも本当は~?」

「ちょっとバk………」

「………いまの絶対にあとでチクろう」

「やめてくれェ!!」

 

 ドガァン!!!

 

 さらに船の側面にも砲弾が直撃したようだ。当たり所が悪かったのか、そこから一気に海水が流れ込み、ビッグトップ号は大きく傾き始めた。

 

「どうするカバジ!!」

 

 モージはアホなクルーたちをしばきながらカバジに問いかける。だが、カバジは聞こえぬふりをしてアーロンたちを見つめていた。

 

「わしは────」

 

「どうすりゃいい!!」

 

 ジンベエの発言はアーロンによって遮られた。

 

「どうすりゃいいって言ってんだよ!!さっさと指示を出せ………参謀長」

 

 それを聞いたクルーたちはニィっと笑みを浮かべると、一斉にカバジに注目した。

 

「この船は捨て、海軍の船を一隻奪います。あとの四隻は………沈めてあげなさい」

 

 カバジは、おお!!という歓声を背にマフラーを懐にしまった。

 

「聞いたか同胞たちよ!!魚人族の力を海軍共に見せつけるぞ!!!」

 

「「「おう!!!」」」

 

 アーロンの掛け声で魚人たちはさっそく海へと飛び込んだ。

 

「指示は最後まで………まあいいでしょう。ジンベエ、あの軍艦までお願いします」

 

「………あいわかった」

 

 カバジが一人残ったジンベエに頼むと、少し間を置きジンベエは答えた。そして、彼も海に飛び込んだ。

 

 

 残ったクルーたちに向き直り、やる気満々な彼らを見渡した。

 

「では、みなさん。海賊の本分といきましょう………あの軍艦を奪い、この島を脱出するぞ!!」

 

「「「うおおお!!!」」」

 

 カバジのときの声に合わせて、みな海へ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 水中のジンベエはカバジたちが飛び込むのを見計らうと、両手で海水を()()()。すると、漂う海水がその流れを変え、カバジたちを包み込むように一塊に集まり始める。

 

「ぬぉおお!!魚人柔術、海流一本背負い!!!」

 

 集めた海水を腰のひねりを活かし、思い切り投げた。カバジたちを含んだ海水が、海中から勢いよく飛び出した。

 

 打ち出された海水はきれいなアーチを描き、目標の軍艦の甲板に着水する。

 

「何事だ!!」「海水が空から!」

 

 水が引き、中から現れたのはバギー海賊団。各自、得物を構え戦いたそうにうずうずしている。

 

「貴様らは………!!」

 

 この艦にいたストロベリー少将がいち早く気付くも遅かった。

 

「この船はいただいていきます!!」

 

「総員戦闘配備!!」

 

 戦いが始まった。

 

 クルーたちは声を上げ突撃する。海兵たちも負けじと応戦するが、完全な奇襲により連携もくそもなかった。

 

 さらに壊滅に拍車をかけたのがモージ、リッチー、クロによるとんでもない速さの連撃だった。

 

杓死(しゃくし)

 

「「虎獅奮迅(こしふんじん)!!」」

 

 クロは両手にはめた猫の手、と呼ばれる五指の刀ですれ違いざまに海兵を切り刻む。獣人型になったモージと相棒のリッチーは、その鋭く伸びた爪や牙で次々に海兵たちを無力化していった。

 

「なんだあいつらは!!………ぐああ!!」

 

「おれらを忘れてもらっちゃ困るぜ」

 

 三人に気をとられた海兵は後ろからの襲撃に倒れた。

 

「これじゃあ本当に忘れてるかどうか確認できないだろ?」

「お前はバカのくせにたまに細かいのはなんなんだ」

「おまえいまおれのことバカって………そういやおまえ、船長のこと────」

「記憶滅却モンゴリア~ン………チョップ!!」

「あ………」

「ふう、危機は去った………」

「なにやってんだおまえェ!!!」

 

 奮闘する海兵もいるが、それも時間の問題だと思えるほど圧倒的だった。

 

 

 

 

「海軍将校とお見受けする。お相手、いただけますか?」

 

「貴様は、バギー海賊団“参謀長”カバジ!!」

 

 サーベルを引き抜き、マフラーを巻きながらストロベリーに近づいていく。

 

「どこの誰がたてた策かは知りませんが………うちのクルーを嵌めようとした罪は重ェぞ!」

 

「海賊が罪を語るなど………片腹痛いわ!」

 

 カバジが振り下ろしたサーベルを二本の洋刀で受け流す。

 

「この首、そう易々と取れると思うな!!」

 

 飛ぶ斬撃、嵐脚がカバジを襲うが、身をよじり回避する。

 

 両手両足による剣舞は差し詰め四刀使いか。それを刀一本で華麗にさばいていく。

 

 

 “参謀長”カバジvs海軍本部少将ストロベリー  開幕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、水中にいたアーロンは四隻全ての軍艦が見える位置にいた。

 

「ハチ、クロオビ、チュウ、マクロは舵をぶっ壊せ!!」

 

「ニュ~了解だ」

「エイ!」

「チュ♡」

「なんで俺が………」

 

 反応は様々だが、アーロンの指示通りに四人は行動を開始した。

 

「他の奴らは四つに分かれて軍艦の下に渦潮を作ってやれ!いまにみてろ、海軍………シャハハハ!!」

 

 アーロンの指示により魚人たちは軍艦の下を全速力で泳ぎ始めた。彼らの腕力は人間の10倍。体躯は大きく気性も荒い。並大抵の人間ではなす術もないだろう。

 

 そんな彼ら魚人の真価は陸上ではなく、水中でこそ発揮されるのだ。

 

「たこ焼きパーンチ!!」

「千枚瓦正拳!!」

「水大砲!!」

「モハ・ド・スピア!!」

 

 舵を壊され船底に大穴を空けられた軍艦を衝撃が襲った。

 

「敵襲!!」

「なに!?奴らの船は沈めたはずでは………」

「相手は魚人………水中です!!」

 

「ご名答」

 

 いつの間にか欄干の上に立っていた魚人、アーロンの登場に海軍は驚きの目を向けた。

 

「そしてもうじきお前らは、この海に沈む」

 

「海軍をなめるなァ!!これしきのことで────」

 

 そのとき、船がひとりでに旋回し始めた。続けざまに船内に入り込んだ海水の影響で左右のバランスが取れなくなる。

 沈没へのカウントダウンが始まった。

 

「貴様は、貴様らはいったい………」

 

「おれたちは魚人海賊団………いや、バギー海賊団!!下等な人間どもよ、無様に沈み溺れて死ぬがいい!シャハハハ!!」

 

 それだけを言い残し、高笑いしながらアーロンは欄干から海へ飛び降りた。

 

 

 

 

 呆然とする海兵たちだが、なおも続く船の揺れに我に返った。

 

「面舵一杯!!この場は一時離脱。そして他艦に応援要請を!!」

 

 准将の声に部下たちは慌てて船内を駆けまわる。

 

「舵ききません!」「友軍、電伝虫応答せず!」

「船内に海水が入り込んできています!!」

 

「なんだと!?」

 

 船の回転速度は徐々に増していく。准将は遠くの友軍を見やると、一隻を除き全艦が自分たちと同様の状況であることに気づいた。

 

 

 

 水中にもぐったアーロンは軍艦から少し離れたところまで泳ぐと、両手両足をピンと伸ばして体にくっつける。

 

鮫・ON・DARTS(シャーク・オン・ダーツ)!!」

 

 自慢のノコギリ鼻を前面に出し、助走もそこそこにすぐさまフルスピードに達した。

 

 まさに魚人魚雷。アーロンは減速することなく四隻を突貫し、沈没の決定打をお見舞いした。

 

 

 

 脳を揺さぶられるような衝撃。イレギュラーに次ぐイレギュラーに屈強な海兵たちもパニックに陥る。

 

「我々は虎の尾を踏んだというのか………」

 

 その言葉を最後に、海軍の軍艦は四隻とも大破し海の底へと沈んでしまった。




ここまでアホな奴らにする予定ではなかったです。

キリがよかったのでここまでで、いよいよ次はバギー対黄猿です。たぶん週末には投稿でき
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