最強バギー伝説   作:バギ次郎

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大人買いしたリボーンを全巻読みました。

あれはいいですねえ


追記
誤字報告ありがとうございます。


第31話:背中に目が欲しいねェ~

「さすがは海軍少将」

 

「海賊に………褒められても………反吐しか出ん」

 

 その言葉もただの強がりにしか聞こえない。

 

 もはや、この船上で立っている海兵はストロベリー少将のみとなっていた。そのストロベリーも頭からは血が流れ、息が上がっている。

 

 甲板以外を制圧したクルーたちは船を動かす準備に取り掛かっていた。

 

「ここまで手こずるとは思いませんでした」

 

「この身ここで朽ちようとも………海軍の、正義の意志は潰えない!!」

 

 ストロベリーは息も絶え絶えに二刀を構えた。およそ勝機は薄い。だが、勝負を諦めたわけでない。

 

 いまカバジたちの前に立っている男は海軍の中でも上澄み。少将の地位にある歴戦の兵士の姿だ。

 

「あなたは手を出す相手を間違えた」

 

 サーベルを鞘に戻し、居合の構えをとるとカバジは目を閉じた。瞬間、爆発的なプレッシャーがストロベリーを襲う。

 

(なんて圧だ………!!)

 

 たしかに、ストロベリーの実力は少将の名に相応しいものだ。そこらの海賊では手も足も出ないほどに。

 

 しかし、カバジがそこらの海賊に当てはまる──なんてことは天地がひっくり返ろうと有り得ない。

 

 そんなことは対峙したストロベリーが一番よくわかっていた。

 

(だが………気後れする暇など無い!!)

 

 だからといって負けていい理由にはならない。正義が悪に屈したとき、民はいったい何を頼ればよいというのか。

 

 

 

 

 次で勝負を決める。

 

 実力者同士の読み合いが一致した。

 

 

 

 

「貴様らの存在が、この平和な海を脅かす!!!」

 

 居合とわかっていながら、それでもストロベリーは前へ進んだ。

 

 カバジのリーチの長さが攻撃領域の半径だ。そこに踏み入ると見せかけて嵐脚を────

 

「秘技・飛剣!」

 

 領域の二歩手前でいきなり刀が飛んできた。

 

 想定外だったがなんとか体をひねり、それを首の皮一枚で躱す。

 

「勝ちを急いたか!!」

 

 得物を手放したカバジが丸腰なのに気づき、喜色をあらわに前を向くと────鞘を振り下ろしているカバジと目が合った。

 

「なっ………」

 

 ゴッと鈍く重い一撃が脳天に直撃した。

 

 ストロベリーはゆっくりと倒れ、二振りの洋刀がカラリと地に落ちた。

 

 船の準備をする振りをして事の成り行きを見ていたクルーたち。彼らはカバジの勝利を確認すると再び作業に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だまし討ちで勝利を収めたカバジさん!一言、一言お願いします!」

「グルォッ!オッオッガルォオ!」

 

 手をマイクに見立てたモージとリッチーがカバジについて回る。心なしかカメラのフラッシュも焚かれているようだ。

 

 いや、悪乗りしたクルーが実際に焚いていた。

 

「どうやらあいつらもやったようだ。これからどうする?」

 

 クロは艦の前部に突き刺さっていたカバジのサーベルを片手に尋ねた。

 

「そうですねえ、ひとまずは彼らと合流してから………」

 

 海兵たちをロープで縛るついでにモージたちをマフラーでがんじがらめにしながらカバジは思案する。

 

 ちょうどそのとき、ザバッと海面から飛び上がったアーロンたちが甲板に降り立った。

 

「シャハハ!なんだ、もう終わったのか?」

 

「そちらも随分と早かったですね」

 

「これが魚人の力よ!」

 

「ええ、非常に強力な戦力です。あなた達がいて助かりました」

 

 カバジからの真っすぐな感謝に魚人たちは照れを隠すことができない。

 

「………おおい!それよりもタイガーの大アニキたちを助けに行くぞ!」

 

 喜びにうかうかしてばかりもいられない。せっかく自分たちの居場所を見つけたのだ。そこに大恩人であるフィッシャー・タイガーが欠けては意味がない。

 

「全速前進!!船長とタイガーさんを迎えに行きますよ!!」

 

「「「うおおお!!!」」」

 

 戦いはまだ終わりではない。バギーたちのところには、ここ以上の戦力が投入されているはずだ。

 

 クルーたちはいま一度気を引き締め直して、フールシャウト島を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

「ところで………こいつらはこんなときにも新しい芸の練習でもしてんのか?」

 

 カバジによって某刃の手鬼の如く丸められたモージたちに、さすがのアーロンも引き気味だ。

 

「ああ、彼らは緊張感というものを母のお腹の中に置いてきてしまった哀れな者たちです。お気になさらず」

 

「くっ………次こそは!!」

「グルォ!!」

「カバジさ~ん、悪かったよ!もうこんなことし──」

「する!こいつはする!でもおれはしない!」

「てめ………ここは機嫌取りが先だろ!なに味方売ってんだよ!」

「おれはこいつらほど馬鹿じゃァない。次はもっと華麗に気づかれることなく──」

「気づかれてないんなら意味ねェだろ。バカが頭良い振りすると余計にバカが出ちまうぞ」

「ぐぬぬぬぬ」

 

 モージたちはいたずらしてしまったことを恥じるのではなく、カバジの早業に対応しきれなかった己の未熟さを悔いていた。

 

 反省などの気持ちは微塵も抱いていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ!気を取り直していきますよ!!」

 

「「「おー」」」

 

 カバジの掛け声に顔面をボコボコにされて丸く膨れ上がったモージたちが力なく拳を上げた。

 

 

 

 

 

「アーロンさん、ほんとにこいつらで大丈夫なんですかね?」

 

「シャ………うーん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黄猿、ボルサリーノの足が発光し、バギーの足は黒く染まる。

 

 示し合わせたかのように、両者同時に飛び出した。光速の蹴りと覇気を纏った蹴りが激突した。

 

 互いに一歩も譲らず、ビリビリと大気が震える。

 

「“道化”のバギー………厄介だねェ~」

 

「ほざけ!!」

 

 戦闘が始まった。いったん距離を取った二人の手に得物が握られた。

 

 光剣天叢雲剣(あまのむらくも)。対するバギーは何の変哲もないナイフ。

 

 名のある一品でも何でもないが、小さいころからの長い付き合いだ。手入れを怠ったことはない。その切れ味は業物に勝るとも劣らないものになっていた。

 

 

 

 

 ここで一つ、ナイフと刀では大抵勝負にすらならない。

 

 剣道三倍段。

 

 無手の者が刀を持った相手に勝つには、実力が三倍以上必要である。また、刀が槍、もしくは薙刀に勝つには二倍以上の実力差が必要である。

 

 つまり、リーチの差というものはそれだけ勝負を左右するほどの大切な要素だ。

 

 だというのに、バギーはこれまでナイフを好んで使ってきた。

 

 理由としては小回りが利くし、体のあらゆる部位に仕込みやすい。なにより最も自分にしっくりくる。

 

 さらに言えば、バギーには斬撃が効かないのでわざと切られて油断を誘いやすい、という点も理由にある。

 

 

 

 

 

 

「背中に目が欲しいねェ~」

 

 バギーは刀をいなしながらナイフを投げつけ、当たらずとも空中に浮かせた手が反対側でキャッチし、それがボルサリーノの背後を襲う。

 

 ボルサリーノを中心にした高速ナイフキャッチボール。

 

 バギーのナイフは自然系(ロギア)であるボルサリーノが避けるほどの覇気を纏っていた。

 

 止まることのない怒涛の攻撃は、かの中将といえど防戦一方にならざるを得なかった。

 

(たった数年でここまで………異常だねェ~)

 

 ジャヤで相手をした時とは比べ物にならないほどの成長速度に、内心驚きを隠せず冷汗がたらりと流れる。

 

「おらァ!どうしたどうしたァ!!避けてばっかでおれ様に勝てるとでも?」

 

 ボルサリーノは、なにも自然系(ロギア)という希少な能力だけで中将にまで上り詰めたわけではない。

 

 鬼教官による地獄のトレーニングに、乗り越えてきた実戦の数は新兵が聞けば卒倒するほど。苦戦という苦戦は少ないが、強敵に打ち勝ってきたからこそ、いまここにいる。

 

「お言葉に甘えてぼちぼち反撃といきますかァ~」

 

 飛んできた高速のナイフを紙一重ではたき落とし、バギーに切りかかる。

 

「血迷ったか!?おれ様に斬撃は───うおお!!」

 

 切りかかった天叢雲剣の刀身を扇形に変形させバギーに振り下ろした。

 

 バラバラの能力の弱点である面による攻撃。

 

 しかし、バギーは反応し受け止めた────が、さすがに片手では無理があり押し込まれる。

 

 即座にもう片方の手を呼び戻し、両手でなんとか拮抗するまでに持ち直した。

 

「いまので潰れてくれよォ~」

 

「うる………せェ!!」

 

 対処が遅れた分バギーはのけぞった状態で踏ん張っている。態勢が悪いため徐々に押され始めた。

 

「ほら~楽になっちまいな」

 

「う………ぉぉおおおお!!!」

 

 バギーも負けじと押し返す。

 

 少しでも気を抜けば形勢が逆転するほどのせめぎ合い。そんな緊張感あふれる最中、バギーの口角がニィッと上がった。

 

「なに笑って────ッ!!?」

 

 急に抵抗してくる力がなくなり、ボルサリーノは思わず前のめりになる。

 

 バギーが両腕をバラし、つばぜり合いを放棄したのだ。

 

「バ~ラ~バ~ラ~」

 

 予備動作なしの受け流しとでもいうべきか。

 

 あらん限りの力を込めていたボルサリーノの体が一瞬宙に浮いた。

 

黒ひげ危機一髪!!!

 

 はらりと躱したバギーは上半身を射出し、ボルサリーノの横顔に頭突きした。

 

 モロに直撃したボルサリーノは宙に浮いていたのもあり、踏ん張りがきかず吹き飛ばされた。地面に何度かバウンドし、ゴロゴロと転がってやっと静止した。

 

「ハァ……ッ……」

 

 当たったときのメキィという不快な音が頭の中で反響している。はめていたサングラスは粉々に砕け、鼻血がぼたぼたとしたたり落ちる。

 

 脳が揺らされ少しふらつくボルサリーノ。

 

 

 

 

 

 そんなチャンスを見逃すほど、バギーは優しくなかった。

 

 

 

 

 

「バラバラキャノン!!」

 

 ガードしたボルサリーノの腕ごと、わき腹に拳が深くめり込む。

 

「ぐッ………!」

 

 しかし、それでへたるほどやわな鍛え方はしていなかった。

 

 とっさに、ガードした反対の手の指からレーザーを連射しバギーの好きにはさせない。

 

 一進一退の攻防。

 

(ここで暇を与えちゃ厄介だ!)

 

 回復の隙を与えさせぬよう、黄猿の猛攻をなんとかしのぎ、へばりつく。

 

「ジャヤでの彼は双子の兄弟か何かか~い?」

 

「ずいぶんと余裕じゃねェか!!」

 

 軽口をたたくボルサリーノは、その実焦りを感じていた。

 

(一度立て直したいが………)

 

 殴る、蹴る、払いのける。

 

 ここでボルサリーノは、バギーの数々の攻撃に違和感を覚えた。

 

(いくら強くなったからとはいえ、こりゃちと()()()やしないかい?)

 

 黄猿よりも一回り以上も小さな体躯からくり出される打撃、とは思えぬほど体に響く衝撃が大きいのだ。

 

(覇気のレベルもすさまじいが、これは………)

 

「きみィ~どんな手品使ってるんだい?」

 

「気づいたか!だが自分の手の内明かすバカはいねェだろ!!」

 

 その言葉と共に、バギーは一際強力な上段蹴りを放った。

 

 

 

 

 

 

 バギーはバラバラの能力により自身の質量をバラし、操っていた。打撃のその瞬間にバラした重量を腕や足に集結させ、物理的に重くしていた。

 

 エネルギーとは簡単に言えば重さと速さで決まる。

 

 重ければ重いほど、速ければ速いほどその威力は大きく跳ね上がる。

 

 ボルサリーノは速く、バギーは重くすることで自身のパワーを底上げしていた。そこに覇気が組み合わされば────言わずもがなその威力は絶大なものになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バギーの上段蹴りをボルサリーノは防げはしたが、ダメージの蓄積からか踏ん張り切れなかった。

 

「ぐっ!!」

 

 地面に膝をつかされ、その衝撃で大地が割れた。

 

 しかし、一瞬のうちにガードしていた腕を光に変え、バギーの足を掴むと思い切り地面に叩きつけた。

 

 さらに地面に亀裂が入り、砂埃が大きく宙を舞う。

 

「がはっ!!」

 

 その隙にボルサリーノは、ようやく距離を取ることができた。満身創痍とまではいかないが、腕は軋み鼻血で顔が汚れている。

 

 光速で叩きつけられたバギーもダメージは大きかった。

 

 だが、すぐさま起き上がりクレーターから飛び上がると、かかとの仕込みナイフを作動させた。

 

「第二ラウンドといくかァ?」

 

 息の上がった二人だが、戦闘の意志はなんら衰えることはない。

 

 黄猿の足に再び光が収束してまばゆく輝き始め、バギーの腕には青黒い閃光がほとばしる。

 

 

 

 

 ────とそこへ血相を変えたカバジたちが走ってきた。

 

「ん~?ストロベリー少将たちは………」

 

 海賊の登場に、状況を理解した黄猿は閉口した。

 

 取り乱すことなどない。だが、心が動かぬというわけでもなかった。

 

 

 より一層に足の輝きが増し、辺りは光に包まれる。

 

「殺しはしていません!………ですが、それも運次第かと」

 

 煮えたぎる心情とは裏腹に、冷静な頭で整理する。見聞色で探ってみれば、たしかにそれらしき気配はあった。

 

 バギーを一人相手取るだけでも苦労する。しかし、ここで仕留めなければ確実に大敵となる。自分たちに今回与えられた任務は───

 

「いま駆けつければあるいは………」

 

 彼の中の天秤は傾いた。

 

 

 

 キュイーン!!!

 

 

 

 

 溜めにためた光が黄猿の足先からもの凄い速度で発射された。

 

「伏せろぉおおお!!」

 

 バギーがなんとか相殺するも、後ろにいたクルーたちは爆風で体が持っていかれそうになるほどの威力だった。

 

 

 

 

 

「あァ!?」

 

 煙が晴れると、そこに黄猿の姿はなかった。

 

「おいカバジィ………おめェいいところで────」

 

 一対一(サシ)の勝負を邪魔されたバギーがカバジに詰め寄る。

 

「正直助かりました。こちらも切羽詰まってます」

 

「なに?」

 

 聞けばタイガーは重症だったため一足先に船に運んだが、血を流しすぎていて、いつ死んでもおかしくない状況だという。

 

「すぐ船に戻るぞ!」

 

 これにはやる気満々だったバギーも矛を収めることにした。

 




次で魚人と仲良くなろう編は終わり


の予定



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