最強バギー伝説   作:バギ次郎

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投稿期間が空いたのはのっぴきならない事情がないです。


体調と相談しつつ、自分で書けるペースで書いていきますのでのんびり待っていただけると嬉しいです。


読んでくださる皆様には感謝いっぱいです!


第32話:だれもビビッて手を出す気にもならねェからな!!

「お頭!!なにバカなこと言ってんだ!!」

 

 バギーたちが船に戻るとハチの困惑したような大声が聞こえてきた。

 

 なにやらもめているようで、医務室らしき部屋の前に人だかりができており中の様子をうかがっている。そんな彼らに一声かけると、バギーたちに気づいたクルーたちはサッと道を開けた。

 

 部屋の中へ入ると、そこには魚人やクルーたちがすし詰め状態でベッドに横たわるタイガーを取り囲んでいた。

 

「なにをしてるんですか………」

 

「こんな大勢でけが人囲んでもしょうがねェだろ!アラディンとドクター、助手共以外は部屋から出てろ」

 

「だがよお~………」

 

 バギーにそう言われても彼らは、特に魚人たちは戸惑うばかりでなかなか動こうとしない。

 

 そんな中、ジャヤで医者をしており、みんなからドクターと呼ばれているじいさんがしれっとタイガーに輸血のために針を刺そうとした。

 

「入れるな!!そんな血で生き長らえたくはねェ!!!」

 

 しかし、それに気づいたタイガーの怒声が部屋いっぱいに響き渡った。

 

「あァ?」

 

 血反吐を吐くのにも構わず、頑なに輸血を拒否するタイガーに、その場にいた者は異変と疑問を感じた。

 

 タイガーの凄まじい気迫に誰もが口を噤む。そしてタイガーはぽつぽつと語りだした。

 

「おれは人間に屈しない………旅だってほどなくして、マリージョアに数年間………おれは───」

 

「入れろ」

 

 タイガーの言葉を遮るようにバギーはアラディンにそう指示をした。

 

「貴様ァ!!!」

 

 バギーはタイガーから怒りのこもった目で睨みつけられるのも完全に無視して、早くしろとアラディンをせっつく。

 

 そのアラディンは輸血パックを持ったまま動くことができずにいた。アニキと慕うタイガーを救いたいが、当の本人がそれを拒んでいる。

 無理やりにでも命を救うことはできる。しかし、本人の希望であればそれをためらってしまうほど、アラディンのみならず魚人たちにとって、フィッシャー・タイガーという男は絶対的なものだった。

 

 

 

 

 

 

 何かを察したバギーはアラディンから輸血パックを奪い取るとドクターに渡した。

 

「やれ、ドクター」

 

「はいよ」

 

 着々と準備に取り掛かる様子に、周りの者たちはただじっと見守り、一方でタイガーは声を張り上げた。

 

「人間の血で生きるぐれェなら、おれはここで死を選ぶ!!」

 

「だまれェ!!!」

 

 バギーの声が船内に行き渡る。

 

 給仕をしていたクルーが驚いて皿を落とすほどに。

 

 さらにバギーは、タイガーの胸ぐらをつかみ顔を突き合わせた。

 

「よさんかバギー!重症人じゃ!!」

 

 慌ててドクターが止めに入るも、バギーはそれに耳を貸さずタイガーをにらみつける。

 

「お前の船長は誰だ………このおれ様だァ!!おめェらがどこで何しようが、どう生きようが、そりゃ好きにしろ………だがなァ、おめェらの命のどうこうだけはおれが決める!!ここで死ぬだァ?ふざけんな!………おめェの死に場所はここじゃァねェ」

 

 普段のひょうひょうとした態度とは一変したバギーの姿に、付き合いの長いクルーたちですら固唾をのむ。

 

「おい、恨むんならあの日おれ様の船に乗ると決めたてめェを恨めェ!!どんな奴でも船に乗った時点で、()()()()()()()()()………勝手にくたばるなんざ、このおれが許さん」

 

 バギーの発言に魚人たちは、時が止まったかのように目を見開いた。

 

「仲間、と………おれたちを仲間と呼んでくれるのか……?」

 

 魚人の誰かが言った。

 

 自然と全員の視線がバギーに集まる。

 

 バギーはタイガーの胸ぐらから手を放すと、その手を握り締め、力強くみなに宣言した。

 

「よォく聞け魚人ども………さっきも言ったがこの船に乗ったてェこたァ、必然的におれ様を船長と崇めるってことと同義だ。忘れてるやつもいるかもしれねェが、この世のお宝はすべておれのもんなんだよ………つまり、海中に眠ってるお宝たちがこのおれ様を待ってるってことだ。そんときに能力者であるおれ様は、そのお宝たちを前にどうしたらいいってんだァ?だれが獲りに行く?………水の中じゃ敵なしのおめェら以外にだれがいるってんだァ!!」

 

(ん?なんか雲行きが怪しいぞ?)

 

 そう思いモージは魚人たちの顔色をうかがったが、それは杞憂に終わった。

 

(すごい………バギー船長の謎のカリスマで魚人たちの顔に疑念の一つもない………)

 

 魚人たちはバギーの一字一句を聞き逃すまいと、前かがみになって集中していた。

 

「魚人の………おめェらの力が必要だ。いや、おめェらしかいねェ!おれと来い魚人共!!………そんで政府が、この世界がムカつくってんならそんときゃァ………そのムカつく元凶に一発ブチかましにいこうじゃねェか!!!」

 

「「「お、おお………」」」

 

 最初に圧倒的な力でねじ伏せられ、以降なし崩し的に船に乗った。バギーが船長だとわかってはいるが、どこか苦手意識というか、常識の範囲外にいる人物として心の中で線引きをしていた。

 しかし、無意識に敵わぬ相手と捉え、避けていたバギー本人から仲間と宣言された。

 

(ちゃんとおれたちのことを見ていてくれたのか………)

 

 

 

 

 

 

 

 

(そうかなぁ………)

 

 このときだけなんとなく魚人たちの気持ちがわかったモージは半目になるが、まあいっかとすぐに頬を緩めた。

 どのような形であれ、またみんなと旅に出られる。それで良いのだ。

 

 モージはあのとき、魚人たちが離反しそうになったときに向けられたあの視線。その場では気丈に振舞っていたが、内心かなりの動揺をしていた。

 味方だと思っていた相手からの敵意は、いままで浴びたどんな悪感情よりもはるかに心にくるものがあったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バギーたちがいなければタイガーの命はここで尽きていたのでは………

 

 感謝という言葉だけでは言い足りないこの感情を、どう表せばよいのか。

 

「「「お………おお、うォおおお!!!」」」

 

 魚人たちの喜びとも何とも言えぬ心の叫びを背景に、Dr.の手当てをしっかりと受けていたタイガーは、眠るように意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 だが、ただ一人。ジンベエのみが思いつめた表情をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数日が過ぎ、タイガーの意識が戻った。魚人たちが本当の意味で仲間になったことと、タイガーの快気祝いも兼ねた宴が開かれていた夜。

 

「おめェは一人になりたがるな………」

 

 宴の席にはつかず、一人離れたところで欄干に肘を置き、酒を飲んでいたタイガーにバギーが声をかけた。

 

 一人分の間をあけ、二人は月明かりに照らされた夜の海を眺める。

 

 甲板からは火の輪くぐりやナイフジャグリングなどで騒いでいる声がうっすらと聞こえている。

 

 

 

 

 しばらくの沈黙の後、タイガーはやっと口を開いた。

 

「鬼………」

 

「あァ?おに?」

 

「おれの、心の鬼だ。あいつらがコアラに、人間に心を開くことは喜ばしい」

 

 一度酒を口に含み、静かに喉を鳴らす。

 

「子供は未来だ。あいつらが、何も知らない世代が世の中を変えることのできる可能性だ。そこに、恨みや怒りを残しちゃいけねェ。だが………」

 

 タイガーはそこでジョッキを置くと、一呼吸入れ、決心したようにバギーに告白をした。

 

「おれは、天竜人の奴隷だった」

 

 夜風がサーと二人の間を通り抜ける。その先にはたまたま通りかかったジンベエの姿が。

 

「なん………じゃと」

 

 タイガーの告白に衝撃を受け、思わず身を隠した。

 

 依然として甲板ではバカ騒ぎが続いており、心なしか先ほどよりも盛り上がっているようだ。

 

 

 

 

「この世の地獄を見たのさ」

 

 バギーはタイガーの一世一代の告白に、すべての点がつながった。

 

 タイガーと他の魚人たちとの間にある、奴隷解放運動に対する熱量の差。と思えばそのタイガーも時折なにか思い悩んでいるかのような、何かを我慢するかのように黙りこくる。そして、生死を分ける瞬間に出た人間への憎悪。

 

「そうか………で?おめェはどうしたいんだ?」

 

「………わからねェ」

 

 タイガーはいま冷静に考えてみれば、バギーとの初対面の時の自分はどうかしていたと思った。しかし、どうかしてしまうほどの衝撃を受けたのだ。

 

 あれは、理想だった。

 

 差別のない、みんなが笑い合える平和な世界。

 

 だが、日を追うごとにやはりそれは、所詮理想であって現実とは似ても似つかない。第一に、タイガー自身が人間を許すことができないのだ。

 

「おれ様にゃちっともわかんねェが、おめェはどうしてそんなにも物事をでっかくとらえるんだよ」

 

「なに?」

 

「おめェを奴隷にした奴らをこう──やっちまえば、それで終わりじゃねェのか?」

 

「魚人は魚人というだけで人間からどんな仕打ちを受けているのか知らないのか!!おれたちはただ自由に生きることさえ許されていない!!………魚人という理由だけでだ」

 

「生きることに誰の許可がいるんだよ。生きてェんなら勝手に生きりゃいいだろ」

 

「そう簡単な話ではない!!」

 

 ダァン!!と拳を欄干に打ち付けてバギーをにらむ。船が雲の影に入り、月も顔を隠した。

 

「話をややこしくして本題に目を背けてるだけだろ」

 

「なんだと!?」

 

 タイガーが重症でなければ、おそらくバギーに掴みかかっていただろう。少し身をよじっただけで痛みが体中を駆け巡り、倒れるのをなんとか欄干にしがみつくことで耐えた。

 

「大義や理想を掲げるのは勝手だが、大きすぎる理想は身を滅ぼすだけだ」

 

「だったらどうしろと………!!」

 

「それだ」

 

 バギーは人差し指をタイガーの眉間に立てて詰め寄った。

 

「ちゃァんと考えたか?魚人が差別を受けず、魚人だけじゃねェ………奴隷を解放したその先をよォ。だれもが『自由に』暮らせる世界ってのを作るにはどうしたらいいかを。

 理想があまりにもデカすぎて何から手をつけりゃわからず、とりあえず目先の手が出そうなもんにちょっかいかけて気を紛らわしてんのが………いまのおめェだ」

 

 バギーが眉間に立てていた指を突っぱねた反動で、タイガーの姿勢が元に戻った。

 

「思考、準備、そして力が足りねえのさ。腕っぷしの力だけじゃねェ。富、権力、あらゆる力だ。

 海賊は悪で海軍は正義だが、なぜ四皇には手を出さねェ。七武海はなぜ発足した?おめェに地獄を見せた天竜人を野放しにしてる世界政府は何をやってる?あいつらの方がおれ達よりよっぽど悪党だってのによォ!?

 

 結論、正しいのさ。四皇も海軍も七武海も天竜人も政府も………みんな正解だ。

 

 なぜかってェ………だれもビビッて手を出す気にもならねェからな!!力ってのはそれほどの、それだけのモンを持っている。おめェには言わずもがなだったかァ?……まあいい。

 

 蟻がちょっと徒党を組んだところで象に敵うはずがねェ。こんなちっぽけなおれらが、どうやってあの巨体に勝てるのか………考えるのさ。調べるんだ、奴の全てを!知識も数も力も足りねェ。なら全部かき集めて勝つ算段をつけりゃァいい。

 奴は何を食べて、どこで寝て、活動する時間は?弱点はないか、家族はいるのか、年齢は、起きたらどの足から動き出すのか………

 全部調べて仲間を増やし、情報を共有して知恵を絞りだせ。そうして勝てるまで力を蓄えておくんだよ。

 

 それが!………弱者が強者に勝つ唯一の方法だ!!

 

「お前はそうやって成り上がってきたのか………」

 

「だれが弱者じゃい!!」

 

「さっき“おれら”と──「だァまらっしゃい!!」

 

 一時雲に覆われていた月が顔を出し、バギーたちを明るく照らし出す。

 

「いいか、おめェはやっと川を下って大海に出たばっかりの稚魚だ!いまここがスタート地点。こっからおめェの旅が始まるのさ!!」

 

 タイガーはバギーの言葉を反芻するように、ゆっくりと一度瞼を閉じる。そして再び目を開けたその顔には、以前のような陰はなく決意に満ち溢れた表情をしていた。

 

「『いままで』ではなく、『これから』………か」

 

「あァ?酒が切れた!………なんか言ったか?」

 

「いやなに、おれは案外幸運なのかもしれん」

 

「いきなりなんだよ、気色の悪ィ」

 

「フッ、うちの()()は辛らつで困るな」

 

 そんな言葉を交わしながら宴へと戻っていく姿を、ジンベエはただ眺めることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日、日が昇り、海鳥たちの声にまどろんでいたバギーは、昨日はちと飲みすぎたか、などと考えながらベッドでくつろいでいると、

 

 コンコン

 

 と数回のノックの後、

 

「船長、わしじゃ、ジンベエじゃ。話がある………入るぞ」

 

「おめェがおれに話とは、珍しいな」

 

 ジンベエを中に招き、ベッドに胡坐をかくバギー。その正面でジンベエも胡坐をかいて座った。

 

「実は、盗み聞きするつもりはなかったんじゃが、昨日おまえさんとお頭が話しているのを耳にしてな」

 

「謝罪かァ?おれ様は何とも思っちゃいねェよ。謝りてェならタイガーのやつに──」

 

 突然ジンベエは両手をつき、額を床につけた。いわゆる土下座だ。

 

「だァから謝るってんなら──」

 

 話を遮られたバギーは少しイラつきながらも、ジンベエの律義さは理解していたので諭そうとするが、

 

バギーの船長!!

 

 ジンベエの鬼気迫る声に船室がギシと軋む。

 

「アンタに受けた恩は計り知れん。アーロンやタイガーのアニキ、それにほかの魚人たちを救ってくれて心から感謝申し上げる。じゃが、なにもかもアンタに………この状況をそのまま受け入れてよいもんかわかりかねる。わしは、わしは………」

 

 への字に唇をかみしめ、必死に言葉を探しながら話すジンベエを、バギーはただじっと待ち続けた。

 

 いくばくかの沈黙が流れ、ついにジンベエは、

 

「わしは………この船をおりる。いっぺん自分の目でこの海を、世界を見てみたいんじゃ!!受けた恩を返さずにこんなことを言うのは忍びない。じゃから、望みとあらば腕の一本でも置いていく覚悟はある!!バギーの船長、いままで世話になった」

 

 そう言い、再び地面に頭をつけた。

 

 

 バギーは腕を組み、こう思った。

 

 

 

 

「おめェの腕なんざ、だァれがいるかってんだ!!」

 

「それはどういう………」

 

「やべ、口に出てたか………まあいい、お前の気持ちはよォくわかっ──」

 

 心の声が出てしまうが、仕切りなおそうと一つ咳払いしたところにドアが勢いよく開けられ、船室にクルーたちがなだれ込んできた。

 

「親分!一味を抜けんのか!?」

「ならわたしも共に行こう」

「ジンベエのアニキ、船をおりるって………」

 

 クルーたちは様々な反応をしめし、この状態で話をするのは不可能と判断したバギーは、

 

「全員甲板に集合だ」

 

 その一声ですぐさま船にいた者たちが甲板に集まった。

 

 

 

 

 

 

 

 バギーとジンベエの二人がみなの前に立ち、それをクルーたちがじっと見つめる。

 

「話を聞いていた者もおるようじゃが………わしは船をおりる」

 

 ジンベエのカミングアウトに一味は騒然とするが、バギーがスッと手を上げるとピタッと静まり返った。

 

「どのような罰でも受ける覚悟じゃ。煮るなり焼くなり好きにせえ………いままで世話になった」

 

 と言い、バギーに首を差し出すように頭を下げる。

 

「ジンベエ」

「アニキ………」

 

 タイガーとアーロンはジンベエのことがよくわかっていた。いまさら何を言おうが彼の決心はけっして変わることはないだろう。

 

「おれは親分といきたいです!」

 

 一人の若い魚人が手を挙げた。みなの視線が彼に向き、汗が止まらなくなる。彼は元リュウグウ王国軍の下っ端兵士で、ジンベエと共に王国を出た一人だった。

 

「わたしもいいか。そしてその罰は、代わりにわたしが受けよう」

 

 イタチウオの魚人であるアラディンも挙手し、前へ出る。

 

 おれも、自分も、とパラパラと前に出てきて、総勢15名が集まった。

 

「お前たち………いや、これはわしが言い出したことじゃ!罰はわしが受ける」

 

「まず第一に、おれ様は来るもの拒まず去るもの追わず、だ」

 

 ジンベエと彼に賛同した者たちの意見のぶつかり合いが、バギーの言葉で中断される。

 

「それってつまり………」

 

「止めはしねェ。降りたきゃ好きにすればいい」

 

「てことは………」

「親分は罰を受けなくても──」

 

ただなァ……

 

「ひッ」

 

 彼らの歓喜と安堵がバギーのただならぬオーラに飲み込まれる。

 

「船を降りるってのと一味を抜けるってのとは話が別だよなァ、ジンベエ」

 

 コツ、コツ、とジンベエの真横に来たバギーはそのまま続ける。

 

「おめェの意見は尊重しよう。だが………この道化のバギー様の名を背負って行ってこい」

 

 汗一つかかず、決意をあらわにジンベエは力強くうなずいた。

 

「おめェらもだ!」

 

「「「はいィ!!!」」」

 

 振り返り、びくびくするジンベエ派にバギーは檄を飛ばした。

 

「………ふう」

 

「へへへ」「ガルォ」

 

 カバジは肩の荷が下りるのと同時にため息がこぼれ、モージとリッチーは笑い合う。

 

 

 

 

 その場は解散となり、ジンベエたちは荷造りを始めた。

 

「いくのか」

 

「タイのアニキ」

 

 タイガーはジンベエと数秒目を合わせると、軽く笑い、

 

「いってこい」

 

 と背中を押した。

 

 

 

「じゃあな」「元気でな!」

 

 ジンベエたちは手すりに立ち、仲間の声をかみしめる。

 

「アニキ!!」

 

 振り返らないと決めていたが、思わずその声に反応してしまう。

 

「アーロン………」

 

「次に合うときはおれ様がアンタに拳骨をお見舞いしてやるぜ」

 

「ハッ、生意気な………アーロン、今生の別れでもあるまい。泣くな」

 

「な、泣いてなんかねェ!!」

 

「ワハハハ!!」

 

 笑いながらジンベエは、船中央部の高台に立つバギーをチラリと横目で見上げる。

 

 目が合い、お互いにニィと少年のように口角を上げると、

 

「では、達者で!!」

 

 と言いジンベエたちは海に飛び込んだ。胸にタイヨウ、背中にピエロの髑髏を背負って。

 

 

 海は快晴。船出日和。ジンベエの門出を祝うかのように、太陽の光がバギーたちを包み込む。

 

「帆を張れェ、出航だァ!!」

 

「「「おおォ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いったか」

 

「はい、海峡のジンベエ他数名、魚人の離脱を確認ですけん」

 

「いかがいたしましょう、()()()()()

 

「ゲェハハハ!!」

 

“悪食” バトラー伯爵 6億1060万ベリー

 

 色白の赤いモヒカンヘアーの男。その両隣に立つ二つの影。ここは空に浮かぶ島、()()()

 そのコントロールルームである。部屋の中には複数枚のモニターが設置されており、中央にあるメインのモニターにビッグトップ号がデカデカと映し出されていた。

 

 バトラー伯爵は皿に盛られた角を歯で食いちぎりながら、己の幸運を喜んだ。

 

「さすがは我輩、世界一のウルトラ大天才………明日だ。明日仕掛けるぞ」

 

「承知いたしました。シキの親分にはなんと?」

 

「いや、報告はしなくていい」

 

 ヘビー総裁の質問に逡巡することなく答えた。

 

「しかし………」

 

 それを聞いたこの島の航海士兼通信士が三人の後ろから声を上げた。

 

 その声が耳に入るや否やバトラーは瞬間的に怒りが頂点に達し、苛立ちを抑えもせず持っていた角を握りつぶし、ぐるりと振り向くと目が合った通信士は恐怖で体が硬直した。

 

「しなくていいと………言ってイるダロォォオ!!

 

 握りつぶした角を床に叩きつけると、バトラーの体はみるみるうちに変貌を遂げ、巨大な猛獣へと姿を変えた。

 

「ひィいい………うッ」

 

 慌てて逃げる通信士の背中に、猛獣と化したバトラーの爪が突き刺さる。そのまま宙に浮かべられた彼はピクピクと体を痙攣させ、あまりの激痛に意識が朦朧となりながらも必死に助けを求めた。

 

「はァ……だ、れk」

 

 彼が最後に見た光景は、視界いっぱいに広がる牙の群れだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よいか、くれぐれもシキの親分には報告を控えるように」

 

 指についた血をなめとりながらそう言うバトラー伯爵に、シキの息のかかった者たちは恐怖にふるえる。もしここで逆らったり、密告がばれたらそのときは──

 

「悪食の名に違わぬ所業。さすがですけん」

 

「では皆の者、そのように。今夜は英気を養うのじゃ」

 

 バトラー伯爵の腹心である筋骨隆々のブルドッグ顔のホットドッグ将軍と、ひょろっとしてニヤつくヘビー総裁はそれぞれ自室へと戻る。

 

「我輩はなんとも幸運だ。これも日ごろの行いか………シキの親分の探し物が自ら飛び込んでくるとは………ゲッハハハ!!」




 以前お話ししたかもですが、エピソード的にも東の海編が好きでキャラも好きだからこの小説書こうと思って書いてます。

 特にバギーが好きで、つよつよものがいいな、味方は東の海の奴らにしようと考えた段階で
      
   魚人むずくね?

 とは当初から思ってて。どういう経緯で仲間にするか非常に悩みました。

 だってワンピ世界での異人種の人間に対するヘイトがくssっそ高い!どうしたもんかと思いましたが、なんとかこういう形になりました。
 いやそうじゃないだろとか、様々な意見あると思います。自分だったらこうする!とかありましたら是非小説書いて投稿してみてはいかがでしょうか。感想くださってもウェルカムです。

 次がいつになるのかわかりませんが、ちまちま書いていこうと思います。よければ感想・評価くれると嬉しいです。では、いつの日か

追記
映画見直したら珍獣島じゃなくて王冠島でした
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