最強バギー伝説   作:バギ次郎

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第8話:てめェは随分苦しそうだなァ!

 無事に小舟などではなく、新しい船を手に入れることのできたバギーたち。今日はめずらしく快晴で各々思うがままに過ごしていた。

 

 バギーは使い切ってしまったマギー玉の制作で部屋にこもり、モージとリッチーは甲板で戯れ合っている。その様子を見守りつつ、カバジはサーベルの手入れを行っていた。

 

 すると、一羽の白いカモメが飛んできて何かを落としていった。

 

「今日はニュース・クーが来る日ではありませんが」

 

 不思議に思いつつもそれを拾い、中身を確認するとその内容に驚いた。新聞片手にバギーの部屋を激しくノックすると、中から不機嫌そうな顔をしたバギーが出てきた。

 

「そんなにバンバン叩くんじゃねェ!!火薬の分量ミスっちまうだろうが」

 

「それはすみません……いや、それよりもこれを見てください!」

 

 渡された新聞に目を通していく。

 

「あんだけ暴れりゃ懸賞金もかけられて当然かァ…………いや一億ーー!!しかもロジャー海賊団だったこともバレてらァ!!」

 

 騒ぐ二人に気が付き、何の話してるのーとリッチーの背中に乗ったモージが会話に入ってきた。

 

「バギー船長の首に1億900万ベリーもの懸賞金がかけられたのですよ!私たちはまだ文字通りお子様海賊団です。今までよりも一層気を引き締めなければなりません」

 

 思案顔なカバジとは対照的に興奮気味なモージ。一緒に挟まっていたバギーの手配書を見てさらにテンションが上がっている。

 

「見ろよリッチー!これバギー船長だぞ!!」

 

 手配書をリッチーの頭越しに顔の前に出して見せる。

 

「こんな写真いつ撮ったんだろうな。かっけェー!!」

 

 リッチーは終始頭に?を浮かばせていたが、はしゃぐモージを見ていると自分も楽しくなり再びじゃれ合い始めた。

 

「そうかそうか、かっこいいか……」

 

 うろたえていたのはどこへいったのやら、モージの言葉をかみしめるようにしてうなずくバギー。

 

「そうさ!おれ様はいずれ海賊王になる男だ!!よくわかってんじゃねェかおめェら!」

 

 すっかり気を取り直したバギーは、じゃれ合っている二人に混ざって遊び始めてしまった。

 

 そんな三人を見て、一人で悩んでいるのもバカらしくなったカバジはため息をつき新聞の続きを読み進めていく。

 

 それにしてもよく笑うようになったなとカバジは思った。ショネク王国を出て数か月が経つ。最近でもたまに夜中に泣いて起きてくることもあるが、それもだいぶ落ち着いてきた。いい傾向だなと安心する。

 

 バギーの操る手足を追いかけまわすモージとリッチーを横目に新聞をめくると、ある事件のことが一面を飾っていた。

 

「インペルダウン初の脱獄者。海賊艦隊提督“金獅子”のシキ……ですか」

 

 カバジのつぶやきが聞こえたのか、バギーの動きがピタリと止まった。待ってましたとばかりに、モージたちは空中で停止したバギーの手足に飛びつく。

 

「いま、“金獅子”のシキが脱獄したとか聞こえたが……」

 

「ええ、そう書いてありますね」

 

 ほらここ、と遊ぶのをやめて近づいてきたバギーにその記事を見せると表情が険しくなった。

 

「誰なんですか?この人」

 

超人(パラミシア)系フワフワの実を食べたフワフワ人間で、数年前までロジャー船長とバチバチにやりあってた大海賊だ」

 

「はあ、すごい人なんですね」

 

 口で言われただけではいまいちピンとこないが、バギーの真剣な表情から相当の実力者であることがうかがえた。

 

「まァ、支配することしか能のねェ頭もフワフワなイカれた野郎だ。当然その実力もな……って噛むのは違ェだろ!!」

 

 興奮のあまり、つかまえたバギーの手足にかじりつくモージたちを制止しパーツを元に戻す。他愛のないバギー海賊団の日常の一コマ……のはずだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジハハハハ!!ハァ……ハァ……随分と好き勝手言ってくれるじゃねェか!ロジャーんとこの見習い風情が!!」

 

 バギーとカバジは背後からの突然の声に咄嗟に飛び退く。

 

(喋るまで気が付かなかった。いや、気づけなかった!)

 

 カバジたちの実力もまだまだなので、正面切っての戦闘はもちろんのこと。奇襲でもかけられれば致命傷になり得る。そのため、バギーは常に広く薄く見聞色で周囲を警戒していたのだ。にもかかわらず、その包囲網をたやすく乗り越えてきた。それだけでも彼我の実力差は明らかだ。

 

 冷汗がバギーの首筋を伝う。

 

 しかし、どうも様子がおかしい。あの“金獅子”を前にして想像していたほどの圧を感じない。自身の成長故か。否、それも多少はあるかもしれないが、そんなものは微々たるものだ。

 よく見るとシキは、立っているのもやっとのようで息が荒い。しかも、己の足で立っているのではなく、足があるべきはずの箇所には両足ともに刀が突き刺さっていた。刀の柄を切断面に突き刺しているため、いまもなおポタポタと血がしたたり落ちている。

 

「てめェは随分苦しそうだなァ!“金獅子”さんよォ!!」

 

 この状態のシキであれば勝機もあるやもしれないと判断したバギーは、両手の全ての指の間にナイフを挟み持ち臨戦態勢をとった。

 モージとリッチーは隅っこのほうで縮こまり、カバジはそんな二人の前に立ちサーベルを構えた。

 

「お前らごときガキ共に後れを取るおれじゃねェ!!」

 

 たとえ両足が刀であろうが、万全の状態であればバギーたちなど相手にならなかったかもしれない。だが現状、インペルダウンの獄卒獣たちの拷問に加え、両足の傷が塞がっておらず血を流しすぎた。シキからすれば弱小も同然な相手に虚勢を張るぐらいの力しか残っていなかった。

 

「ハァ……ハァ……この借りはいずれ必ず返すぜ」

 

 シキは最後の力を振り絞り右手で船に触れた。

 

「お前らおれに掴まれェ!!」

 

 唯一シキの能力を理解していたバギーだけが反応し動くも間に合わない。

 

獅子威(ししおど)し!!」

 

 その瞬間、船がはるか上空まで音もなく打ち上げられた。

 

 空中に放り出されたバギーたちに狙いを定める。

 

斬波(ざんぱ)!!」

 

 振り切られた足の刀から凄まじい威力の斬撃がバギーたちを襲った。

 

「ぐっ…………チクショウ!!」

 

 靴の仕込みナイフも用い、両手両足で斬撃を受けるも空中なので踏ん張りが効かない。バギーたちは巨大な斬撃に飲み込まれ、はるか彼方へと吹き飛ばされてしまった。

 手負いの獣ほど恐ろしいものはないことを、身をもって味わうことになったバギーであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 打ち上げられていた船がザパーンと海に着水した。シキも続いてふわりと降り立ったがすぐに膝をついてしまう。

 

「いまは休息だ……だが、いずれミーハー共を皆殺しにしてやる!もちろんあのナメたガキ共もな」

 

 強気な発言とは裏腹に、とうとう力尽きてうつ伏せに倒れこんでしまった。

 

「あいつらはどこで何してやがんだ。早くおれを回収しに来い。まったく……使えねェ」

 

 そのつぶやきと共に、シキは完全に意識を手放した。




シキさんはボッロボロでした。


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